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エレクトロニック・ミュージックの先駆者として、テクノの生みの親として、結成から54年が経過した今なお愛され続ける伝説的なドイツのグループであるKraftwerk。カスタムメイドの電子楽器を製作し、最先端の機器を使用して独自のサウンドを生み出し、アルバム『アウトバーン』などで世界的に高い評価を得た彼らが1970年から1981年にかけて放送していた音源を一挙収録したCD5枚組ボックス!
地下カセット界隈を代表するモダン・ニューエイジの重要格Wave TemplesとX.Y.R.もゲスト参加。今年1月にも〈Not Not Fun〉から秀逸なアンビエント作品を送り出したばかり。Akasha SystemやDJ Panthr、Opalineといった複数の名義を使い分け、卓越したアンビエント・ダンス~ニューエイジ作品のカタログを作り上げてきたHunter Thompsonが始動させたトライバル・ダブ名義=Teguによる、今年度2作目となる最新カセット・アルバム『Owl Island』が到着!24年初頭にフロリダの運河沿いで録音されたという10月発表のアルバム。古代の湿地を漂う温かい霧のように流れ込み、低音のうねりと湿気を帯びたシンセのループで揺れる、奥地系トライバル・アンビエント/アンビエント・ダブ秀盤!
11月中旬入荷予定。今年度の最重要再発物件の一角がまたも到来、お見逃し無く!昨今の地下シーンを大いに賑わせている、イタリア出身の前衛的打楽器奏者であり、Holy TongueやVanishing Twin、Moinといった人気プロジェクトにも参加するValentina Magalettiと、若くしてこの世を去った実験音楽家Tom Relleenによる名エクスペリメンタル・デュオTomaga。現在希少な作品となっているそのデビューアルバム『Futura Grotesk』の10周年を記念して、〈Hands in the Dark〉より奇跡のリプレス!13年にValentina MagalettiとTom Relleenによって結成されたTomaga。Relleenがこの世を去る2020年まで活動し、ロンドンを拠点に、音楽的な枠を超えた創造的な実験を継続し、通常の音の枠組みを解体しながら、斬新で未知の音の風景へ踏み込んできた彼らの初期の金字塔。レフトフィールドかつフリーキーなインプロ主体の演奏による、80年代の脱線パンク~DIY地下エレクトロニクスにも通じる異端的サウンドはこの人たちならでは。多様な楽器の演奏をシームレスに取り入れつつ、インダストリアル、ジャズ、サイケデリア、ミニマリズムの領域を行き来する素晴らしい内容です。限定300部。
ステレオラヴの運営するレーベル〈Duophonic〉等、いくつかのレーベルからリリースされたシングルによって注目を集め、99年に多数レーベルからアルバム・リリースのオファーが殺到する中、〈WARP RECORDS〉と契約。当初ステレオラヴやマイ・ブラッディ・バレンタイン等と比較されていた彼等だが、オリジナル・アルバムのリリースを重ねることでその評価を高め、ヨーロッパ、アメリカを中心に確固たる地位を築いた。そんなブロードキャストが、最後のリリースとなる2作品『Spell Blanket - Collected Demos 2006-2009』『Distant Call - Collected Demos 2000-2006』を発売。
惜しまれながらも2011年に他界したボーカルのトリッシュ・キーナンによる4トラック・テープとミニディスクの膨大なアーカイブから集められた曲とスケッチで構成されている『Spell Blanket - Collected Demos 2006-2009』は、ブロードキャストの5枚目のアルバムになるはずだった楽曲群が下地となっており、2005年リリースの『Tender Buttons』後、2006年から2009年にかけて、トリッシュとジェイムズ・カーギルが取り組んだ創作過程を知ることができる作品。
『Distant Call - Collected Demos 2000-2006』は『Spell Blanket - Collected Demos 2006-2009』とは対照的に、『Haha Sound』、『Tender Buttons』、『The Future Crayon』に収録された楽曲の初期のデモ音源を集めたものである。また、トリッシュの死後にジェイムズが発見した2曲「Come Back to Me」「Please Call to Book」も収録されている。この曲は2006年にバンドによって実施された『Let’s Write A Song』プロジェクトーーファンからポストカードに綴った歌詞を募集し、それをもとに楽曲を作ったーーに対するトリッシュのファンへの返答が散りばめられている。
Stefan Schneider (To Rococo Rot)による運営のもと、テンテンコやAsmus Tietchens & Miki Yui、Hinosch、Sam Prekopといった面々による作品リリースや、Non Bandや工藤礼子の名作の再発も行ってきたデュッセルドルフの〈TAL〉の新タイトル!バスクラリネットとエレクトロニック・サウンドを革新的に融合させたデビュー・アルバム『REIME』に続き、Susanna Gartmayer (バスクラリネット) とStefan Schneider (エレクトロニクス) からなるウィーンの実験的デュオ So Snerの2枚目のアルバム『The Well』が登場!約2年かけてさまざまなスタジオやスペースで録音された作品であり、So Snerの欧州各地での大規模なツアーの様相を反映した内容に。ミニマリズム、インダストリアル、ジャズ、インプロヴィゼーション・ミュージックの混交として、緩やかなアンビエンスを提示しつつ、管楽器の旋律が琴線をくすぐります。空間性や場に配慮しつつも、ある種のポップセンスからリラックスして聴ける一枚。限定400部。
2007年、イタリアの映画祭に招待された、ドイツが誇る革新的電子音楽デュオ、Mouse On Mars。主催者側より、バンドが自由に選んだ映画の中から新たなサウンドトラックの制作を依頼され、かねてより2人のお気に入りだった、ニュー・ジャーマン・シネマの代表格であるヴェルナー・ヘルツォークによる71年の架空のドキュメンタリー映画『FATA MORGANA』の新規サントラを作り上げながらも、監督側に認められずにお蔵入りとなってしまっていた幻の作品『Herzog Sessions』が待望のリリース!映画のオリジナルのサウンドトラックには、モーツァルトやレナード・コーエン、サード・イヤー・バンドによる楽曲やフィールド・レコーディングが収録されていた一方、バンドはギターやパーカッション、エレクトロニクス、マウスハープ、テープ、サンプラーなどを駆使して、自身らの拠点デュッセルドルフにて新たな劇伴を制作。エレアコ、フリージャズ、インプロなど様々なバックボーンを飲み込む彼らのセッション音源は、その場、その空間でのドキュメントとして基調な一枚であり、生物のように揺らめき動く電子音の饗宴は、現在の電子音楽を望見する上で重要な内容と言えるでしょう。
アンビエント・ジャズ・ファンにも是非!〈Sähkö Recordings〉と〈The Trilogy Tapes〉からのリリースに続く形で、現行エクスペリメンタル・シーンの重要角と言える、英国拠点のマルチ奏者Will Yatesによるソロ・プロジェクトMemotoneが〈Soda Gong〉より最新アルバムを発表。柔らかい電子音と弦楽器の緩やかなアンビエンス、ジョン・ハッセルの第四世界の香りが交錯する微睡みの一枚。静かなヴァイオリンの旋律を基調としながら、交錯する電子音が幽玄でアヴァンギャルドなスケープを展開していく様子が大変優美です。Giuseppe Ielasiによるマスタリング仕様。限定300部。
2017年に若くしてこの世を去ったスウェーデンの実験的作曲家/マルチメディア・アーティストであり、純粋なオーケストラ作品から電子音楽、オーディオ・ヴィジュアル作品に至るまで多岐に渡る制作を行いつつ、様々なアンサンブルやソリストと共演してきたMarcus Fjellström。その逝去から7年越しとなる最後の作品であり、ダブルアルバムとなった『The Last Sunset of the Year』が満を辞して登場。Marcusの友人であり同僚でもあるErik K. SkodvinとDave Kajganichが収集した本作には、〈AMC〉のアンソロジー・シリーズ『The Terror』の第1シーズンの作曲家として在任中に作曲および制作した音楽を収録。流麗なポスト・クラシカル・アンビエントとしても、弦楽器への解釈としても秀逸な一枚。漂白されたサウンドスケープが確かに、緩やかに感情を揺さぶり、鎮静された穏やかな情景が魂の中に広がっていくかのようです。限定300部。
名手Andrew Peklerとの共同プロデュース作品!Giuseppe Ielasi主宰の〈Senufo Editions〉や〈enmossed〉〈13〉といった各地の実験的レーベルから作品を送り出してきたカナダのメディア/サウンド・アーティストであり、自身はオーディオビジュアルレーベル〈Graphical〉を運営しているMark Templetonによる最新アルバム『Two Verses』が、Jan Jelinekの〈Faitiche〉よりアナログ・リリース。物音系以降、という呼び方が相応しいと感じられる、テープ・ミュージックとしてのコラージュの質感や甘やかに加工された物音、それらを貫くように一貫して流れるアンビエントが美しい、近年でも稀有な質感を持つコンクレート作品。Giuseppe Ielasiによるマスタリング仕様。〈Muscut/Shukai〉主宰のDmytro Nikolaienkoによるデザイン。限定300部。
コズミック、アシッド、バレアリック・フォークまで聴きどころ満点!80年代半ばよりシェフィールドの元祖ハウスの若手としてキャリアを始動。英国の地下シーンでカルト的な人気を博す名イベント〈Electric Chair〉の主催者であり、Gilles Petersonの〈Worldwide FM〉でも番組をホスト、日本では〈DOMMUNE〉でもプレイしているベテランDJ/プロモーターのLuke Unaがコンパイルした最新コンピレーション・アルバム『Everything Above The Sky』がダブルパック仕様でアナログ・リリース!Stephen Whynott、Sylvain Kassap、Otis G. Johnsonといった面々による、美しくオーセンティックな、時代を経ても風化しないフォーク・ミュージックが収められた素晴らしいコンピレーション作品!現在のオルタナ・フォークを俯瞰する意味でも過去の美しい音楽を望見する意味でも重要作と言える内容となっています。
フィンランド・ヘルシンキに君臨する我らがコズミック・ソウルの恒星間航行者ことJimi Tenorが、Cold Diamond & Minkと共に録音したセッションを収めた2024年度最新アルバム『Is There Love In Outer Space?』が〈Timmion Records〉よりアナログ・リリース。シンセ・ノイズが満載な本作には、ローファイなスペース・ファンクからシネマティックなサウンドスケープまで幅広いものに仕上げられています。
〈Afrosynth〉レーベルなどのファンも必携のアフロ・ハウス傑作!ローマにて出会い、同地でパーティーを共同主催するようになった2人のイタリア人DJ/プロデューサー、Andrea Rausa (Afreak) と Massimiliano Troianiからなるコラボレーション・ユニット、Warodjahによる自主リリース12インチ作品『ZOU'S JOURNEY』が到着。アフリカ音楽の豊かな伝統とアフリカのグリオの物語の伝統に敬意を表したタイトル・トラック"ZOU'S JOURNEY"のフルレングスとラジオ・エディット・ヴァージョンをA面に、そして、自身の〈Sex Tags UFO〉や〈Royal Oak〉などからの作品でも知られる鬼才=DJ Fett Burgerによる特製ハウス・リミックスをB面に収録。コラなどの楽器を用いたアフリカ音楽とハウスの融合、統合の好例として美しく響く内容でありつつ、シンプルにハウス・ミュージックとしてフロアを揺らす素晴らしい仕上がり。美しい弦楽器の響きとビートの躍動が空間を揺らす独創的でグルーヴィーな一枚です!
セネガルやガンビア物を中心とした辺境レアグルーヴ発掘に定評のあるアテネ拠点の〈Teranga Beat〉からは、"Sweet Fingers"の異名を持つガンビア出身の作曲家、編曲家、ギター奏者Bai Janha率いるムバラックス・グループ、Karantambaによる未発表音源を収めたアルバム『Calgi』がアナログ・リリース。2012年に同レーベルよりリリースされていた『Ndigal』の4年後となる1988年にダカールの〈Studio Wings〉でリールテープに録音されていたものの発売されず今日まで眠っていた幻の作品!『Galgi』とは、ウォロフ語で「奴隷船」を意味し、大西洋奴隷貿易で苦しんだ人々に捧げられた作品となっています。それを映し出すように、カバー写真はダカールのゴレ島にある象徴的な奴隷の家で撮影されたものを起用。カタルシスや感情の振動をもたらし、アフリカにおけるポップネスの所在を明らかにしつつも、それだけに留まらない感情の奥行きを示したアフロメイドのグルーヴ・ミュージックの逸品!
自国のソウル、ゴスペル、ファンクにとどまらず、ニューエイジ・ミュージック始祖ヤソスや日本からは原マスミまで、世界各地のオブスキュアなサウンドを掘り起こしてきた米国の大名門〈Numero〉から新物件!ポスト・ハードコア、スローコア、ジャズ・ロックという、ありそうでなかったジャンルの交差点にぶつかりながらも、地元ボストンで十数年間、比類ないレコーディングを制作してきた名バンド、Karateによる20年ぶりの新録を収めたアルバム。Wes Montgomeryへのオマージュ、Fugaziのダブプレート・パーティの狂熱、Lynottのリリシズムまでもが35分間の優雅な音楽世界の中で渦を巻く、新しい10の物語を収めた要注意作品!
12月下旬再入荷。Sina (ボーカル/シンセ)、Drop Dylan (ボーカル/ギター)、Ossian (プロダクション/エレクトロニクス)のコア・トリオからなるメルボルンの実験的コレクティヴ、Dregsによるセルフ・タイトル・デビュー・アルバムが、Laila SakiniやMax Eilbacherなどの作品もリリースしているロンドンのレーベル〈Purely Physical Teeny Tapes〉より登場。リチュアル、ダーク・アンビエント、呪術的といったワードを想起させる異端のトリップホップ作品。気怠さと頽廃、耽美性と毒の祝宴に陶酔させる稀有な音盤でありつつ、ダブリミックスでトリップ・ホップの新たな展開の可能性すら示す内容となっています。
2012年のブレイクスルー作『Tramp』が注目を集めたLAのシンガーソングライターSharon Van Ettenが2014年に発表した傑作アルバムにしてセルフプロデュース作となった『Are We There』が〈Jagjaguwar〉より10周年記念アナログ・リプレス!並外れた親密さと崇高で寛大な精神性、そして計り知れない幅広い音楽性とアプローチを実践した、テン年代中盤のインディ・ロックを代表する名作!
USインディ系第名門〈Jagjaguwar〉からのアナログ・リイシュー盤!ライブ人気曲”Freak Scene”収録作品。Dinosaur Jr.が1988年に〈SST Records〉よりリリースした3rdアルバムであり、オルタナ/グランジ・ムーブメントの狼煙を上げた大名作『BUG』をストック!
ベルリンの名レコード店〈Sound Metaphors〉傘下のレーベルであり、先日は香港の女性歌手Priscilla Chanによる亜物キラー盤を掘り起こしていた〈THANK YOU〉からは、日本の3人組女性アイドル・グループ、少女隊が1984年に発表した12インチ・シングル作品『Escape』をアナログ再発!Red Bus St Projectなるバック・グループと共に制作した3曲入りEP!都倉俊一が作曲を手掛けた和物エレクトロ・ブギー/ニューウェイヴ・ファンクきってのバンガー"Forever”、亜蘭知子『浮遊空間』などのプロデュースでも知られる西村麻聡(F.O.E, FENCE OF DEFENSE)による、少女隊のボーカルガン無視の型破りなエレクトロ・ディスコ”Electric City”など、鮮烈なダンス・トラックが満載!
ペンシルバニア州ピッツバーグを拠点に活動している要注目シンガーソングライター、Merce Lemonによる4年振りのフルレングス・アルバムが〈Darling Recordings〉から到着!アメリカーナや古典的なフォーク・ロック、例えばフェアポート・コンヴェンションのようなバンドの流れを組みつつ、現代の感情を浮き彫りにするローファイで美しい音楽。朗々とした女性ヴォーカルもエモーショナルな楽曲展開も珠玉の、情動のドキュメントのような作品に仕上がっています!
ペンシルバニア州ピッツバーグを拠点に活動している要注目シンガーソングライター、Merce Lemonによる4年振りのフルレングス・アルバムが〈Darling Recordings〉から到着!アメリカーナや古典的なフォーク・ロック、例えばフェアポート・コンヴェンションのようなバンドの流れを組みつつ、現代の感情を浮き彫りにするローファイで美しい音楽。朗々とした女性ヴォーカルもエモーショナルな楽曲展開も珠玉の、情動のドキュメントのような作品に仕上がっています!
サイケデリア、スパゲッティ・ウエスタン、ディスコ、ゴスペル、ヒップホップを大胆にブレンドした〈Dead Oceans〉からの傑作『Into The Blue』も素晴らしかった、ブルックリンのマルチ・インストゥルメンタリストのAaron Frazer。2020年に発表したデビューLPからの名曲「Bad News」と「Done Lyin'」が嬉しいシングル・カット!気候変動から組織的人種差別まで、あらゆることに対する警告を人々が故意に無視している時代にタイムリーなメッセージを伝える、ファンキーでドラムが効いた「Bad News」、Dan Auerbachの重厚でタフなプロデュースと、フレイザーの心のこもった滑らかな歌声が詰め込まれたスイートソウルの天国「Done Lyin’」共に大変秀逸なナンバーです!
Sufjan Stevensの『Illinois』を舞台化した、トニー賞にノミネートされたブロードウェイミュージカル『イリノイ』にも出演しているシカゴのシンガーソングライター、Tashaによる最新アルバム『All This and So Much More』が、Beach FossilsやJerry Paper、Frankie Cosmosなどによる良質なインディ系作品で知られる〈Bayonet Records〉より登場!悲しみとの辛い出会い、突然の別れ、新たな恋愛、新しいヘアスタイル、世界を旅するきらびやかな日々を湛えた感傷的で優美なインディ・ロック作品!
「音楽で表現したいのは”神秘感”なのかもしれない。」今年度最重要物件!非常階段のオリジナル・メンバーであり、ハレルヤズやIdiot O’Clockでも活躍、現行ジャパニーズ・サイケ最高峰「渚にて」にも参加。戸張大輔や麓健一らと並び、昨今急速に再評価進む鬼才ギタリストこと頭士奈生樹。〈Sad Disco〉で再発させて頂いた98年の幻のセカンド・ソロ・アルバム『現象化する発光素』に続いて、2018年に渚にての〈オルグ・レコード〉からCDオンリーで発売されるも昨今入手困難となっていたキャリア中でも隠れた大傑作『IV』が奇跡の初アナログ化!版元は、Tara Clerkin Trioなどの作品で当店おなじみのロンドン拠点〈World Of Echo〉であり、同レーベルが始動させた頭士氏のリイシュー・シリーズの第一弾となる作品。大人気曲「結合の神秘」の様な、青々とした初夏の風景を彷彿とさせるエヴァーグリーンなサイケ・フォーク/ドリーム・ポップ・サウンドから幕を開けつつも、大胆にもRobert Fripp風のミニマル・ギター・サウンドへと移り変わり、やがてヘヴィなドローン/ノイズのシューゲイジングへと押し上げられていく実にプログレッシヴな展開の「鏡 - Mirror」、銀色の糸状のギター・メロディーを循環的なコードパターンの周りに織り交ぜる、毒々しくも叙情的なサイケデリック・ナンバー「夜想曲 - Nocturne」、割礼や宮沢正一にも似た、寂寞のフォーク・ソング「神隠し - Spirit Away」、〈ECM〉作品にも通じる静けさとミニマリズムとサイケデリアが出会う長大なイントロから、やがて神秘的なラストの歌唱に繋がるクロージング・トラック「花が咲きますように - May a Flower Bloom」まで、頭士氏の孤高の音世界が遺憾無く発揮された、キャリア中でも屈指の隠れた名盤。この機会にアナログで是非。
名門レーベル〈4AD〉を代表するバンドであり、ドリーム・ポップの礎を築いたコクトー・ツインズと、アンビエント・ミュージックのパイオニア、ハロルド・バッドの二組が1986年にリリースした大傑作『The Moon and the Melodies』が、初リリースから28年を経た今、コクトー・ツインズのロビン・ガスリーによるオリジナル・テープからのリマスタリングによって初めてリイシューされる。
この作品は、コクトー・ツインズのカタログの中でも特異なアルバムであり、彼らの基準からしても異例なほど幽玄である。また、神の介入でもあったかのように彼らと合流を果たしたアンビエントの先駆者、ハロルド・バッドのフリーフォームな即興に支えられたインストゥルメンタルが大部分を占めている。同じ年の初めにリリースされた『Victorialand』の至高のアトモスフェリックな響きを土台にした本作は、コクトー・ツインズという3人組にとって新たな可能性を示唆するものであったが、彼らが再びこの道を歩むことはなかった。
このアルバムは、実際には実現するはずのなかったもので、そもそも、どのようにして実現したのか、誰も正確に思い出すことすらできない。ロビンとサイモン・レイモンドの記憶によれば、インディーズ系テレビ局のチャンネル4が、異なるジャンルのミュージシャンをペアにしたフィルム・プロジェクトの案を、〈4AD〉に持ちかけたのだという。しかし2020年に他界したハロルド・バッドは、1980年代のインタビューで次のように話していた。当時、コクトー・ツインズが、彼の曲をカヴァーすることに興味を示したため音楽出版社が両者をつなげたのだと。いずれにせよ、フィルム・プロジェクトは実現しなかった。ロビンとサイモンはこのように振り返る。「ハロルドとは話をしていて、僕たちはみんなとても興奮していたんだ。コクトー・ツインズ的な、めったに興奮しないような、ある意味とても暗い感じでね。とりあえずやってみよう。飛行機も予約しちゃったし、スタジオで彼と一緒に過ごして、何が起こるか様子を見ようってことになった。」
『The Moon and the Melodies』は、一癖も二癖もあるにもかかわらず、長年にわたって熱狂的なファンを惹きつけてやまない。作品の最もアトモスフェリックなトラックは、アンビエントDJセットで頻繁に登場する。「Sea, Swallow Me」はコクトー・ツインズのSpotifyで最もストリーミングされている曲のひとつであり、TikTokでも新たな息吹を吹き込まれており、表現しがたい哀愁のためのサウンドトラックとして幾度も使われている。これほど地味な作品でありながら、このアルバムは非常に大きな存在感を放っている。しかしサイモンは、このアルバムのユニークさは、その控えめで無計画な成り立ちに由来すると思っている。「心地よいと思える作品を作るのがいつだって大事なんだ。」と彼は話す。「一緒に音楽作りを楽しんでいる友人たちとの一瞬を切り取ること。それが本質なんだ。あの音楽は、僕らがスタジオでいかに楽しい時間を過ごしていたかということを映し出しているんだ。」