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日本フリージャズ史の最重要アーティストである富樫雅彦、高柳昌行、高木元輝、吉沢元治による希有の傑作。高柳のフィードバックの手法を有効に使ったギター、高木のダイナミックなテナーサックスとコーンパイプ(縦笛の一種)、吉沢の自由すぎる程に天衣無縫な弦の響き、そして富樫の緻密さと迫力を兼ね備えた知的なドラミングは、まさに新しい時代の到来を告げる大名盤!

オリジナルは2009年リリースの、ピアノ・アンビエント、ポスト・クラシカルの名作として長く愛されてきた小瀬村晶の代表作『Polaroid Piano』が、15周年記念盤で登場。フェルトでミュートしたアップライトピアノをモノラル録音し、鍵盤のタッチ音や椅子の軋み、空気の揺れ、そしてLawrence Englishによるフィールドレコーディングを丁寧に織り込んだ、パーソナルで静かな音のスナップショット。ポラロイド写真というテーマの通り、収められた12の小品はどれも短く、柔らかく霞んだフェルト・ピアノの響きが、まるでソフトフォーカスの写真のように淡く輪郭をにじませる。シンプルなメロディーが静かに反復し、微細な環境音が背景に溶け込む音像は、音楽がその場の空気ごと記録されているかのよう。15周年盤では新たに「Enough Grace」が追加。アルバム全体に温度のある優しい質感が広がる、時間の手触りまで封じ込めたような、長く手元に置きたくなる一枚。
ナポリ拠点のNu Geneaが、地中海圏の多文化性とアフロ・ディスコのエネルギーを前面に押し出した最新作『People of the Moon』。前作『Bar Mediterraneo』の成功を受け、今作では港町ナポリの祝祭性、街のざわめき、海風の湿度をそのまま音に変換したような躍動感が際立つ。軽快なパーカッション、跳ねるベース、陽光のように明るいホーンが絡み、70〜80年代のイタロ・ブギーや地中海ポップの質感を現代的に再構築している。Célia KameniやMarina Mulopulosらゲストのヴォーカルが作品の表情を豊かにし、言語のミックスが多文化都市ナポリの空気を強める。アフロ・ビート由来の反復やコール&レスポンスが自然に溶け込み、柔らかい高揚感を生む。アーカイブ感と現代性のバランスが絶妙で、Nu Geneaらしい生活と音楽の距離の近さがより洗練された形で提示されている。地中海の都市の祝祭をそのまま記録したような、生命力に満ちたネオ・ディスコ作品。
ベルリンの〈MISS YOU〉が1980〜1985年の日本のニューウェイヴ、ポストパンク、実験音楽から、ダブの手法を取り入れた録音だけを選び抜いた発掘コンピレーション『Japanese New Wave On Dub 1980–1985』。当時のアンダーグラウンドを横断するアーティストが参加し、自主制作カセットや小規模レーベルに埋もれていた音源が初めて体系的にまとめられている。ニューウェイヴ特有の硬質なギターやシンセの質感に、深いエコーや残響が重ねられ、都市的な乾いた音とダブの空間処理が自然に交差する。リズムはミニマルで、反復の中で音が少しずつ形を変えていく構造が多く、ジャマイカのものとは異なる日本的な抽象性が前面に出ている。DIY録音ならではのざらつきや機材の癖がそのまま残り、80年代の現場の空気が生々しく立ち上がるのも魅力。日本の知られざる音楽史の一側面を改めて示す重要な再発。
【track list】
A-1. Chinggis Chan Dread - Yattane Babylon
A-2. The Air Music International - Hot Steppers In A Dub
A-3. So-Do - Nothing
A-4. Momoyo & Lizard! - Sa·Ka·Na
A-5. EP-4 - dB
A-6. Pablo Picasso - Tsun
B-1. Bananarians - Suna No Atama
B-2. Pressure - Goouder
B-3. Pineapple 4.9 - Yoruni
B-4. Concretes - Watch The Moon
B-5. Masumi Hara - Looks Like An Angel
B-6. Business - Minato No Cafe
UKダブ・ポエトリーの象徴、Linton Kwesi Johnsonが1980年に発表した代表作『Bass Culture』。プロデュースと一部演奏を担うのはDennis “Blackbeard” Bovell。ロンドンのGooseberry Sound Studiosで録音された本作は、低域の厚みとタイトなリズムを軸に、LKJ の語りが鋭く響くもので、詩の内容は社会的・政治的テーマを正面から扱いながら、音楽としてのグルーヴを保っている。ベースは深く沈み、ドラムは乾いた質感で刻まれ、ホーンやギターは必要最小限のフレーズで空間を支える。ダブ処理は控えめながら精密で、言葉の強度を損なわずに音の奥行きをつくる。都市の空気をそのまま封じ込めたような生々しさがあり、レゲエの温度感とロンドンの社会的リアリティが自然に重なっていく。ダブ詩という表現を決定的な形にした作品であり、UKレゲエ、ダブの成熟を象徴するクラシック。
ポルトガルのエレクトロニック・トリオSensible Soccersの楽曲を、Tolouse Low Trax、Danilo Plessow、Peaking Lightsら3名のカルト的プロデューサー陣が再構築したリミックスEP。Tolouse Low Traxは「Efeito Zandinga」をアフロビートと削ぎ落とされたテクノの質感が交錯するヒプノティックなトラックへと変貌させ、Danilo Plessowは「Saravá」をクラブの推進力と原曲の温度感を両立させたドライヴ感のあるアシッド・ハウスへと再構築。Peaking Lightsは「Rosa Mota」を広がりのあるダブ、サイケデリック解釈へ導き、コズミックなフィナーレを形づくる。3つのリミックスはそれぞれ異なる角度から楽曲を照らしており、アフロ・フューチャリズム、アシッド、サイケデリック・ダブ、電子音楽が交差する、コンパクトながら多層的な12インチ。

ロンドンの〈Life Is Beautiful Records〉が設立3周年を記念して制作した初のコンピ『veneration for the sacred action』。Aloisiusを中心としたキュレーションにより、エレクトロニカ、ダウンビート、フォーク、オルタナ、アンビエント、クラウトなど、多様なスタイルが自然に連なり、レーベルの現在地をそのまま音として浮かび上がる。声の扱いが特に豊かで、スポークンワード、柔らかな歌声、加工されたヴォーカル、民族的な声が、電子的テクスチャやアコースティック楽器と有機的に混ざり合う。ローファイな質感のトラックの隣にクラウトロック的反復が置かれたり、フォークの親密さとエレクトロニカの抽象性が並列で配置されたりと、ジャンルを横断するコラージュ的構造がコンピレーションとしての魅力を強めている。多層的で、絶えず表情を変える風景のような作品であり、レーベルの活動そのものを音で記録したアーカイブ的な性格が強い。また、どれも感覚が非常に鮮やかで現代的、〈Life Is Beautiful Records〉の世界観を総合的に味わえる、充実のコンピレーション。
〈Echospace〉が長年保管してきたアーカイブから選び抜かれた未発表素材、ロストテープ、別ミックス、ライブ録音を再構成したシリーズの第1巻『Altering Illusions [1/3] Remastered』。2007年から2010年のcv313の深層期を象徴する音源に加え、今回はRadius名義のレアなダブ・トラックも収録され、デトロイト録音ならではの湿度とアナログの質感がそのまま刻まれている。Stefan Betkeによるリマスターは、音像はより明瞭になりながらも、特有の沈んだまま光を反射するような質感は失われていない。サブベースの圧、最小限の構造、細かく調整された空間処理が重なり、cv313のダブテクノが持つ静かな重みがゆっくりと広がっていく。Interpolation Tapesシリーズからの追加曲も含め、低域の奥行きと反復のニュアンスがさらに強調され、〈Echospace〉のアーカイブ期を象徴する非常に重要な2LP。

〈AD93〉の姉妹レーベル〈Lith Dolina〉からの前作『Surreal』で注目を集めた日本人アーティストBot1500ことShinichi Kobayashiによるセカンド・アルバム『The Black Sea』が〈Short Span〉から登場。全曲高BPMの高いテンションを保ちながら、静けさと陰影を重視した独特のサウンド。音数を絞ったミニマルな構造の中で、湿り気を帯びたシンセがゆっくりと揺れ、パーカッションやブレイクが鋭く差し込む。静寂が音の一部として機能し、余白がリズムの輪郭を際立たせる。日本の海岸の夏夜を思わせる暗く湿ったトーンが漂い、電子音が水面に反射するように広がるダブ的処理が印象的。IDMの精密さとダブの空間性が自然に同居し、内省的でありながら静かな運動性が宿る、独特のテンションを生む充実作。
Black Ark最盛期の1977〜79年にLee “Scratch” Perryが制作した長尺12"ディスコミックスをまとめた〈Studio 16〉の人気シリーズ第3弾『Lee 'Scratch' Perry - Disco Devil Vol. 3 (5 More Classic Discomixes From The Black Ark Studio 1977-9)』。The Jolly Brothers「Conscious Man」、Max Romeo「Norman」、Leroy Sibbles「Garden Of Life」など、当時のBlack Arkを象徴する名演が高品質リマスターで蘇る。ディスコミックスならではの長尺構成で、ヴォーカルからダブへの展開が自然につながり、反復するリズムの中で音がじわじわと形を変えていく。ベースは深く沈み、ドラムは乾いてタイト。Perryの手作業によるエフェクト処理が極端に施され、音が煙のように立ち上がるBlack Ark特有のサイケデリックな空気が漂う。宗教的高揚と幻覚的な混沌が同居しする魔術的ダブの真髄。

イタリア人アーティストOltrefuturoが、自身のルーツであるアドリア海にインスピレーションを得て制作した『Figure Del Flusso (Movimenti Adriatici)』。レフトフィールド志向と、チル、ダウンテンポの感覚が自然に結びつき、海辺の空気を電子音で描いたような柔らかいサウンドが広がる。シンセは水面の反射のように揺れ、リラックスしたパーカッションが心地よくリズムを刻む。アンビエントとダブの境界を漂うサウンドデザインにバレアリックな開放感とレフトフィールドの奇妙な陰影が同居し、トランシーな高揚とオーガニックな質感がゆっくりと流れの中で形を変えていく。海流のように穏やかで、しかし確かな推進力を持つ作品。
イタリアの映画音楽およびライブラリー・ミュージックの黄金期を飾る伝説的存在の中でも、その時代のサウンド・アイデンティティを決定づけた真の立役者と評される名手4人組I Marc 4が残した、最も希少なライブラリー作品『S.M.2001 Silver Music』と『S.M.2002 Silver Men』の音源をまとめた決定版リイシュー。ローマを拠点に、MorriconeやRotaの録音にも関わった職人たちが、短尺ながら完成度の高いジャズ・ファンク、シネマティック・ジャズを次々と生み出していく。Carlo Pesの軽やかなギター、Antonello Vannucchiの柔らかいオルガン、Maurizio Majoranaの深いベース、Roberto Podioのタイトなドラムが作るあまりに完成されたアンサンブルは、ライブラリー音楽の枠を軽々と越えていく。Edda Dell’Orsoの声が加わるトラックでは、一気にイタリア映画の空気が立ち上がり、映像的な陰影とレアグルーヴ的な躍動が自然に共存。ビートの強い楽曲はブレイクとしても機能し、70年代のスタジオ職人芸と現代的なサンプリング文脈が交差する魅力を持つ。〈Sonor Music Editions〉による銀色のアートワーク再構成も美しく、I Marc 4の魅力をストレートに味わえる重要な再発。
Dennis Bovellが手がけた匿名的プロジェクト4th Street Orchestraによる、1977年ロンドンのサウンドシステム文化をそのまま封じ込めたルーツ・レゲエ/ダブの重要作『Yuh Learn!』。ジャマイカの温度感を保ちながら、UK特有の乾いた質感と硬いリズムが重なり、街の空気感漂うリアルな音像が魅力。Bovellの精密なダブ処理は、エコーやディレイが絶妙に配置され、動く空間をつくり出す。参加メンバーには、Dennis BrownやAswadを支えたJohn Kpiaye、Rico Rodriguezとも共演したEddie “Tan Tan” Thorntonなど、UKレゲエの歴史を形づくった名手が多数参加。ホーンは温かく、リズム隊はタイトで、サウンドシステムの現場で鳴らすことを前提にした強度を持つ。社会的背景が滲む「The Grunwick Affair」に象徴されるように、当時の移民コミュニティの現実や労働争議の空気が音の奥に宿り、レゲエがコミュニティの声として機能していた時代の息遣いが感じられる。UKレゲエの深部を知るうえで欠かせない一枚。
The Pop Group、The Slits、New Age Steppersなどで知られるドラマーBruce Smithを中心に、初期On-U Soundの精鋭が集結したコレクティヴPlaygroup。その唯一作にして、ジャマイカン・ダブを英国流に再解釈し、ポストパンクの硬質さと産業的ノイズ感を混ぜ合わせた1982年の異形ダブ作品『Epic Sound Battles Chapter One』。Crucial Tony、Sean Oliver、Style Scott、Eskimo、Bonjo IといったCreation Rebel、African Head Charge、New Age Steppersの面々が参加し、On-U Soundのスタジオ魔術を背景に制御された混沌が立ち上がる。タイトで鋭く、複雑に絡む、立体的な音像。儀式的な雰囲気と暗いユーモアが全体に漂い、緊張感と遊び心が同居する独特の音像が魅的。Adrian Sherwoodが全面プロデュースの初期On-U Soundの精神を象徴する重要作であり、UKアンダーグラウンドの歴史的アーカイブとしても価値のある再発。
Alternative TVのフロントマンにして、UKパンク黎明期の象徴的な自主制作のミニコミ誌Sniffin’ Glueを創設したMark Perryが、1980年に発表した初ソロ作『Snappy Turns』。ATVの攻撃的なパンク性から距離を置き、より個人的でアートロック、ポストパンク寄りの表現へと踏み出した作品で、Grant Showbizが手がけた曇ったプロダクションが全体の空気を形づくる。Perry自身が多楽器を重ねることで生まれる壊れかけのポップの質感は、ポストパンクの陰影とDIY的な粗さが自然に同居したもの。語りと歌は静かに歪んだ視点を持ち、曲の奥にある不安や皮肉を浮かび上がらせる。特にテープループやヴァイオリンを用いた音像は、Throbbing GristleやPsychic TVの系譜を思わせるもので、Nurse With Woundリストに並んでも違和感のない独特の世界観をつくっている。パンク、アートロック、インダストリアルの影響が交差し、80年代UKアンダーグラウンドの曖昧で不穏な空気をそのまま封じ込めた一枚。
前作『Rock Joint Biwa – Furukotofumi』で日本神話を音楽化した鈴木宏昌が、翌1973年に挑んだ国境を越える音の旅『Rock Joint Cither – Silk Road』。シルクロードをテーマに、インド、中央アジア、中国の文化的源流をジャズロックの語法で描き出した意欲作で、シタール奏者上原陽子を迎え、前作で琵琶が語り手だった構造をそのまま拡張し、シタールが新たなナレーターとして作品全体の方向性を形づくる。鈴木宏昌トリオによる強力な演奏が作品の芯となり、エレピ、ピアノはモーダルな展開からロック寄りのリフまで自在に動く。そこへ村岡建のサックス、フルート、オーボエ、ホルンなどの管楽器が彩りを加え、アジア大陸の風景が抽象的に立ち上がる。知的なジャズロックと東洋的な旋律が自然に交差する、日本モダン音楽の考古学的発掘とも言える重要な再発。
日本最古の歴史書『古事記(Fulukotofumi)』を題材に、鈴木宏昌がジャズロックと和楽器を大胆に融合させた1972年の異色作。琵琶と和太鼓の響きが作品の核となり、古代の物語性と70年代ジャズロックの推進力が自然に交わる構成で、三宅志穂の琵琶は語りのような強さを帯び、バンドのアンサンブルの中で独特の存在感を放つ。鈴木のエレピ、ピアノはモーダルな展開からロック寄りのリフまで自在に動き、場面転換のようなダイナミズムを生み出している。参加メンバーは杉本喜代志、村岡建、稲葉国光、石川晶など当時の日本ジャズ界の最強布陣で、国際水準の演奏力と実験精神が作品全体を貫いている。ときにプログレッシブ・ロック的な展開も顔を出す、古代の神話世界と70年代のモダンな表現が同時に立ち上がる、唯一無二のクロスオーバー作品。
John Lurieを中心に、NYダウンタウンのアヴァンギャルド、ノーウェイヴ周辺で活動したThe Lounge Lizards。その初期ライブを記録した、バンドがまだ形になりきる前の勢いと実験性をそのまま封じ込めた重要アーカイブ『Live 79–81』。サックス、ピアノ、ギターがそれぞれ異なる方向性を持ちながら、ライブならではの緊張感の中でひとつの流れをつくっていく。John Lurieのサックスはメロディを提示しつつ、どこか皮肉めいたニュアンスを帯び、Arto Lindsayのギターはノイズ、テクスチャーとして音像に鋭さを加える。Evan Lurieのピアノが構造の支点となり、アヴァンギャルドな展開でも音楽が崩れすぎないバランスを保っている。ジャズ、ポスト・ボップ、ノーウェイヴが自然に交差し、NYダウンタウンの空気がそのまま立ち上がる内容。スタジオ作品では味わえない初期衝動が色濃く漂い、バンドの方向性が形成されていく過程を感じられる、1985年のカセット初出から評価され続けるライブ盤。
Barry Brownの黄金期ルーツ音源をまとめた決定盤『Can’t Stop Natty Dread』。プロデュースとアレンジはLinval Thompson、演奏はRoots Radics、ミックスはKing Tubby。Channel Oneの太いリズムとTubbyの深い残響処理が重なり、70年代末から80年代初頭のジャマイカ音楽が持つ力強い質感がそのまま息づいている。Barry Brownのヴォーカルは語りかけるような素朴さと芯の強さが共存し、社会的テーマの曲でも過度に重くならず、自然な説得力を保っている。Roots Radicsの演奏は、太いベースと乾いたドラムを軸に、ルーツレゲエの王道の鳴りを安定して支え、曲ごとに微妙なニュアンスの違いを生み出す。〈Thompson Sound〉の再発らしく、当時の空気を保ったままの質感で、黄金期の手触りがしっかりと残っている。
Linval Thompsonがプロデュースした黄金期ルーツ・レゲエを体系的にまとめたコンピレーション『Linval Thompson & Friends Vol.1』。Channel OneとKing Tubby’sの音源を軸に、Cedric “Congos” Myton、Horace Andy、Freddie McKay、Junior Delgado、King Kong、U Brownら、70年代後半から80年代初頭を代表するシンガー、DJを一枚に収めたもので、バックはSly & RobbieとRoots Radicsが担当。太いベースラインと乾いたドラムが、当時のジャマイカ音楽の力強い質感をそのまま支えている。Linvalのプロデュースは、リズムの芯を太く保ちながらヴォーカルの存在感を前に出すバランスが特徴で、各アーティストの個性が自然に立ち上がる。Horace Andy「River」や U Brown「Roots Is Roots」といった未発表音源も収録され、黄金期の空気が新たに発掘されたような新鮮さを添えている。Linval Thompsonのプロデューサーとしての重要性を再確認できる一枚。
1978年にリリースされたLinval Thompsonの代表作であり、Channel Oneで録音され、King Tubbyのスタジオでミックスされた、ジャマイカ音楽の黄金期を象徴するクラシック『I Love Marijuana』。Bunny Leeのもとでキャリアを始めたLinvalが、シンガーとしての存在感を確立した作品で、当時のトップ・ミュージシャンであるFamilyman Barrett、Robbie Shakespeare、Sly Dunbar、Chinna Smithらが参加し、ルーツレゲエの重心の低いグルーヴをしっかりと支えている。ヴォーカルは硬派なルーツの質感だけでなく、ラヴァーズ寄りの柔らかさも持ち合わせており、社会的テーマの曲と日常的な曲が自然に並ぶ構成が特徴。King Tubbyのミックスは過度に派手ではなく、必要な場面で空間を広げるような残響処理が施され、曲の流れに奥行きを与えている。ルーツからラヴァーズ、初期ダブの魅力をストレートに味わえるクラシック。
James Grevilleが主宰する〈Mad Habitat〉から、長尺のアンビエント、バレアリックを軸にした、非常にパーソナルな12インチ『Luna Forest Kitchen』が登場。愛犬Lunaに捧げられた作品で、VermonaのドラムマシンやMinimoog Model Dを中心としたアナログ機材の温度感が前面に出ている。10分を超える長い尺の中で音がゆっくりと形を変え続け、反復というよりひとつの風景を観察し続けるような展開が続く。柔らかいパルス、丸みのある低域、薄いシンセの揺らぎが重なり、サイケデリックな浮遊感と穏やかな安らぎが同じレイヤーで響く。DJ Earl Greyの語りが音の流れに親密なニュアンスを与え、Santilliのパーカッションが有機的なリズムの気配を添える。オーストラリアのローカルな感覚と、現代アンビエントの静かな探求が自然に交差する、長尺電子音楽の好例。

インディアナポリスのプロデューサーEustressによる、アンビエント・ダブとダブテクノの“静的な側面”を徹底的に掘り下げた12インチ『Exit』。6曲はそれぞれ独立したトラックでありながら、連続して聴くとひとつの長い路地を進んでいくような感覚が生まれる構成で、リズムよりも低域の揺らぎと残響の広がりが主導する。キックが前面に出るタイプではなく、音の余白と倍音の消え際まで設計されたミニマルな音響が印象的。低音の塊がゆっくりと脈打ち、その周囲に薄いアンビエント層が重なることで、静かな圧力と広がりが同時に立ち上がる。ダブ処理は控えめだが深く、音の輪郭をわずかに滲ませることで空間の奥行きを作り出す。大きめのスピーカーで聴くと構造の精密さがより明確に浮かび上がりそうな、〈Kino Disk〉らしいストイックな一枚。
80年代フランスのエスノ・インダストリアル、アンビエントのカルト・ユニットVox Populi!のアーカイブ音源を、現代パリの4組のプロデューサーがダブの視点で再構築した12インチ。〈Emotional Rescue〉の15周年企画として制作され、原曲が持つ民族音楽的な質感やポスト・インダストリアルのざらつきが、低域のうねりやエコー処理によって新しい輪郭を与えられ、電子ダブ、アンビエント・ダブ、ステッパーズなど、各プロデューサーの個性がはっきりと表れている。空間処理の細かさが際立ち、倍音の散らばり方や残響の伸びが曲ごとに異なるため、部屋でじっくりと聴いても楽しめる内容。Vox Populi!のアヴァンギャルド性を保ちながら、現代ダブの感覚で未来へと翻訳したような一枚。
