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植物の成長をテーマにした人気シリーズMusic To Watch Seeds Grow Byの第10作目。KiF Productionsによる本作『Music To Watch Seeds Grow By 010: Passiflora』は、トケイソウの種子の休眠から発芽、光への伸長、開花、受粉、結実、そして土へ還るまでのライフサイクルを音のレイヤーで丁寧に描いたアンビエント、サウンドコラージュ作品。フィールド録音、柔らかなシンセ、木管、チャイム、民族的な声、短波ノイズなど多様な素材が静かに重なり、自然物の時間軸で進むような音響環境をつくり出している。音は急がず、ゆっくりと形を変えながら進み、微細な変化が積み重なることで成長が音として立ち上がるようで、鳥の声や風の気配が電子音と有機的に溶け合い、コラージュの多層性が作品に奥行きを与える。劇的な展開ではなく、静かな変化を見守るような聴き心地が特徴で、シリーズの中でも特に完成度の高い一本。

人気作リプレスです!韓国・ソウルを拠点に活動するデュオSalamandaが、植物にまつわる大人気シリーズMusic To Watch Seeds Grow Byに登場。第8弾となる本作は窓辺のバジルの一日を描いた、ミニマルで親密なアンビエント。水滴の落ちる音、時計の針のような反復、植物のゆっくりとした脈動を思わせるビート。Salamanda特有の柔らかい電子音と、生活の延長にあるような小さな音の粒子が重なり、光合成や吸水のスピードに同期したような、独自のタイムレスな感覚が光る。Salamandaの二人が実際に自宅で育てているバジルから着想を得たという背景もあってか、バジルの周囲で起こる小さな出来事を音で描写しつつ、「バジルは自分が食べられる運命を知っているのか?」という哲学的な問いも作品の奥に潜み、穏やかで可愛らしいだけでなく、どこかファンタジーと深い思索が同居する奥深い魅力も併せ持っている。単なるBGMとしてのアンビエントではない、つい忘れてしまう、植物という隣人との静かな対話ともいうべき一本。今回も種、付いてます。

植物の成長や生態系の営みをテーマにしたシリーズ『Music To Watch Seeds Grow By』の第9作目にPatricia Wolfが登場。2024年夏にロッキーマウンテン生物研究所で行われたアーティスト・イン・レジデンスを起点に、植物生態学者との共同調査やフィールド録音を取り入れながら、植物の生命プロセスを音で描いたコンセプト作。柔らかいシンセの層がゆっくり広がり、風や土の湿り気を思わせる微細なフィールド録音が静かに寄り添う。音の成長が聴こえるような構造で、ひとつのモチーフが少しずつ膨らみ、新しい層が自然に加わる。静けさの中に有機的な動きがあり、植物の生命を音で観察するような、静かで有機的なアンビエント作。B面には、現地で録音したフィールド録音に加え、インスピレーション源となった生態学者Paul CaraDonna博士によるガイド付きメディテーションを収録し、自然の営みに耳を澄ませる。

コロンビアのアーティストEzmeraldaによる、ラテンアメリカのアンビエント感覚と北欧のレーベル〈Blundar〉の電子音響美学が交差するカセット作品『Untitled』。伝統的クンビアのリズムを直接引用するのではなく、その空気だけを抽象化して音のテクスチャに溶かし込むスタイルで、音は水彩画のように境界が曖昧で、柔らかく発光するシンセの奥で細かな粒子が漂う。反復は機械的ではなく、手触りのあるループとして響き、時間がゆっくり折り重なるような感覚を生む。ラテン的な温度感は控えめながら、色彩や湿度感として作品全体に残り、アンビエントの静けさと人間的な温度が自然に共存している。風景としての電子音ともいうべきもので、静かに広がるテクスチャが心地よい一本。

LAアンダーグラウンドを長年支えてきたラッパーOpen Mike Eagleと、billy woodsやR.A.P. Ferreira作品で知られるプロデューサーKenny Segal。20年来の盟友である二人が、ついに完成させた完全な共同フルアルバム『DOOMED!: Rap Songs About A Relationship That Ends In Every Possible Universe』。Mikeの私生活で起きた長期的関係の破局をきっかけに制作。ジャズの断片、ソウルのメロウな気配、壊れたシンセ、乾いたドラムが変幻自在に混ざり合う、曲ごとに別の世界線へ飛ばされるような、圧倒的にユニークSegalのビートに、一方のMike は、ぼそっとした語り口、鋭い観察、ユーモアと痛みの混ざったラインで、日記とスタンダップコメディの中間のようなラップを展開。重いテーマを扱いながらも、どこか軽やかで、笑えるのに刺さるという彼の真骨頂が詰まっている。ゲストにはHemlock Ernst、billy woods、Gothic Tropicらが参加。それぞれが異なる宇宙のキャラクターのように登場し、アルバムのマルチバース的世界観をさらに広げている。
庭園の黄昏 - Every Dog Has His Day」「睡眠の計画 - Plan For Sleep」に続く、初期ダムタイプ音楽作品復刻プロジェクト第3弾。 本作は、1987年に兵庫県尼崎市・つかしんホールで開催された、ダムタイプ初の大規模展覧会『Suspense and Romance』の会期中に、展示会場で行われたライヴ・パフォーマンスの音源を収録したカセットテープ作品です。
山中透がダムタイプとして初めて全楽曲の作曲・制作を手がけた本作は、サックス奏者・ハリー切手氏とのコラボレーションから生まれた音楽プロジェクトを記録しています。 “サスペンスとロマンス”というテーマのもと、ジャズやシネマティックな叙情性と、ポスト・ミニマル以降の冷たく抽象的な音響が交錯する、山中らしいコンポジションに、切手氏による印象的なサックスのフレーズ、シーケンサーやサンプラー、PCM録音を用いた音作りが重なり、その後の「S/N」まで続くダムタイプ・サウンドを象徴する音響イメージが、この時期にすでに形成されていることに気づくでしょう。
さらに、当時の貴重な写真やドローイング、メンバーによる座談会を収録した、50ページ超のブックレットが付属。カセットブック仕様でのリリースとなります。 本ブックレットは、初期ダムタイプ・メンバーらによる「Early Dumb Type Archive Project」の主導のもと制作されたもので、初期ダムタイプの活動を多角的に捉える貴重な資料となっています。
カセットブック(箱入り)
カセットテープ:全10曲・48分収録 DLコード付
ブックレット:50ページ超(写真・ドローイング・小山田徹×高谷史郎×穂積幸弘 座談会ほか収録)
現代イタリアのアンダーグラウンド・シーンから現れた、ナポリ出身の音楽家 Lucia Sole によるプロジェクト La Festa Delle Rane(カエルたちの祝祭) の新作カセット・テープを、英国の All Night Flight と共同でリリースします。
Luciaの音楽は、日常の中を通り過ぎていく断片的な風景をそっとすくい取るようにして綴られ、いつか見た夢の記憶を呼び起こすような、子どもの視点から覗いたような不思議な郷愁に満ちています。
メロディカ、アコースティック・ギター、笛などによるシンプルな楽器構成が生み出す静かな親密さと、太鼓や管楽器が加わることで広がっていく万華鏡のような即興性が共存しています。
少女のように無垢な歌声、ささやくようなグロッケンシュピール、歪んだオルガンが空気に残す音の波紋は、ローファイな録音のなかで捉えられており、空間の気配や微かな息づかいまでがそのまま音に封じ込められています。
〈Ultraääni Records〉より、DJ Vera Righteousによるルーツレゲエ、ダブのミックステープ。本作はタイトル通り、A面がLOVE、B面がWARという明確なテーマで構成、A面には、ラヴァーズロックやスウィートなルーツを中心に、柔らかいメロディとソウルフルな歌声が続き、Sugar MinottやJennifer Laraのような温かい質感の楽曲が滑らかにつながる。一方で B面では、Horace AndyやYami Boloなど、社会性やスピリチュアル性の強いルーツ、ダブが並び、重いベースラインと深いエコーが聴かれる。甘く肉感的な「LOVE」と、シリアスでスピリチュアルな「WAR」という、レゲエ、ダブカルチャーが持つ二面性を対照的に配置しながらも一本の物語として流れる構成力が光る。レーベルのカタログの中でも特に人気が高く、初出時は即完売した幻の一本として知られる、小さくも濃密なミックステープ。
徹底したアヒンサーを提唱実践、「ノイズ」の枠を超越したオルタナティヴな表現を試み続けるジャパノイズ伝説、Merzbowこと秋田昌美による新作カセット。2026年イタリア公演の為に発表された記念リリースで、限定199本ナンバリング入り。
アンナ・バターズ(ベース)、ジェレマイア・チウ(シンセサイザー)、ジョシュ・ジョンソン(サックス)、ブッカー・スタードラム(ドラム)、グレゴリー・ユールマン(ギター)によるロサンゼルス拠点のクインテット、SMLが最新作『Spontaneous Music Live』をリリース!
本作は、編集されていない即興演奏による長尺の2曲で構成されており、2025年12月にロサンゼルスの会場Zebulonで行われたバンドの3夜にわたるレジデンシー公演中にライブ録音されたものである。これは、バンドのセカンドアルバム『HOW YOU BEEN』のリリースからわずか数週間後のセッションだった。録音とミックスは、ジェフ・パーカー・ETAカルテットの美しいライブ記録でも知られるエンジニア/“魔術師”ブライス・ゴンザレスによって、ステレオ・アナログテープにライブで収められている。
『HOW YOU BEEN』と2024年のデビュー作『SMALL MEDIUM LARGE』(いずれも大幅にエディットされ、ポストプロダクションが施されている)を通じて、SMLは緻密に構築されたサウンドで評価を確立してきた。そこではメディアとしての“編集”そのものが前面に出ており、最も美味しい断片が選び抜かれ、編集されることで作品が構築されている。
しかし、これら2枚のアルバムの元となった素材はすべてライブ録音であり、長く、荒々しいグルーヴを持ってうねりながら展開する即興演奏だった。さらに重要なのは、バンドのこれまでのすべての公演が、その精神に基づいた完全な即興で行われているという点である。
この二重性は、彼らの思想的な近親者とも言えるアーティストたちにも見られる。たとえば、カンの『Live in Paris 1973』における長大で奔放な演奏と、同年のよりコンパクトな『Future Days』。あるいはマイルス・デイヴィスの『Dark Magus』におけるスピード感あるファンクの混沌と、『On The Corner』や『Big Fun』に見られる徹底的に解体された構築性などがその例である。
『Spontaneous Music Live』は、こうしたキュレーション的な視点を取り払い、編集プロセスの幕を引き剥がす作品である。そこに残るのは、ロサンゼルスという土地において、その瞬間に存在し、集合的に即興演奏を行うバンドのサイケデリックなリアリズムである。完全にその場にいる状態で、発見の瞬間を掘り出していく音楽だ。そこでは音の一つ一つが、将来のSMLの楽曲になりうる断片として、集合的な混沌と統制のあいだに星のように散りばめられている。

ロサンゼルス拠点のアーティスト Olive Ardizoni によるプロジェクト Green-House の、自然と人間のあいだに広がる境界の風景を音で描き出すようなアンビエント作品『Hinterlands』。柔らかなシンセのレイヤー、風や水の気配を思わせるフィールドレコーディング、そしてミニマルで有機的なフレーズが溶け合い、耳を澄ませば、静かな自然界の呼吸がゆっくりと広がっていく。「Hinterlands(辺境)」というタイトルの通り、電子音と自然音がほどよく混ざり合う様は、どこか現実と非現実のあいだにいるよう。植物音楽や環境音楽の系譜に連なりながらも、Green-House ならではの温かさと優しいユーモアが息づく一本。

9月上旬再入荷。チカーノ文化やオールディーズ、ソウル・ミュージックから大きな影響を受けてきたというカリフォルニア州ホーソーン出身のモダン・ソウル・バンド、Thee Heart Tonesによる期待のデビュー・アルバムが〈Big Crown Records〉からアナログ・リリース。ヘビーデューティーなB面バラード"Cry My Tears Away"や"It's Time"、ノーザン・ソウル風のトラックで淡々と記録を打ち立てる"Need Something More"など、リードシンガーのJazmine Alvaradoによる紛れもない歌声に彩られた珠玉の傑作!

〈Jahtari〉の中心人物Disruptが、レーベルのゲーム音楽的ルーツとダブの美学を61分にまとめ上げたミックステープ『Secret Level mixtape』。particle.fmのラジオ番組 Secret Level用に制作されたミックスをベースに、未発表デモ、Game Boyリワーク、ライブ用のダビーな素材、そしてJahtariのクラシック曲を再編集した内容で、レーベルの裏側を覗くような構成。ピコピコした電子音やメロディが、深いエコーやテープディレイと重なり、レトロゲームの世界観がダブ処理によって拡張されていくような音像。軽やかなチップチューン的リズムと、Jahtariらしい重心の低いベースが自然に共存し、ノスタルジーとクラブ感が同時に立ち上がる。フェーダーやエコーなど、ライブ的な手触りがミックス全体を動かし、ゲーム音楽の記憶をダブで再構築するJahtari の美学がストレートに表れている。8bitとダブのハイブリッドを濃厚に体験できる、レーベルの魅力を凝縮したミックステープ。
NYはブルックリンのレジェンダリーなヒップホップ・ユニット、ブラック・ムーンが1993年にリリースしたヒップホップ史に残る名盤であり、“Who Got Da Props?”や“How Many MC's...”、“I Got Cha Opin”等々の名曲を生んだ説明不要のヒップホップ・クラシックなアルバム『Enta Da Stage』が完全限定生産のカセットで復刻! オリジナルにボーナストラックを追加した全16曲を収録!
バックショットとファイヴ・フットの2MC+プロデューサー・チーム、ビートマイナーズのイヴィル・ディーからなる3人組=NY・ブルックリン出身のブラック・ムーンが93年にリリースしたファースト・アルバムにして問答無用のクラシック『Enta Da Stage』が完全限定生産のカセットで復刻!
NYのNervous Recordsが新設したヒップホップ・専門レーベル=Wreck Records第1弾アーティストとして鮮烈なデビューを飾ったブラック・ムーン。“Who Got The Props?”、“Buck‘ Em Down”、“How Many MC’s”などを筆頭に、バックショットのハードなフロウと、ビートマイナーズのイヴィル・ディー&MR.ウォルトによるラフで黒光りした重低音が腹の奥底に突き刺さる! リリース当時のオリジナルCD/カセットの全14曲に2曲のボーナス・トラックを追加した全16曲収録のファン垂涎なブツ!
★初回完全限定生産 ★歌詞カード付き
なんと佐井好子の名作『胎児の夢』が、1977年ひっそりとカセットでも発売されていた! 知る人ぞ知るコレクターズ・アイテムがめでたくオリジナル仕様のカセットでリイシュー!
1枚目に続き大野雄二がアレンジャーとして参加し、より音楽的要素を支えた夢野久作的怪奇性極まる佐井ワールド。タイトルの「胎児」が示すようにより内なる精神世界への旅。佐井好子弱冠24歳、詩人で画家で歌手としての孤高なる存在。ジャケットはCD/LPと異なる本人のイラストを仕様。知る人ぞ知る正にコレクターズ・アイテム、ファンは必携の一本です!

鍵盤奏者/プロデューサーMarco Beneventoによる、ジャズを軸にしながら、イタリア映画音楽、レゲエのローエンド、サイケポップ、ドリームポップまでを軽やかに横断するシネマティック・ジャズアルバム『Glera』が〈Big Crown Records〉より登場。3年にわたり書き溜めた個人的なスケッチを発展させた作品で、スタジオを楽器として扱うというプロデューサー的視点がより明確に結実しており、曲ごとに異なる場面が立ち上がる映画的構成が魅力的。ホーン、ハープ、環境音、声の断片が緻密にレイヤーされ、音の質感そのものが物語を運んでいく。祝祭感と哀愁が交互に押し寄せる情緒の振れ幅、ジャズの即興性とソウル/レゲエの重心の低いグルーヴの共存。Beneventoのキャリアの中でも最もカラフルで、ジャズ、ソウル、ビートミュージック、サイケの境界を越えて楽しめる注目作。

東京拠点のプロデューサーRGLが、自身の音楽性のもう一つの側面を提示したカセット作品『Untitled』。ローファイ・ハウスやアナログ質感のダンス・トラックで知られる彼だが、本作ではビートのあるトラックと抽象的なアンビエント、ドローン が同じ地平で並ぶ。全8曲は、アナログ的なざらつきや微細なノイズが空気の中に漂うような、質感そのものを聴かせる構造が中心。ビートのある曲では、ローファイ・ハウスの温度感を保ちながらも輪郭が柔らかく、深夜の街を歩くような静かなグルーヴが続く。一方で「IV〜VI」ではビートが消え、音の粒子がゆっくりと浮遊する。都市の夜、遠くのネオンの光、そんな情景が自然と浮かぶような、RGLの質感への鋭い感覚を味わえる一本。

ポストハードコア・バンドthe north endのメンバーとしても知られる、東京を拠点に活動するアーティストFeLidによる、ギターの偶発性とアンビエント、ダブの音響処理を組み合わせたソロ名義2作目となるカセット作品『Magic Hour』。即興的に鳴らされるギターのフレーズが柔らかく揺れ、夕暮れの光がゆっくり変化していくような色彩感を帯びて進む。アンビエントの静けさ、ダブの空間処理、そして、細やかな編集による透明感が重なり、都市の片隅で立ち止まったときにふと立ち現れる、どこでもない世界を思わせる音像が広がる。

kishun が描き出す、古い世界の残響をテーマにした実験音響作品『古界|Kokai』。カセットテープ特有のざらつきや揺れを積極的に取り込みながら、環境音、ドローン、ミニマルな旋律、ノイズの粒子がゆっくりと重なり合い、まるで朽ちかけた神殿や、忘れられた土地を歩いているような感覚を生む。雅楽のような空気もあり、現代の音楽というより、どこかでずっと鳴り続けていた祈りのような響きを帯びており、大きな展開はなく、微細な変化がゆっくりと浮かび上がる構造で、耳を澄ませるほど奥行きが広がっていく。アンビエント、ドローン、実験音響の境界を漂いながら、静かでありながら濃密な世界観を持つ一本。
Hyotan Namazによる解説
kishunは雅楽の笙奏者石川高(*1)と、楽琵琶奏者の中村かほる(*2)によるユニット。笙と琵琶のみというミニマルな編成で、「旋律のない雅楽」に潜む響きを引き出すコンセプトで2015年から活動している。
雅楽は千数百年の歴史をもつ日本の伝統音楽で、もともと日本で古来より伝えられてきた歌や舞、5世紀から9世紀にかけて朝鮮半島や中国大陸から渡来した舞や器楽などを、平安時代の貴族がまとめ直したものが現代に伝わっている。大陸由来のものも、日本に定着する過程で、アレンジ・再編成されており、現在伝わる雅楽はどこの国のものとも異なる日本固有のものである。平安時代にはほぼ現在に近い形が整っていたと見られる。宮中で保護・演奏されてきた宮廷音楽としての顔に加え、寺社での法要・祭礼などでも演奏される宗教音楽としての顔も有する。そのような経緯から、貴族や楽人と呼ばれるプロの音楽家などの間で庶民の感性・嗜好から離れた形で伝承されてきており、楽器も舞も、日本の他の伝統音楽とは異なった特徴を多く有する。
雅楽の種目は、大陸から渡来した舞を含む「舞楽」、器楽の合奏である「管絃」、日本古来の歌や舞である「国風歌舞(くにぶりのうたまい)」、平安時代の声楽である「歌物」の四つに大別されるが、この中で、「管絃」は、日本の伝統音楽のなかで楽器のみのオーケストラとして体系化されているきわめてまれな形態といってよく、声楽が中心で、器楽合奏は、小規模編成か、演劇・舞踏の伴奏に用いられることが一般的な日本において異色の存在といえる。
「管絃」で使われる楽器は、三管両絃三鼓といわれ、管楽器(三管)では、笙、篳篥、龍笛、絃楽器(両絃)では琵琶、箏、打楽器(三鼓)では鞨鼓(かっこ)、太鼓、鉦鼓(しょうこ)となっている。旋律を担当するのは篳篥(ひちりき)、龍笛で笙は和音でそれらを包み込むのが主な役割、絃楽器はリズムに縁取りを与えるのが役割である。kishunはこの中の笙、琵琶のみで古典曲の演奏や即興を行っている。
笙は17本の長さ・音高の異なる竹管を束ね、下部に金属製のリードをつけたフリーリード楽器である。伝統的奏法ではタンギングは持ちいられず、息遣いによりフレーズを形成する。各管の音は大きくはなく、合奏における役割は、合竹(あいたけ)と呼ばれる持続和音を演奏することで、旋律を色付けし、モードの重心を示すことである。
一方、楽琵琶はリュート属の楽器で、現在使われているものは4絃4柱(4つのフレット)で、撥を使って弾く。背面は平坦で胴体は浅い。音の特徴として、弾いた瞬間は力強いが音の減衰が早く残響がほとんどない。その為、琵琶の役割は和音的というよりはリズム的である。
kishunは雅楽の管絃のなかで旋律を担当する楽器を含めず、合竹による音の場を作る笙と、リズムの縁取りを行う琵琶に絞ることで、旋律の奥に潜んでいた響きを引き出そうとするところに実験性がある。熟練の2名の技巧により、その狙いは十分に果たされ、伝統的な編成の雅楽では無意識のうちに覆い隠されていた響きは、前景に立ち現れ、斬新な姿で聴くものに語りかけてくるのである。
(*1)石川高 宮田まゆみ、豊英秋、芝祐靖に師事。雅楽の笙と歌謡を学ぶ。1990年より演奏活動を開始。雅楽団体「伶楽舎」に所属し、雅楽古典曲や現代曲の演奏を行うかたわら、独奏者としても活動。坂本龍一、Evan Parkerなど多くのアーティストのプロジェクトにも参加してきた。即興演奏にも積極的。
(*2)中村かほる 大学在学中、世界最古の琵琶譜「番假崇」(芝祐靖氏復曲)の演奏に出会い雅楽を学ぶ。龍笛を芝祐靖、楽琵琶・右舞を山田清彦に師事。「伶楽舎」所属。1990年より演奏活動を行い、国内外の音楽祭やソロでも活躍。廃絶された古典曲の復元にも取り組む。

ラッパー、プロデューサーのIDKことJason Millsによる最新ミックスLP『Even The Devil Smiles』。自身の過去の収監経験や、早期釈放という人生の転機を背景に、生存・変容・裏切り・精神的葛藤・回復を描くもので、ハードなビートと内省的なリリックを融合。MadlibやNo I.D.といった大物プロデューサーとのコラボで、クラシックなヒップホップの質感と現代的なサウンドを併せ持っている。IDKが自身の過去と精神的葛藤を真正面から描いた個人的で内省的なヒップホップ作品。

1982年に発表された、ワシントンD.C.の伝説的ハードコア・バンド Bad Brains の衝撃的デビュー・アルバム。シーン全体を揺さぶった金字塔。目も眩むほど速いテンポと鋭いリフで突っ走るハードコア・チューンと、突然テンションを落としてじっくり聴かせるルーツ・レゲエ・ナンバーが共存するのが最大の特徴で、この極端さこそBad Brainsのオリジナリティで、当時のどのパンク・バンドとも違う個性を打ち出している。演奏力の高さも群を抜いていて、HRのソウルフルでアジテーティブなヴォーカル、Dr. Knowの爆発的なギターリフ、Darryl Jeniferのタイトなベース、Earl Hudsonのジャズ畑出身らしい柔軟なドラムが合わさって、とにかく生々しい迫力に溢れている。ハードコア・パンクはもちろん、スラッシュ・メタル、オルタナティヴ、さらにはレゲエやクロスオーバーの領域にまで影響を与えている、まさにハードコアの教科書であり、ブラック・ロックの歴史を変えた一枚。

9月中旬再入荷。フォーキー・サイケデリックバンド、ERIC'S TRIPのベーシストとしてカナダ音楽のアンダーグラウンドの寵児として知られるようになったカナダ・モンクトン出身のSSW、Julie Doironのソロ2作目として1997年に<Sub Pop>からリリースされた『Loneliest In The Morning』がこのたび大名門<Numero>からリイシュー!!繊細なギターの弾き語りをベースに、ドラムやエレキギターによる最小限のアレンジの上に歌われる静かに囁くような声。シンプルかつダークなサウンドはによる本作は、彼女の内省的で美しいヴォーカルとソングライティングの良さを際立たせており、ソフト・グランジの元祖、90年代のサッド・ガールとも呼ばれる彼女のキャリアにおける重要な一枚!

