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ボグダン・ラチンスキーからデニス・ボーヴェル、Phewに至るまで、良質なカルト音源を世に送り出してきた〈Warp〉傘下の〈Disciples〉より、中古市場では全てのカタログがプレミア化しているケニアの知られざるローカル・ヒーロー、故ジョセフ・カマルの編集盤が発売!
収録された17曲は、ハイライフ風のギターを用いた活気あふれるダンスフロア向けのチャントから、アフロ・ファンク、ドラムマシンやキーボードを駆使したディスコ・グルーヴ、フォーク調の哀歌に至るまで幅広い。音楽は生々しく、直接的で、踊れるだけでなく、心に残るフックに満ちている。鋭い歌詞はプロテストソングから恋愛指南にまで及ぶ。カマルは母国においては大物政治家から都市部・農村部の労働者階級に至るまで幅広い層とつながりを持っていた。その音楽は、もっと広い層の聴衆に届くべきものであり、近年クルアンビンを筆頭に盛り上がりを見せるオリエンタル・ファンクの源流をも感じさせる。
ジョセフ・カマルは2018年に惜しくも逝去した。しかしその後、彼のアーカイブは孫であるサウンドアーティストのKMRUによって掘り起こされた。古いカセットを何十本もデジタル化し、このユニークで素晴らしい音楽に特化したBandcampページを立ち上げ、現在までにおよそ50作品をアップロードしている。〈Disciples〉はこのプロジェクトを通して示された音楽の広がりと鮮烈さに強く惹かれ、KMRUに連絡を取り、この作品をさらに文脈化する方法について協力を始めた。そこから長い書簡のやりとりを重ね、収録曲や曲順などを話し合い、最終的にこの愛情を込めたコンピレーションが完成した。収録曲は、KMRUによるオリジナルのテープ転送を基に、ベルリンのDubplates & Masteringにて丁寧にリマスタリングされている。スリーブは、カマル家のアーカイブ資料を使用し、Karolina Kolodziejがデザインを担当。ライナーノーツには、ケニアの学者Maina wa Mutonya、音楽ジャーナリストMegan Iacobini de Fazio、そしてKMRU自身によるエッセイが収められている。レーベルとカマル家は、この作品のリリースを通じて、このケニア音楽界の象徴的人物に対する認知とリスナー層の拡大を願っている。
ジョセフ・カマルについて
ジョセフ・カマル(1939 - 2018)は、アフリカの外ではほとんど知られていないが、1967年以来、母国ケニアの音楽シーンに多大な影響を与えてきた人物である。初期のヒット曲「Celina」と「Thina wa Kamaru」は、妹とともに録音したリズミカルなダンス曲であり、これがカマルをケニアでもっとも有名なベンガとゴスペルの音楽家の一人へと押し上げる礎となった。彼は母語であるキクユ語で多くの歌を歌い、政治活動家であり国民的アイコンでもあった。推定50万枚のレコードを売り上げた彼の音楽は、人生の教訓、政治、社会問題を幅広く取り上げていた。
カマルは1939年、ムランガ地区のカンゲマに生まれた。1957年にナイロビへ移り、清掃の仕事に就く。最初の正式な職は家政夫兼ベビーシッターで、その稼ぎで最初のギターを購入した。1965年に音楽活動を始め、1967年に商業的なブレイクを果たす。彼の音楽キャリアの最盛期は1975年から1985年で、カセットを数多くリリースし、その内容はキクユの民謡を題材としたものだった。1980年代後半には、当時外国人アーティストしか出演しなかったカーニボア・レストランで演奏した初のケニア人アーティストとなった。
彼の多くの曲は政治的で、政府を称賛するものもあれば批判するものもあった。当初は大統領ジョモ・ケニヤッタと良好な関係にあったが、1975年にジョサイア・ムワンギ・カリウキの暗殺を非難する曲を書いたことで対立。その後、ケニヤッタの死後に大統領となったダニエル・アラップ・モイとは親しい関係を築き、1980年にはモイ大統領の随行として日本ツアーに同行した。しかし後に、カマルが多党制民主主義を支持したことでモイの不興を買った。
カマルはVoice of Kenyaのラジオ司会者Job Isaac Mwamtoから大きな支援を受け、彼の音楽は広く紹介された。そのため「ケニアのジム・リーヴス」と呼ばれることもあった。彼は道徳や人生の教訓を扱った約2,000曲を録音し、キクユ音楽の伝説としての地位を確立、東アフリカの音楽シーンに大きな影響を与えた。
1990年代に入り、カマルは「新生」したと宣言し、長年の世俗音楽の演奏をやめることを発表(ただし後年、世俗曲を歌うこともあった)。1993年にはゴスペル音楽に転向し、旧来のグループ「Kamaru Super Sounds」を解散した。この変化は売上に打撃を与えた。彼はかつてケニア・レコード産業協会(KAPI)の会長を務め、ナイロビで教会ミニストリーを主宰、さらにレコード店を2軒経営していた。また、自身の農場にキクユ文化を保存・保護する文化施設を建設することを望んでいたが、2018年10月に亡くなるまでに実現することはなかった。彼は2人の兄弟姉妹、1人の娘、3人の息子を残して世を去った。孫であり同名のジョセフ・カマル、すなわちKMRUは現在ベルリンを拠点に活動する音楽家・サウンドアーティストである。

武満徹『秋庭歌一具』の演奏でも知られる、雅楽の合奏研究と演奏を目的に1985年に芝祐靖によって創設された、日本を代表する雅楽演奏団体、伶楽舎による雅楽の伝統と現代性を融合した『雅楽組曲』。古代から伝わる古典雅楽と、現代の作曲家が雅楽の楽器群のために書いた現代雅楽の両方を含む楽曲を組曲形式で再構成、2001年の録音ながら、空間的なマイク配置と残響処理により、アンビエント的な深さと広がりが生まれている。笙 (しょう)、篳篥 (ひちりき)、龍笛 (りゅうてき)といった伝統的な雅楽器が奏でる永遠の息吹と、その間(ま)と独特の倍音構造が、強い印象を残す。〈Black Sweat Records〉からのリリースということもあり、雅楽の持つ静謐でありながら強烈な内面的な力を持つ響きを再文脈化する重要な再発。日本の重要かつ稀有な音楽である雅楽を現代の耳と感性に届けるための翻訳と再創造ともいうべき一枚。

ジャズとモンゴルのフォークのユニークなブレンドは、ワシントン・ポスト紙にも「彼女の曲は非常に創造的で自由でありながら、しっかりと地に足をつけている」と評価され、現代ジャズの最も興味深い声の一つとされるモンゴル生まれでミュンヘンを拠点に活動するシンガー・ソングライター、Enjiの4thアルバム『Sonor』が<squama recordings="">よりリリース!自身の多重的なアイデンティティのように、夕暮れ時のほんの一瞬、空が鮮やかな琥珀色に染まる。ドラマチックな色彩の閃光、昼と夜の両方に属する瞬間に生まれてくるような、鮮やかで儚くてしかし生命力に溢れた夢のような歌声が、優しいピアノと重みのあるコントラバスにのって響き渡る傑作!Elias Stemeseder(p)、Robert Landfermann(cb)、Julian Sartorius (ds)、そして前2作でもお馴染みの共同作曲者でもあるPaul Brandle (g)ら世界的に名高いジャズ・アーティストをバンドに迎え、ジャズ・スタンダード「Old Folks」を除く全曲をモンゴル語にて歌われています。
坂本龍一とのコラボレーション、「Jiko (時光)」(2020年)でも知られる尺八奏者、工藤煉山による禅心を背景にした伝統本曲の再解釈と即興演奏のうち、長尺のものを収めた作品。神奈川県箱根で収録され、自然音や残響を取り込みながら、尺八の呼吸と空間を最大限に活かした音作り。アルバムタイトル「Noneness」は「無」「空」を意味し、個人的な精神修養と自然との対話の痕跡が刻まれている。クレジットには坂本龍一や鎌倉は円覚寺管長、横田南嶺への謝辞が記されており、また横田南嶺によるコメントも付記されている。エスノ、ジャズ、アンビエントの境界を越え、精神的・文化的な広がりを持つ作品。
坂本龍一とのコラボレーション、「Jiko (時光)」(2020年)でも知られる尺八奏者、工藤煉山による禅心を背景にした、短編的な楽曲群を収めた作品。長尺のものが収められた『Noneness』に対して本作収録の各曲は2〜5分程度で、短い中に強い集中力と精神性を込めている。尺八の呼吸音や倍音を活かしつつ、アンビエント的な空間処理を加え、尺八の本来持つ音世界に根ざしながら、現代的な響きも感じられる。クレジットには坂本龍一、原摩利彦、宮崎紗子、国際禅カンファレンス「Zen2.0」への謝辞が記されており、音楽と禅、環境活動、哲学的探求へと結びつく、広がりを持つ作品。


ファンクでエリートと戦ったナイジェリアの双子による、ソウルフルでサイケデリック、フェミニストで革命的な音楽!ナイジェリアの国家独立と文化的黄金時代の始まりに音楽活動を行い、1970年代に五枚の重要なアルバムをリリースした数少ない女性主導のグループであり、一卵性双生児の姉妹であるYeye Taiwo LijaduとKehinde LijaduからなるThe Lijadu Sistersの画期的な1979年のアルバム『Horizon Unlimited』が、US名門〈Numero Group〉からリマスタリング仕様でアナログ再発。不滅のヒット曲"Come On Home"を生み出した伝説的な作品にして、彼女たちのハーモニーに満ちた歌声、先駆的なサウンド、先駆的なヴィジョンによる独特のパワフルなエネルギーが詰め込まれた、ソウルフルで影響力のある大傑作アフロビート・アルバム!

エジプト・カイロ在住のMaurice Louca、Sam Shalabi、Alan BishopによるトリオThe Dwarfs of East Agouzaの2025年作『Sasquatch Landslide』が〈Constellation Records〉より登場。フリージャズ、クラウトロック、エジプトの伝統音楽シャービー、ノイズ、北アフリカのリズムなどが融合した、即興性とトランスシーなグルーヴを特徴とする、エジプトの地下音楽シーンを代表する彼らのアルバムは、濃厚で不思議な音の洪水に身を委ねるような、刺激的なサイケデリック・ミュージック。彼らの音像は、霧がかった、ぼやけたような印象を与えるが、ぼやけているのはディテールの欠如ではなく、むしろ細部が横に広がって光の群れが舞うような感覚で、テンポやビートはずれたり跳ねたりしながら、オルガンやギター、サックスがゆるやかに絡み合う。明確な中心もなく、全てが滑らかにスライドしつつ、全ての音はどこか中途半端な位置で立ち現れる。こうした音のずれや遊びが作品全体に独特の浮遊感や不安定さをもたらしている。エクスタシーを超えた陶酔感とでもいうべき、サイケデリックな音の世界が広がる。時間や空間の感覚が解き放たれていくような鮮烈な一枚!!
2月上旬入荷予定。かつてギリシャやアナトリアの都市に存在した、人々が集まって酒を飲みながら、哀歌や即興歌を聴く場カフェ・アマン。1911〜1935年に録音されたカフェ・アマン文化に基づく哀歌を集めたコンピレーション『Aman Aman – Greek-Anatolian Laments』が〈Mississippi Records〉から登場。ヴァイオリン、ハンマーダルシマー、ギター、ウードなど地中海の伝統楽器が伴奏し、歌の中で繰り返される「Aman Aman」という叫びは、文字通りの意味としては「慈悲」「助け」を意味するが、絶望・喜び・苦悩など多様な感情を同時に表す。移民や難民のコミュニティで広まった、都市下層の人々の感情や生活に根ざした音楽文化で、後にギリシャの都市音楽「リベティコ」へと発展する源流。Jordan McLeodによるリマスター、Stavros Kourousisによる詳細な歴史・ディスコグラフィー解説、Tony Kleinによる歌詞の詩的翻訳も収録。

若干19歳のポルトガルのプロデューサー Helviofox がバチーダの伝統を現代的に再構築したデビューEP『Rodeado de Batida』を〈Príncipe〉からリリース。バチーダはアフリカ系移民文化に根ざしたリズム音楽で、それを背景として、生き生きとしたベースラインと力強いグルーヴ、正確なタイミングとテンポ感、ダンスフロア直結のアレンジメントを加えている。リスボンのアンダーグラウンド・クラブシーンの新世代を代表するHelviofoxによる、永遠に存在していたかのようなバチーダのルーツを尊重しつつ、現代的なクラブ・サウンドへの拡張を試みた一枚。

エジプト・エルミニア出身のアウトサイダー音楽家Abosaharが独自に築き上げた「トロビー・ミュージック」を集約した作品『Raasny』。トロビー・ミュージックは「True Being」の略で、シャアビーを基盤にハウス、テクノ、トラップ、ポップを混在させた荒削りなコラージュ音楽で、壊れた機材やクラックされたソフトウェアを駆使し、即興的に音響を生み出す。結婚式の熱狂、街角の埃っぽさ、カイロのネオンクラブの空気を同時に感じさせる生々しい雰囲気。宗教的儀式・家族の結びつき・音楽と踊り・豪華な贈り物が組み合わさった壮大なイベントであるエジプトの結婚式文化とストリートの熱気をそのまま封じ込めた一作。

フリー・ジャズの先駆者であり、1970年代以降は世界各地の民族音楽を取り入れたコスモポリタン・ジャズを展開したDon Cherryが、タブラの名手であり、複雑なポリリズムとシンコペーションを駆使する演奏スタイルで知られるLatif Ahmed Khanによるジャズとインド古典音楽が融合した1978年録音の幻のセッション『Music / Sangam』が、最新リマスターで再発。即興的でありながら緻密なリズムと旋律が交錯するタブラとトランペットの対話、Don Cherryの多楽器奏者としての側面も反映したアーシーなキーボードやフルート、1970年代パリのスピリチュアルな雰囲気が漂う、プリミティヴかつ瞑想的な録音の空気感が際立つ、Don Cherryのワールド・ジャズ探求の中でも最も過小評価されていた作品のひとつであり、ジャズとインド音楽の融合の歴史的記録としても貴重な一枚。

ウガンダの首都カンパラを拠点とし、現代アフリカのリアルを全世界に発信する気鋭のレーベル〈Nyege Nyege Tapes〉より、西ウガンダのバニャンコレ族とバホロロ族に伝わる、長く長く続く牧畜文化に根ざした独特の歌唱スタイルを鮮やかに掘り下げた録音が到着。幼少期に家を飛び出し、地域の伝統歌に身を投じてきたKatokyeは、牧場を渡り歩きながら何十年もかけて自らの表現を磨き上げてきた。今や60歳を目前に、彼は地元で最も優れた伝統歌手のひとりとされている。アルバムの中心を成すのはekyeshongoroというスタイルで、Katokyeは短い詩句を即興で紡ぎ、彼の土地や人々、そして大切にされてきた牛たちへの思いを断片的に伝えていく。この歌唱は複数の歌い手が重なり合い、10分を超える長い瞑想のような流れとなり、聴く者を引き込む独特の空気を生み出す。歌の節目ごとに全員が一斉に音程を上げていき次第に熱を帯びる様は、まるで川の流れがうつろうかのよう。歌の中には牛の鳴き声を思わせる息遣いが散りばめられ、牛がこの地域の美意識や家族の絆にいかに深く結びついているかが感じられる。彼の地ならではの、現代を生きる伝統的音世界。

ジンバブウェの伝説的音楽家セクル・チャカ・チャワサリラが半世紀以上にわたって追求してきた伝統楽器ムビラ・マテペの深遠な響きを記録した作品『Useza』がウガンダの首都カンパラを拠点とする〈nyege nyege tapes〉より登場!ムビラ・マテペは親指と人差し指で演奏される複雑なポリリズムを生み出す大型のラメラフォンの一種で、霊と交信する儀式で用いられてきた。西洋楽器のバンドの中でも確固たるポジションを得ているムビラ・ザヴァジム等と違い、その伝統を継承するものは非常に少なくなっており、チャワサリラは今や10人もいないとされるマスター奏者のひとり。これだけのまとまったマテペの録音はそれだけでも貴重なものと言える。本作『Useza』では、彼自身が複数のマテペ演奏を重ね録りすることで、かつて音楽学者アンドリュー・トレーシーが“カレイドフォニー(万華鏡的音響)”と呼んだ幻覚的な音の構造を展開している。夜中に一人で録音されたこの音楽は、メロディとリズムが溶けあって絡み合うジンバブウェ伝統音楽の構造と相まって、まるで現地のセレモニーの中にいるかのような浮遊感と奥行きがある。齢80を越えるチャワサリラの集大成であり、同時にこの文化を未来へ手渡すための貴重な記録でもある一枚!

スピリチュアル・ジャズ名門Strata-Eastのカタログ中、屈指の名盤であるThe Heath Brothersの1976年発表の激レア盤!本来は精霊との交信の為に儀礼演奏される、ジンバブエのショナ族古来の伝統楽器であるムビラを大々的にフィーチャーした、全編に静謐なアフリカの霊性漂う瞑想的アブストラクト・ジャズファンク大傑作。どの曲も背後に静寂と神秘的な美しさが漂い、ムビラの倍音と共に数多くのスピリチュアル・ジャズ系のアルバムとは一線を画すこの原石のような美しさ、異例のクオリティです。スピリチュアル・ジャズ系のリスナーは当然ですが、幅広い音楽リスナーへ大推薦したい内容です。
ドン・チェリーが民族音楽に挑んだ 1973年名盤。トランペットを持ったジャケットですが本人はトランペットは使用しておらず、ピアノ、歌、ガムラン、ハルモニウム、パーカッションを本職を忘れて演奏しまくっているレアな内容。トライバルなパーカッション、瞑想的なチベタンベル、ミニマルなアフリカンピアノ等々エスニックでサイケデリックな内容が凄い。

「現代音楽で最も魅力的なボーカリストの一人」と称される南アジアのヴォーカリスト、マルチ奏者、作曲家のGanavyaがShabaka Hutchings主宰の〈Native Rebel Recordings〉から最新スタジオ・アルバム『Like the sky I've been too quiet』をアナログ・リリース。Kofi Flexxx、Floating Points、Carlos Niño、Leafcutter John、そして、マーキュリー賞にノミネートされたベーシストのTom Herbertといった豪華ゲストが集結した一枚。Quincy JonesやWayne Shorter、Esperanza Spaldingなど、ビッグネームと仕事を共にしてきた要注目アーティストによる全13曲は、幽玄な声と溢れんばかりの魅力的なエネルギーに溢れたものとなっています。

〈Sublime Frequencies〉より、マダガスカル南西部トゥリアラ周辺で生まれたツァピキ音楽の現在地を描き出す屈指のコンピレーションが登場。70年代から進化し続けるマダガスカル南西部の祝祭音楽を、ぶっ壊れ気味のシンセ入りダンス仕様から、現場そのままのアコースティック・ジャムまで縦横無尽に並べている。歪んだエレキギター、弾丸のようなベース、止まることのない高速ビートに乗って、陶酔感に満ちたヴォーカルが叫ぶ。ツァピキは、葬式、結婚式、割礼といった通過儀礼の場で数日に(!)わたって演奏される音楽で、たばこや自家製のラム酒が回され、牛と人が入り混じる赤土の広場で、電化バンドが夜を徹して演奏し続ける。機材は手作り同然、つぎはぎのアンプや木に吊るしたホーンスピーカーを通じて、音楽は何キロも先まで響き渡る。本作が捉えているのは、都市と地方、電気とアコースティック、海辺と内陸の交流から生まれる混沌とした創造の渦。どんなグローバル音楽市場とも無縁のまま、ただ現場の欲求に突き動かされて生まれる音楽は、激烈で、奔放で、そして唯一無二。まさに生と死を祝うために鳴り響く、マダガスカルの現代的祝祭音楽と呼ぶにふさわしい、土の匂いがするロックと東部アフリカならではのナチュラルなトランスが交差したような音世界!ジャケットも最高でたまりません!!

各地の骨董的な音楽を掘り起こしてきた名門レーベル〈Sublime Frequencies〉からは、Kink GongことLaurent Jeanneauが2011年に録音した、中国雲南省のハニ族のポリフォニー歌唱を収めた珠玉の1枚がアナログで登場。神秘的で別世界的な合唱の美しさが、はるか遠く外宇宙へ広がっていくような、卓越した伝統音楽アンサンブルによる、現代的な響きの、前衛的なボーカル・フュージョンと奇妙な楽器の伴奏を組み合わせた恐るべきパフォーマンスが満載。ハニ族は言語的にはチベット・ビルマ語族のイ語派に由来し、中国雲南省南部のラオスとベトナムの上流に150万人が暮らしています。この地域の他の多くの民族集団と同様に、独自の伝統的な歌唱パターンが用いられており、各歌手は文脈に合わせて歌詞を調整。物憂げでありながらも、力強く超越的な音楽のカスケードによる、これまでに聴いた事のないような、感情を揺さぶる珠玉の録音。

ポルトガルの伝統的な労働歌のアーカイブ録音と現代アーティストによる再解釈を収めた『Leva Leva: Litanie des pêcheurs portugais』。アーカイブ録音としては、1940年代〜80年代にアルガルヴェ地方で収録された漁師の労働歌を収録。現代的再解釈にはJoão Pais FilipeやRomain Baudoinら現代の実験音楽家が参加。伝統的な「Leva Leva」の旋律を軸に、エレクトロニック、ダブ、実験的サウンドを融合している。

ギリシャ正教の聖地アトス山に伝わる典礼音楽のフィールド録音と、それにインスパイアされた現代の楽曲を収めたコンピレーションCD『Athos: Echoes from the Holy Mountain』。前半は現代のアーティストがアトス山の聖歌の神秘的なエッセンスを、ダブや実験的サウンドも交え、電子音楽やアンビエントに昇華。後半は1960年代から今日までの修道院でのオリジナル録音を収録。祈りと瞑想に用いられるビザンチン聖歌の荘厳で静謐な響きがそのまま伝わる。現代の音楽と聖歌を並置することで、むしろ聖歌により深く触れることができるような重要な一枚。

南アフリカのギタリスト、ヴォーカリストPhilip Tabane率いる、南アフリカの伝統音楽とジャズを融合させたMalomboの代表作である『Sangoma』。が1978年以来となる初のヴァイナル・リイシュー!Malomboは1960年代にプレトリア近郊のマメロディで結成され、アパルトヘイト下の南アフリカで文化的抵抗とアイデンティティの表明でもあった点で、The Malombo Jazz Makersと音楽的、文化的、人的にルーツを共通とするが、Bahula & RankuによるMalombo Jazz Makersがパーカッションやリズムに重点を置き、よりアフロ・ジャズ的な方向を志向したのに対して、Tabaneは母親が「sangoma(トラディショナル・ヒーラー)」であったことを背景に、スピリチュアルな要素を強く反映させた。ギターは単なる伴奏ではなく、呪術的な旋律を紡ぐ中心的存在で、フルートやパーカッションが絡み合う。声も祈りや呪文のような響きを持っており、ギターを媒介に音楽をスピリチュアルな次元へと昇華させた、アフリカ音楽史において特異で重要な位置を占める一枚。
