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EYE名義でも知られるLaurène Expositoと、Parasite Jazzなどで活動するThéo Delaunayによるフランス・ブレストを拠点とするデュオDiagonale des Yeuxが、アムステルダムは〈Knekelhuis〉からリリースするデビュー作『Madeleine』。1980年代フランスのアンダーグラウンド・ポップから現代のローファイ感覚までを横断する、DIY精神あふれるアヴァン・ポップ。歌詞はフランス語・ドイツ語・英語・スペイン語が入り混じる多言語構成で、トイミュージック風のメロディ、猫の鳴き声、奇妙に揺れるシンセ、ポストパンクのざらつきが同居し、The ResidentsやCindy Leeを思わせる周縁のポップが生まれている。
Wilco、The Feelies、Califoneなど後続に大きな影響を与えたとされる1986年にシカゴで結成されたオルタナティヴ・カントリーのカルト的存在Souled Americanが、1996年に残した最終作『Notes Campfire』。アンビエント・アメリカーナの先駆とも思える『Frozen』に対して、本作はより素朴で土の匂いが残る、枯れたアコースティック感が前面に出ている。バンドの音楽が極限まで削ぎ落とされていく過程の終着点にあたるアルバムで、カントリーの骨格をほぼそのまま残しつつ、テンポやアレンジは徹底してミニマル。ヴォーカルもより近く、語りかけるような距離感で、ひとりの夜に孤独の中に安らぐような、生活の気配と地に足のついた静けさを持つ作品。
京都のローファイ・ファンクデュオmess/ageによる待望のフルアルバム『MESS/AGE/2』が、ワシントンD.C.拠点の〈PPU〉からインターナショナルリリース。ざらついたドラムマシン、丸みのあるベース、柔らかく揺れるシンセが絡むサウンドは、〈PPU〉らしいDIYブギー/ローファイ・ファンクの文脈と強く共鳴しつつ、京都特有の空気感や日本的な間合いが自然に滲む。収録曲には「Nandake」「House」「Anpan」「Uma Hitsuji Inu」「Street Fighter」など、日常の風景や遊び心を感じさせるタイトルが並び、生活感とファンクの軽やかなグルーヴが自然に溶け合う。
Wilco、The Feelies、Califoneなど後続に大きな影響を与えたとされる1986年にシカゴで結成されたオルタナティヴ・カントリーのカルト的存在Souled Americanによる、アンビエント・アメリカーナの先駆的作品とされるバンド後期の作品『Frozen』。極端に抑制されたテンポ、音数を削ぎ落としたアレンジ、そして淡く揺れる残響。どの曲も時間が止まったような静けさをまとい、深夜の風景をそのまま音にしたような独特の世界が広がる。アコースティック楽器の素朴な響きと、乾いたカントリーの骨格が基盤にありながら、ヴォーカルは前に出すぎず、楽器と同じレイヤーで淡々と歌われ、音の風景の一部として溶け込んでいく。静けさの中に深い情感が宿る一枚。
オリジナルは1983年にリリースされたアメリカのアートパンク、NYノーウェイヴ・バンド Circle X のデビュー・アルバムで、NYノーウェイヴの殺伐とした熱量とアヴァンギャルドな知性が結晶した異形の名作『Prehistory』。制御不能なノイズ、突発的に崩れ落ちるリズム、叫びにも近いボーカル、そして演奏そのものが破壊の衝動として立ち上がるかのような暴力性と、反復の構造を意図的に崩すアレンジ、音の隙間を計算して配置するミニマリズム、不協和音をあえて美学として扱うような作曲感覚の両立は、都市の地下ならではの混沌を体現しているかのよう。この時代に、まだ一般的でなかったテープ操作やDIY的な加工を駆使し、何が鳴っているのか判別できない音像を意図的に作り上げた点も特異。ポストパンクの枠を越え、実験音楽の領域へ踏み込んだ本作は、退廃的でありながらどこか神秘的な美しさを秘めた、強烈な存在感を放つ一枚。

Anthony Moore が長いキャリアの果てにたどり着いた静かで深い到達点『On Beacon Hill』。Slapp Happy や Henry Cow で培ったアートロックの感性を土台にしつつ、室内楽的なフォーク、アヴァンギャルドの緊張感、そして英国的な叙情がひとつの風景として立ち上がる。Keith Rodway 、Amanda Thompsonとのアンサンブルは密やかかつ親密で、弦楽器やピアノ、声の響きが霧の中からゆっくりと姿を現す。その音像はどこか儀式めいていて、静寂と響きのあいだに漂う緊張感が、アルバム全体を独特の気配で包み込む。老練なミュージシャンならではの間の美しさが際立つ、深い思索に満ちた作品。
1979年にアメリカでひっそりと制作された、USルーツ・レゲエの隠れた名盤がついに復刻。More Relationはニューヨークのジャマイカン・コミュニティで活動していたバンドで、MelodiansやLarry Marshallなど数多くのシンガーのバックを務めてきた実力派。ジャマイカ録音とは少し異なる、USルーツ特有の乾いたビートと、都会的なメロディセンスが絶妙に混ざり合い、スピリチュアルでメッセージ性の強い歌詞が静かに胸に響く。「Jahoviah’s Kingdom」「Solve Them」など、ラスタファリズムを軸にした曲が多く、穏やかなサウンドながらも深みのある内容。バックバンド出身ならではの緻密なアンサンブルも心地いい一枚。

ジャズ・トランペッターとして60年代に活動し、Judee Sillとの出会いを機にソングライターへ転身したTommy Peltier。その知られざる70年代録音を〈Drag City〉がまとめ、初公開。自宅スタジオやハリウッドでのセッションを収録した未発表テープを中心に構成され、当時のロサンゼルスの空気をそのまま閉じ込めたような温度感。メロディは柔らかく、アレンジにはジャズの素養が自然に滲む。Rupert HolmesやStephen Bishopのようなライトロックの軽やかさと、Judee Sillの影響を思わせる繊細なフォーク感が同居し、70年代ウェストコーストの光と影が静かに揺れる。ハイトーン・ヴォーカルはどこか儚く、日常の片隅で生まれた歌がそのまま残されたような親密さ。

スウェーデン出身のサックス奏者Mats Gustafsson、ドイツの電子音楽デュオMouse on Marsの片割れJan St. Werner、スウェーデンのベーシストJohan Berthlingの3名によるユニットIFANAMEによる、あまりに自由なデビュー作。3人は空間そのものを演奏に巻き込むという独特の感覚を共有していて、サックスの荒々しい息づかい、デジタル処理の細かな揺らぎ、ベースの複雑な動きが、瞬間ごとに形を変えながら絡み合っていく。音はしっかり掴めるのに、次の瞬間には霧のようにほどけてしまう不思議な手触りがあり、まとまったと思えばすぐに崩れ、また別の姿で立ち上がる。その連続がまるで会話のようで、緊張と遊び心が同時に走り続ける。個性がぶつかり合うことで生まれた、非常に生々しく、予測不能な一枚。

アナログ/デジタル双方の機材を駆使し、時間の流れそのものを音にする作風で知られるAbul Mogardが、2019〜2022年にかけて制作した素材からまとめ上げた重要作『In a Few Places Along the River』。3曲はいずれも10〜20分超の長尺で、ゆっくりと重なり合うドローンが、ほとんど静止しているようで微細に揺らぎ続ける。とりわけタイトル曲「Along the River」は、21分にわたって静かな流れの中にMogard特有の禁欲的な美しさを湛えた名曲。一部の残響には、世界最長のリバーブを持つスコットランドの旧軍用の巨大な地下油槽Inchindown Oil Tankでの録音が使われており、音が巨大な空洞へ吸い込まれていくような圧倒的な空間の深さは特筆もの。
ベルギーのジャズ・ピアニストMarc Moulin率いるPlaceboによる1971年発表のデビュー作で、ジャズ・ファンクの深淵とヨーロピアン・クールネスが交差するレアグルーヴの名盤『Ball Of Eyes』。Marc Moulinによるエレピとシンセの浮遊感あるプレイを中心として、ブラック・ミュージック由来のグルーヴとヨーロピアン・ジャズの洗練が融合。J DillaやMadlibなどのヒップホップ・プロデューサーがサンプリングしたことで再評価された本作は、ベルギー産ジャズの最高峰として、今なお新鮮な輝きを放っている。
クラウトロックの伝説CANが、BBC Radio 1「John Peel Session」で残した1973〜74年の貴重なライブ録音を収めた『Peel Sessions 1973–74』。John Peel Session は、英国BBCの伝説的DJ John Peel が行ったライブ録音企画で、最も実験性が高く、ライブでの即興演奏が評価されたCANの黄金期の生演奏を捉えた貴重な音源。特に「Up The Bakerloo Line With Anne」は約19分に及ぶ圧巻のジャムで、Damo Suzukiの即興的な声の使い方が、セッションの混沌と美しさを際立たせている。
Bob Jamesが〈CTI Records〉で残した最後の作品にして、彼の洗練されたフュージョン美学が最も完成された形で表れた名盤。Van Gelder Studioで録音されたクリアでリッチなサウンドは、ストリングス、ホーン、エレピが滑らかに溶け合う、CTIらしさを最も端正な形で体現しており、代表曲「Tappan Zee」をはじめ、都会的で爽やかなグルーヴと、耳に残るテーマが印象的。後のスムースジャズの原型ともいえる軽やかな質感がありながら、演奏は緻密で、アンサンブルの美しさが際立つ。George Marge、Gary King ら名手が参加し、アレンジの細部まで丁寧に作り込まれた一枚。
80年代初頭、日本アンダーグラウンドの唯一無二の残像のような一枚、Daisuck & Prostituteによる『Dance Till You Die』。「踊り尽くせ」という命令と警告が同時に響く、妥協のないポストパンクのエネルギーが詰まったサウンドは、ニューヨークのNo Waveを思わせる尖ったギター、ノイジーで異物感のあるテクスチャー、ざらついたヴォーカルに支えられつつ、どこか儀式めいたグルーヴを持っているのが特徴的で、無秩序なようでいて、身体を突き動かす強烈なリズムがあり、ダンスフロアでも異様に機能してしまう。その一方で、聴き心地は決して容易ではなく、鋭利な音の断片が次々と突き刺さってくる。当時は商業的な動きとはまったく無縁で、伝説の地下音源というべきその異様な存在感や妥協のなさは、時代を超えてなお鮮烈に響く。日本のポストパンクが世界的な爆発の只中でどう独自の形をとったのかを物語る重要なドキュメント。
フィラデルフィアのギタリスト、シンガー、Carl Sherlock Holmesが1974年に自主レーベル〈C.R.S.〉から発表した唯一のアルバム『Investigation No.1』。フィリー・ソウルの洗練と、ワイルドなファンクの熱量が同居した、まさに発掘系ソウルの理想形といえる一枚。ワウ・ギターとハモンドが絡む冒頭曲「Investigation」、「Black Bag」「It Ain’t Right」では強烈なドラムブレイクが炸裂。一方で「Your Game」などのメロウ・ソウルでは、フィリーらしい柔らかさと深みが際立つ。捨て曲なしと評される完成度のレアグルーヴ界で語り継がれる名盤。
Godspeed You! Black Emperorが1999年に発表した全2曲・約28分という短い尺ながら、バンドの美学が極限まで凝縮された名作EP。A面「Moya」は、静かな反復から巨大なクレッシェンドへと向かう構築美が際立ち、Henryk Góreckiの交響曲第3番を再構築したものとしても知られる 。B面「BBF3」は、街頭で録音された男性の政治的モノローグを中心に据え、ストリングスとギターが荒涼とした風景を描くドキュメンタリー的な楽曲。
旧約聖書のヘブライ語「תֹ֨ה֯וּ֙ וָבֹ֔הוּ(混沌・空虚)」が大きく記されたアートワークも象徴的で、荒廃した都市の風景や不穏な空気を描き出す、長編映画を短い楽曲の中に凝縮したような作品。
メルボルンのソウル〜ファンク・シーンを裏側から支えてきたエンジニア/プロデューサーHenry Jenkinsが、初めて自分のための音楽を形にしたアルバム。Surprise ChefやKarate Boogalooの作品で知られる彼が、友人たちとのアンサンブルを軸に作り上げた12曲のインスト集。乾いたドラム、太いベース、タイトなギター、淡い鍵盤というメルボルンのシネマティック・ソウルの美学をそのまま内側に向けたようなサウンドで、ファンクの骨格を持ちながら、メロディや和声はどこか映画音楽的で、短編映画のワンシーンのように静かに情景が立ち上がる。深夜に合う、静かで内省的なインストゥルメンタル・ファンク。
オリジナルは1969年リリースの、ベルギー・アントワープ産、カルト的人気を誇るサイケロック・シングルが待望の再発。A面には、湿り気を帯びたギターリフと荒々しいブルースロックの衝動がぶつかり合う、ベルギー産サイケ特有の暗さが際立つ一曲「The Sun」を収録。英国初期ハードロックの重さと、ヨーロッパ・サイケの陰影が同居する独特のムード。B面には、よりメランコリックなスロウ・サイケ「Wait Until Sunrise」を収録。A面の荒々しさとの対比が効いていて、短いシングルながら強い印象が残る。

ポートランドの作曲家Derek Hunter Wilsonによる、霧に包まれた岬や、波が静かに寄せる砂浜といった風景をテーマに、ハープのループを中心に構築されたアンビエント/ポストクラシカル作品『Sculptures』。ハープ奏者Joshua Wardとの長時間の即興で生まれた生の素材を、時間をかけて削り、磨き、形にしていくという独特の制作プロセス制作。そこにピアノ、ストリングス、ペダルスティールが柔らかく重なり、湿度を帯びた空気や、時間がゆっくりと流れる海辺の静けさが音として立ち上がる。派手さはないが、聴くほどに深く沈み込んでいくような、内省的で美しいアンビエント作品。
Marco Beneventoによる、彼の鍵盤奏者としての個性と〈Big Crown Records〉特有のヴィンテージ・ソウル感が心地よく交差したシングル。軽やかで弾むようなグルーヴを持つ「Frizzante」と、よりドラマティックで深みのある雰囲気を漂わせる「Turandot」という対照的な2曲が収められており、ジャズやロック、サイケデリックな要素を自在に横断してきたBeneventoの幅広い音楽性が、ソウル、R&Bの温かい質感の中で新たな形に結晶した一枚。

ノルウェーの伝統弦楽器ハーディングフェーレをもとにした、より静謐で深い響きを持つハーディングダモーレ奏者/作曲家Zosha Warpehaによる、残響豊かな空間そのものを楽器として扱うかのような2曲40分の深いソロ作品。ノルウェー・オスロのEmanuel Vigeland Museumで体験した「12秒の残響」に強く影響を受け、音が空間に溶けていく感覚を探求してきた彼女が、ISSUE Project Roomのレジデンス期間にワンテイクで録音。共鳴弦が複数張られたハーディングダモーレの倍音がゆっくりと広がり、声の振動が弦と混ざり合う。ドローン、即興、北欧の伝統音楽が自然に交差し、静けさの中に微細な揺れが浮かび上がるディープリスニングのための一枚。空間の奥行きがじわりと広がる、真夜中の音楽。

ジョージアの新鋭 Anushka Chkheidze と、ドイツ実験音楽のベテラン Robert Lippok が共作した、思考が静かに流れ、形を変え、また沈んでいく、その内側の動きを電子音で描いた作品『Uncontrollable Thoughts』。Chkheidze の透明感あるシンセや淡いメロディの影が、感情の粒子のように浮かび上がり、Lippok のミニマルなパルスや緻密な音響処理が、構造を精密に刻む。音は決して大きく語らず、むしろ内側へ沈む方向へと導かれ、静けさの中に微かな緊張が走る独特の空気が全編を包む。アンビエントの柔らかさと、エレクトロニカの構造美が自然に溶け合い、音の粒子がゆっくりと漂いながら、聴く者の内面に静かに触れてくる。

アメリカのミニマリスト詩人ロバート・ラックスによる詩の朗読を中心に構成されたサウンド・ポエトリー作品『Living in the Present』。1990年代にギリシャ・パトモス島で録音された音源をもとに、電子音響とフィールド録音、トランペットが繊細に絡み合いなだら、彼の静かな語りが展開され、静けさと言葉の余白を重視した詩の世界が音と共に穏やかに広がってゆく瞑想的な空間を生み出す。言葉と音が互いに干渉せず、静けさの中で共存する構成が印象的で、今この瞬間、というテーマが、音と語りを通じて穏やかに伝わってくる。音楽というよりも詩と環境音の対話ともいうべきもので、詩の余白と音の静けさが溶け合い、聴くという行為そのものに深い気づきをもたらす、稀有な音のドキュメント。

オーストリアのバンドRadianの中心人物である打楽器奏者、音楽家Martin Brandlmayrによるソロアルバム『Interstitial Spaces』。本作では彼の特徴である緻密で非定型なリズム、グリッチ・ノイズ、そして静謐な音響デザインが融合。自身の演奏に加え、フィールド録音やテレビ広告、演奏準備のざわめきなど、何気ない音を精密に編集し、聴覚の感度を研ぎ澄ます。その音響構成は、音楽と非音楽の境界を曖昧にしながら、聴く者に聴くことそのものへの意識を促し、何も起きていないように見える瞬間に潜むドラマを、音の配置と沈黙の間で巧みに描き出している。打楽器奏者としての精密なタイム感と、サウンドアーティストとしての空間的な感性が交錯することで、聴覚的な映画ともいうべきリスニング体験をもたらしている。現代音楽、サウンドアート、映画音響の要素が交錯する、静けさの中に深いドラマを秘めた作品。
