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〈Sahel Sounds〉の新レーベル〈Autotune The World〉の第一弾として、その地域でしか成立しないダンス音楽を世界へ紹介する興味深い一枚。ガーナ北部、Dagbon地域で農民がDIYスタジオで制作した電子ダンス音楽をまとめたコンピレーション『Studio Simpa: Digital dance music on VCD from Dagbon, Ghana』。これらの音源は、地元市場で流通するビデオCDにのみ存在し、地域外では入手できなかったもので、携帯で録音されたドラム、FL Studioで再構築された伝統リズム、そしてGawaniと呼ばれる歌い手たちの強い節回しが重なり、村の祝祭とDIY電子音楽が並行するような独特のサウンドを形成している。パーカッションは乾いた打撃音が高速で連なり、その上をオートチューンのボーカルが鋭く往復する。伝統的なsimpaの円舞的な反復が、電子処理によってより推進力のある形に変換され、シンセの柔らかい質感がローカル録音の荒々しさと対照をつくる。祝祭性、政治的メッセージ、部族固有のリズムなど、地域の生活がそのまま音に刻まれている点も魅力。

エチオピアの作曲家Wesenyeleh Mebrekuが、エチオピア各地に伝わる民謡や子守唄、歴史的な歌を電子キーボードだけで再構築した作品『Resonance of Time』。ローファイなカシオトーンの温かい質感が心地よく、オルガンやピアノのような音色がエチオピア独自のモードと結びつき、独特の浮遊感を生んでいる。リズムマシンの素朴なビートが懐かしさを誘い、メロディはどこか子守唄のように優しく、時に哀愁を帯びる。電子音でありながら人の手触りが強く、民謡の魂が電子回路を通して新たな生命を得たよう。1980年代エチオピアのカセット文化を象徴する名作であり、アンビエント、ローファイ、エチオピア音楽の要素が自然に混ざり合い、素朴さと実験性が同居する唯一無二の音世界。

カリフォルニアのカルトSSW、Scott Seskindが1991年に自主カセットのみで発表したローファイ・ベッドルームフォークの秘宝『Chance』が初の公式リイシュー。4トラックのポータスタジオで録音された本作は、声とギター、繊細なチェロ、女性コーラス、マンドリンといった最小限の編成で構成され、ささやくような声と乾いたアコースティックギターが、深夜の独白のような親密さでまるで日記をめくるように淡々と綴られていく。宅録ならではの質感が、曲に宿る孤独や希望、記憶をより鮮明にしている。〈Efficient Space〉の名コンピ『Sky Girl』収録をきっかけに新たな世代へと広く届き、再評価の中心となった楽曲「I Remember」も収録。派手さはないが、日々の断片を静かに縫い合わせたような誠実な歌が胸に残る。

カリフォルニアのカルトSSW、Scott Seskindが1985年に自主制作でひっそりと残したセルフタイトル作『Scott Seskind』が初の公式リイシュー。4トラックのポータスタジオで録音された本作は、乾いたアコースティックギターと、少し掠れた声が、部屋の空気ごと閉じ込められたように響く、素朴で誠実なローファイ・フォーク。「Walking」「Out Of The Blue」「Empty Arms」など、短いメロディの中に生活の断片や感情が静かに刻まれている。一方で、「Bobby Sands」「This Is My Country」など、社会的テーマを扱う曲も収録され、内省的な歌と鋭い視点が同居する、一人の部屋から世界を見つめるようなローファイフォークの原点ともいうべき一枚。
10月中旬再入荷。フィンランドの名門〈Timmion Records〉を支えるハウスバンドCold Diamond & Minkが、Emilia Siscoのデビュー作『Introducing』の楽曲をオルガン主体のインストゥルメンタル・ソウルとして再構築した企画盤『Organ‑ized』。テンポは全体的にゆったりめで、ギター、ベース、ドラムは控えめに支え、Jimmy SmithやJimmy McGriffの系譜を継ぐオルガン奏者Mr. Sophisticated Fingersのオルガンが主役としてメロディを歌う。歌がないのに、恋愛ソウルの情感がしっかり伝わる語るようなインストになっているのが面白く、Emilia Siscoの原曲が持つ甘さや切なさが、映画のサウンドトラックのような落ち着いた世界観へと変換されている。部屋で静かに流しても、じっくり聴き込んでも楽しめる、ネオ・ヴィンテージ美学をそのまま体現した、温かくメロウなオルガン・ソウル集。
9月4日発売。Meditationsでも大人気、〈Numero〉の看板シリーズEccentric Soulに、1964〜1980年にかけて、プロデューサーLenny “King Creole” LaCourが運営した〈Magic Touch〉を中心としたローカル・レーベル群から、入手困難なソウル、ファンク、R&B音源を26曲にわたって体系的にまとめた 決定的アーカイヴ『The Magic Touch Label Vol. 1』が登場。収録されているのは、The Mar‑J’s、Marvelle & The Blue Mats、The Swinging Hearts、Junior & The Classics、Filet Of Soul、Harvey Scales & The Seven Soundsなど、当時は地域ローカルで活動していた無名から半無名のアーティストたち。しかし、彼らの残した音源は驚くほど多彩で、ガレージ感のある荒々しいR&Bから甘いグループ・ハーモニー、鋭いホーンが切り込むハード・ファンク、そしてプロト・ディスコの萌芽まで 幅広いスタイルが詰まっている。録音は粗削りだが、その分スタジオの空気がそのまま閉じ込められたような生々しさがあり、ヴォーカルの張り上げやコーラスの甘さがローカル・ソウルならではの自由さを感じさせる。ブックレットにはLaCourの活動史、当時の写真、レーベル資料など資料性の高いコンテンツが多数収録され、幻のレーベルの全貌を立体的に再構築している。

ライプツィヒ拠点のマルチ奏者Damian Dalla Torreが、環境としての音への深い関心をもとに、より自然体の表現へと向かう過程をそのまま封じ込めた最新作『People Pleaser』。核となるのは、ギタリストBertram Burkertとの3日間の集中セッションで録られた多彩なギターテクスチャー。それに加え、Laura Zöschgの声、Babett Niclasのハープ、Felix Römerのオルガン、Markus Romのテープ実験、Volker Heukenのマリンバ、ヴィブラフォンが、親密さと広がりを同時に持つ音像を形づくる。Dalla Torreは録音の断片やフィールド録音をアーカイブ作業のように組み合わせ、ライプツィヒの鳥の声、神戸の雨、イタリア山岳地帯の火の音など、旅の記憶がそのまま楽曲の地層として積み重なる。ドラマティックな変化よりも、ギターと控えめな電子音を中心とした統一感のあるアンサンブルが中心で、感情を直接提示するのではなく、曖昧な気配や内的な変化をそっと示すような構造で、聴き手が自由に感情を読み取れる余白がある。どこかの場所の空気を運んでくるような静かで豊かな質感に溢れた音楽。
2019年にメルボルンのアンダーグラウンド・シーンからひっそりと登場した、YL Hooiによる実験的な音の断片集『Untitled』。2017〜2019年に断続的に録音された楽曲は、同じ中心からゆっくりと変異し続けるような構造を持ち、匿名的でありながら強い個性を放つ。氷のように冷たいDIYミニマリズム、霧のように広がるFX処理、そしてゆらめくダブの残響が重なり、現実と非現実の境界に立つような音像を形成する。Hooiの声は抽象的な音の空間にそっと置かれた灯りのように機能し、楽曲全体をひとつの場としてまとめ上げる。煙のように立ち上がり、どこから始まったのか分からないまま姿を現す楽曲たちは、リミナルな風景を連続的に描き出し、内向きの親密さとダブの低域の揺れが共存する独特の質感を生む。 HTRK、CS + Kreme、F Ingersといったメルボルンの同系統のアーティストとも響き合いながら、より内側の空間を描く音楽へと向かう、近年のオーストラリア音響作品の中でも際立った存在感を持つ作品。
オリジナルは1983年リリースの、Vaughan Mason & Butch Dayoによるブギー/モダンソウルの名作『Feel My Love』。軽快なファンクのグルーヴ、しなやかなシンセ、そしてローライダー系ファンクにも通じる柔らかい高揚感が全編を貫き、80年代ブギーの魅力を凝縮したようなサウンドが響き渡る。Vaughan Masonの洗練されたプロダクションとButch Dayoの滑らかなヴォーカルが自然に溶け合い、都会的な明るさとゆったりしたフィーリングが同居する。当時のスタジオ録音ならではの生っぽい温度感が残っており、シンセ・ベースやギターのカッティングが立体的に響く点も魅力。ブギー、ファンク、ディスコを行き来しながら、80年代特有の明るい質感を保った、クラシックとして愛され続ける理由が、音の手触りから自然に伝わる一枚。
Dilated Peoplesの中心人物として世界を巡り、Kanye WestやBeastie Boysへのビート提供でも知られるEvidence。そしてSnoop Dogg、Nas、Eminemらを手がけ、ラッパー、DJとしても活動するThe Alchemist。長年の協働関係を持つ2人がStep Brothers名義で完成させた『Lord Steppington』。乾いた質感のサンプル、タイトなドラム、Alchemistらしいストイックなビートが全編を貫き、Evidenceの落ち着いた語り口と緻密なパンチラインがビートの硬さと絶妙に噛み合う。Action Bronson、Roc Marciano、Styles P、Bluなど個性の強いゲスト陣が曲ごとに鮮やかな色を添え、東海岸クラシックの質感を継承しながら現代的なミックスでアップデートされた音像が魅力的。肩の力が抜けたユーモアと、緻密に組み立てられた職人芸が同居する、2人のキャリアと美学が自然に融合した一枚。
日本を代表するパーカッション/ドラマーである富樫雅彦が、1980年に録音し、1981年に発表したソロ・パーカッション作品。事故により半身不随となった後に、ドラム、鐘、ゴング、打楽器など多様なパーカッションと独自の奏法とテクニックで、自身の音の世界を録音した作品。
トラックリスト:
A1: サムシング・カミング
A2: 祈り
A3: レッツ・シング、レッツ・ダンス
B1: バラード・フォア・ロンリネス
B2: ハートストリングス
B3: ウィスパーリング・スターズ
B4: サムシング・リーヴィング

LAを拠点に活動するシンガー・ソングライター、Julia Holterの新作『Materia』は、2024年作『Something in the Room She Moves』の世界観を拡張する7曲入りのコンパニオン・アルバムであり、アート・ポップの最前線を更新する作品である。前作の楽曲を起点に、その再構築や別ヴァージョン、ツアー間に生まれた新曲、即興演奏などが組み合わされ、音楽的実験性と親密な感情表現が共存する構成となっている。
音響的には、フォークロア的なメロディ感覚と現代的な電子音響、室内楽的アレンジが交差し、ドラムマシンやフレットレスベース、クラリネットなど多彩な編成が有機的に絡み合う。楽曲は固定されたポップソングの枠を超え、時間や構造そのものを揺さぶるような流動性を持ち、即興と作曲の境界を曖昧にしている点も特徴的だ。
また、母性や喪失、社会的不安といった個人的かつ時代的なテーマが、夢のように揺らぐサウンドスケープの中に溶け込んでいる。繊細でありながら大胆な構築美、そして一聴で掴めない複層的な感情のレイヤーによって、『Materia』はJulia Holterのキャリアの中でも最も開かれた、思索的なアート・ポップ作品として成立している。

クルアンビンが世界中で愛されるコンピに満を持して登場!! アジア~アフリカに至るまで世界各地の楽曲を収録し、さらに日本からはショーケン主演ドラマの 主題歌でも知られるあの日本産レア・グルーヴ大名曲も!
世界中で愛される"夜聴き"コンピの決定盤[LATE NITE TALES]シリーズ最新作は、クラシックなソウル、ダブ、サイケデリアを注ぎ込んだミッドナイト・ファンクで人気を博すグルーヴ・トリオ、クルアンビン。過去にはこのシリーズでボノボが彼らの楽曲「A CALF BORN IN WINTER」(『全てが君に微笑む』収録)を選曲したことによってバンドが最初に注目を集めたという経緯もあり、今回は満を持しての登場となる。今回のコンピレーション/ミックスはインドにルーツを持つイギリス人プロデューサー、ビドゥ(BIDDU)がプロデュースしたパキスタンのシンガー、ナジア・ハッサン(NAZIA HASSAN)によるどこか哀愁漂うヒンディ・ディスコ「KHUSHI」や、韓国のロックバンド、サヌリム(SANULLIM)による軽快なグルーヴが気持ちいい「DON'T GO」、ナイジェリアのマクスウェル・ウドゥ(MAXWELL UDOH)とエチオピアのロハ・バンド(ROHA BAND)によるアフリカからの名曲たち、そしてベラルーシの人気バンド、ピェスニャルィーの楽曲や激しいヴォーカルのパフォーマンスに魅了されるスペインのパロマ・サンバシリオ(PALOMA SAN BASILIO)の楽曲などを収録。そしてなんとエクスクルーシヴ・トラックとして、クルアンビンによるクール&ザ・ギャングの名曲「SUMMER MADNESS」のカバーも収録。さらに日本からは世界に誇るKING OF DIGGINことDJ MUROのレコメンでも知られるメロウなレア・グルーヴ大名曲、77年の故・萩原健一(ショーケン)主演ドラマ『祭ばやしが聞こえる』主題歌の柳ジョージ「祭りばやしが聞こえるのテーマ」がセレクト!コンピレーション/ミックスの最後は彼らの地元でもあるテキサスからジェフリー・ミュラー(GEFFREY MULLER)がバンジョーでカヴァーしたエリック・サティ「GNOSSIENNE」に同じくテキサスのティアニー・マローン(TIERNEY MALONE)がスポークン・ワードをのせた楽曲で締めくくられている。全体を通して国境や文化を越えた選曲となっており、世界中の音楽に対する深い愛情と彼らの音楽的ルーツが感じられるものとなっている。国内流通仕様盤CDにはアーティスト本人による全曲解説対訳が封入され、限定輸入盤2LPはオレンジ・ファイナル仕様でのリリースとなる。
貴重で上質なレゲエ/ダブ音源のアーカイヴァルなリイシューで知られる名門<Pressure Sounds>が遂にカタログ100作目に到達!
記念すべきカタログ100番は、歴史的名盤Burning Spearの『Marcus Garvey』にて、Burning Spearとの楽曲共作も務めたPhillip FullwoodがWinston McKenzieと共にジャマイカでスタートし、ニューヨークで女性コーラスの新メンバーを加え完成させた I Mo Jah 名義の『Rockers from the land of reggae』(1982作)。
内容の素晴らしさと極端な希少性が相まってアルバムに対する評価も恐ろしいほど膨れ上がり、オリジナル盤は常に超高額で取引されるファンが切望し続けた作品。オリジナル・スリーヴを忠実に再現し世界初リイシュー。
10月中旬再入荷(9月下旬分は完売しました)。ワシントンD.C.のソウル、ファンク・グループFather’s Childrenによる、1973年録音の失われたデビュー作。プロデューサーR. Hosea Williamsのガレージから〈Numero Group〉が発掘したもので、ストリート文化と黒人音楽の精神性が濃厚に刻まれたソウル、ファンクで、後年の〈Mercury〉盤よりもはるかに荒々しく、バンドの初期衝動がそのまま封じ込められている。ファズ・ギターのざらつき、タイトなリズム、サイケデリックな空気感、そしてドゥーワップ由来の強いコーラスが混ざり合い、70年代初期の埃っぽい熱量を生々しく伝える。宇宙的テーマやスピリチュアルなムードが随所に漂い、D.C.特有のコズミック・ファンクの側面も強い。洗練よりも勢いと生命力が前面に出るタイプで、当時の街の空気をそのまま記録したような音像が魅力的。〈Numero〉の尋常ではない発掘力が冴え渡るタイトル。

USスロウコアの象徴DusterのClay PartonとCanaan Dove Amber、そしてノースカロライナのサンプリング作家Dirty Art ClubによるユニットSoojのデビュー作が〈Numero Group〉から登場。Dusterらしい沈み込むようなスロウコアの質感に、Dirty Art Clubのテープヒスやコラージュ処理が重なり、音は輪郭を失いながらもどこか温かい。ギターのフレーズは霧の中でゆっくりと漂い、サンプルは記憶の断片のように浮かんでは消える。深夜の部屋で灯りを落として聴くと、空気そのものが変質していくような没入感がある。Dusterのリイシューを全面的に手がけ、彼らの再評価を決定づけた 〈Numero Group〉からのリリースであることも相まって、90年代のスロウコアという遺産が、現代のサンプリング・アートと出会うことで、いかに新しいサイケデリアへと変容したかを示す一枚。Dusterの静かな憂鬱が、サンプルの波に溶けて消えていく様は、時間が経って、一番底に静かに溜まった、純度の高い残り香のよう。
2011年に発表されたHTRKの代表作『Work (Work, Work) 』が、〈Ghostly International〉による15周年記念盤として再登場。彼らの暗く、ミニマルで、官能的な電子音楽を現在の耳で聴き直すための重要なリイシュー。本作は、メンバーSean Stewartの急逝を経て制作された作品で、その喪失感がアルバム全体のムードを深く支配している。808系の遅いビートがゆっくりと脈打ち、霧のように薄いシンセ、ギターの残響が静かに重なり合う。音数は極端に少ないのに、空気の重さが曲の隅々まで染み込むような質感が印象に残る。Jonnine Standishのボーカルは冷たく乾いていて、感情を直接表現するのではなく、感情の影を置くような歌い方。その距離感が、作品の官能性と孤独感を強く際立たせる。インダストリアルの硬さと、ドリームポップの幽玄さが同時に存在するバランスは、HTRKにしか作れない独特の世界。

カナダシンガーソングライターGrant DavidsonのプロジェクトSlow Leavesによるアルバム『The Ruins of Things Unfinished』。Kris Ulrich、Roman Clarkeらカナダの実力派ミュージシャンが参加し、アコースティック・ギターを中心に、柔らかい歌声と丁寧に重ねられたアレンジが溶け合う、温かく内省的なフォーキーシンガーソングライター作品。カナダの良質なフォークの伝統を受け継ぎつつ、穏やかなメランコリーが息づく、静かに長く愛聴できそうな一枚。
10月中旬再入荷。Sufjan Stevensが2003年に発表した名作『Michigan』が、充実した内容の2LPエディションとして再発。オリジナル・アルバムに加え、“Vito’s Ordination Song”“Romulus”の別ヴァージョンや、これまで未収録だったアウトテイク5曲、さらに本人による楽曲解説エッセイを収録した決定版。 アメリカ50州を題材とする壮大なプロジェクトの出発点となった『Michigan』は、一つの土地をめぐる「地理的な音詩(Tone Poem)」として構想された作品。Sufjan Stevens自身の記憶や家族の物語を軸に、ヘンリー・フォード、デトロイト暴動、地域史、信仰、そして日常の風景までも静かに織り込みながら、アメリカ中西部の輪郭を描き出しています。 フォーク、室内楽、ゴスペル、ミニマル・ミュージックを自然に溶け合わせたサウンドは、素朴でありながら驚くほど緻密。柔らかな歌声と豊かなアレンジが、郷愁と祈り、喪失と希望を静かに浮かび上がらせます。 未発表音源と本人による書き下ろしエッセイを加えた本エディションは、その世界観をより深く味わうことのできる特別なリイシューとなっています。

ドラマーDamon Cheの爆発的かつ変則的なドラミングでも知られる、アメリカ・ピッツバーグ出身のインストゥルメンタル・マスロックの代表的バンド Don Caballero の4作目にして、マスロック史に残る金字塔とされる名盤『American Don』。ギター2本+ドラムによる複雑なポリリズム、変拍子を多用した緻密な構造、それでいてメロディアスで開放感のあるサウンドは轟音よりも繊細な構築美が印象的で、前作までの荒々しいエネルギーから一転、より洗練されたポストロック的アプローチが際立つ作品となっている。オリジナルアルバムのリマスター音源2LPに加えセッション音源、未発表テイク、デモなどを追加収録した3LPで、ジャケットやインナーのアートワークもアップデートした作品の裏側まで丸ごと体験できる決定版。

イタリア・ヴェネツィアのアンビエント巨匠Gigi Masinが、2020年『Calypso』以来となる6年ぶりのソロ・フルアルバムを〈Sacred Bones Records〉からリリース。2023年のGreg Foat & Moses Boydとの共作『Dolphin』で見せたジャジーなライブラリー路線を経て、本作では再びアンビエントへと回帰しつつ、動きをテーマにした新たなアプローチを提示。メランコリックな電子音、テクノ的なロボティックな質感、深海のようなアンビエントがシームレスに行き交い、Masinの音楽的探求がさらに広がったことを感じさせる。静けさの中に微細なリズムが脈打ち、風景がゆっくりと変わっていくような、Masinならではの動くアンビエントが全編を貫く。アンビエントを、身体に響く音楽として再定義する意欲作。

ニューヨークの作曲家Mikel Rouseを中心に活動したプロジェクトTirez Tirezの代表作のひとつとして語られる、ベルギーの名門〈Les Disques du Crépuscule〉から1983年にリリースされた『Story of the Year』。Tirez Tirezは、Steve ReichやPhilip GlassなどNYミニマリズムの流れと、ポストパンク以降のアートロックを独自に接続した稀有な存在で、本作でも、反復するギター、シンセのミニマルな構造、乾いたドラム、抑制されたボーカルに、〈Crépuscule〉らしいヨーロッパ的な冷たさと洗練が加わり、NYのアート感覚とベルギーのポストパンク美学が交差する独特の空気が漂う。メロディよりも 質感・構造・反復が前面に出るミニマル・ポップの魅力が際立っており、Talking Headsや80年代前半NYのアートロックと共振しつつ、よりストイックで知的なアプローチが貫かれているのが印象的。

1947年、Alan Lomaxがニューヨークのデッカ・スタジオにBig Bill Broonzy、Memphis Slim、Sonny Boy Williamsonらを招き、ブルースの起源と黒人の現実を語り、歌わせた歴史的録音『Blues in the Mississippi Night』。当時、彼らが語った内容、ミシシッピ・デルタの生活、ジム・クロウ法下の暴力、労働キャンプや刑務所農場の実態はあまりに率直で危険だったため、3人は偽名でクレジットされたほど。音楽的には、Broonzyの乾いたギター、Memphis Slimの都会的でありながら土の匂いを残すピアノ、Williamsonの鋭くも祈りのようなハープが交互に現れ、語りと歌がひとつの流れとして続いていく。ブルースの曲というより、土地の温度、身体の記憶、沈黙の重さがそのまま音になったような質感で、語りの後に続く歌は言葉の余韻を抱えたまま響き、音楽が慰めではなく証言として機能しているのがわかる。ブルースの源流と黒人の現実を記録した、音楽史、社会史の両面で価値ある復刻。

ブルックリン出身の詩人aja monetが、ジャズ・アンサンブル とスポークンワードの表現をさらに広げた新作『the color of rain』。音楽監督を務めるMeshell Ndegeocelloを中心に、Ambrose Akinmusire、Josh Johnson、Justin Brown、Georgia Anne Muldrowら多彩なミュージシャンが参加し、語りと演奏がひとつの呼吸でつながる。monetの声は朗読の芯を保ちながら、ブルースやソウルのニュアンスに寄り添う瞬間があり、言葉の重さと音の流れが自然に同調している。バンドの演奏はタイトすぎず、柔らかい揺れを保ちながら進み、エレピやシンセの湿度のある響き、深い余韻を残すベース、繊細なドラムが重なって、雨の夜の空気のような質感をつくり出す。現代的な精神テーマを扱いながら、音は常に個人の感情の近くにある、詩人としての声をジャズ・アンサンブルと結びつけて描く現代のブルース詩。
