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オランダ現代音楽の重要作曲家Ton de Leeuwが1956年から1982年にかけて残した電子音楽を、〈Dutch Oscillation Series〉の第1弾として地下室や研究機関に眠っていたテープを掘り起こし、丁寧に復元した初の本格的アーカイブ作品。電子音は空間を彫刻するように配置され、前後左右へ移動する四チャンネル作品では、粒子状の音が部屋の中を漂うような立体感が際立つ。初期電子音楽特有の生々しいテープの質感と、後年の精密なシンセシスが同じ作品内で共存し、時間の流れそのものを音で描くような静けさと緊張感がある。インド、インドネシア、日本など非西洋音楽文化を深く研究し、東洋と西洋の音楽思想を架橋する作曲家として高く評価されているTon de Leeuwらしく、持続音の扱いや間の取り方に独特の美学が滲み、電子音楽でありながら、どこか瞑想的な響きが漂う。未公開だった「Chronos」を含む全8作品を収録し、ラジオオラトリオから空間音響作品まで幅広く網羅した決定版。
1974年にBlue Noteからリリースされた、フルート奏者Bobbi Humphreyの代表作。Mizell Brothersがプロデュース/作曲を手掛け、Larry Mizellによる洗練されたR&B/ジャズ・ファンクのサウンドと、Bobbi Humphreyの艶やかなフルート、軽やかなヴォーカルが絶妙に溶け合った名盤。
ファンクの強いグルーヴを軸に、浮遊感のあるフルートと豊かなエレクトリック・サウンドが重なり、70年代Blue Noteならではの都会的で開放的な音像を生み出す'Harlem River Drive'や、Donald Byrd『Black Byrd』をはじめ、Mizell Brothersが手掛けた一連の作品とも呼応しながら、ジャズとソウル、ファンクの境界を軽やかに越えていく'Blacks and Blues'他を収録。ジャズ・ファンク/レアグルーヴの定番として長く愛されてきた一枚であり、Bobbi Humphreyの魅力を最も端的に味わえる代表作。
バンコク西岸、トンブリーから現れた新鋭4人組Korlakangによる、〈Guruguru Brain〉からのデビュー・ダブルサイダー 7インチ。タイ伝統音楽の旋律美と、70年代サイケデリックの質感を現行エスノ・グルーヴとして再構築した一枚。A面「Samong Sai」は、タイ民謡特有の哀愁を帯びたメロディがゆったり漂い、アナログ・シンセの淡い残響とギターの柔らかな揺れが重なるサイケ民謡調。B面「Jackfruits」は一転して軽やかで、リズミカルなタイ・サイケ、エスノ・グルーヴ。乾いたギターのカッティングと跳ねるパーカッションが心地よく、伝統旋律の骨格を保ちながら、ダンス寄りのグルーブとトロピカルな色彩が際立つトラック。
親日フランス人2人組 (片方はDaft PunkのThomas Bangalterの実父)が1971年、ベルギーの名プロデューサーJean KlugerとDaniel Vangardeが手がけた、奇想天外なスタジオ企画盤『Le Monde Fabuleux Des Yamasuki』。子ども合唱団のコーラス、柔道の掛け声、辞書を片手に作られたインチキ日本語の歌詞、それらがサイケデリック・ポップ、ファンク、サンバ、バブルガムの上で渦を巻く、世界でも類を見ないカルト・ポップ作品。代表曲「Aieaoa」は後にBlack BloodやBananaramaによって再解釈され、ワールドカップ公式曲にまで発展したメロディとして知られるなど、ポップカルチャーへの影響も大きい。ふざけているのに異様に完成度が高いという矛盾が魅力的で、50年以上経った今でもジャンル不明のまま輝き続ける一枚。
幾何学模様のドラマー、シンガーであり、〈Guruguru Brain〉の創設者でもある Go Kurosawa による初のソロ・アルバム『Soft Shakes』。2024年初頭から半年間、オランダ・ロッテルダムに設立したGuruguru Brainスタジオで行われたひとりジャムセッションを経て制作され、演奏からプロデュースまですべてを自身で手がけている。即興性に基づいた柔らかな遊び心と、音が自然に流れていくような開放感が全体に溢れており、クラウトロックやスペースロック、アジアン・サイケ、レゲエ、ボサノヴァなど多様な音楽的エッセンスが、ポリリズムやシーケンサーによるリズム、レイヤードされたテクスチャーの中に溶け込み、ジャンルを超えた独自の音響世界を形作っている。制御された精密さよりも、音そのものの流れを追いかけるような姿勢が貫けれており、個人的で親密な音楽でありながら、自由で、時間や空間を超えた旅へと導く普遍的な内容になっている。
Kikagaku Moyoの原点を刻んだセルフタイトル作。ストリートでのバスキングから始まったという初期の勢いと、自然発生的なジャムの空気をそのまま封じ込めており、シタール、パーカッション、テルミン、管楽器、そしてエアリーなヴォーカルが、彼らの自然と精神世界を往復するサイケデリックの核を形づくっている。音像の中心にはRyu Kurosawaのシタールがあり、ロックの反復に東洋的な浮遊感を重ねて独特の軽さを生む。ギターは柔らかい残響をまとい、波のように揺れるコードがゆっくりと広がる。ドラムはタイトでありながら余白が多く、微妙に揺れるテンポがトランス的な感覚をつくる。テルミンや管楽器の加える色彩に、遠くから聴こえるような淡い存在感のヴォーカルは楽器のうねりに溶け込む。サイケデリックロックの骨格にフォークの素朴さとインド古典や様々な音楽のニュアンスが自然に混ざり合い、自然の中で録音したような開放感を持つ、幾何学模様の原点となる一枚。※入荷時よりスリーブ上部に若干ダメージございます、予めご了承くださいませ。

Tom Smeyersによる、オールドスクール・ハウスの温度感を保ちながら、細部の音作りでひねりを加えた現代的なダンス・トラック集『Same Same, But Different』が、ベルギーの〈We Play House Recordings〉から登場。丸く太いベースとしっかりしたキックが強度を支え、909/808系のドラムやシンプルなコード進行がハウスの基本的な心地よさをしっかり押さえている。一方で、Broken BeatやDrum’n’Bassのニュアンスがリズムの跳ね方やベースラインの動きに自然に混ざり、曲ごとにテンションが少しずつ変化する。シンセのアタック、ハイハットの抜け、ローエンドの処理などサウンドデザインが非常に丁寧で、レーベルの中心人物Red Dも「どうしてもリリースしたかった」と語る、Smeyersの現在のスタイルを象徴するベルギー新世代の一枚。

幾何学模様が世界的なサイケデリック・バンドへと成長していく、その最初の大きな一歩を刻んだ名作『Forest of Lost Children』が、バンド自身の手で〈Guruguru Brain〉から待望のリプレス。アシッド・フォークの柔らかい質感、ガレージ・ロックのざらつき、インド古典音楽に通じる反復のトランス感がゆるやかに混ざり合う独特の音像。幽玄なメロディが漂う「Kodama」や「White Moon」、エスニックな高揚感を帯びた「Streets of Calcutta」など、後年の作品にもつながる幾何学模様らしさがすでに濃厚に息づいている。森の奥で鳴っているようなアナログな空気感、余白の多いミックス、手触りのある演奏が、聴くたびに異なる景色を見せてくれる。荒削りでありながら自由度が高く、バンドの根源的なグルーヴがむき出しになった初期の魅力が詰まった作品。

10月中旬入荷。Mountainsの片翼として知られるKoen Holtkampによる、ブルックリンからハドソン・バレーの自然環境へ移住したことを契機に生まれた、静けさと観察のための実験室内楽作品『Nightlife』。深夜のセッションを中心に制作され、モジュラー・シンセの実験から派生した電子的撥弦楽器のような物理モデリング音を核にしながら、Greg Fox(ドラム)、Matt Bauder(サックス/フルート)、Ben Vida(シンセ・ベース)らの生演奏がしっかりとした身体性とリズムを与えている。電子音の質感は繊細だが、演奏の呼吸が作品の中心にあり、ドラムの推進力、サックスやフルートの柔らかな揺らぎ、電子的撥弦音の微細なニュアンスが同じ空間で交差し、アンサンブルのようでありながら、各音が独立したレイヤーとして配置される多層的な音場が広がる。レイヤーは薄いのに奥行きが深く、静けさの中で音がゆっくりと動き続ける、夜の時間特有の集中と観察の感覚がそのまま音楽として立ち上がる。実験音響の精度と生楽器の演奏感が自然に溶け合う、空間と質感への意識が研ぎ澄まされた作品。

10月9日発売。ブルックリンの静かな空気をそのまま封じ込めたような、Idaの1996年作が〈Numero Group〉による30周年デラックス版として再登場。男女ハーモニーの柔らかい重なり、アコースティック主体の控えめなリズム、遠くで揺れるギターのニュアンスが、当時のインディ・フォーク、スロウコアの美点をそのまま伝えてくれる。恋人同士が個人的な贈り物として曲を選び、カセットに入れたミックステープ経由でじわじわと全国に広まったという背景も含め、静かな感情の揺れを丁寧に描くアルバムとして長く愛されてきた。今回の30周年盤は、オリジナルの親密な質感を保ちながら、未発表音源を含むボーナストラックと豊富な写真資料を追加した2LP仕様。初期Idaの魅力をより立体的に感じられる、アーカイブとしての価値も高い再発。

10月9日発売。ブルックリンの静かな空気をそのまま封じ込めたような、Idaの1996年作が〈Numero Group〉による30周年デラックス版として再登場。男女ハーモニーの柔らかい重なり、アコースティック主体の控えめなリズム、遠くで揺れるギターのニュアンスが、当時のインディ・フォーク、スロウコアの美点をそのまま伝えてくれる。恋人同士が個人的な贈り物として曲を選び、カセットに入れたミックステープ経由でじわじわと全国に広まったという背景も含め、静かな感情の揺れを丁寧に描くアルバムとして長く愛されてきた。今回の30周年盤は、オリジナルの親密な質感を保ちながら、未発表音源を含むボーナストラックと豊富な写真資料を追加した2LP仕様。初期Idaの魅力をより立体的に感じられる、アーカイブとしての価値も高い再発。

10月9日発売。メルボルンのインスト・ファンク集団Karate Boogalooによる、20年近く磨き続けてきたミニマル・ファンクの美学を純度高く結晶させた最新作『Access All Areas』。俳句のように簡潔をテーマに、ひとつのアイデアを極限まで研ぎ澄ませた楽曲が並び、録音方法も余計な装飾を徹底的に排除し、シンプル。ギター、オルガン、ベース、ドラムの輪郭が驚くほどくっきりと浮かび上がる。乾いたドラムの間、粘りのあるベースライン、構造そのものを形づくるギターのリフ、控えめながらグルーヴに柔らかい層を与えるオルガン。どの曲もひとつのフレーズを完璧に仕上げるという姿勢が貫かれている。短く、強く、覚えやすい曲が連続し、アルバム全体が軽やかでありながら深い。The MetersやBooker T & The MG’sの伝統を継承しつつ、現代的なミニマル感覚で再構築した引き算のファンクの到達点。

10月9日発売。メルボルンのインスト・ファンク集団Karate Boogalooによる、20年近く磨き続けてきたミニマル・ファンクの美学を純度高く結晶させた最新作『Access All Areas』。俳句のように簡潔をテーマに、ひとつのアイデアを極限まで研ぎ澄ませた楽曲が並び、録音方法も余計な装飾を徹底的に排除し、シンプル。ギター、オルガン、ベース、ドラムの輪郭が驚くほどくっきりと浮かび上がる。乾いたドラムの間、粘りのあるベースライン、構造そのものを形づくるギターのリフ、控えめながらグルーヴに柔らかい層を与えるオルガン。どの曲もひとつのフレーズを完璧に仕上げるという姿勢が貫かれている。短く、強く、覚えやすい曲が連続し、アルバム全体が軽やかでありながら深い。The MetersやBooker T & The MG’sの伝統を継承しつつ、現代的なミニマル感覚で再構築した引き算のファンクの到達点。

フランスのビートメイカーでありヴァイナル・ジャンキーであるOnraが、自身の祖父母の故郷であるベトナムへ旅した際、サイゴンの街をバイタクで巡った末に見つけた約30枚のボロボロのベトナム、アジアン・レコードを買い集めたことを起点に制作された、オリジナルは2007年にリリースされたインスト・ヒップホップのカルト名盤『Chinoiseries』。伝統的なアジアン楽器の独特な旋律や哀愁漂うボーカル・サンプルを、J. Dillaへの深いリスペクトを感じさせる太く跳ねるブームバップ・ビートへと大胆に昇華。エキゾチックな異国情緒と高度な編集センス、そして遊び心あふれる緻密な構成力が高次元で結実し、他にはない極上のオリエンタル・ビート・サウンドを構築している。単なる珍品の域を完全に凌駕したヴィンテージな質感と圧倒的な中毒性を誇る大名盤!
テクノ、モンド、ロー・ファイ、彼らは1978年にその全ての宇宙を先取りしていた。
デビュー前、4chテープ・レコーダーでレコーディングされ、1996年にCD化されて大きな話題を呼んだ幻の音源集『1978』が、30年のときを経て待望の初LP化。ファンクラブ限定のソノシートに別ヴァージョンが収録された「コンフュージョン」を含む未発表3曲を収録。
東芝EMIからのデビュー盤を出す一年前、ヒカシューはすでに興味深い独自の音楽を作っていた。東京豊玉北六丁目の交差点から細い路地を線路に向かった一軒家で、雨戸を閉め、毛布を張り、激しいリズムマシーンに音を響かせていた。巻上公一

時代の評価軸を静かにすり抜けながら、現在進行形で更新を続ける孤高の電子音楽家【Shinichi Atobe】。セルフ・レーベルPlastic & Soundsから初となるアルバム「Silent Way」。
本年7月突如始動させたセルフ・レーベル【Plastic & Sounds】より、二枚の12インチ・シングルを経て、現時点での集大成となる全10曲を収録したアルバム「Silent Way」がCOLORED VINYL 2LP(Gatefold Sleeve/33RPM/Limited Press)レコードとデジタルで3月27日にリリース。
マスタリング/レコード・カッティングは、ベルリンのRashad Becker。アートワークは、写真家、山谷佑介の作品を核に、P&Sの全作品を手がける鈴木聖がその世界観を構築。
昨年、10月、Resident Advisorの人気シリーズ「RA Podcast」に登場し2023年4月に行われた世界初ライブの音源が公開、渋谷WWWにて、Plastic & Soundsローンチ公演「"Plastic & Sounds" label launch party」を開催。2026年1月には、同会場のニューイヤーパーティーで名盤「Haet」のライブセットを披露。
また、前作「Discipline」がPitchforkの「The 30 Best Electronic Albums of 2025」に、そして代表曲のひとつである「Butterfly Effect」がRA(Resident Advisor)の「The Best Electronic Tracks of 2000-25」に選出されるなど国内外で注目の高まる中のリリースとなる。
ギタリストJakob Broと、高田みどりによる初のコラボレーション。二人はこれまでヨーロッパでの共演歴があり、その流れが本作で結実。制作はPierre Boulez Saalの委嘱によって始まり、タイトル「あなたに出会うまで」は高田みどりの楽曲名に由来。友情が生む静かな変化をテーマにした、親密で穏やかなアコースティック作品。BroのギターはECM系らしい透明感のある残響をまとい、高田みどりのマリンバやパーカッションは木の温度をそのまま伝えるような柔らかい倍音を広げる。二人の演奏は主張しすぎず、呼吸のような間合いで響きを交換する音の対話として進行する。森の中で光が揺れるような微細なパーカッションの粒子と、ギターの短いフレーズが静かに重なり、小さな生態系が立ち上がるかのよう。音が少しずつ形を変えながら連なり静かな風景がゆっくりと立ち上がる、環境音楽と室内楽の境界を歩くような親密な作品。

10代の頃にTerry Rileyの『Shri Camel』を聴いて以来、純正律、マイクロチューニングから強い影響を受け続けている、イングランド北部ヨークシャー出身の音響作家、Kirk Barleyによる最新作『Arc』純正律やオフグリッド・シーケンス、代替チューニングを全編で採用しており、ガムランのような金属的な響き、ガラス質のパッド、クラリネットやギターの柔らかなレイヤーが、Matt Daviesによる繊細なパーカッションと交差しながら、電子音とアコースティックの境界を自然にたゆませていく。ミニマル、第四世界、アンビエント、ダブ・テクノの要素が静かに共存し、風景がゆっくり変化していくような広がりを持つ作品。細部の質感や音の揺れを丁寧に追いかけるリスナーに向けた、〈Marionette〉らしい高精度なサウンド。

オリジナルは1980年リリースの、オーストラリアはメルボルン産ジャズ、フュージョンの隠れた名作『Pyramid』が〈Outernational Sounds〉より新規マスタリングで再発。Weather ReportやReturn to Foreverの流れを汲みながら、ローカルな温度感を持つ独自のサウンドが魅力的で、A面は、エレピの柔らかな揺れとホーンのメロディが軽やかに広がる都会的なフュージョンの質感が中心。B面には本作の核となる、17分の長尺曲「Universal Suite」を収録。内省的な静けさからラテン・パーカッションの躍動、ファンク的な熱量までゆっくりと連続する構造を持ち、旅のような音の流れが楽しめる。洗練されたフュージョンとオーストラリア特有のオーガニックな質感が絶妙に混ざり合った、充実した内容の一枚。
1974年、パリで録音されながら長らく未発表だったByard Lancasterのファンク寄りセッション『Funny Funky Rib Crib』が、〈Souffle Continu〉により初の公式リリース。多楽器を自在に操るLancasterと、Keno Spellerのパーカッションが組み合わさり、〈Palm Records〉期の実験性とファンクが同じ軌道で響く。サックスは熱量を保ちながら、ファンク的な反復リフとフリージャズ的な飛翔を行き来し、フルートやバスクラリネットは柔らかい陰影をつくる。ピアノやオルガンは骨格を支えつつ、時にスピリチュアルジャズ的な高揚を生み出す。さらに電子処理が加わり、独特の質感が立ち上がる。Keno Spellerのパーカッションは儀式的な反復と跳ねるグルーヴを同時に生み、タイトルのFunny、Funkyが示す遊び心をしっかり支えている。フリージャズとスピリチュアル、ファンクの濃密な交差点。

パキスタンの伝説的声楽家Salamat Ali Khanが、1974年にベルリンの新ナショナルギャラリーで開催された「MetaMusik」フェスティバルで遺した未発表ライヴ録音の第2弾!Michael Hönigが録音を手掛け、タブラのShaukat Hussein Khan、ハルモニウムのHussein Bux Khanと共に挑んだ、深夜のラーガ「Raag Chandrakauns」の圧巻の40分間を収録。タンプーラを廃し、特別に調律されたアルプ・チターを自ら奏でる特殊な編成が生み出すのは、従来のインド古典の枠組みを超えた美しくも重厚な浮遊感。前半の深遠で瞑想的な静寂から、後半にかけてタブラの超絶技法と複雑に交錯するスピーディな声の即興展開へとダイナミックに変化し、最後は息を呑むような一体感で熱狂の渦へと導いていく。伝統に裏打ちされた確かなロジックと自由な即興性が交錯する、実にスペーシーでサイケデリックな名演。

Wareikaのギタリストとして知られるHenrik Raabeが、〈Mule Musiq〉から届ける初のソロ・アルバム『LDS』。ジャズ、アフロ、ダブ、ニューエイジ、アンビエントが自然に溶け合う、ジャンル横断型のダウンテンポ作品で、生音の温度感と電子音の透明感が絶妙に混ざり合い、Studio Mule的な音響と質感を重視した佇まいを持っている。ギターは旋律を主張するのではなく、空気の揺れや残響をデザインする音響素材として扱われ、柔らかな陰影をアルバム全体に与えている。The Durutti Column、Dennis Bovell、Virginia Astleyらを思わせる、抒情的かつ夢幻的な淡いノスタルジーが漂いながら、ドイツ的なミニマリズムで引き締められたサウンドは、どこか旅の情景を思い起こさせる。地名を思わせるタイトルが象徴するように、曲ごとに風景が変わるシネマティックな構成も魅力的で、耳に優しく、心に深く染み込む一枚。
メンフィス出身の異才Wilbert Gavin MaysによるプロジェクトCities Avivが、自身のレーベルを離れ名門〈Black Truffleから〉アルバム『Even Colder Spring』をリリース。10年以上にわたりヒップホップの既成概念を解体してきた彼が、過激なループ処理と変幻自在の語り口、そしてダンテやアンリ・ベルクソンの思想までを散りばめたリリックを交錯させ、極めて個人的で不可解な音響世界を立ち上げた全16曲の意欲作。数秒で途切れるトラックや唐突なフィールド・レコーディング、歪んだノイズの層が予測不能な展開を描くなか、技巧的なラップと意図的にハーモニーから浮遊させた歌唱が不穏な美しさを醸し出す。従来の閉塞感に留まらず、プライベートプレス調のニューエイジなきらめきやClusterを彷彿とさせるクラウトロックの遊び心、ローファイIDMが混交し、ラストは、いくつものサンプリング・ループが幾重にも重なり合ってモヤのように漂う、恍惚とした歪みの雲の中へと消えていく。アンダーグラウンド・ヒップホップと前衛音響のはざま。

音響作家の内田輝と世界的写真家である山本昌男が、フランスの美術・音楽レーベル〈IIKKI〉を舞台に手掛けてきたコラボレーション三部作の完結編『Nusa』。光を描いた第1作『Sasanami』、闇を探求した第2作『Kurayami』を経て辿り着いた本作は、対立する二つの要素が互いを引き立て合い補完し合う光と闇の双極性をテーマとしており、2026年初頭に両者が共に赴いた北海道にて、流氷や極寒の自然現象から捉えられた透明なフィールド・レコーディングを組み込み構築。凛とした気品を漂わせる繊細な演奏と、厳しい冬の空気や氷の響きが交錯し、山本のモノクロームな写真世界と呼応するように静謐で詩的なグラデーションを描き出している。光と闇の狭間で静かに息づく、人間の気配と自然の静けさを捉えた音響作品。
