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25年の時を経て輝きを増す、異端のポスト・ロック金字塔!2000年にリリースされたThe Mercury Programによる『From The Vapors of Gasoline』が〈Numero〉より再発。本作は、当時のポスト・ロックの文脈にありながらも、それとは一線を画すサウンドを確立しており、ルイヴィル、シカゴ経由の90年代後半のポスト・ロックの熱が冷めつつあった中、ヴィブラフォンを大胆にフィーチャーし、ギター主体の構造から離れたアプローチで独自の音響世界を切り開いた。ポスト・ハードコア的な緊張感とニューエイジや現代音楽的な静謐さを同居させた構成美が魅力的で、時間の流れに寄り添うような滑らかな展開と、瞬間的に鋭く切り込むような不協和の挿入があり、聴くたびに新しいディテールが浮かび上がる。リズムセクションはあくまで有機的でありながら、構築的でもあり、トリオ編成の限界を超えた広がりを感じさせるアンサンブル。今回の再発のリマスターでは、繊細な音の階層がより明瞭に浮き上がり、当時のプロダクションでは聴き取りにくかったハーモニクスや残響のニュアンスが豊かに表現されている。

Fleet Foxes、David Byrne、坂本慎太郎といった面々との仕事も知られる、グラミー賞にノミネートされたブラジル・サンパウロのマルチ奏者であり、ロック・トリオ”O Terno”の一員ことTim Bernardeによる古典的なサンバの流儀とロック的な気迫を架橋するシングル『Prudência / Praga』。もともとマリア・ベターニアとアライーデ・コスタのために書かれた楽曲を、今回は自らの声と解釈で再提示している。「Prudência」はカエターノ・ヴェローゾが「発掘されたクラシック」と評した曲。ベルナルデスのヴァージョンは70年代のTVセッション風に、飾りを削ぎ落としたライヴ感とむき出しの感情を響かせている。一方「Praga」はエラスモ・カルロスと共作し、コスタのアルバムに収められたキャバレー・サンバ。今回の録音ではトゥリパ、マリア・ベラルド、ルイーザ・リアンらをコーラスに迎え、打楽器も交えて妖しい魅力を放っている。現代ブラジル音楽の古典再解釈とアンダーグラウンド的な衝動の境目にある充実のシングル!

まさにUS地下シーンの器量!ギタリスト/インプロヴァイザーのWendy Eisenbergと、BastroやRed Krayola、Gastr del Solなどへの参加も知られる名作家David Grubbs、そして、Daniel Johnstonを手掛けた事も知られる伝説のプロデューサー/マルチ奏者にして〈Shimmy-Disc〉の創設者Kramerによる新結成のスーパーグループ、Squanderersがデビュー作『If a Body Meet a Body』に続く新作『Skantagio』をリリース。バンドは初作をわずか半日で録音していて、今回はその「昼休憩後」に録ったセッションをまとめたもの。「無駄遣い(Squanderers)」を名乗るだけあって、スタジオでは思いつきのまま即興演奏を一気に収録、作り込むことなくそのまま放出している。アヴァン・ロック、フリーインプロ、ローファイ・サイケ、ノイズ、即興ジャズのエネルギーがごった煮になったような雑多で自由なサウンドで、ギターの歪みや脱力したベース、奇妙な音響処理、気まぐれなテンション――何が飛び出すかわからない、90年代オルタナティヴの精神を引き継ぐ無防備な実験性。無計画な衝動とスタジオの空気ごとパッケージされた、風変わりでクセになる味わい。澄んだインプロヴィゼーションが冴え渡る一枚。

スウェーデンのマルチ奏者Gustav Horneijによるソロ・プロジェクトOrganic Pulse Ensembleによる、すべての演奏・録音・ミックスを本人一人で手がけた、瞑想的かつ民族的なスピリチュアル・ジャズ作品『Zither Suite』。タイトルにもなっている「チター」は、地元のチャリティショップで偶然見つけた楽器で、アルバム全体の雰囲気を決定づける象徴的な存在となっている。録音はヨーテボリ郊外の自宅アパートで行われ、宅録ならではのDIY精神に満ちた親密な音像が印象的。Pharoah SandersやDon Cherryを彷彿とさせる自由な即興性と、スウェーデンの民謡に基づく旋律が交錯し、特に「Jämtland」ではスウェーデンの地方に伝わる古い民謡や伝統音楽が現代のジャズと融合している。全6曲はそれぞれ異なる精神性とリズムを持ち、全体を通して、祈りのような静けさと、内面への深い問いかけを感じさせる。現行の宅録シーンから生まれた、至福感のあるスピリチュアル・ジャズ傑作。

フィンランドのスピリチュアル・ジャズ・プロジェクトOiro Penaによる『Live』。2022年春、パンデミックの余波が残る中、かつての編み物工場を改装してできたタンペレの文化スペースOnkiniemi Ateljeeで録音されたこの作品は、音楽が人々を再びつなぎ直す場として機能した瞬間を捉えた、熱量と即興性に満ちたライブ・セッションを収録している。中心人物Pentti Oironen(Antti Vauhkonen)を軸に、サックス、フルート、エレピ、ダブルベース、ドラムによる有機的なアンサンブルが展開され、ローファイな質感とスピリチュアル・ジャズの深みが交錯する。録音空間の響きを活かしたモノラル録音も相まって、音楽が生まれる瞬間の空気感をそのまま閉じ込めており、フィンランドのジャズの現在地を示している。〈Ultraääni Records〉と〈Helmi Levyt〉による共同リリースで、リサイクル素材のジャケットにシルクスクリーン手刷り・手書きナンバリングが施された限定盤として届けられる、物理的にもその場の空気を封じ込めたアートピース仕様。
デンマーク・コペンハーゲンを拠点に活動するインストゥルメンタル・ユニットJiyuによるセカンド・アルバム『Totem of Quiet Mystic』。ギタリストEmil JonathanとドラマーThomas Dietlを中心に、Karl Bille(パーカッション)やRune Harder Olesen(コンガ)らによる手触りのあるリズムが、アナログ・シンセやブラス・アレンジと絡み合いながら、静謐でありながらも濃密でオーガニックな音楽世界を描いている。デビュー作『Caught in the Rain at the Tea Shop』で提示された、ジャズ、アンビエント、ダブ、ソウル、ラテン、ヒップホップなどが融合したメロウで夢見心地な音楽性がさらに深化し、サイケデリックな質感とソロ演奏の躍動が加わることで、深みのあるより立体的なものとなっている。Ken Linh Dokyによるウーリッツァー、Bo & Lukas Randeによるフリューゲルホーンとサックス、Gustav Rasmussenによるトロンボーンなど、多彩なミュージシャンが参加するコレクティヴ的な構造も、Jiyuの音楽に豊かな広がりと深みを与えており、真の意味でジャンルの境界を越えた、都市の静けさと北欧の自然の神秘が交錯するかのような穏やかな没入へと誘う一枚となっている。

ウェスト・ロンドンを拠点に活動するプロデューサー、シンガーソングライターTutu TaによるEP『Violence or Violets』がUKアンダーグラウンドの気鋭レーベル〈Long Gone〉から登場。ダブ、エモ、ヒップホップ、ポストパンクなどを横断するサウンドは、本作でさらに幽玄かつ内省的に深化しており、ジャンルの境界を曖昧にしながら、都市の孤独や感情の揺らぎを繊細に描き出している。ダブ由来の空間処理とエフェクト、DIY的な制作姿勢、ジャンルに縛られず、個人の感情や都市の空気を音で表現するレフトフィールドな感性、ロンドンのストリートや地下文化の文脈を感じさせる土地との結びつきが感じられ、幽玄なヴォーカルが低音の効いたビートに溶け込む本作は、ロンドンのサウンドシステム文化の精神や美学を受け継ぎ、現代的に再解釈したような一枚となっている。DIY精神と都市的な感情の風景が交錯する現代のアンダーグラウンド・ポエトリー!
オリジナルは1978年リリースの、ジャマイカのシンガー、プロデューサーLinval Thompsonによる初のダブ・アルバムにして、ダブ史に残る重要作『Negrea Love Dub』。Channel Oneスタジオにて録音、King Tubby's Studioでリミックスされた本作は、Aston “Family Man” Barrett、Robbie Shakespeare、Sly Dunbar、Errol “Chinna” Smithらジャマイカ音楽の黄金期を支えた名演奏家たちによる重厚なグルーヴと、King Tubby、Scientist、Professorらによる空間処理が融合した濃密な音響世界で、音の隙間に緊張感と余韻を宿し、ダブの構造美が際立っている。ヴォーカルを排したインストゥルメンタル・ダブでありながら、ルーツ・レゲエの魂をしっかりと感じさせる、Thompsonがプロデューサーとしての手腕を確立した記念碑的作品。ダブの深層に触れる一枚。
ベトナム中部高原に暮らすJarai、Bahnar、Ede、Rơngaoなどの少数民族による伝統音楽を収めたコンピレーション・アルバム『Music From the Mountain People of Vietnam』。Jarai、Bahnar、Ede、Rơngaoといった民族の伝統的な演奏を、現地でのフィールド録音によって収録した本作は、旋律や構造よりも、音色の揺らぎやリズムの呼吸に重きを置いており、極めて素朴でプリミティブだが鮮烈な印象を残す。収録されているのは、竹製打楽器や弓琴、銅鑼、ギター、そして声といった限られた音素材による演奏で、シンプルでありながらその響きは驚くほど豊か。まるで山間の集落に流れる時間そのものを聴いているかのような空気は、音楽というよりも音の営みに近く、耳を澄まさなければ聴こえないような静かな音は、都市の喧騒から離れ、音楽の原初的な力に触れたいと願うリスナーにとって、耳で旅するための最良のパスポートとなっている。これまでも、ミャンマー、ラオス、インドネシアなどアジア各地のローカル音楽を記録してきた〈Sublime Frequencies〉による、ベトナムの少数民族文化に深く踏み込み、消えゆく音の風景を丁寧に掬い取った一枚。現地に溶け込んで撮られた写真と詳細なライナーノーツが付属し、音だけでなく背景にある生活や文化への理解も促してくれる構成となっている。
オリジナルは1982年発表のTriston Palmaによるヴォーカルとダブが交互に展開するショーケース形式で80年代ジャマイカ音楽の真髄を刻んだ傑作『Show Case in a Roots Radics Drum & Bass』。プロデュースはJah Thomas、エンジニアにはKing TubbyやScientistといった名匠が並び、バックを固めるのは当時最強のリズム隊Roots Radics。Errol “Flabba” Holtの重厚なベースとStyle Scottの切れ味鋭いドラムを軸に、ホーンやキーボードの名手たちが加わり、深みのあるグルーヴを生み出している。収録曲はトリストン・パルマの甘くソウルフルな歌ものと、その後に続くダブ/インストゥルメンタルが交互に展開する構成で、ヴォーカルとリズムの双方を一度に堪能できるショーケース形式ならではの魅力が詰まっている。ここでの“Drum & Bass”は現代的なクラブ・サウンドではなく、ルーツ・レゲエにおけるリズムの核を意味するもので、その名の通り、ラディックスの圧倒的なリズム・ワークがアルバム全体を貫いている。ジャマイカ音楽史を象徴する布陣によって生み出された、ヴォーカルとダブの両面を楽しめる名盤。
ドイツの知られざるジャズの断片を掘り起こす、〈Tramp Records〉による人気シリーズ『Peace Chant』のVol.8。1974年から1986年の間にドイツで自主制作・プライベートリリースされたジャズ音源を集めたコンピレーションで、これまでのシリーズ同様、レコード店にも並ばなかったようなローカルなジャズ録音を丹念に掘り起こし、ソウル・ジャズ、モーダル、アヴァンギャルド、ビッグバンドなど多彩なスタイルの楽曲を収録、初めて広く紹介する一作。Jazz Workshop Ensemble、Music Liberation Unit、Ulmer Jazz Quintetなど、地域のジャズコミュニティや教育機関のジャズ・アンサンブルから個人宅で録音された即興演奏まで、商業的なジャズとは異なるDIY精神と実験性に満ちた音楽的記録となっている。未発表写真や詳細なライナーノーツも付属し、ジャズ本来の自由と探求の精神を体現するシリーズとして、音楽史的にも文化的にも価値の高いアーカイブ的作品となっている。
UKアンダーグラウンド・エレクトロ/テクノ・シーンの中核レーベル〈Tone DropOut〉から、シリーズ第12弾となるコンピレーションEP『Tone DropOut Vol 12』が登場。レーベル共同主宰のDAWL、The HE-MEN(SWEEN)、そしてASCOTによる4トラックを収録し、90年代UKレイヴの精神を現代に蘇らせるような、荒々しくも洗練されたサウンドが展開される。〈Tone DropOut〉らしいDIY感とアナログ感が際立つプロダクションで、ブレイクビーツ、ブリープ、ディープでダークなグルーヴ、そしてアナログ感のあるベースラインが特徴で、オールドスクール・レイヴや初期エレクトロの影響を色濃く反映した内容。The HE-MENによる「Battle Cat」や「Chicken」は、ファンキーかつ攻撃的なブレイクスを展開し、DAWLの「Night Of The Living Bass Drum」は重厚なベースが唸るレイヴ・テクノ。ASCOTの「Meditazionne」は瞑想的なエレクトロで締めくくられ、Tone DropOutの美学を体現する一枚となっている。
グラスゴーを拠点に活動するプロデューサーConna Harawayによる3曲入りの12インチEP『Shifted』がMatthew Kent主宰の〈Short Span〉から登場。前作『Spatial Fix』で展開された濃密なテクスチャと空間的な音響を踏まえつつ、本作ではグルーヴ感のあるベースラインによる推進力と静けさや余白、抑制の効いた音の密度のコントロールとのバランスに焦点を当て、より洗練されたサウンドへと進化している。A面には、XENIA REAPERとの11分超のコラボレーション「Redirect」を収録。深夜のグラスゴーでのジャムセッションから生まれたこのトラックは、浮遊感のあるシンセと繊細なベースラインが絡み合い、アンビエント・ダブの美しさを極限まで引き出している。B面には、クラブ対応の4×4テクノ「Detach」と「Duration」を収録。ミニマルでディテールに富み、リスニングにも適した柔らかなグルーヴが特徴的で、Basic ChannelやDeepchord、Shinichi Atobeなどの系譜に連なる作品となっている。リスニングにも耐えうる、グラスゴーのアトモスフェリックな電子音楽の流れを体現する重要作。
The Trilogy Tapesを代表するユニット、メルボルンを拠点とするConrad Standish と Sam Karmel によるCS + Kremeの2作目『EP #2』がめでたくも2025年リプレス。本作は、2016年のデビュー作『EP #1』と対をなすように構成された作品で、ダウンビートの枠を越えて、アンビエント、アブストラクトなソウル、DIYフォークやニューエイジ的要素をも取り込み、独自の引き算の美学で練り上げられた楽曲群が並ぶ。シンプルに削ぎ落とされた音像が漂い、呼吸し、夢と現実の境界を漂うような世界観を築き上げており、ハイライトのひとつ「Roast Ghost (Swimming Thru The Pillars Mix)」は、808の脈動と深くうねるベース、そしてConradの声がろうそくの灯のように揺れながら9分間を染め上げる陶酔的なトラック。HTRKの Nigel Lee-Yang を迎えた「Whip」ではギターの旋律が陰影を加え、終盤の「Portal」では、しなやかなベースと鍵盤、コンガ、そしてJack Doepelのサックスが加わり、The Necks や Bohren & der Club of Gore を想起させる広大なパノラマを描き出す。全体を通して、冷ややかなシンセの揺らぎや、光沢を放つ音の粒、神秘的なリズムが組み合わさり、どこでもない場所で鳴っているような、超現実的で映像的なサウンドを形作っている。『EP #1』と並んでCS + Kremeの美学を決定づけた作品であり、メランコリックな美しさをたたえた現代クラシックとして、長くリスナーに愛されている一枚。
Zenker Brothersが主宰するモダン・ディープテクノ・レーベル〈Ilian Tape〉主要アーティストの一人であるイタリアのプロデューサー Andrea Cipolla による『Living Room』。アンビエント、ダブ・テクノ、ブロークンビートを軸に、空間性やテクスチャー、リズムを緻密に探求した作品となっており、ダブ由来の低音の重みときめ細やかなリズムの揺らぎを基盤にしながら、瞑想的なシンセ、内省的で余白を感じさせるサウンド・デザインを重ね合わせ、非4つ打ちのIDM的なリズムを展開。ビートは硬質でミニマルながらも、残響やエフェクトが深く施され、空間的な広がりが強調されており、穏やかでアンビエント寄りの曲から、ベースラインが前景化したトラック、さらに IDM 的なリズムの複雑さを前面に押し出す楽曲へと緩やかに移り変わっていく。静と動のバランスが巧みに組まれ、とりわけ、空間的なリバーブに包まれるシンセ・テクスチャーと、ダブ処理されたベース/ドラムの絡みは、成熟した味わい深い音響を生み出している。これまでのベース・ヘヴィなプロダクションから一歩距離を取り、より内面的で空間的な方向へと深化した本作は、ヘッドフォンでじっくりと聴きたくなる、リスナーを深く静かな世界へと誘う、聴き応えのある傑作。
ロシアのサンクトペテルブルクを拠点に活動するアンビエント・シンセシスト X.Y.R. と、S A Dのメンバー Vlad Dobrovolski によるコラボレーション・プロジェクトRadxのデビュー作『Reverse Acceleration of Dragons』が〈12th Isle〉から登場。両者が共有するのは、80〜90年代のヴィンテージ・シンセサイザーへの愛着、アンビエントや家具の音楽への親和性、そしてドラゴンをモチーフにした幻想的なイメージ。アルバムは、シンセ、ペダル、サンプラーを自在に組み合わせて構築され、荘厳な空気を湛える「Heavenly Shepherd of Silence」、揺らぐ空気に漂うような「Ovgo’s Etheric Mind」、熱帯雨林の湿度を思わせる「Liminal Space」など、多彩なサウンドスケープを展開。X.Y.R.のメディテーティヴなアンビエント感覚と、Vladの実験的かつ詩的な音作りが交差し、お互いの魅力を補完し合うような作品となっている。冷たい空気感、広大な空間を感じさせるリバーブや、ミニマルで内省的な構成などロシア的な雰囲気、アンビエント的で幻想的な世界観と、機材への深い愛着と音響探求の姿勢が混ざり合った奥深い魅力を感じられる一枚。
Laura Lippie、Kim Khan、Dr Winzoらを中心とした可変的なコレクティヴ、Troubadoursの三年間のセッションを凝縮した作品『Everything Is Being Recorded All The Time』。リヨン、アベクール、ベルリン、デンパサールといった土地での自由奔放なジャムから生まれた断片を再構築したもので、トラディショナルな楽器と最新のテクノロジーを掛け合わせ、ねじれたファンク、崩れかけたヒップホップ、幻覚的なポストパンクを横断するサウンドは、恍惚と不安が同居した奇妙な高揚感を漂わせる。Cibo MattoやVoice Actorを思わせるウィスパーラップ、歪んだフルートやサズの即興演奏、ドローンやノイズを伴う儀式的な展開など、多彩な要素が雑然としながらも有機的に繋がり合い、まるで記憶の断片が音として浮かび上がるような、現実感覚を曖昧にするような音響を生み出している。フィールドレコーディングや断続的なサンプルの挿入も相まって、都市のざわめき、遠くの祭礼、誰かの独り言といった音の断片に導かれながら、音の迷宮を彷徨うような一枚。

スコットランドのプロデューサー Lord Of The Isles によるディープ・テクノとアンビエントの間を漂うような、幻想的で奥行きのある電子音楽作品『Signals Aligned』。アルバムの核心には歪みを通した発見というコンセプトがあり、真実は誤りや錯覚によって覆い隠されているように、音もまた歪みやノイズを介して本質がちらりと現れる構造になっている。霧のように広がるシンセや揺らめくノイズ、深くうねるベースとダブ的なリズム、ときどき現れる力強い4つ打ち、ノイズや歪みをアクセントにしたざらっとした質感が重なり合い、静けさと高揚感を行き来するサウンドスケープを描き出しており、アンビエント的に没入できるトラックから、しっかりとダンスフロアに向けたビートまで、クラブでも自宅でも楽しめる多層的な仕上がりになっている。神秘的でありながらも心地よい推進力をもった本作は、Lord Of The Isles が築いてきた個人的かつ探求的なサウンド世界をさらに深化させた一枚となっている。

人気作『風物詩』や『In A Landscape』といった実験的テクノの大傑作でも知られるベルリン拠点のサウンド・アーティスト、Sa Paの最新12インチ作品が新鋭レーベル〈Short Span〉から登場!この人の特徴である幻想的で重厚な音響が4つの新たな方向へと展開。サブベースと濁ったアトモスフィアが絡み合う8分間のビートレス・トリップ"Captigon"、グリッドレスなドラムパターンと断片的なヴォーカルサンプルが交錯する抽象的なリズムトラック"So Simple"、13分に及ぶミニマル・テクノのグルーヴに熱処理されたベースラインが絡む"Boredom Memory (Extended Memory)"(サブウーファーでの再生が推奨!)など、全体を通して、ダブ・テクノ、アンビエント、実験音楽の要素が融合し、内省的で深遠な音世界を構築した秀逸タイトル!

イギリスのフォーク歌手シャーリー・コリンズが22歳のとき、1958年春に録音した伝統的なフォークソングをシンプルかつ誠実なスタイルで歌ったデビュー・アルバム、『Sweet England』が〈Moved By Sound〉より再発。彼女は当時、民俗音楽研究家アラン・ローマックスと共に暮らしながら、編集助手として彼の書籍やフィールド録音に関わっていた。録音はローマックスとピーター・ケネディによって、ロンドンのベルサイズ・パークにあるピーターの自宅スタジオで2日間にわたり行われた。本作では、彼女の朴訥とした歌声と最低限の伴奏が、古くから口伝で伝えられてきたイングランドのバラッドや労働歌、恋愛歌のもつ静かな力を際立たせている。シャーリー自身にとって、これらの伝承歌は音楽的・感情的に深く響く存在であり、このアルバムは、人生をかけて探求していくことになる「イギリス民謡」という大きな旅の「最初のおぼつかない一歩」だったという。伝統的な歌のよさが伝わってくる一枚。

イギリスのシンセポップデュオSpeedboatの一員としても知られるJohnny Sais Quoi によるデビュー・アルバム『Love On Ice』が〈Music From Memory 〉から登場。イタロ・ポップや80年代ニューウェイヴの影響を軸にしながらも、現代的なポップ感覚とDIY的な親密さを兼ね備えた本作は、FMシンセやドラムマシンを主体としたタイトなリズムに、アルペジオやヴォコーダー処理を施したヴォーカルが重なり、イタロ的な高揚感と淡いメランコリーを同時に醸し出している。出会いや別れなど人生の転機をテーマにしており、軽やかなポップの享楽性と、メランコリックな陰影とを行き来するような二面性が印象的で、シンセ・ベースの推進力と透明感のあるメロディラインは、ダンスフロアに直結する強度を持ちながらも、楽曲構造そのものはどこか内省的で、リスニングにも耐えうる静かな余白も残している。80年代的な懐かしさと同時に現代的な新鮮さを感じさせる一枚。
