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D’Angelo、Erykah Badu、Portishead、Talk Talkなど、2000年代初頭のエレクトロニカやトリップホップ、ネオソウルへの愛情を軸に、曇った空気感とローファイな質感をまとったLavurnの『Baby it Cold Outside』が、Cancer Houseを発掘したL.A.のインディ・レーベル〈Motion Ward〉より登場。ざらついたビート、湿度を帯びたヴォーカル、薄いシンセのレイヤー、ときおり挟まれるテープのようにくぐもった処理が重なる曇りガラス越しの音像。歌ものとしての親しみやすさと、レーベル特有のローファイな電子音のニュアンスが自然に溶け合う、夜のポップス。

シカゴのポスト・ロック、スロウコアの伝統を現代に繋ぐ新鋭、Cancer Houseのデビュー作『The Moth』。静かな緊張感と構築美を土台に、Carolineやdeathcrashと共有する冷たさと切なさが重なり、ローファイ録音のざらつきとともに独自の陰影を描き出す。乾いたギターのアルペジオと鈍いドラムがゆっくり重なり、ストリングの影が淡く揺れることで、スロウコア特有の静かな重力が立ち上がる。声の輪郭がぼんやりと滲むヴォーカルは90年代のポスト・ロックを思わせる哀愁が漂う。セッションを重ねながら練り上げられたという楽曲群は、どれも隙がなく、細部のアレンジに確かなリスペクトが宿る。シカゴの伝統を継ぎながら、2020年代の感性で更新したポスト・ロック、スロウコアの新たな指標となる一枚。
Quiet Time期のダウンテンポ作品で注目を集めたテキサス出身のプロデューサーGi Giによる、自身の手法「downtempo sampledelia」をよりダンスフロア寄りに進化させたフルアルバム『In Lieu』。サンプリングの断片をループし、曲の中で意味が変質していくプロセスを軸に、ハウス、ダブ、ジャングル、バレアリックの要素が柔らかく混ざり合う。テキサスとオーストラリアを移動しながら書かれた楽曲群は、音は柔らかく漂いながらも、ビートは以前より締まり、ドリフトと身体性のあいだにしっかりと着地している。忘れかけたレコード棚の記憶と、現代のリスニングバーの空気をつないだような、成熟した感のある一枚。

Warm Winters、Mappa、Oscilla Soundなどで活動してきたデトロイト拠点のプロデューサーInfantによる、より深く、より抽象的なアンビエント・ダブ・テクノ作が、シカゴの新鋭レーベル〈Kino Disk〉より登場。音は常に溶け、輪郭が曖昧なまま霧状のレイヤーとして重なっていく。リズムは前へ進むというより、深夜の鼓動のようにゆっくり脈打ち、空間の奥行きが静かに変化するたびに、ダブの残響が液体のようにたゆたう。Vainqueurやechospace[detroit]の深い残響美学と、emerやTopdown Dialecticの抽象ダブの質感が自然に交差し、古典と現行のダブ・テクノが同じ温度で並ぶような音像が生まれている。音の密度は薄いのに、空間の深さは広く、深夜の静けさの中で意識がゆっくり変化していくような、静かで鋭い重要作。
自身は〈Ampoule Records〉を主宰し、14歳の頃から音楽を作り続けてきたグラスゴー出身のアンビエント/エレクトロニカ界の鬼才Pubによる、2000年を代表する一枚としてカルト的評価を得たファースト・アルバム。Billboard Top 100入りまで果たしながらも、その音世界はあくまで孤高。ざらっとしたビートの執拗な反復、そこに絡まる甘い白昼夢のようなシンセスケープ、シンプルなサウンドをストイックに突き詰めることで、磨かれ抜いた美へと昇華した珠玉のチル・アンビエントであり、日常を離脱したプライヴェートな宇宙空間へ没入させていく名盤。〈Dubplates & Mastering〉でのリマスタリング。Porter RicksやBoards Of Canadaのファンの方にも手放しで推薦!
自身は〈Ampoule〉を主宰、14歳の頃から音楽を作り続けてきたグラスゴー出身のアンビエント/エレクトロニカ界の鬼才”Pub”。2000年にリリースのダブ・テクノ傑作曲「Summer」が待望の2026年リプレスです!
ライヴ・インプロヴィゼーションによるセッションから生まれた16分に及ぶ長尺作品で、静かにうねりながら変容を続ける音響空間は、IDM、アンビエント、ダブを有機的に結びつけた唯一無二の世界。名門〈Dubplates&Mastering〉でのマスタリング。20年の時を経ても色褪せることのない、IDM〜ダブ〜アンビエント愛好家必聴の一枚。

パリのオルタナティブ電子音楽ユニットRue des Garderiesが、2025年夏のPe:rsona Festivalで行った長尺ライブを収めた3LP。〈Femacosmé〉の美学を強く反映した作品で、アンビエント、IDM、ポストポップ、サイケデリック電子音が半即興的にゆっくりと溶け合う。音は常に揺れ、焦点が合ったりぼやけたりしながら、有機音とシンセの残響が霧の層として重なっていく。リズムは明確なビートではなく、遠くで脈打つ鼓動のようなIDM的な揺れが時折立ち上がり、空間の奥行きが変化するたびに、音の距離感が静かに移動する。声の断片はメロディではなく人の気配として扱われ、電子音の層の中に幽霊的な気配を生む。2時間以上の演奏をそのまま作品化したことで、どこかへ向かう旅ではなく、その場で意識がゆっくり変化していくような状態がそのまま立ち上がってくる。現行パリ・アンダーグラウンドのサイケデリック電子音楽を象徴する一作。

ブリストルのマルチ奏者MemotoneことWill Yatesによる最新作『Warm Shadows』。Ugnė Uma、Typesun、Jabu’s guestらが参加し、声・生ドラム・電子音が影をまとって共鳴する、深い余韻の一枚。アルバム全体を包むのは、アンビエント的な静けさと、ジャズの呼吸、そして電子音の淡いざらつきの重なり合い。Ugnė Umaの歌声は東欧フォークのようなメランコリーを帯び、Typesunの生ドラムは漂う音像に微かな身体性を与えている。夜の部屋の薄明かり、湿った空気、森のざわめきを思わせるような、タイトル通りの暖かい影がゆっくりと広がるような音楽。孤独な夜にそっと寄り添い、暗闇の中に確かな体温を感じさせてくれる屈指の音響詩。

ロンドン拠点のアーティストaloisiusによるデビュー・アルバム『vernacular』。ギター、チェロ、ピアノ、トランペット、声など、身の回りの楽器をラップトップの内蔵マイクでそのまま録音した生の素材だけで構築された即興的サウンドスケープで、整えられたスタジオ録音とは真逆のその場の衝動が作品の核になっている。全編が即興演奏のレイヤーで構成され、フォーク、室内楽、アンビエント、シューゲイズ、エクスペリメンタルが自然に溶け合う。1分に満たない断片的なスケッチから、13分を超える壮大な「The Garden」までが混在する、日記のような親密さとトランス的な没入がひとつの流れとして共存。Bianca Scoutがピアノで参加した楽曲もあり、レーベル内の有機的なつながりも感じられる。「vernacular」というタイトルが示すように、生活の中で自然に生まれる音楽の姿がそのまま封じ込められた、混沌としながら鮮烈で、野性味と祝祭感あふれる一枚。
ブラック・アーク黄金期の1977〜79年に制作された5つのクラシック・ディスコミックスを公式にまとめた〈Studio 16〉の人気シリーズ第1弾『5 Classic Discomixes From The Black Ark Studio 1977–9』。Lee “Scratch” Perryが最も創造性と狂気を爆発させていた時期の12インチ・ロングミックスを収録し、ブラック・アークの魔術的サウンドをそのまま封じ込めた決定的コンピ。代表曲「Disco Devil」はMax Romeo「Chase the Devil」をベースに、Perry自身がヴォーカルとエフェクトを重ねた ブラック・アークを象徴するサイケデリック・ダブの金字塔。煙のように立ち上るエコー、ざらついた質感、湿度を帯びた残響が絡み合い、スタジオそのものが呼吸しているかのような独特の音響空間を生み出す。さらに、Junior Murvin「Roots Train」やLord Creator「Such Is Life」など、当時の12"ミックス文化を象徴する長尺ヴァージョンを収録。特に「Such Is Life」は 未発表だったフルレングス・ディスコミックスが初めて公式に復元された貴重音源。ブラック・アーク期の魔術が最も濃密に味わえるクラシック中のクラシック。

Vincent Yuen Ruiz率いるコペンハーゲンのRytmisk Musik Konservatorium出身アーティストによる、静謐な室内楽的アプローチのアンビエント・ジャズ作品。ピアノ、ダブルベース、ドラムという伝統的なトリオ編成を取りながら、誰かが主役になるというヒエラルキーを避け、沈黙、空間、集団的注意を音楽の中心に据えている。ピアノは淡い光を落とすように響き、ダブルベースは深い影を作り、ドラムは空気の動きを確かめるように最小限のアタックを置く。3人の演奏は役割分担ではなく、同じ呼吸の中で音を置いていく水平なアンサンブルとして機能し、クラシカルな和声、ミニマリズム、即興の語法が自然に重なっていく。音の密度は常に薄く、影と光のコントラストがゆっくりと変化し、ジャズでも現代音楽でもアンビエントでもない、独自の音楽性の一枚。

ブルックリンを拠点に、フォーク・ミュージックの最も静かな形を追求するシンガーソングライターIvy Knightによる、50〜60年代のオールド・フォークやカントリーが持つ郷愁を、現代のミニマリズムで再解釈するデビュー・アルバム『Iron Mountain』。アコースティックギター、淡いシンセ、ささやくような歌声だけで構成された極限まで削ぎ落とした音数が特徴で、「Headlamp」「Red Rock」「Canyon」など曲名からも感じられるように、乾いた空気、岩肌、夕暮れの影といった、彼女が旅したアメリカ南西部の風景が音の余白とともに立ち上がる。Ivyの歌は語りのように親密で、過去の記憶や旅の断片が淡いフィルム写真のように重なっていく。ミニマルで親密、そして風景的。たった一人で静かに耳を傾けたい、旅の途中で感じる静かな孤独を共有するかのような一枚。
中村としまるとのコラボ作でも知られるリトアニア出身の作曲家Gintė Preisaitėによる、ピアノ、ギター、アコーディオン、クラリネット、トランペット、弦楽器など多数の演奏者を巻き込んだマルチ・インストゥルメンタルなエレクトロアコースティック作品『Instruments of Forgetting and the Singing Bone』。声、楽器、電子音が同じ距離で存在するような配置が全編にあり、近接録音の息づかいと、遠くの群衆ノイズが同じ空間に置かれることで、現実と夢の境界がゆっくり揺らいでいくかのよう。まばらなピアノは水滴のようで、その隙間に電子音の粒子が漂う。サンプルのサイケデリア、持続ドローン、ノイズの爆発、そして小さなポップの断片までがひとつの流れとして自然に連なる。音の質感は常に変化しながらも、忘却というテーマが静かに通奏低音として響く幻想的な音世界。
オリジナルは1999年にドイツの音響ミニマル名門〈~scape〉からリリースの、Kit Claytonのデビュー・アルバムにして、ミニマル・ダブ/クリック&カッツの金字塔的作品『Nek Sanalet』。カリフォルニアの電子音楽家Joshua Kit Claytonが、当時のベルリン音響シーンとUS西海岸のエクスペリメンタル感覚を接続した重要作で、深く沈み込むような低音、湿度を帯びたダブ処理、微細なクリックノイズが立体的に配置された音響空間。ビートは控えめで、音の粒がゆっくりと漂いながら沈んでいく深海アンビエントのような質感があり、メロディを排した霧のようなシンセが揺らぎを生み、音に包まれて「今」へとゆっくりと溶解していく。冷たい音響の中に微かな温度が差し込む、アナログ的な揺れやノイズの人間味も魅力。音の配置、空間の扱い、低音の質感が極めて精緻で、タイムレスな魅力を放つ最良のダブ・ミニマルの一つ。

デトロイト出身の作曲家でありドラマーのEric Hoegemeyerによるソロ名義Stardust Multiplierの最新作『Convergence』。ガラスマリンバ、フルート、アナログシンセを中心に構成された本作は、儀式的な静けさと、身体の奥に染み込むような深い共鳴を持つアンビエント。制作背景には、Hoegemeyerが経験した重い病気と長期入院があり、病室で聴こえる機械音や環境音、聴覚が再調整されていく感覚がそのまま音楽の構造に反映され、極めてミニマルで、微細な変化が大きな意味を持つサウンドへと結晶している。ガラスマリンバの硬質な響き、フルートの息遣い、アナログシンセの柔らかな音が重なり、自然音と電子音の境界が曖昧になるような音像が広がる。旋律は霧の中からゆっくりと立ち上がり、朝の儀式”のような静謐さと、回復のプロセスを思わせる解放が同居している。深い呼吸を取り戻すような、静かで力強い一枚。

ニューヨークのレーベル〈OST〉から登場した、ロシア出身のプロデューサーmu tateによるアルバム『life of mu』。個人的な記憶と物語を綴る私的なサウンド・ジャーナルのような作品で、友人たちによる語りが3つ挿入され、環境音、映画的サンプル、ローファイなビートが夢の断片のように浮かんでは消える。Ben Bondyを迎えた「memory of a memory」では、アンビエントの霧の中からギターと声が滲み出し、後半にはエモーショナルなノイズの高まりが訪れる。アンビエントの静けさに、IDM的なリズムやエレクトロニカの温度がそっと差し込まれる、DIYな美学と日記のような語りの親密さを併せ持った一枚。
フィールド録音とアンビエント、ミニマルの文脈で知られるSa Paが、新レーベル〈Dub Techno For Life〉を立ち上げ、その第1弾として発表した12インチEP『Girls On Tour EP』。これまでの内省的な音響作品とは異なり、クラブ向けの Sa Paを明確に打ち出した内容。10分に及ぶ「Mokira Ultra Dub」は、Mokira「Manipulation Musik」をSa Paが再構築したロング・ダブ。深海のような低域がゆっくり脈打ち、巨大な空間を往復するエコーが、Sa Paの音響処理をグルーヴィーに拡張している。「Waiting For You」は未発表曲で、柔らかいコードと軽やかなステップが心地よい、Sa Pa作品では珍しい開けた明るさを持つハウス・トラック。台北の雨夜に録音された「Modular System」は、モジュラー特有の揺れと湿度を含んだミニマル・ダブが魅力で、その場で生まれては消える音の粒子が生々しい。ダブ・テクノ、ミニマル、IDM、ハウスがSa Paの音響美学の中で再構築された、充実作。
UKアンダーグラウンドの重要人物Persianの名曲群を、若手プロデューサーMiles J Paralysisが再構築した〈Mysticisms〉の人気シリーズDubplate第12弾。90sデジタル・ダブ、ラガ、UKGのエッセンスを持つPersianの音源が、ダークでサイケデリックな現代ダブへとアップデート。A面は、重心の低いステッパーズとブレイクスの間を行き来する「Big Slide Remix」と「Breathwork Dub」。B面では、Persianのメランコリックな旋律を残しつつ、ダブテクノの深度へ沈み込む「Zatoichis Troubles」や、トリップホップの影を感じさせる「There Is No Love」など、Miles J Paralysisの黒い音響感覚がより強く表れる仕上がり。

ハンガリーのプロデューサーLaurine Frostが、自主レーベルよりリリースする最新作『Maiden』。架空の娘Lenaの人生を音で描くコンセプト作品群の中でも、本作は少女から大人へという最も揺れ動く時期を扱った、シリーズ随一のドラマ性を持つ一枚。ジャズの生々しさとエレクトロニックの構造が複雑に絡み合い、ウッドベースやサックスの有機的な響きが、IDM的なポリリズムやダブテクノの深い音響と共存する独自のスタイル。全編に漂うのは、深夜の都市を彷徨うような暗い映画的ムード。複数の拍子が重なり合うポリリズムが不安定な浮遊感を生み、音が常に変化し続けることで、Lenaの内面の揺らぎが立ち上がる。ジャズ、エレクトロニカ、アヴァンギャルド、ダブテクノが交差するFrostならではの音世界が、シリーズの物語性と強く結びついた作品。

ニュージーランド出身、現在はロンドンを拠点に活動する兄弟デュオ Chaos In The CBD の待望のデビュー・アルバム。ジャズ、アンビエント、R&B、バレアリック、ソウルフル・ハウスの影響を受けた、スピリチュアルで多層的なディープ・ハウス作品で、大ヒットEP『Midnight In Peckham』で見せたムーディな世界観を引き継ぎながら、今作では初めてライブ楽器やヴォーカルとのコラボレーションも導入している。BlazeのJosh Milan、Stephanie Cooke、Lee Pearson Jr.、さらにUKグライムのNovelistまでがゲスト参加しており、90年代ハウスの美学やクラブ文化への深い敬意を根底に持ちながらも、同時に海、砂、森、鳥、魚という自然との共生をテーマとした帰郷と郷愁の音楽でもある。「ニュージーランドは、バレアリック的な感覚があるけれど、パーティじゃなく自然に包まれているという意味だ」と語る彼らの音は、まさにビーチからアフターパーティ、深夜のクラブまでを流れるサウンドトラック。
A Made Up SoundことDave Huismansによる新名義In Transitでのセルフタイトル・デビュー・アルバム。2013年夏、Korg ESXサンプラーを使って2週間で制作された楽曲群を、長年にわたりリメイクし仕上げたもので、幾重にも重ねられたテクスチャーと緻密な編集によって、幻想的かつ内省的な音響を構築。テンポを抑えた穏やかなグルーヴと、ダブ・テクノから影響を受けたKorg ESXサンプラーによる反復と残響処理が光る。複雑な構造と知的な編集技術による深いリスニングにも耐える内容は、Civilistjävel!やDJ Trysteroなどを輩出した〈FELT〉からのリリースで、北欧的な静謐さと現代的な感覚が共存したDave Huismansの沈黙からの復帰を象徴する一作。クラブカルチャーの外側で育まれた静謐な電子音楽。


アムステルダム拠点のNicolini、Nushin Naini、La RatによるトリオDevon Rexiと、UKアンダーグラウンドの重要人物John T. Gastによるコラボレーション作『Breathstep』。クラウトロックの反復性、ノーウェイヴ的な生々しい質感、そしてGastの深く沈み込むダブ処理が混ざり合い、有機と人工が同時に脈打つような独特の音響世界を形成。音の断片が突然現れては消えるコラージュ的構造、湿り気を帯びた重低音、呪術的に加工されたヴォーカル。どれもがダンスミュージックの枠を外れながら、身体の奥を震わせる奇妙なグルーヴを生み出している。残響や空白の扱いが異様に巧みなGastのプロダクションもあり、音が沈んでいく深度そのものを聴かせるような感触のある前衛性と中毒性を兼ね備えた1枚。

ライプツィヒ拠点の電子音楽作家TIBSLCが、デジタルな霞の中の夢世界をテーマに描いたエクスペリメンタル・アンビエント『City of Something』。霧の層のように重なるシンセは輪郭がゆっくり溶け、ボーカルは光の粒のように曲の中へふっと現れては消える。淡いメロディが浮かんでは遠ざかる、視界がぼんやり滲むようなアンビエント・ポップや、ダウンテンポ寄りの微細なグルーヴが立ち上がる、アンビエント、エレクトロニカ、ダウンテンポ、ダブテクノ、トリップホップが柔らかく溶け合うハイファイ・アンビエントの断片集。電子音の粒子が漂い続ける、都市のどこでもない場所を描いた繊細な音響設計が静かに広がる一枚。
