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「2020年の3月に作品を作り始める時には、自分の好きなように録音しようとだけ決めていた。世の中にはコロナウイルスが広まってきており、だんだん大変な状況に変化していった。ライブの予定もなく、人ともほとんど会わなかったため、制作中、精神がいつもより少し深い場所にあるような気がしていた。静かな湖に釣り糸を垂らすように機材の前へ座る。新しい何かが水面下に潜んでいることをずっと感じていた。届きそうで届かない、あぶくのように浮かんでは消えるそれを捉えるのだ。」
_7FO「蘭 - 茫天」あとがきより抜粋
大阪の電子音楽家/プロデューサー・7FOによる2021年新作アルバム。本作は近年の世界的な「アンビエント/ニューエイジの季節」からはぐれたものであり、ハード機材への打ち込みだけで作られたユニークな音像は、7FOの新境地とも、原点回帰とも呼べるものになっている。「蘭 - 茫天」は、機械による詩的な感性をまとったあたらしい電子音楽アルバムとなった。
RVNG、Bokeh Versions、Metronといった海外レーベルからの発見〜地元・大阪のEM Recordsへと続いたリリースによって、かつてはひっそりと、マイペースに鳴らされていた彼の個人的な民藝品のような音楽は、世界のリスナーのもとへと届いていった。
近年では、ベルギー「ミアクスマ・フェスティバル 2019」でのTapesとの名演から、日韓ツアーへと冒険を重ねる。その湯気の立つような濃密な経験も一段落したころに、熱をクールダウンさせるようにして、誰に頼まれるでもなくひとり、音と向き合った結果うまれた「蘭 - 茫天」。水風呂のようにひんやりとした電子音の内側では、つくり手の心臓が、熱い血液を送っているのが感じられる。
まるで年代不明の自主制作盤のような宅録スケールの箱庭世界に、凝縮された宇宙をのぞき見る。彼は暗い部屋でひとり、1990年前後のKAWAIのデジタルシンセサイザーや、FMシンセなどを駆使し、自然のかたちをなぞるようにして、ミクロとマクロの音世界を響き合わせた。夢見心地に浮遊する、極楽浄土へとつづくリズムとメロディは、ギターを置いてなお、7FOの真骨頂である。
ホームリスニングからクラブサウンドシステムまで対応する、マスタリングは大城真。ひんやりとして、でもどこか人懐っこい、音のイメージを見事にジャケットに現出させたデザインは飛鷹宏明による。
音楽フリーク注目のレーベル、Warp傘下の〈Disciples〉からPhewの最新作『Vertigo KO』がリリース!
"このアルバムは、2017年から2019年、10年代の終わり、この閉塞的な期間に制作された音のスケッチです。
言い換えるなら、幻想に浸るでもなく、音楽へ逃避するでもなく、また世界観を提示するものでもなく、2010年代後半のある個人のドキュメンタリーミュージックです。
このアルバムの隠されたメッセージは、「なんてひどい世界、でも生き残ろう」です。” - Phew
日本のアンダーグラウンド・ミュージック界の伝説的なアーティスト、Phew。1978年に大阪で最も初期のパンク・グループの一つであるアーント・サリー (Aunt Sally) のフロントを務めたのを皮切りに、80年代にはソロ・アーティストとして坂本龍一、コニー・プランク、CANのホルガー・シューカイ、ヤキ・リーベツァイト、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンのアレクサンダー・ハッケ、DAFのクリス・ハースなど、多くの著名なアーティストとのコラボレーションを行い、近年では、レインコーツのアナ・ダ・シルヴァ、ジム・オルーク、イクエ・モリ、オーレン・アンバーチ、ボアダムス/OOIOO/SaicobabのYoshimi (Yoshimi P-We) などとのコラボレーションも行っている彼女が、最新作のリリースを発表。
本作は、これまでに、ブラック・ロッジ、ボグダン・ラチンスキー、ヒズ・ネイム・イズ・アライヴといったカルト・ヒーローたちの未発表音源を世に発表して音楽ファンから一目置かれてきたレーベル〈Disciples〉の審美眼に適った初の日本人アーティスト作品となる。
Phewの80年代初期のニューウェイブ指向の作品には、日本のみならず海外のコアな音楽フリークやレーベルから多くの関心が寄せられており、コラボレートしてきた著名なアーティストたちの数々も印象的だが、〈Disciples〉は『Light Sleep』『Voice Hardcore』といった近年の作品は、彼女の素晴らしいキャリアの中でもモダン・クラシックと呼ぶべき傑作であり、Phewが今、再び最盛期を迎えていることを確信し、本作のリリースへと繋がった。〈Disciples〉が今回のリリースにおいて探求したいと思ったのは、まさに彼女の今なのだ。『Vertigo KO』は、前述の2枚のアルバムと同じ時期に録音された楽曲と、今回のリリース用に制作の新曲を収録。アルバムには20ページのブックレットが付属しており、Phewについての文章と、表紙にもなっている塩田正幸の写真が収録。