2023 RSDアイテム。謎の電子音楽家、大山田大山脈は3作目にして「効能」としての音楽にたどり着いた。大山田大山脈自らが穏やかな眠りにつくために調合された音波状の睡眠薬、『Zolpidem』。 「ケアテイカー的な悪夢に悩まされる不眠症のエリック・サティ」とでも表現したくなるような、穏やかさと不穏さが同居する怪作。完全限定生産。
フォースワールド的な感性で作品をリリースし続ける二人組ロックバンド、帯化が主催するレーベル造園計画から2022年にリリースされた本作のカセットテープは瞬く間に完売し、その後もele-king vol.30 特集「2020年代エレクトロニック・ミュージックの必聴盤50」に選出されるなど、その魔術的な魅力は徐々に広がりを見せていたが、RSDでのLPリリースとして、その魅力がついに結実する。
不眠症のエリック・サティがケア・テイカー的な悪夢につきまとわれながら捻り出したような、不穏な音響と穏やかでどこか可愛らしいメロディが同居する今作は、アンビエント~ニューエイジというジャンルによって包摂できない余剰を含んでる。
そして、都内を中心に精力的に活動するロックバンドkumagusuの中心人物である井上Y氏によりデザインされた装丁は、錠剤の白い外皮のような質感を作品に付与し、毎晩取り出し「服薬」したくなるような『Zolpidem』へのアディクトを誘発するだろう。