MUSIC
6097 products
DeepchordやWolfgang Voigt、Heavenly Music Corporationなど数々の名アクトを抱える現行ダブ/アンビエントの一大聖地的レーベル〈Astral Industries〉から 新物件!Donate Dozzyとの名ユニット”Voices From The Lake”でも知られるイタリアの鬼才電子音響/テクノ、NeelことGiuseppe Tillieciと、その相方を務めてきたFilippo Scorcucchiによるアンビエント・プロジェクト、LF58による2024年度最新アルバム『Radials』が登場!2023年ヴェネツィア建築ビエンナーレにおいて、ローマのアーティストグループ〈Sbagliato〉が制作した同名の展覧会に由来するという作品。ヴェネツィアで録音された、力強くも没入感のある音の世界!

トロント拠点のアーティスト Rita Mikhael による新プロジェクト Trailcam 名義での第一弾リリース。以前は インダストリアル〜ノイズ~クラブの領域を自在に横断していた彼女だが、この作品ではさらに広い視野を持ちながら、自身の音楽性をより深く掘り下げている。幕開けはヒップホップ的なビートを取り入れたインストで始まり、そこから抽象的で質感に富んだサウンドへと展開。ドラムマシンとサンプルを軸にしたループ感がありつつ、そこにノイズや音響実験を混ぜ込んで、抽象性と肉体性が同居するサウンド作り出している。従来のクラブ・トラックとしての強靭さは残しつつも、よりパーソナルで内省的な側面が前面に出ており、音響の奥行きや余白があり、瞑想的とすら感じさせる瞬間がある。DJ ShadowやFlying Lotusの影響を遠くに感じつつ、インダストリアルやアンビエントの質感を独自に掛け合わせたような、自宅で深いリスニングにも耐えるアルバム。トロントで書かれ、ローマの EnissLab で Giuseppe Tillieci がマスタリングを担当。アートワークは本人によるもので、ヴィジュアル面も含めて強く自主性を感じさせる仕上がりになっている。※入荷時より僅かにプラケースにヒビ部分あります。予めご了承くださいませ。


レバノン出身のバンドSANAMによる2ndアルバム『Sametou Sawtan』。タイトルはアラビア語で「私は声を聞いた」という意味で、霊的でも不気味でもあるこの言葉が象徴するように、その音楽は音と言葉が心を揺さぶり、聴く者を今この瞬間へと引き戻す。ロックやジャズの自由な枠組みとアラブ音楽の深い伝統がぶつかり合い、情熱的なバラードと荒々しい即興演奏が交錯。詞作は前作同様、古今東西の詩や歌から引用し、現代的な意味を与え直すもの。エジプト民謡を再構築した「Hamam」、レバノンの現代詩人ポール・シャウルの詩をハードロックで爆発させる「Hadikat Al Ams」、12世紀の詩人オマル・ハイヤームの詩を用いた「Sayl Damei」やタイトル曲などが収録されている。過去の遺産を借りながら、燃えるようなライブ感と深い感情表現で、現代アラブ圏の新しいサウンドを切り拓く一枚!

John CageやSteve Reich、Brian Enoといった前衛的なヒーローたちの命脈やテープ・ミュージックの伝統を継承し、イージーリスニング〜ファッショナブルになるずっと前のミューザックまであらゆるものをサンプリング、スロウでメランコリックな倍音を通じてスクリュー・ミュージックやヴェイパーウェイヴさえも予言してきたパイオニアにして、アンビエント史に名を残すであろうNYの伝説的ドローン作家、William Basinski。 1982年9月にニューヨーク・ブルックリンのダンボ地区にあった彼の最初のロフトで録音された初期の伝説的な作品『September 23rd』が〈Temporary Residence Ltd.〉からリリース。非常にインスピレーションを与える、影響力のあるカタログとなった作品の初期のエントリーとして最近発掘された音源であり、70年代半ばにバシンスキーが高校時代に作曲したピアノ曲をもとにしたまったく特異な作品となっています。

弊店でもベストセラーでお馴染み、NUMEROからの編集作業で一躍世界に知られることとなった女性ニューエイジ作家であり、Robert AshleyとTerry Rileyにも師事していたJoanna Broukの81年カセット作のヴァイナル化。Broukのミルズ・カレッジでのインストラクターであり、恋人でもあったBill Maraldoによる演奏からして聴き惚れます。北インドの古典音楽的要素も随所に散りばめながら、抜群に透明度の高いサウンドが淡々と響きを列ねる海洋瞑想ニューエイジ/アンビエント一大傑作。あまりある美しさには霊的な目覚めさえも覚えそうな程でもあります。オリジナルは超絶入手困難につきこの機会に是非。

1980年代初頭のパンクバンドThe Freezeから発展した、スコットランド出身のアーティスト、CinderによるソロプロジェクトCindytalkの3rdアルバム『The Wind Is Strong - A Sparrow Dances, Piercing Holes in Our Sky』は、イギリス人監督イヴァン・アンウィンの実験映画のサウンドトラックとして制作されており、フィールドレコーディング、物悲しいピアノの小品、そして不穏な金属音が交錯する、Cinder自身が「ambi-dustrial」と表現した独特のサウンドパレットが特徴的。長らく入手困難だった本作は、Cindytalkのディスコグラフィーの中でも、最も捉えどころがなく、冒険的な作品の一つで、ミュジーク・コンクレート、心に響く夢想、荒涼とした美しさが融合しており、映像がなくても、夕暮れの森や薄暗い廊下といった、映画的な情景を思い起こる。Cinder自身は「Cindytalkの脱線」と注記していたものの、歌を中心としたポストパンクから大胆に逸脱し、未知の領域へと足を踏み入れた、キャリアを俯瞰する上で重要な作品。

環境音楽の重要人物、広瀬豊のまさかの新作『Voices』が〈WRWTFWW〉より登場。80年代の名盤『Nova』で知られる彼が、ここにきて届けたのは往年の静謐なサウンドスケープとはまったく別の景色と言えるもので、フィールド録音、ざらついたサンプル、ガタついたリズムマシン、そしてサイケなシンセが入り乱れる、混沌としたコラージュ作品となっている。幕開けを飾る12分超の「Library」は、その象徴で、都市の雑踏、映画の断片、即興的な声、ラジオのノイズ、ジャズのフレーズ、ビートの残骸が次々と交錯し、音の奔流に呑み込まれる。単なる音楽というより、まるで意識の中をそのまま垂れ流したよう。また、アルバムの要所には「The Other Side」シリーズと題されたバレアリックな実験的なテクノが挿入され、奇妙な環境音との交差が軽妙なバランスを生んでいる。さらに「Uprising」では呪術的なIDM、「Mixture」では鳥の声や雑談を絡めながらブリットルなビートとアシッド・シンセを展開。過去の沈静的な作風を知るリスナーほど驚かされる本作は、『Nova』や『TRACE』で再評価された広瀬豊の現在地が刻まれた一枚。環境音楽の先駆者が、いま再びラディカルな実験精神を前面に打ち出した充実作。

ロンドンの即興家ロリー・ソルターによるLone Capture Libraryのアルバム『All Natures Most Mundane Materials』が〈A Colourful Storm〉から初リマスター&ヴァイナル・リイシュー。本作は現代DIY環境音楽の隠れた傑作で、英国の田園地帯をさまよいながら録音された即興的な音の記録。洒落た環境音楽ではなく、閉塞感からの解放や自然との対話といった感覚が、不器用で荒削りなサウンドとして残されている。スウィンドンからエイヴベリーまでの徒歩21マイルの旅を背景とした、旅の翌日に自宅で一発録り、即興でカセットに記録されたという素朴な音、フィールド録音、ノイズ、テープの質感などが混じり合う、不器用だけれど美しい音の彷徨。土や身体の素材と向き合うという感覚が全編を通じて感じられる、ユニークで私的な旅の記録。

未体験の方はこの機会にぜひ!「音楽の捉え方を完全に変えてしまう魅惑的な日本のアンビエントテクノの傑作」(Electronic Beats)〈Syzygy Records〉や〈Transonic〉〈Frogman〉などと並ぶ日本の最初期の伝説的なテクノ・ミュージック・レーベルこと〈Sublime Records〉から発表された"SUSUMU YOKOTA"名義としてのデビュー・アルバム『Acid Mt FUJI』が30周年エディションとして3LPアナログ・リイシュー!2016年に国内でCD再発された際に初めて収録された未発表曲もこの度LP音源化!今は亡き日本のエレクトロニック・ミュージックのパイオニアによるジャパニーズ・アシッド/アンビエント・テクノの古典的大名作。日本のテクノを紐解いた画期的コンピ『Japan Vibration』の編纂でも注目を浴びるAlex From Tokyoによる貴重なドキュメントを収めた豪華ライナーノーツが付属。最新のマスタリング&カッティング仕様。

大阪拠点の音楽家・YPYこと日野浩志郎を中心に結成されたリズムアンサンブル"goat(ゴート)"による約8年ぶり、通算3枚目となるアルバム『Joy In Fear』がリリース!
今年結成10周年を迎える"goat(ゴート)"の新作アルバム。日野が自身が運営するレーベル〈NAKID〉からの発売。アートワークは五木田智央、録音は西川文章、マスタリングはRashad Beckerが担当。ポリリズム、変拍子、シンコペーションを巻き込む変則的グルーヴを各インスツルメントが絶えず追求、駆け引き。そして前作とも印象を変えるのがゴングや笛(フルート)が与える新たな妖艶さ。ミニマル/トライバリズムへ対する独自アプローチも感じる7曲。限定300部。

パリ生まれのエレクトロニック・ミュージックのパイオニアであり、1970年代のGRMの卒業生でもあるAriel KalmaとMelati Malay、Tristan Arp、Kaazi による多国籍ミュージック・プロジェクトAsa Toneが第四世界の幻覚的アンビエントとも言うべきまさかの邂逅!コロナ・パンデミックの最中、オーストラリアの熱帯雨林にあるアリエルのスタジオで偶然彼に出会ったAsa ToneのMelatiとKaaziは、Kalmaと長時間のライヴ・テイクを録音し始め、遠隔地にいるTristan Arpのシンセの即興演奏を遠隔操作で織り交ぜていき、数年後、Asa Toneのメンバーのニューヨークとインドネシアのそれぞれの家でエディットし完成させたものが、極めてユニークなカタログで知られるフランスのカルト・カセット・レーベル〈Good Morning Tapes〉よりリリース!ひらひらと舞うアルペジオ、ドリーミーなパッド、木管、静謐なループなど、繊細な風の中を羽のように浮遊し、滑空する地球上の痛みを和らげるような素晴らしいサウンド!

極めてユニークなカタログで知られるカルト人気なカセット・レーベル〈Good Morning Tapes〉 からの最新タイトル。NY拠点のニューエイジ・アーキビスト、Mark Griffey (別名 Ultravillage) が膨大なコレクションの中から、1970年代半ば~1990年代半ばにかけての米国産カセット作品から、オブスキュアなアンビエント、ミニマル、プログレッシヴ・ロック・エレクトロニック、ニューエイジを紹介したミックステープ作品。軽快なリズム・メロディの魅力を1時間に渡って織り交ぜた素晴らしいセレクション。

以前にも〈Good Morning Tapes〉から秀逸なミックステープを放っていた、オーストラリア・メルボルン拠点のDJ、Misha Hollenbach。妻でありクリエイティブ・パートナーでもある Shauna Tooheyと共同設立したファッション、アート、デザインのレーベル/出版社である 〈P.A.M〉の一員でもある彼の最新ミックステープ作品。アンビエント・パッドと蒸気が漂うベッドの上で、ASMRのささやき、R&Bの断片、リバプールの詩、エンジェリックな合唱、フィールド ・レコーディングの間を行き交う、白昼夢のようで、珠玉なセレクションとなっています。

(数量限定/日本語帯付/解説書封入)深呼吸 ── 心をほどき 太陽を迎える
ブライアン・イーノと並ぶアンビエント巨匠・ララージが、およそ8年前に〈ALL SAINTS RECORDS〉より発売したソロ作品。来日を記念して堂々の新装・日本語帯付盤でリリース決定!
1943年生まれ、ブライアン・イーノと並ぶアンビエントの巨匠にして生ける伝説、ララージ。ジョン・ケイル(ヴェルヴェット・アンダーグラウンド)、ハロルド・バッド、ビル・ラズウェル、ファラオ・サンダース、細野晴臣など、ジャンルも国境も超えたコラボレーションを重ね、オーディオ・アクティブとの『The Way Out Is The Way In』でも日本の音楽シーンに確かな爪痕を残した。そして、2025年9月には、6年ぶりの来日公演を控えており、同月にリリースされるUSインディ・シーンの至宝、ビッグ・シーフの最新アルバムにも参加するなど、精力的な活動と唯一無二性で世界中の音楽家やリスナーに影響を与え続けている。
今回、堂々の新装・日本語帯付盤でリリースされる本作『Bring On The Sun』は、2017年に〈ALL SAINTS RECORDS〉よりリリースされたソロ作品。〈International Anthem〉や〈Leaving Records〉などで多彩な作品を連発し、2024年にもララージとコラボしているLAシーンの立役者、カルロス・ニーニョがプロデュースとミックスを担当し、ダブ・テクノシーンのレジェンド、ポールことステファン・ベトケがマスタリングを担当。緻密かつ繊細な仕事で名高いポールが、ララージのアンビエント作品でもその手腕を遺憾無く発揮している。今回、6年ぶりの来日公演を記念して発売される日本語帯付盤にはCD・LP共に原雅明氏による解説書を封入。

アフリカ大陸各地の伝統音楽とテクノ、ベース・ミュージック、ダブを融合して完成させたトライバル・ベース快心作!
ボイラー・ルームの出演で話題を呼び、〈On The Corner〉よりリリースした前作『Vexillology』はMixmag、The Guardian、Resident Advisor、そしてここ日本では ele-kingでも絶賛を受けたモロッコ出身のDJ/プロデューサー、Guedra Guedraが〈Domino〉傘下の〈Smugglers Way〉よりセカンド・アルバム『MUTANT』をリリース!
Guedra Guedraのサウンドは、ビジョナリーな電子音楽とアフリカ大陸各地の音楽的伝統がまばゆく融合したものである。モロッコ出身のプロデューサー、Abdellah M. Hassakによるこのプロジェクトは、本作『MUTANT』において、アナログ・シンセやドラムマシンから生み出されるリズムと音を基盤に、モロッコ、タンザニア、ギニアなどを旅して採集した打楽器の断片やフィールド・レコーディングを融合させている。
アルバムは、アイデンティティ、パン・アフリカニズム、アフロフューチャリズム、脱植民地主義といったテーマを探求し、大陸の音楽的遺産とテクノ、ベースミュージック、ダブの要素の橋渡しをしている。「自由に作曲できるエネルギッシュなものを作りたかった」とAbdellahは語る。「アフリカやディアスポラの音楽を革新的に探求しつつ、文化的な響きとリズム、ベースのヴァイブスを感じられるようなサウンドを目指した」
このアルバムに収められた楽曲は、アフリカのポリリズムの豊かさを称えると同時に、それが長らく西洋的な論理や標準化のモデルによって形成された技術的ツールや思考の枠組みによって周縁化されてきた現実に挑んでいる。「主流の音楽制作ツールは、非西洋的な文化表現の深みや繊細さを捉えるのが苦手だ」とAbdellahは指摘する。「非線形のリズムや意味のある沈黙、コミュニティ主導のダイナミクスなどが、他文化では不可視化されてしまう。だからこそ、音楽や技術を脱植民地化するとは、そうしたツールの根本を問い直し、他の世界観を受け入れられるような設計に再構築することなんだ」
"Guedra Guedra"という名前は、サハラ地方のモロッコの伝統舞踊を指すと同時に、皮を張ることで太鼓として使える調理鍋の名前にも由来している。カサブランカで生まれ育ち、現在はマラケシュと行き来しながら活動するAbdellahは、若い頃、メタルやレゲエ、ロックなど様々なバンドでベースやドラムを担当していた。やがて、Aisha Kandisha’s Jarring Effects、Muslimgauze、Badawiといった、モロッコの伝統音楽と電子音を融合させたプロデューサーたちの作品に触れ、エレクトロニック・ミュージックやダブに傾倒していった。
2020年のEP『Son of Sun』と2021年のデビュー・アルバム『Vexillology』(On The Corner Recordsよりリリース)では、ダブステップ、フットワーク、ヒップホップのベース重視のリズムに、サンプリングした声や打楽器、楽器、さらには鳥のさえずりや波の音といった環境音を加えていった。
『MUTANT』ではこれらの革新をさらに発展させ、より多様なパン・アフリカンのポリリズムをダンスフロアに持ち込んでいる。Guedra Guedraの音楽は、レジスタンスとしての表現であり、脱植民地化のプロセスでもある。抑圧された声やアフリカの存在を情熱的に受け入れる空間を想像させ、芸術の領域における権力関係への問いかけを促す。「音楽創造と祝祭の場を再取り込み(reappropriation)することは、アフロフューチャリズムにおいて極めて重要なのです」とAbdellahは語る。「それは権力関係を覆し、文化や祖先の知を称揚し、記憶、所有、アクセスといった問題を脱植民地主義の議論の中心に据えている」。
『MUTANT』は、オーガニックとエレクトロニックが巧みに融合した革新的な作品である。Guedra Guedraが使用するサンプルやフィールドレコーディングは、アフリカの多様なフォーク音楽の歴史と遺産を称えると同時に、ドラム・プログラミングやシンセによって、それらを現代のダンスフロア向けに再解釈している。

Chaka KhanやShabaka Huchingsとのコラボレーションでも知られ、Gilles Petersonも惚れ込む現代最高峰ハープ奏者/作曲家のAlina Bzhezhinskaと、イビザを拠点に活動を続け、John DigweedもフックアップするDJ/プロデューサーのTulshiがコラボレーション作品を発売!
本作は雨をテーマとして記憶と感情の変化を描いた作品で、失うことで清められ、再生によって花開き、静かな内省の中で育まれる力強さ−−そうした人生のサイクルが美しく表現されている。
アルバムの核となる楽曲「Journey Home」は、“帰る”ということの意味を問うエモーショナルでメディテーティブな一曲で、変わってしまった場所に戻ることの重み、そして“帰る場所”が実際の地理ではなく、心の状態なのではないかという問いを投げかけている。
アブストラクトにうごめく電子音、ダブテクノ由来のざらついたテクスチャー、主張は控えめながらも心地良いグルーヴを生み出すビート/パーカッション、そして幻想的でディープに響き渡りながらも親しみやすい独特のサウンドを描くハープの演奏が絡み合うことで生まれた珠玉のサウンドスケープ。
'70年代初頭のNYアンダーグラウンド・パンク~ニュー・ウェーヴ・シーンを代表するSuicideのサウンドを担ったシンセ/ドラム担当Martin Revの2000年にリリースされた5枚目のソロ・アルバム『Strangeworld』のジャーマン・ロック/ニューウェイヴ再興の地〈Bureau B〉による再発盤。チープでミニマルなリズムボックスにいかにもメロディックなシンセサウンド、鼻歌のような歌声、そこに突然現前する深すぎるリヴァーブ、エコー、ダブ処理。摩訶不思議なエレクトロ・サイケ・ポップ感が最高です!

東京拠点のサウンド・アート系俊英レーベル〈ato.archives〉より、台湾のモジュラー・シンセ・シーンを横断的に捉えた注目のコンピレーション・カセットが登場。台湾のモジュラー作家であるRyan J Raffaによるキュレーションのもと、台湾各地の実験電子音楽家たちによる音響の地層がここに結晶。パルス、断片、残響、倍音。風景の縁をなぞるように鳴らされる音たちは、都市と自然、身体と記憶の境界を静かに揺さぶるかのよう。過剰な演出を避けた構成からは、東アジア的な時間感覚と詩的ミニマリズムが滲み出しています。まさに電子音とともに編まれる地誌的なサウンド・ドキュメント。世界と交信する回路の中で生まれた、静謐で現地的なエレクトロニクスの記録集であり、必聴です。

多田正美(East Bionic Symphonia, Marginal Consort)や菅谷昌弘らによる名作も手がけてきた東京の気鋭レーベル〈ato.archives〉を主宰するYama Yukiによる最新カセットが、名店〈Kankyo Records〉よりリリース。日本的な自然観や都市の余白へのまなざし、土着的な霊性までもを静かに織り込んだ、繊細かつ深遠な音風景。環境音楽/ミニマル/ニューエイジ以後の祈りとしてのアンビエント。柔らかくも精緻に編み上げられたこの音は、まさに「耳で触れる風景」。静かに息づく、現代の音による地霊の記録です。

Bitchin Bajasによる、2022年の『Bajascillators』に続く新作『Inland See』。流動的で瞑想的なサウンドスケープを描き出した本作は、ツアー中に書かれ、シカゴのElectrical Audioでライヴ録音されており、リバーブなどの後処理を一切加えず、部屋そのものの空間感を生々しく封じ込めている。リアルタイムで呼吸を合わせるトリオの一体感がじかに伝わってくるような収録された全4曲は、それぞれ独立した表情を持ちながらも、ゆるやかに繋がり合い、ひとつの大きな流れを形づくる。透明度の高い音の層が浮遊し、ミニマルな繰り返しに穏やかな推進力が宿る様子は、まるで海に身を浮かべる感覚や、風船がゆっくり上昇していく感覚にも近い。アンビエントやミニマル・ミュージックの要素を取り入れつつも、演奏の身体性が強く残った有機的で生きた響きになっており、シンプルでありながら精緻、緊張感と安らぎを同時に孕み、どこか新しい扉がひそやかに開いていくような瞬間に出会える一枚。
The Flying Lizardsとしてシングル"Money"の世界的なヒットを飛ばし、ニューウェイヴの時代に〈Virgin〉からエレクトロ・パンクのアルバムを2枚リリースしたことでも知られる北アイルランドのミュージシャン、プロデューサーであるDavid Cunninghamが1976年に発表したファースト・ソロ・アルバム『Grey Scale』が名門〈Superior Viaduct〉から史上初アナログ・リイシュー。This HeatやGeneral Strikeを送り出した自身のレーベルの〈Piano〉から第一弾リリースとして送り出されていた作品。ライブ・パフォーマンスを共にしたCornelius CardewやGavin Bryars、Michael Nymanといった前衛音楽家から、Evan Parker、Derek Bailey、David Toopなどのインプロヴァイザーまで、多種多様な領域から影響を受けているCunningham。当時、ケント州の〈Kent Institute of Art & Design〉の学生だった彼が、学生仲間の非ミュージシャンを起用し、(使える楽器は何でも用いて)空間、質感、音色に対する即興演奏家の鋭い感性で、無限に変化する音のパレットを作り上げた作品。魅力的なサウンド・コラージュと自由な音色を持つ、どのジャンルにも属さないミニマル・エチュードの組曲。

〈Drag City〉配給。Joshua Abrams参加!Jim O’Rourkeの名作群でのドラミングを筆頭に、Tony Conrad、Faust、Sonic Youth、Wilco、Silver Jews、John Zorn、Stereolab…と数え切れないほどの先鋭的アーティストたちと共演してきた名手Tim Barnes。2021年に若年性アルツハイマーと診断された彼が、その後に取り組んだ『Lost Words』に続く、Tim Barnesの未発表ソロ音源集第2弾。『Noumena』が自身のレーベル〈QUAKEBASKET〉より登場!本作は楽器の演奏というよりも、音そのものの在り方を探るような試みで、フィールドレコーディング、環境音、オブジェクトの擦過音、微細なパーカッション。それらが時間の中で溶け合いながら、ゆっくりと立ち上がってくる。沈黙や余白、聴覚の境界線をじっと見つめるような、深く静かな世界に焦点を当てた作品。ジャズ、ポストロック、即興、アヴァンギャルド……様々な音が行き交いながら、音に向き合い続ける彼の、静かで強靭な意志が感じられる一枚。『Lost Words』と対を成す、深く静かなリスニング体験。

20年にわたり実験音楽の最前線で活動してきたNikos Veliotis(チェロ)、Taku Unami(シンセ)、Sarah Hennies(パーカッション)、David Grubbs(ピアノ/ギター)ら4人による緻密で抑制の効いたカルテットBitterviperによるセルフタイトル・アルバムが〈Blue Chopsticks〉より登場!きっかけはアテネ在住のVeliotisが重ね録りしたチェロのサイコアコースティックな4曲。そこにGrubbsが繊細なピアノやラップスティールを重ね、Unamiが東京から電子音を加え、Henniesが研ぎ澄まされた打楽器の構造で全体を引き締めた。録音のプロセスは複雑だが、いざ音が鳴れば、その成り立ちを忘れてしまうほど自然で自律的なアンサンブルが展開される。濃密な倍音のレイヤー、透過的で空中に溶けるかのようなアンビエント、そして映像的な想像力をかき立てる即興性と構造性のあいだを縫うように進行するそのサウンドは、意図と直感が緊密に結びついた充実の内容。
