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現代におけるスピリチュアル・ジャズの意義を改めて示す、圧巻のドキュメント。スピリチュアル&アフリカン・ジャズの巨匠Kahil El’Zabarが率いるEthnic Heritage Ensembleによる、2024年ロンドンmuでの二夜を収めたライブ作品 『Let The Spirit Out』。El’Zabarのカリンバやパーカッションが空間を揺らし、アフリカン・ポリリズムの躍動が全編を貫く、儀式的でトランス感のあるスピリチュアル・ジャズ。即興演奏がひとつの流れとなり、演奏者と聴衆、個と共同体の境界が溶けていくような体験。力強く、開放的で、そして深い癒しに満ちたサウンドは、半世紀以上にわたり独自の表現を追求してきたEl’Zabarの真骨頂と言える、重要ライブ作品。

シカゴを代表する現代ジャズ名門レーベル〈International Anthem〉からのリリースでも知られる、現代スピリチュアル・ジャズの中心人物Angel Bat Dawidと、多楽器奏者、学際的アーティストNaima Nefertariによる壮大なコンセプト作品 『Journey to Nabta Playa』。古代ヌビア砂漠に存在した天文学的石環、Nabta Playaの神話・歴史・宇宙観をテーマに、アフロフューチャリズム、スピリチュアル・ジャズ、アンビエントの境界を越える音世界を構築。儀式的な声と即興演奏が交差する本作は、過去と未来、地上と宇宙、歴史と神話を結び直すようなスケール感を備え、単なるアルバムという枠を超えた精神的・音響的探求の記録的内容。Don Cherryのレア曲やDavid Ornette Cherryの未発表曲も収録され、往年のスピリチュアル・ジャズの血脈が現代へとつながる現行スピリチュアル・ミュージック最前線。
Sun Raが1982年にニューヨークVariety Studiosで行った後期セッションの中でも、特に柔らかい側面が際立つ作品、『Celestial Love』。Sun Raの宇宙的フリージャズのイメージとは少し異なり、スウィング、ブルース、スタンダード曲の再構築が中心。「Sophisticated Lady」「Sometimes I'm Happy」「Smile」など、デューク・エリントンや古典ジャズへの敬意が強く表れた選曲が特徴的。
1960年代アメリカ実験音楽の核心を捉えた歴史的録音、John CageとDavid Tudorによる『Variations IV vol.2』。1965年、ロサンゼルスのFeigen-Palmer Galleryで行われたライブ・パフォーマンスを収録した作品で、オリジナルテープからのリマスタリングを施した決定的リイシュー。Cageの不確定性音楽を象徴する本作では、短波ラジオ、環境音、電子音、テープ素材など、その場で得られる音を自由に組み合わせる手法が採用されている。Tudorは電子音響の操作を担当し、ラジオの断片やノイズと鋭く交差する金属的な音をリアルタイムで生成。音の流れは予測不能で、ノイズ、会話の断片、電子音が次々と現れては消え、音が勝手に動き出すようなコラージュ感が強い。Cageの思想とTudorの電子音響が交差した20世紀実験音楽の重要ドキュメント。
1960年代アメリカ実験音楽の核心を捉えた歴史的録音、John CageとDavid Tudorによる『Variations IV』。1965年、ロサンゼルスのFeigen-Palmer Galleryで行われたライブ・パフォーマンスを収録した作品で、オリジナルテープからのリマスタリングを施した決定的リイシュー。Cageの不確定性音楽を象徴する本作では、短波ラジオ、環境音、電子音、テープ素材など、その場で得られる音を自由に組み合わせる手法が採用されている。Tudorは電子音響の操作を担当し、ラジオの断片やノイズと鋭く交差する金属的な音をリアルタイムで生成。音の流れは予測不能で、ノイズ、会話の断片、電子音が次々と現れては消え、音が勝手に動き出すようなコラージュ感が強い。Cageの思想とTudorの電子音響が交差した20世紀実験音楽の重要ドキュメント。

リスボンの名門クラブLux Fragilにて行われた、Lena WillikensとElena Colombiの4時間B2Bセットの一部を切り取ったライブ録音カセット『Live at Lux Fragil, 2026』。二人はともに、実験電子音楽、EBM、ポストパンク、インダストリアルを自在に横断するDJとして知られ、本作はその美学が交差する貴重なドキュメント。鋭いテクスチャーのトラックから、クラブの熱を上げるドライビングなビートまで、緊張と解放を繰り返す流れが非常にスリリングだ。B2Bならではの会話するような選曲が続き、音の切り替わりが鋭いのに、全体の流れは驚くほど滑らか。また、二人が得意とする余白の使い方が随所に現れ、静けさをあえて残すことで次のビートの強度が際立つ。その場にいた人だけが知る空気を物理メディアに封じ込めたような特別感がある一本。
70年代ジャマイカの未発表ダブ・テープをまとめ上げた『Universal Dub』。Robbie Shakespeare、Lloyd Parks、Sly Dunbar、Carlton Barrett、Augustus Pablo、Ansel Collins、Earl “Chinna” Smith など、まさに最強のセッション陣が参加。さらにミックスにはKing Tubby、Scientist、Bunny Tom Tomと複数世代のエンジニアが関わっており、ダブ技法の変遷を一枚で辿れるという、非常に珍しい構成。録音時期もスタジオも異なるため、音質にムラがある部分もあるけれど、その発掘音源らしい粗削りさが逆にリアルで、倉庫から出てきた本物のダブ・テープを聴いているような手触りがある。70年代ジャマイカのダブ制作の核心をエンジニア視点でまとめた、極めて貴重なアーカイヴ。
Up-Tightの中心人物として長年日本アンダーグラウンドを牽引してきたAoki Tomoyukiが率いる新バンドTomoyuki Trioの最新作 『High Oxygen Blood』が〈Feeding Tube Records〉から登場。Aokiのギターは、White Heavenの石原洋のサイケデリックな流れ、High Riseの成田宗弘の爆発力、Fushitsusha期の灰野敬二の伸縮する音塊 といった系譜を受け継ぎながら、さらに自由で破壊的な方向へと突き進んでいる。轟音と静寂が交互に押し寄せるダイナミクスが印象的で、分厚いディストーションの壁が立ち上がったかと思えば、ふっと空気が抜けるような静かなパートが訪れ、時間が引き伸ばされるような重いグルーヴが全編を支配している。サイケ、ノイズ、ハードロック、即興、ドローンどれにも完全には属さず、全部を同時にやるという強引さと自由さが貫かれた作品。ジャンルの境界を破壊し続ける日本アンダーグラウンドの最新形。この音楽が現行であることに驚きを禁じ得ない一枚。

ビートミュージックと音響作品の境界をゆくスタイルで知られる、東京を拠点に活動するビートメイカー、エンジニアのFumitake Tamuraが、微細な粒のような音を集め、空間に丁寧に配置していくことをテーマにした作品『Mijin(微塵)』を〈Leaving Records〉からリリース!Sam GendelやSaul Williamsといった個性の強いゲストを迎えながら、全10曲を通して音と沈黙の関係性を探るような独自の音響世界を築いている。最小限のピアノ和音、ローズ、声、パーカッション、シンセの断片が粒子状に分解され、再構築されるような音像で、音が鳴っていない間が強い存在感を持ち、静けさが次の音を引き立てる緊張感のある構成は、武満徹の著作から引用されたコンセプトとも響き合っている。サックスや声といった人間的な素材も、メロディや語りとしてではなく、質感のレイヤーとして音響に溶け込む。ジャズの温度とエレクトロニクスの冷たさが交差し、IDM、アンビエント、実験的ヒップホップがゆるやかに溶けていくような抽象的な音楽。
ブラジル出身でLAを拠点に活動するギタリストFabiano do NascimentoによるブラジルのルーツとLAの実験的な音楽文化を融合させた、静かで深いアコースティック作品。本作は、ブラジル南東部ミナス州でのセッションと、日本での録音を組み合わせた作品で、ブラジルの伝説的グループUaktiのPaulo Santosや、インド古典音楽のタブラ奏者U-zhaanなど、多国籍の演奏家が参加。7弦ギターの柔らかなアルペジオを中心に、タブラや自作楽器による多国籍なパーカッション、環境音、エレクトロニクスが立体的な空間を作り、アンビエント、ブラジリアン・ジャズ、フォークの境界を漂うサウンドが生まれている。ブラジルの伝統音楽、ミナスの空気、LAの実験性がひとつに溶け合う、有機的な音世界。

LAのハープ奏者Nailah Hunterと、テルミン奏者Aliaによる、Harold Buddの名作『The Pavilion of Dreams』の再解釈作品。2024年11月にロサンゼルスで行われた〈Leaving Records〉主催の野外コンサート「Listen to Music Outside in the Daylight Under a Tree」のために構想され、黄金色の自然光の中で生まれた音楽が、その空気まで一緒に封じ込められている。柔らかく波打つハープの余韻と、空中に線を描くようなテルミンの揺らぎが重なり、Harold Buddの透明なミニマリズムを受け継ぎつつ、より自然の呼吸に近い有機的な質感は、柔らかな光の中に溶けるアンビエント・ドリーム。片面に音源、もう片面にはフローラル・レーザーエッチングを施したアート性の高い仕様での登場。
1973年のジャマイカのカルト映画にして、伝説のサウンドトラック『Every Nigger is a Star』がヴァイナル化!ジャマイカの人気シンガーでありベーシストのBoris Gardinerが作曲・編曲を手掛けた本作は、レゲエと、70年代初頭にアメリカで流行した黒人の観客をターゲットにした映画ジャンルBlaxploitation直系のソウル・ファンク・グルーヴが完璧なブレンドで溶け合っており、極上のメロウネスとず太い野性味が同居したサウンドは今聴いても全く色褪せない魅力に溢れている。ケンドリック・ラマーの『To Pimp a Butterfly』にもサンプリングされたタイトル曲を含む、ストリートの熱量を孕んだゲットー・サウンドの狂信者たちに捧ぐ待望のリリース!
大友良英率いるGround Zeroが1995年に発表した、サンプリング文化と即興演奏を極限までぶつけ合ったコラージュ作品の金字塔。京劇を素材にしたハイナー・ゲッベルス&アルフレッド・ヒース「Peking-Oper」を素材として、ターンテーブル、自作ギター、雑多な音響サンプル、そして当時の気鋭メンバーによる騒然とした生演奏を、大友が切れ味鋭く編集。伝統音楽とノイズ、即興と構築が同じ強度で衝突し、数秒単位で風景が変わるめまぐるしい音世界は、コラージュとインプロがノイジーかつスリリングに混ざり合う、90年代アヴァンギャルドの象徴。針音や無音を大胆に扱うトラックもあり、後年へとつながる静寂の感覚も垣間見える。日本語・外国語の断片が飛び交い、意味と無意味が同時に立ち上がるアナーキーな編集は、当時流行した脱構築の精神そのもので、知的なパンクとしての大友良英が最も尖っていた時期の記録でもある。30年近く経った今でも時代の産物ではなく、むしろ現在にあってことより鋭く響く強度を持った名盤。
元Gasenetaの山崎春美を中心に、80年代初頭の東京アンダーグラウンドで活動した流動的パフォーマンス・コレクティブTacoの活動と美学を再提示するアーカイブ的リリース『The Alternative Counter Organization』。Tacoの活動は、楽曲というよりもその場で起きる衝突・混乱・衝動が中心にあり、ポストパンク、ノーウェイヴ、即興、パフォーマンスアートが渾然一体となった事件の記録というべきもの。固定メンバーを持たず、ライブごとに編成が変わるゲリラ的な活動スタイルがそのまま音に刻まれており、演奏の境界線が曖昧なまま、衝突と混乱が次々と立ち上がる。粗削りなギター、緊張感のあるリズム、突然割り込む声やノイズ、そのすべてが即興的でありながら、どこか鋭い編集感覚に貫かれているのがTacoの魅力。山崎春美の語りや叫びが混沌を束ね、意味と無意味が同時に立ち上がる。80年代東京のアンダーグラウンドが持っていた危険な若さとエネルギーが、今聴いても生々しく響く一枚。
1960年代の終わりを象徴する犯罪者であり、同時にカルト的な影響力を持つアウトサイダー・アーティストとしての顔も持つチャールズ・マンソン。1983年、サン・クエンティン州立刑務所内でがポータブル・カセットデッキに録音した弾き語り音源を収めた異色作。収録されているのは、アコースティックギターと声だけのフォーク・スタイルだが、曲というより即興的な語りや独白が多く、背後には囚人同士の会話、物音、トイレの音まで混ざり込む極端なローファイ録音。『Lie』期の若々しい声とは異なり、ここでのマンソンの声は枯れ、より内省的で、時に支離滅裂な諦念と孤独が滲んでいる。時折現れるキャッチーなメロディが、彼の持つ音楽的素養の残骸を感じさせ、それがかえって異様さを際立たせている。完成されたアルバムというより、アウトサイダー・アートの文脈で語られるべきもので、音楽的な成功を夢見た男の成れの果てというよりも、閉じ込められた狂気そのものが漏れ出したような、救いようのない孤独の記録。
Belle Gonzalezによる、70年代英国フォークの静かな美しさを凝縮したような作品『Belle』。アコースティック・ギターを中心にしたシンプルな編成ながら、Belle Gonzalezの声には独特の温度と陰影があり、語りかけるような歌い方が心にじんわりと染み込んでいく。70年代UKフォークの文脈にある繊細なメロディと、少し憂いを帯びたハーモニーが絶妙に絡み合い、静謐でありながら深い余韻を残す。音の空気感や微細なニュアンスがより鮮明に浮かび上がり、まるで小さな部屋で近くで歌っているかのような親密さを感じさせる。派手さはないが、聴くほどに味わいが増していく、英国フォークの隠れた宝石のような一枚。

シューゲイザーとアンビエントの境界を探るlovesliescrushingの名作デビュー作『Bloweyelashwish』。1992年、12弦ギターと4トラックのカセットMTR、ループペダル、そして深いリヴァーブだけで組み立てられた音響は、きらめきと靄が入り混じる夢のような質感をもっており、スコット・コルテスのギターのディストーションはノイズでありながらも優しく、メリッサ・アルピン・ドゥイムストラの声は言葉を超えた気配として響く。バンドサウンドとしてのビートを放棄し、甘美な轟音とウィスパーヴォイスだけが響き続ける耽美的な世界。今回のリイシューではリマスターに加え、当時の未発表曲5曲を追加。歌詞やポストカードも付属し、作品の内奥により深く沈み込める仕様となっている。轟音のまぶしさではなく、むしろ、目を閉じることを促すようなこの音楽は、単なるシューゲイザーの名盤にとどまらず、私的な夢の記録でありながら、今なお多くのリスナーを包み込む無限の広がりを感じさせる。

Thee Sinseersのリーダーとして知られるJoey Quiñonesによるソロ・アルバム『Inna Soul Steady Situation』は、イーストLAのストリート文化と、彼のルーツであるチカーノ・ソウル、そしてロックステディが溶け合った、温度と情緒に満ちた一枚。彼が育った街の空気、近所のレコード店、仲間の家のリビング、そんな日常の風景がそのまま音に染み込んでいるような、生活の匂いが漂う。ホーン、オルガン、ギターが柔らかく絡み合い、甘くメロウなソウルにジャマイカ音楽のゆったりとした空気が加わることで、懐かしさと新しさが同居する独特のムードが立ち上がる。どの曲も、彼の代名詞である多重コーラスによる完璧なハーモニーとアナログ録音の温かさが息づき、現代のヴィンテージ・ミュージックとして確かな説得力を持っている。甘いメロウネスを愛するすべての方に。

ウィリアム・バシンスキの金字塔的作品『The Disintegration Loops』が、ローリー・アンダーソンのライナーノーツとジョシュ・ボナティによる最新リマスタリング、オリジナル・アートワークの修復版を収録した豪華仕様で再発。本作は、テープの物理的な劣化をそのまま録音したループ素材によって、音が徐々に崩れゆく過程を追った全4作構成の作品。もともとは1970年代から続けていたミニマル/テープ実験のアーカイブを再生中、磁性体が剥がれ落ちていくことに気づいたバシンスキーが、それをそのまま録音しながらリバーブを加えて仕上げたもの。偶然とはいえ、9.11の朝に完成し、その日バシンスキの自宅屋上で友人と一緒に最初の曲を再生しながら事件を目撃したという経緯もあり、リリース当時から喪失と記憶の音の碑として多くの人に深く受け止められた。2000年代以降のアンビエント/サウンドアートを語る上で避けて通れない傑作であり、時間が音になったかのような体験をもたらしてくれる作品。

サックス、打楽器、声、そして空間そのものを素材にした、Alex Zhang Hungtai の儀式的な音響作品『Dras』。旋律やリズムの枠をほとんど捨て去り、代わりに 呼吸、身体の動き、息の震え といった生の感触がそのまま音として立ち上がる。サックスはメロディを奏でる楽器ではなく、叫びやうめきのような身体の延長として扱われ、打楽器も一定のテンポではなく動作そのもののリズムを刻む。音と静寂が交互に現れ、空間の響きが作品の一部として溶け込むことで、存在することそのものへの祈りのような集中とトランス感が生まれてくる。荒野の風景を思わせる孤独な空気と、儀式のような緊張感が同居し、聴く者を深い世界へと引き込む一枚。

〈Numero〉が手がける「Great Lakes Gospel」シリーズの第2弾で、デトロイト周辺で録音されたゴスペル音源を発掘・再構成したコンピレーションアルバム『Great Lakes Gospel: Detroit』。〈Numero〉が長年にわたり発掘してきたデトロイトの地下音楽シーンの膨大な音源の中には、ミニ・モータウン的な小規模レーベルのソウル/R&B/ファンクだけでなく、教会との地理的・文化的な近さからそれらが自然と混ざり合ったデトロイト・ゴスペルと言うべき音楽が多数存在していた。本作には、〈Revival〉や〈Big Mack〉などのローカル・レーベルの音源から、12組の教会系グループによるゴスペル、ファンク、ソウルの境界線上の楽曲を収録している。デトロイトの教会コミュニティから生まれたゴスペルを軸にしながら、ソウルやファンクの要素が自然に混ざり合うことで生まれた、敬虔さとスピリチュアルな熱気が同時に立ち上がる独特のサウンド。クワイアの力強い合唱はしばしば恍惚的な高揚感を生み、説教の語り口がそのままリズムに乗るような瞬間もあり、教会音楽の枠を越えたエネルギーがほとばしる。ギターやリズム隊はソウル/R&B的なグルーヴを刻みながらも、演奏の荒々しさや温度感はローカル録音ならではの生々しさに満ちており、70年代デトロイトの空気をそのまま閉じ込めたような一枚となっている。

90年代エモ/インディーの隠れた名バンドJejuneの全スタジオ録音を網羅した、〈Numero Group〉渾身の5LPボックス『Wait A Lifetime』。1st『Junk』、2nd『This Afternoon's Malady』、未発表に終わった3枚目のアルバムからの素材で拡張された『R.I.P.』、さらに7インチやスプリット、コンピ提供曲まで、バンドの全キャリアを一望できる決定版アーカイヴ。サウンドは、透明感のあるギターと胸に刺さる叙情性が同居する、90年代エモの青さそのもの。初期のストレートなエモ・パンクから、2ndでの洗練されたオルタナ的アプローチ、そして未完成3rdで垣間見える新たな方向性まで、バンドの変遷と成長がそのままパッケージされている。Sunny Day Real EstateやMineralに通じる叙情性を持ちながら、よりポップで開けたメロディが魅力。エモ再評価の流れの中で、バンドの全貌を知るうえで欠かせない一箱。Opaque Red Vinylの豪華仕様に加え、当時の写真や詳細なエッセイを収めた68ページのブックレットも付属し、資料性も抜群。
9月下旬再入荷。1993年、カリフォルニア州サンノゼ郊外で結成されたオルタナティブ・シューゲイザー・バンドSuper Static Fever。活動期間わずか2年、数回のライヴのみで消え去った彼らは、Melvinsばりのスラッジ、Swervedriverのメロディックな轟音、後期Black Flagの爆音主義をミックスしたような音楽性で、熱気こもる85年製フォード・エコノラインの車内で鳴っていそうな、荒くれて煙たい音を鳴らしていた。バンドの解散後、25年ものあいだ放置されていた未完成テープを、唯一の条件としてスティーヴ・アルビニがミックスし復活、大名門〈Numero〉流石の仕事となった。90年代 DIYシーン特有の壊れかけのコンピューターやVHS的なノイズ感、粗いチップボードのパッケージまで含めて、存在自体が奇跡というべき代物となっている。「これはそもそも存在すべきではなかった」。そんな危うさごとパッケージされた、幻の遺産。
2023年のセルフタイトル作が幅広い注目を集めたフィラデルフィアのSSW、Greg Mendezが、その勢いを受けてさらに深く内面へと潜るフルアルバム『Beauty Land』。本作は、窓のない自宅スタジオで一人きりでテープ録音されたもので、そのためか、音のすべてが手触りのあるローファイ質感で、まるで目の前でつぶやかれているような深みのある親密さが全編を貫いている。重いテーマを扱い、短い曲の中に、人生の痛みと救いの断片がそのまま封じ込めている。ローファイSSWの素朴さに、ドリームポップが淡くにじむ独特の質感で、トイピアノやキーボードのかすかな揺らぎ、かすかに震える歌声が、夢と現実の境界を歩くような静かな非現実感を生んでいる。短い楽曲が連なる、まるで短編集を読むような構成も魅力的。USインディの現在地を象徴する一枚として、ジャンルを越えて支持されそうな一枚。
