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横田進の代表作のひとつである2002年作『The Boy And The Tree』が、〈Lo Recordings〉より新装リマスターで再登場。自然や生命の神秘をテーマにした本作は、アンビエント/エレクトロニカ期の魅力が美しく結晶しており、透明感のあるメロディと柔らかな音のレイヤーが幻想的な世界を描き出す。本人が語っている通り、本作は屋久島の原生林を歩いた経験や、宮崎駿の映画『もののけ姫』の生態学的メッセージにインスパイアされており、柔らかなシンセの揺らぎ、アコースティックな質感、そして森の奥で響くようなパーカッションが重なり、自然の世界がそのまま音になったような神秘性を帯びている。彼のアンビエント作品の中でも特にメロディが際立ち、夢の中を歩くような浮遊感と、静かな感情の動きが同時に流れ込んでくる、永遠の名盤。

豪華ミュージシャンが結集した国際プロジェクトThe Mighty Tiny & The Many Fewのアルバムが、ついに待望のLPリリース。米国のテナーサックス奏者Steven Jess Borth IIと、Major Lazerのメンバーとして知られる電子音楽家兼プロデューサーWalshy Fireによって結成されたコンセプトバンドで、本作ではジャマイカ出身のシンガー/プロデューサー Randy Valentineを迎えて制作された。さらに、デンマークのジャズ・シーンを牽引するMorten McCoy、Jonathan Bremer、Rumpistol、Mikkel Hessらをはじめ、3大陸から15名以上の実力派ミュージシャンが参加。ホーン、鍵盤、リズム隊がローテーションで加わる贅沢な布陣が、作品全体に豊かな厚みと躍動感を与えている。ソウルフルな歌声と多層的なハーモニーが心地よく広がるレゲエ調ソウル「Invite Love In Your Life」、ジャジーなピアノとビートにR&B的な歌唱が重なるタイトル曲「Be The Good People」などを収録し、アナログ的質感が楽曲の切なさと温かさを際立たせ、ヴィンテージとモダンが自然に溶け合う仕上がりとなっている。ポジティブなメッセージも作品全体を貫き、国境を超えて心を明るく照らす一枚。
英国のインストゥルメンタル・トリオHaiku Salutと、映画音楽でも活躍するピアニストMeg Morleyが手を組み、1930年のサイレント映画『People on Sunday』のために制作した再構築スコアが12インチで登場。Flatpack Festivalでのライブ上映+生演奏をきっかけに生まれた音楽を、5年の時間をかけて丁寧にスタジオ録音として仕上げた作品。柔らかなピアノの旋律を中心に、電子音がきらめき、アコーディオンやギターなどのアコースティック要素が重なり、ネオクラシカルとエレクトロニカ、室内楽が溶け合う。サイレント映画の情景を想起させながらも、現代的な透明感と温度を併せ持つ。1曲ごとに異なる短編映画のような展開が続き、アルバム全体がひとつのシネマティックな旅として流れていく静かで美しい一枚。
ASCがロックダウン期に深化させたアンビエント路線の集大成的作品『Colours Of Absence』。前作『Original Soundtrack』と同時期に制作された続編的位置づけの作品で、ピアノを中心とした楽器的アプローチと、ASCらしい深いドローン/アンビエントの質感が絶妙なバランスで共存している。静謐でありながら重力を感じるレイヤー、霧の中で輪郭だけが浮かぶようなピアノの残響、そして時間の流れがゆっくりと変質していくような構成。音数は少ないのに密度が高く、内省的なムードがアルバム全体を包み込む。影、赦し、距離、脆さ、受容といったテーマが音の質感に反映され、静かな感情の移ろいを追体験するようなASCの新しい表現を提示する重要作。

フレンチ・ダブの重鎮Pilahと、シンガー/MC、Birdy Nixonがタッグを組んだ最新作『O’Clock』。Kaly Live DubやDub Addict Sound Systemで知られるPilahが手がけるプロダクションは、80sラバダブの生々しくて粗削りな質感と、現行フレンチ・ダブのクリアな音像が共存する強靭なサウンド。深く沈むベース、鋭いスネア、空間を切り裂くエコーが、サウンドシステムの現場をそのままレコードに封じ込めたような迫力を生む。Birdy Nixonのヴォーカルは、ルーツ・レゲエの精神性とストーリーテリングを感じさせ、ヘビーなダブ処理と絡み合いながら、楽曲に温度と人間味を与えていく。ヴォーカル曲からダブ・ヴァージョンへと連続するショウケース形式の構成も心地よく、ルーツ、ラバダブ、ダンスホールを横断しながら、現代的な音圧とミックスでアップデートされた、今のフレンチ・ダブ。

デンマーク現行ジャズ/即興シーンの精鋭が集結した特別プロジェクトI Am An Instrumentによる、2019年コペンハーゲンでの完全即興ライヴ録音を収めた『Vol. 1』。Jonathan Bremer、Johannes Wamberg、Eliel Lazo、Morten McCoyら北欧シーンを牽引する実力派が参加し、演奏開始の合図以外は何も決めないという純度の高い即興演奏を展開。音は生まれては消え、また別の方向へと流れていく。ジャズ的な自由度とアンビエント的な空間感が同居し、低音のうねりや残響の深さにはダブの影響も滲む。編集を一切施さない録音だからこそ、メンバー同士が音を探り合いながら立ち上げていく瞬間の呼吸がそのまま刻まれている。4つのパートで構成される音の旅は、抽象的でありながらどこか物語性を帯び、聴くたびに異なる景色を見せてくれる。北欧インプロの現在地を象徴する一枚。
パリのアンダーグラウンド・サウンドシステム〈Green Arrow〉が送り出す、Von D & MoresoundsによるユニットGA Posseの強烈なステッパーズ12"『Talk Too Much / Vakarm』。自作サブウーファーを武器に活動するGreen Arrowらしく、クラブや野外の現場で物理的に押してくる低音を前提に作られた、完全現場仕様の一枚。A面「Talk Too Much」は、レイヴの熱気とステッパーズの推進力が交差する攻撃的なトラックで、硬質なキックと鋭いスネア、Von Dの重いベースラインに、Moresoundsのエフェクトが絡み、倉庫系パーティーの空気をそのまま閉じ込めたようなキラー・チューン。B面「Vakarm」は、より深く沈むローエンドが主役のダーク・ステッパーズで、ミニマルな構成ながら、空間の揺らぎや残響の飛び方が絶妙で、深夜のフロアに映えるヘヴィウェイト・ダブ。Green ArrowのDIY精神と音圧至上主義が最もよく表れた一曲。

オーストリアのダブ・デュオSmalltowndubzが、〈Basscomesaveme〉から放つ強力12インチ『Never Get Burned / Sitar Dub』。A面にはエチオピアン・ルーツのシンガーFikir Amlakを迎え、祈りのようにまっすぐな声と重量級ステッパーズが融合した、スピリチュアルなルーツ・アンセムを収録。深く沈むベースと硬質なキックが生む推進力は、サウンドシステムでの鳴りを強く意識したもの。一方B面はシタール奏者Lance Humeをフィーチャーし、東洋的な旋律がディレイとリバーブの海に溶け込むラーガ・ステッパーズともいうべきもの。ミスティックな響きとステッパーズの強度が交差し、瞑想的でトランス感のある独自の世界観を作り上げている。どちらの面もダブ・バージョンをセットで収録。ルーツの霊性とエスニックな深度を1枚に凝縮した、キラー・ステッパーズ。

フランスの〈BAT Records〉が送り出す、現行ルーツ/ダブ・シーンを牽引するタッグ、Junior Roy×Dub Shepherdsによる待望のフル・ショーケース・アルバム『Trodding On Showcase』。70〜80年代ジャマイカの録音手法を色濃く受け継ぎながら、現代的な強度とメッセージ性を備えた本気のルーツ。Dub Shepherdsのアナログ機材を駆使した生々しい演奏は、太いベース、乾いたスネア、ざらついた質感が前面に出たクラシック・スタイル。そこに若きシンガーJunior Royの力強い声が乗り、精神性と社会性を帯びたリリックが説得力を持って響く。ショーケース・スタイルも相まって、サウンドシステムの現場で曲が解体されていくようなライブ感がそのまま味わえるのも魅力的。
UKルーツ/ステッパーズの重鎮Jah Warriorと、ブリストル・ベースカルチャーの中心人物RSDが初めて真正面から共演した強力12インチ『Not Enough』。Martin Luther King Jr.のスピーチを大胆にサンプリングし、社会的メッセージとサウンドシステムの強度を直結させたコンセプチュアルな一枚。A面はJah Warriorらしい重量級ステッパーズで、鋭いホーンと推進力のあるリディムに歴史的な言葉が重なる。一方 B面ではRSDが深いサブベースと空間処理で再構築し、静寂と圧力が同居するブリストル流ダブへと変貌。特に「Oceanic Depths Dub」はタイトル通り、深海へ沈み込むような没入感が魅力。

テルミン誕生100周年を祝うために制作された、Gaudiの異色のダブ作品『100 Years Of Theremin (The Dub Chapter)』。Mad Professor、Adrian Sherwood、Scientist、Dennis Bovell、Prince Fattyといったダブ界のレジェンドが集結し、それぞれが提供したリディムの上でGaudiがテルミンを自在に操る、豪華かつ自由すぎるコラボレーション。テルミン特有の揺らぐ音程や幽玄なビブラートが、深いエコーと重低音のダブ空間に吸い込まれるように溶け込み、まるでSFとルーツ・レゲエが出会ったような唯一無二の世界観を形成。プロデューサーごとに音の質感が大きく変わり、鋭い残響、跳ねるダブ操作、実験的な空間処理など、曲ごとにダブの教科書のように個性的でありながら、テルミンという一本の軸がアルバム全体を美しくつないでいる。浮遊感と重力が同居するサウンドは、電子音楽リスナーにもアピールできる、テルミンという古典楽器の新たな可能性を切り開いた重要作。
Treasure Isleの名プロデューサーDuke Reidのもと、John Holt、Howard Barrett、Tyrone Evansの3声が織りなす極上のハーモニーが、柔らかく揺れるリズムに溶け込む、ロックステディ黄金期を象徴する名盤、『On The Beach』。スカからレゲエへ移り変わる過渡期の空気をそのまま閉じ込めたような、甘く切ないサウンドがアルバム全体を包み込む。代表曲「The Tide Is High」は後にBlondieのカバーで世界的ヒットとなり、オリジナルの美しさが再評価されるきっかけにもなった一曲。甘い情景が浮かぶ名曲がずらりと並ぶ、軽やかで都会的な音像は〈Treasure Isle〉作品ならではで、夕暮れの海風のような心地よさが続く。The Paragonsの魅力が美しく結晶した、時代を超えるクラシック。

ジャマイカのベテラン・シンガーEcho Minottと、フランスのダブ・ユニットDub Shepherdsが再びタッグを組んだショーケース・アルバム『Mango Tree Showcase』。ヴォーカル曲の直後に対応するダブ・ヴァージョンを配置するクラシックなショーケース形式で、ルーツ〜80sラバダブの魅力をそのまま現代に蘇らせている。さらに「Ram Dancehall」では I Fi が参加し、サウンドシステム映えするダンスホールの熱量も加わっている。Echo Minottの軽快でストリート感あふれるヴォーカルに対し、Dub Shepherdsは深いエコーと空間処理で応答。太いベースライン、沈み込むリディム、そして大胆に飛び交うディレイが、クラシックなジャマイカン・サウンドと現代的なクリアさを絶妙に融合させている。特にダブ・ヴァージョンでは、音が溶けていくような浮遊感と、手触りのあるアナログ感が同居し、サウンドシステム文化の今を感じさせる仕上がり。

日本ジャズ界の重鎮ベーシスト、池田芳夫が1978年に残した初のリーダー作『Sketch Of My Life』が、〈Studio Mule〉から初のアナログ再発。渡辺貞夫、菊地雅章、日野皓正ら名手との共演で知られる池田が、自身の美学を初めて明確に提示した作品で、参加メンバーには、YMO関連でも知られる橋本一子、ベルリンを拠点に活動する高瀬アキ、日本を代表するドラマー日野元彦、そして清水末寿という豪華布陣が揃う。冒頭の名演「Whispering Weeds」は、橋本一子のスキャットとスリリングなピアノが鮮烈で、BBEのコンピレーションにも収録された名曲。全4曲というシンプルな構成ながら、アヴァンギャルドと日本的叙情が自然に同居する独自の世界観は、今聴いてもまったく古びない。70年代ジャズの熱気と、現代にも通用する音響感覚が奇跡的に共存した一枚。日本ジャズの深部。
Echospace/cv313のStephen HitchellがVariant名義で残した2009年の名作『The Setting Sun』が最新リマスターで2LPとして再発。ベルリンの嵐のフィールド録音、成田空港の列車音、アナログシンセやアウトボード機材を用い、コンピュータを使わずに制作されたという背景を持つ本作は、ダブテクノの文脈にありながら、より深いところへと沈み込む。冒頭「As Time Stood Still」から広がるのは、分厚い倍音がゆっくりと揺れ続ける巨大なドローンの雲。音はほとんど動かないのに、内部では微細な変化が絶えず生まれ、アナログ制作ならではの温度感やざらつきがそのまま音楽の一部となり、冷たさよりも手触りを感じるドローン/アンビエントに仕上がっている。「A Silent Storm」「Someplace Else」では、メタリックなディレイや微細なキックの残響が静かに浮かび上がり、Echospace〜Deepchord系の美学が深層で息づく。長尺構成による風景がゆっくり変わる感覚も本作の魅力で、特に終盤「Adrift」は深海へ沈んでいくような静謐さと孤独感が際立つ。

イタリア出身でロンドンを拠点に活動するプロデューサー GAUDI による最新アルバム『Jazz Gone Dub』。テルミンやシンセを交えた幻想的なサウンドによる即興的なジャズ演奏を、ディレイやリバーブを駆使したダブ処理で再構築。ジャズの自由さとグルーヴィーで瞑想的なダブワイズがとにかく心地よい。4年の歳月をかけて制作され、ジャマイカの伝説的ギタリストErnest Ranglin、名リズム隊Sly & Robbie、その他にもDavid Hinds、Roy Paci、Colin Edwin、Horseman、Mr Woodnote、Tim Hutton など豪華ゲスト陣を迎えたGAUDIの集大成的アルバム。
2026年リプレス!これは画期的アイデア!ドイツ・ハンブルク拠点のダブ・プロデューサー、Prince Istariが、幼い頃に聴いた、母親の弾くエリック・サティのピアノにインスピレーションを受けて制作した、まさに”家具の音楽ミーツDUB”な破格の傑作『Meets Erik Satie Inna Heavy Dub Encounter』がアナウンス!母親が幼い頃弾いていた美しいエリック・サティの静かな曲の演奏、そして、学校をサボって太陽の下で座りながら聴いていたという記憶を、2024年の最初の週に思い出したという、Prince Istari。年老いた彼は母親の古い楽譜を見つけ出した事で、それらをコンピューターへと転送し、ダブ・ヴァージョンを制作する事に!サティの家具の音楽がダブから電子サイケ、果てはドラムンベースとまで出会うイカれた一枚!エンディングには、Princeの母親であるHubertaがサティの"グノシエンヌ"を演奏している歪んだ録音が含まれています。限定200部。

日本の伝説的アーティスト、Susumu Yokotaの音楽的探求の軌跡を年代を超えて記録した、極めて個人的な作品集『Image 1983-1998』。本作は、彼の音楽キャリアにおける二つの異なる時期に制作された短い楽曲で構成されており、前半のトラックは1983年から84年にかけての、ギターやオルガンを用いたローファイなテープ実験の時代のものが収録、ポストパンクやゴーストリー・ポップの断片が垣間見える。続く後半のトラックは、これらの初期作品に触発され1997年から98年に作曲されたもので、後のアンビエントの傑作『Sakura』へと繋がる、より洗練された電子音響とメロディと抽象性が両立する作品が収録されている。音楽的自伝ともいうべき内容で、初期の脆いギターの音色と、後年の穏やかなシンセサイザーのモチーフが、アルバム全体を通して「記憶と予感」という共通のムードで結びついており、両時代が並行して存在するような不思議な感覚を覚える。彼がテクノの制作で多忙を極める中で、初期の実験への回帰と感情的なミニマリズムを追求した、音のスクラップブックあるいはデザインボードとも呼べる、アーティストの核心に迫る貴重なドキュメント。

横田進が2001年に自身のレーベル〈Skintone〉から発表したアルバム『Grinning Cat (Skintone Edition)』。日常の幸福感、特に自宅で過ごした猫との生活から着想を得て制作された作品で、ピアノや弦楽器などクラシック音楽からの断片をループし、切れ端をあえて見せることで不完全さを強調。不完全なループや微妙なズレという意図的な不協和が、独特の緊張感の中になぜか親しみやすい寛ぎを生み出している。『Sakura』や『Symbol』と並び、国際的に評価されたアンビエント作品群の一角で、彼の音楽世界を再発見する重要な再発。

化学研究者としてのキャリアを健康問題で断念した後、シンセサイザーを中心に独自の電子音楽を制作し続けたウクライナ系ベネズエラ人作曲家Oksana Linde。膨大な録音を残したたものの長らく未発表のままだった彼女の、1986〜94年に自宅スタジオで製作された音源をまとめたアーカイヴ作品『Travesías』。アナログシンセの柔らかな揺らぎ、呼吸するようなオシレーター、ゆっくりと開閉するフィルターが重なり、瞑想的で内省的な音の風景が広がる。曲は一般的な展開を持たず、生物学的プロセスや地質学的変化のようにゆっくりと形を変える。「Luciérnagas en los manglares(マングローブのホタル)」、「Kerepakupai Vena(エンジェルフォール)」など、自然やスピリチュアルな世界観が音の質感にも反映され、静謐さと神秘性が同居するその音楽は、環境音楽、ニューエイジ、コズミック・アンビエントの要素が溶け合い、まるで内なる宇宙を旅するよう。Suzanne Cianiや冨田勲 に通じる繊細さと、南米の実験音楽らしい自由さが同居するのも魅力的。彼女自身に備わった自然なスピリチュアリティが発露した、パーソナルで独自の音世界。

トロピカリア黄金期の中心にいたGal Costaが、1969年にリリースした歴史的名盤『Gal Costa』。Caetano Veloso、Gilberto Gil、Jorge Benらが楽曲提供し、アレンジはトロピカリアの頭脳Rogério Dupratが担当。ロック、サイケデリア、サンバ、ボサノヴァが大胆に混ざり合う、ブラジル音楽史でも最も革新的な1枚。ロックのエッジとトロピカリア特有のカラフルなアレンジが混ざり合い、当時のブラジルの混沌と創造性をそのまま音にしたような鮮烈なサウンドが魅力的。Galのヴォーカルは時に挑発的で、時に官能的に自由奔放に暴れまわる。MPB、トロピカリアのクラシックとしてはもちろん、サイケ、ワールド、ロックのリスナーにもアピールできる普遍的な名盤。

ペルー電子音楽の始まりを初めて体系的にまとめた決定的アーカイヴ『Tránsitos Sónicos』。César Bolaños、Edgar Valcárcel、Enrique Pinillaら、南米前衛を牽引した作曲家たちの1964〜84年の重要作を収録し、これまで断片的に語られてきたペルー電子音楽史を一望できる内容。初期の作品は、アルゼンチンのInstituto Di TellaやColumbia-Princeton Electronic Music Centerなど、当時の最先端スタジオで制作された硬質で抽象的なテープ音楽。その後1970年代後半に進むにつれ、民族楽器や環境音を電子処理と融合させた、ペルー独自の音響世界へと発展していく。電子音の構造美と、ケーナ、打楽器、鳥の声、環境音などアンデスの音文化が交差する音響詩ともいうべき独特のサウンドは、南米実験音楽の豊かさを改めて感じさせてくれる。ペルーの音楽史に眠っていた革新的な作品群を、現代の耳で再発見できる貴重なコンピレーション。
1970年代半ばのローデシア、現在のジンバブエで活動したロック・カウンターカルチャーの中心バンドWells Fargo。当時アルバムを作らず、シングルのみをリリースしていた彼らの、70年代のシングル音源と未発表音源をまとめた貴重すぎる編集盤。ジミ・ヘンドリックスやDeep Purpleの影響を受け、当時の抑圧的な政治状況の中でロックを武器に立ち上がった。タイトル曲「Watch Out」は、当時の若者たちの反体制的アンセムとして語り継がれる名曲で荒々しいファズギター、疾走感のあるビート、そして切迫したヴォーカルが、当時の社会情勢とエネルギーをそのまま伝えてくれる。シングル中心に活動していたバンドだけに、どの曲もライブの熱気をそのまま閉じ込めたような勢いが魅力。ローデシアの若者たちが生んだ、革命的ヘヴィロックをまとめた歴史的コンピ。
実験音楽家 Galecstasy と、オルタナ界のレジェンド Mike Watt が組んだトリオによる、スリリングな即興演奏を収めたアルバム『Wattzotica』。太くうねるベースを軸に、ノイズ、アンビエント、ジャズが自由に交差し、トリオ編成ならではの広い空間と緊張感が生まれている。2018年、Galecstasy が Mike Watt のラジオ番組に出演したことがきっかけで始動した異色のコラボにも関わらず、ミニットメン以降の Watt の精神性と、Galecstasy のアート的アプローチが自然に溶け合い、ポストロックやシカゴ音響派にも通じる有機的なグルーヴが立ち上がる。限定のグリーン・ヴァイナルという希少性も相まって、音楽作品でありながらアートピースとしての存在感も強い一枚になっている。
