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François J. Bonnetが手掛けるエレクトロアコースティック/実験音楽プロジェクトKassel Jaegerのオリジナルは2012年に〈Senufo Editions〉からリリースされた重要作『Fernweh』が〈Black Truffle〉から再発!電子音響とミュジーク・コンクレートを融合させた濃密で感情的なサウンドスケープが展開される本作は、波のように寄せては引く電子音、風や水、ガラスの音のような曖昧で現実感のある音が交錯しながら、明確なイメージを与えずに空間を漂う。具体音と合成音が溶け合い、風景のように推移する構成は、彼のフランス・ミュージック・コンクレートの伝統と音響に対する厳密さと、アンダーグラウンドな実験音楽の粗さが共存している。情緒と実験が同時に息づく独特の音世界は、友人でもあるジム・オルークと同様、アカデミックな伝統から逸脱した開かれた耳によるもので、情緒ある抽象を追求した電子音響の傑作。
仏〈Ocora〉にも比肩しうる広範かつディープな世界各地の伝統音楽のカタログを持つスイスのローザンヌ近郊に拠点を置く、長い歴史を持つレーベル〈VDE/Gallo〉より、中央アフリカ共和国に暮らすアカ・ピグミー(Aka Pygmies)による伝統音楽を収録した、Patrick Kersaléによる1992年現地録音作。アルバムはアカ族の伝統的なポリフォニーを中心に構成、楽器には弓奏楽器、ハープ、打楽器が使用されている。狩猟、祝祭、子守唄など、生活と儀式に根ざした楽曲が収録されている中でも、圧巻は「Grande fête de divertissement」(大きな祝祭)と題されたトラックで、34分にわたる長編ポリフォニーでアカ族の音楽文化の深さを体感できる。音楽的にも人類学的にも非常に価値の高い民族音楽研究・フィールド録音の名盤。
仏〈Ocora〉にも比肩しうる広範かつディープな世界各地の伝統音楽のカタログを持つスイスのローザンヌ近郊に拠点を置く、長い歴史を持つレーベル〈VDE/Gallo〉より、アゼルバイジャンの伝統弦楽器カマンチャの名手、エルシャン・マンスロフによる演奏を収録した、古典音楽「ムガーム」の深い精神性と即興性を体感できるアルバム。カマンチャはスパイク・フィドルの一種で、絹弦の柔らかな音色と豊かな表現力を持ち、マンスロフの演奏は情感に満ちた旋律と緻密な技巧が融合している。打楽器奏者カムラン・カリモフとの共演によって、旋律とリズムが対話しているようで、躍動感がありながらも瞑想的な音世界が聴く者をアゼルバイジャンの音楽的風景へと誘う。悠久の時を伝える息の長い旋律、録音から伝わってくる静寂の深さが印象的。
仏〈Ocora〉にも比肩しうる広範かつディープな世界各地の伝統音楽のカタログを持つスイスのローザンヌ近郊に拠点を置く、長い歴史を持つレーベル〈VDE/Gallo〉より、エチオピアの伝統的な宗教音楽である、アムハラ族の典礼歌唱と大型の堅琴ベゲナによる深い霊性を湛えた音楽を集めたコンピレーション。〈Death Is Not The End〉からのヴァイナル・リイシューでも知られる貴重な音源のCD盤。ベゲナは、ダビデの竪琴とも呼ばれる10本の弦を持つ大型の弦楽器で、神への祈りや信仰、死、救済といったテーマを静かに語るような音楽に用いられる。このアルバムでは、Alemu Aga、Sosena Gebre Eyesus、Tafese Tesfaye、Yetemwork Mulat、Abiy Seyoum、Akalu Yossefらによる演奏が収録されており、ウィスパーボイスと低音のベゲナが交錯する、静謐で瞑想的な音世界が展開される。本録音はベゲナ音楽を本格的に記録した数少ない音源のひとつであり、まるで教会の奥で密やかに歌われる祈りのような響きが、聴く者の心に深く染み入る一枚。
仏〈Ocora〉にも比肩しうる広範かつディープな世界各地の伝統音楽のカタログを持つスイスのローザンヌ近郊に拠点を置く、長い歴史を持つレーベル〈VDE/Gallo〉より、ニジェール北部アザワグ地方に暮らすトゥアレグ族の音楽文化を記録したフィールド録音作品。遊牧民としての生活に根ざした音楽は、一弦フィドル、アンザドやフルート、打楽器などの素朴で力強い楽器によって奏でられ、女性たちの合唱や詩の朗唱、子どもたちの歌声が交錯することで、共同体の多様な声が響き合う。旋律は反復的で呪術的な雰囲気を持ち、ハンドクラップや声と鮮やかなレイヤーを形成する。録音を包み込むような静寂の深さが印象的。風や動物の声などの環境音も含まれた録音も相まって、聴く者はまるで現地に立ち会っているかのような錯覚を覚える、トゥアレグ族の精神世界と音の美学を体感できる貴重な記録。
仏〈Ocora〉にも比肩しうる広範かつディープな世界各地の伝統音楽のカタログを持つスイスのローザンヌ近郊に拠点を置く、長い歴史を持つレーベル〈VDE/Gallo〉より、20世紀中国を代表する古琴奏者・蔡徳允(Tsar Teh-yun)の演奏を収録した2枚組アルバム。蔡徳允の演奏は、技巧よりも精神性と余韻を重視しており、「陽春」「瀟湘水雲」「平沙落雁」など、中国古典音楽の名曲が、絹弦の柔らかな音色と静謐な間合いで奏でられる。中国古琴音楽は儒教・道教・禅の思想と結びつき、瞑想的で哲学的な響きを持っているが、本録音は1956年から1989年にかけて録音された貴重な音源で、特に古琴の芸術性と精神性を深く感じられる内容となっている。静けさの中に豊かな情感を秘めた珠玉の音楽。
仏〈Ocora〉にも比肩しうる広範かつディープな世界各地の伝統音楽のカタログを持つスイスのローザンヌ近郊に拠点を置く、長い歴史を持つレーベル〈VDE/Gallo〉より、尺八奏者・福田輝久による禅宗の伝統に根ざしたソロ演奏を収録したアルバム。 虚無僧の修行音楽として知られる普化宗の古典曲を中心に、息遣いや間が際立つ静謐な音世界が展開、「虚鈴」「三谷」「鹿の遠音」など、侘び寂びの美学を体現する楽曲が並ぶ。尺八一本による音の少なさが逆に空間を満たし、聴く者の内面に静かに語りかける。本格的な録音が一般に流通することがあまりない日本の伝統音楽の中で、仏〈Ocora〉からもアルバムをリリースする定評ある奏者によるまとまった録音は大変貴重なもの。
仏〈Ocora〉にも比肩しうる広範かつディープな世界各地の伝統音楽のカタログを持つスイスのローザンヌ近郊に拠点を置く、長い歴史を持つレーベル〈VDE/Gallo〉より、日本の宮廷音楽「雅楽」の伝統的な演目を収録したアルバムで、「越天楽」や「蘇志摩」など、古代から伝わる管弦・舞楽の楽曲が収められており、笙・篳篥・龍笛などの雅楽器が響く。演奏は1887年に東京・小野照崎神社の宮司・小野良道によって創設された、仏〈Ocora〉からもアルバムをリリースする日本最古の民間雅楽団体のひとつ、Ono Gagaku Kaï(小野雅楽会)によるもの。本格的な録音が一般に流通することがあまりない雅楽の中で、民間団体でありながら、135年以上にわたって雅楽の伝統を守り続けている稀有な存在による荘厳で静謐な音世界が、日本古来の美意識を垣間見せてくれる貴重な録音。
仏〈Ocora〉にも比肩しうる広範かつディープな世界各地の伝統音楽のカタログを持つスイスのローザンヌ近郊に拠点を置く、長い歴史を持つレーベル〈VDE/Gallo〉より、ベトナム中部高原に暮らすジョライ族の伝統音楽と儀式歌を収録したフィールド録音作品。共同体の精霊への捧げ物、葬儀、祝祭、家屋の新築儀礼など、生活に根ざした音楽が多彩な楽器とともに記録されており、竹製の木琴、口共鳴フィドル、二弦・十一弦の棍棒型ツィターなど、独自の楽器による演奏が民族の精神文化を鮮やかに伝える。楽器の音色は素朴ながらも力強く、祝祭の高揚感は、天然のミニマル・ミュージックのよう。ベトナムの音楽的多様性と精神性を体感できる、貴重な記録となっている。
仏〈Ocora〉にも比肩しうる広範かつディープな世界各地の伝統音楽のカタログを持つスイスのローザンヌ近郊に拠点を置く、長い歴史を持つレーベル〈VDE/Gallo〉より、ベトナム北部高原地帯に暮らす少数民族の伝統歌を収録したフィールド録音作品。ヌン族、ヤオ族、モン族、タイ族などの民族による儀式歌や民謡が、素朴な声と独特の旋律で記録されている。歌は生活の場面に根ざしており、恋愛、祈り、労働、子守唄など多様なテーマが扱われる。素朴で力強い歌声と、独特の旋律が民族ごとの文化的背景を映し出しており、言語といい発声法の違いといいベトナムの音楽的多様性と精神性を体感できる、貴重な記録となっている。奥深いに二声曲も収録されており、耳を澄まさなければ聴こえてこないようなあまりに静寂なその音世界は、音楽というよりも、語りと祈りを聴くような体験。貴重な音源として、民族音楽研究やフィールド録音愛好家にとっても重要な一枚。
仏〈Ocora〉にも比肩しうる広範かつディープな世界各地の伝統音楽のカタログを持つスイスのローザンヌ近郊に拠点を置く、長い歴史を持つレーベル〈VDE/Gallo〉より、ベトナム北部に暮らすモン族の伝統音楽と歌を収録したフィールド録音作品。葬儀、恋愛、子守唄、儀式など、さまざまな場面で歌われる声が収められており、男女の歌声は素朴で力強く、旋律は反復的で呪術的な響きを持つ。竹製の笛、口琴、太鼓など、モン族特有の楽器も登場。録音は現地の自然音も含み、臨場感と生活感が強く伝わってくる。楽器にしても歌声にしても、耳を澄まさなければ聴こえてこないようなあまりに静寂なもので、音楽というよりも、民族の語りと祈りを聴くような体験。貴重な音源として、民族音楽研究やフィールド録音愛好家にとっても重要な一枚。

ロサンゼルスを拠点に活動する大人気ベーシストSam Wilkesが新たな一歩踏み出した7インチ『104.3』が登場。本作はベースを封印し、友人Brian Robert Jonesから借りたストラトキャスターを手に、思いつくままに音を重ねていったセッションから生まれた作品で、A面には最初の夜に一発録りしたのはトム・ペティ「Learning to Fly」のループ演奏。その後にベースとコーラスを加えたという。数週間後、ギターを返す前の最後の夜にはフリートウッド・マックの「I Know I’m Not Wrong」を再構築。どちらも作り込むというより、楽器との出会いをそのまま封じ込めたような即興性に満ちている。本人の「ベースでは半分くらいベースじゃない音を探している。だから違う楽器を弾くことがすごく解放的だった」という言葉通り、気負いのない自然体の演奏が心地良い。

Rod Modellと共にDeepChordを創設し、ダブ・テクノ第二世代の中心人物として知られるMike Schommerが、DeepChord以降のキャリアで培った音響美学を凝縮したトラック3曲と、現代ダブ・テクノの精鋭による3つのリミックスを収録したEP『Mike Schommer – Heirloom Signal』。本作は、Basic Channelの遺産を継承しつつ、現代的な音響処理とリズム感覚を融合。「Moon Serpent」のストレートな4/4グルーヴや、「Violet’s Dream」のハーフタイム・ステッパーズ的な構造は、Rhythm & Soundの精神性を継承しつつ、現代のベース・ミュージックやテクノの文脈にも通じるもの。リミックス陣による再構築も、空間性と肉体性のバランスを巧みに調整し、ダブ・テクノの可能性を拡げている。

世界中の良質レーベルを股にかける日本ダブ・テクノ界キーパーソンAltoneことYuki Takasakiによる、名門〈Echocord〉からの記念すべきデビュー作『Altone – Invincible Nature EP』。本作は静謐で硬派なダブ・テクノで、Rod ModellやQuantecの系譜に連なる、深く沈み込むような残響とコードの揺らぎが印象的。Altoneの硬質で無駄のないビートメイクと、上品なダブワイズ処理が際立っており、クラシックなダブ・テクノの様式美と現代的な空間処理が融合した、静かに深く響く一枚となっている、日本発の精緻なダブ・テクノの到達点!

Coil のメンバーとしても知られるスコットランド出身の電子音楽家Drew McDowallとKali Maloneと初の本格的コラボ作『Magnetism』。マローンが精緻な持続音の作曲を展開してきたのに対し、マクダウェルは、有機的に脈打つ歪みや揺らぎを伴ったシンセサウンドを探求してきた。二人のアプローチはいわば正反対だが、本作ではその差異がぶつかり合うのではなく、うまく混じり合ってひとつの響きになっている。全4曲の長大な楽曲では、カープラス・ストロング法といったデジタル音響技術や、純正律などの伝統的な音律を用いて、音が反復し、飽和していくプロセスそのものが聴き手を瞑想的な感覚へ導いていく。時間の流れを忘れるような、ものすごくゆっくりとした大きな動きで展開していく音、一方で、音そのものはとても鮮明で瞬間的。とても大きなスケールでゆっくり変化する響きと今この瞬間に立ち上がる鋭さが同居した音世界は、カリ・マローンが光や構造を担い、マクダウェルが影や有機的な歪みを注ぎ込んでいるかのよう。異なる美学が互いを映し合うことで生まれた、古代的でありながら切実に現代的なミニマリズムの到達点ともいうべき一枚。
仏〈Ocora〉にも比肩しうる広範かつディープな世界各地の伝統音楽のカタログを持つ、スイスはローザンヌ近郊を拠点とする長い歴史を持つレーベル〈VDE/Gallo〉より、アラビア半島のベドウィン(遊牧民)による詩の歌唱伝統を記録したフィールド・レコーディング作品『Anthologie musicale de la péninsule Arabique : Poésie chantée des bédouins ; vol.1』。1970〜1972年クウェートでの録音で、アラビア半島の口承詩と音楽の関係を明らかにする貴重な資料となっている。歌詞の翻訳、演奏者の背景、録音状況などが詳細に記載されたブックレットも付属。
仏〈Ocora〉にも比肩しうる広範かつディープな世界各地の伝統音楽のカタログを持つ、スイスはローザンヌ近郊を拠点とする長い歴史を持つレーベル〈VDE/Gallo〉より、イタリアはアペニン山脈の北部に広がる山岳地帯で、行政区分を越えて共通の音楽・言語・風習を持つ文化圏として知られる地域の多声合唱の伝統を記録した貴重なフィールド・レコーディング作品『Italie: Polyphonies des Quatre Provinces』。この地域では、口承による多声合唱(polyphonie vocale)と伝統的な器楽演奏が融合した祝祭音楽が今も受け継がれており、イタリアの山岳地帯に息づく声の文化と共同体の記憶を、音を通じて体験できるアルバムとなっている。素朴で力強い歌声が、土地の風景と人々の暮らしを鮮やかに描き出す一枚。
仏〈Ocora〉にも比肩しうる広範かつディープな世界各地の伝統音楽のカタログを持つ、スイスはローザンヌ近郊を拠点とする長い歴史を持つレーベル〈VDE/Gallo〉より、1982年にポルトガル・マデイラ諸島のポルト・サント島で録音されたフィールド・レコーディング作品『Portugal: Musique de l'île de Porto Santo (Archipel de Madère)』。本作は、ポルト・サント島に伝わる宗教的・世俗的な祝祭音楽を記録した貴重な音源集で、地元の歌い手たちによる多声合唱と器楽演奏を収録。ポルトガル本土とは異なる独自のスタイルと楽器編成を持ち、地域性の強い音楽遺産となっている。ポルトガルの島嶼部における音楽の多様性と、当時の生活や祝祭の雰囲気をリアルに伝える一枚。
仏〈Ocora〉にも比肩しうる広範かつディープな世界各地の伝統音楽のカタログを持つ、スイスはローザンヌ近郊を拠点とする長い歴史を持つレーベル〈VDE/Gallo〉より、Ustad Ghulam Mohammad Saznawazによるインド・カシミール地方のスーフィー音楽スーフィヤーナ・カラームの伝統を記録した貴重なフィールド録音作品『Cachemire: Le Sūfyāna Kalām de Srinagar』。スーフィヤーナ・カラームとは、イスラム神秘主義に根ざした音楽形式で、瞑想的な夜の集いメフフィルで演奏される声楽・器楽の組曲で、maqāmと呼ばれる旋法構造に基づき、sāz-e-kashmīrīなどの伝統楽器を用いて演奏される。本作は、カシミールの音楽文化の保存と継承を目的とした民族音楽学的プロジェクトの一環として制作されたもので、儀式的・霊的・詩的な要素が融合した音楽であり、現代では希少となったこの伝統の生きた証言としても非常に貴重な一枚。
仏〈Ocora〉にも比肩しうる広範かつディープな世界各地の伝統音楽のカタログを持つ、スイスはローザンヌ近郊を拠点とする長い歴史を持つレーベル〈VDE/Gallo〉より、2016年にジュネーブ民族学博物館(MEG)が企画した展覧会「Amazonie: Le chamane et la pensée de la forêt(シャーマンと森の思考)」に合わせて制作された、フィールド・レコーディング作品『AMAZONIE: Contes sonores』。アマゾン地域の13の音の物語で構成されており、環境音、動物や人間の声、アヤワスカの儀式音楽などが収録されています。各トラックは、狩猟、漁、儀式、癒し、森林破壊など、現地の生活や精神文化に根ざしたテーマを持っており、アマゾンの音響文化を芸術的かつ学術的に記録した貴重なドキュメントとなっている。音を通じて森の思想や人々の営みに触れることができる聴く民族誌とも言える内容。

数々の傑作を送り出したオーストラリア発の名実験デュオ”HTRK” (=Hate Rock)が2014年に〈Ghostly International〉からリリースした、ミニマルで官能的な音響美を追求したアルバム『Psychic 9-5 Club』が、クリア・ピンク・マーブル・ヴァイナル仕様で、音質も新たにリプレス!本作は、ベーシストSean Stewartの死を経て、JonnineとNigelの2人による初のデュオ体制で制作された作品。それまでのHTRKのノイズ・ロックやインダストリアルな質感から一転し、よりミニマルで内省的な音響へと移行している。太いビートと簡素なダブ処理が印象的で、余計な音を排したクールな質感が全編に貫かれていて、官能性と孤独感が交錯するヴォーカルとリズムが、聴く者に深い没入感を与える。HTRKのキャリアの中でも最も成熟した音響作品とされ、ウィッチ・ハウスやダークウェイヴの先駆的存在としての彼らの立ち位置を再確認させるアルバム。
ノルウェーのプロデューサーMikkel Revによるアンビエント・トランスの美学を追求したコンセプチュアルなアルバム『Journey Beyond』。BPMが緩やかに上昇する構成によって、瞑想から覚醒へと至る精神的な旅路を描いており、前半はチルアウトやスロートランスの穏やかな音響が広がり、後半に向けてクラシック・トランスの高揚感が立ち上がる。全体を通して、夢幻的で空間的な音響処理と、感情に訴えるメロディラインが印象的。内省的なリスニングにも、感情の旅を求めるリスナーにも響く、現代アンビエント・トランスの到達点。

12月上旬再入荷。オリジナルは1973年リリースの、修道女Sister Irene O'Connorによる自主制作作品として長らくカルト的評価を得てきた伝説的アルバム『Fire of God’s Love』。オコナーはフランシスカン・ミッショナリーズ・オブ・メアリー修道会に所属するカトリック修道女で、教育や奉仕の傍ら音楽活動に携わってきた。1960年代にはシンガポールでギターを手にし、子どもたちと歌う中で作曲を始め、70年代に入り、同じ修道女で録音技師でもあったシスター・マリミル・ロブレガットとともにシドニーのカトリック放送局のスタジオでこのアルバムを制作。オルガン、ピアノ、アコースティックギターを主体に、チープなリズムボックスやベースペダル、そして大量のリヴァーブを駆使し、オコナーはソプラノで英語・ラテン語・マレー語の詞を歌い、同時にオルガンの全パートを演奏している。マリミルの技術と感性による録音・ミキシングは、清らかでありながら異世界的。霊的で恍惚感のある響きとなっている。歌詞のテーマは「慈悲」「光」「救済」といった聖書的題材に根差していながらも、音楽的には形式的な讃美歌ではなく、フォークや当時のサイケデリック、さらには早すぎたシンセポップを思わせる響きを含んでいるようで、モンド、電子音楽、カルト・アンビエント、フィメール・フォークなど多様な文脈で語られる稀有な作品となっている。修道院という閉ざされた環境から生まれながらも、時代もジャンルも超えてリスナーを魅了し続ける奇跡の一枚であり、無二のスピリチュアル・ポップ/サイケデリック・フォークの古典。長らく入手困難だったが、〈Freedom To Spend〉によってリマスターが施され、公式に復刻。詳細なライナーノーツと歌詞を収めたブックレットも付属した価値ある再発。

サクソフォン奏者、作曲家であり詩人でもある JJJJJerome Ellis が、即興と自身が持つ吃音を音楽の中心に据えて作り上げたセカンド・アルバムが〈Shelter Press〉より登場。黒人の宗教的伝統や祖先からの継承をテーマにしつつ、時間や声のあり方を探るような内容になっている。音楽的にはサックスやオルガン、ハンマーダルシマー、電子音、そして声を織り交ぜたアンビエント、ポスト・クラシカル的なサウンドスケープが基盤。そこにポップスやインディ・ロックからの影響を感じさせる音響処理や、カリブ、ブラック・アメリカン・ミュージックに通じるサンプリングやリズム感覚も混ざり、静謐な祈りや儀式に近いムードを持ちながら、同時にポップな親しみやすさもかすかに漂っている。
