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オランダのSuze IjóとブラジルのZopelarによるコラボ12インチ『Ritual Of Dance』。暖かみと深さを併せ持つ持つディープ・ハウスを軸にしながら、反復の気持ちよさと身体的なグルーヴを丁寧に組み上げた作品で、クラブユースの強度と落ち着いた集中が自然に共存している。音の中心には、柔らかく沈むベースと丸みのあるシンセがあり、ゆっくりと変化するループが流れをつくる。キックは強すぎず、リズムの配置が巧妙で、フロアに寄り添いながらも余白を感じさせるバランス。Suze Ijóのスピリチュアルなハウス感覚と、Zopelarのブラジリアン・エレクトロニック由来の温かい音色が自然に溶け合い、都市的な洗練と素朴さが同じ空間に立ち上がる。暖かくディープで瞑想的な良質のハウス・ミュージック。
10月中旬再入荷。ベルギーの重要ハウス・レーベル〈We Play House Recordings〉が誇る名物企画が待望の復活を果たした限定12インチ『WPH Summer Special 2026』。2010年代初期に人気を博したスタンプド仕様のヴァイナル・オンリー・シリーズであり、未発表音源や初アナログ化音源、本盤限定のコラボ楽曲など全4曲を贅沢にコンパイルしたスペシャルな1枚。Satoshi Fumiによる美麗かつ叙情的なデトロイト・テイストのリミックスから、レーベル主宰Red Dが手掛ける夢心地なディープ・ハウス、Lady LinnやFabrice Ligとの強力コラボ、さらにはLeftoらによるオールドスクールな熱量あふれるハウス・ジャムまでを網羅。ディープな旋律とクラシックな質感とともに夏の熱気をそのまま封じ込めた一枚。

リディム職人Prince Riserによる、Sammy Gold、Madi Simmonsといったルーツ・シンガーを迎え、各曲にはダブ・バージョンも収録した、サウンドシステム仕様の本格派デビュー・フルアルバム『Through The Storm』がドイツのデジ・ダブ名門〈Jahtari〉より登場。Prince Riserは、Dread & Fred、Exterminator、King Jammyといった80s〜90sデジタル・ダンスホールの系譜を意識しつつ、〈Jahtari〉らしいチップチューン的な質感を織り交ぜるたハイブリッドなダブ・サウンドを構築。さらにレーベル主宰のdisruptも関わり、宇宙的な独自の音像に仕上げている。深く沈むベースと渦を巻くエコーが印象的な重厚ダブのタイトル曲「Through The Storm」、Sammy Goldを迎えた、Sly & Robbieを思わせる「Poverty Ina Russia」、Wackie’s系のスピリチュアルなソウル感が漂う「Keep On Trodding」など収録した、〈Jahtari〉の奇妙で宇宙的な質感を堪能できる一枚。

10月中旬再入荷。メルボルンのビート・ソウル・シーンを代表するHugh B & Setwunによる、2020年の『Yeah Definitely』と、そこから6年の時間を経て完成した続編『Nah Maybe』をまとめた作品が〈Planet Trip〉より登場。ダブ、サウンドシステム文化の低域を土台に、ポストパンクやアンビエントの質感、抽象的なヒップホップのループ、そしてネオソウル/モダンR&Bのボーカルが自然に重なり合う独特の世界観が魅力的。ざらついたテクスチャーと柔らかいコードが同居し、会話サンプルや空間的な処理が曲間の流れをつないでいくことで、16曲の長尺ながら軽やかに聴き進められる。『Yeah Definitely』の勢いあるビート感と、『Nah Maybe』の成熟した色彩がまとまることで、より深みのある一枚となっている。

A.R. KaneのRudy Tambalaと、CranesのAlison Shawという90年代UKアンダーグラウンドを象徴する2人が、1991年に残したコラボ録音『Rise』を、〈Music From Memory〉が新装、復活。当時のセッションは、初期サンプラー、ドラムマシン、アコギ、囁くようなボーカルを最小限に使い、空間そのものを音楽にするというコンセプトで進行。ドリームポップの儚さ、アンビエントの静けさ、そしてA.R. Kane由来のダブ的低音処理が溶け合い、霧の中で音が浮かんでは消えるような、親密で幽玄な世界が広がる。オリジナルEPの音源に加え、2012年録音の未発表曲「Biology」を追加収録。DATからの丁寧なリマスターにより、当時の未完成の美しさをそのまま保ちながら、音の奥行きがより鮮明に立ち上がる。ドリームポップ、アンビエント、ダブ、実験音楽が静かに交差し、90年代UKインディの空気をそのまま閉じ込めた、静かに広がる作品世界。
ジャマイカの巨匠Joe Gibbsと、天才エンジニアErrol Thompsonの黄金コンビが放ったダブ金字塔シリーズの最高峰第2弾『African Dub All-Mighty: Chapter 2』。Soul SyndicateやWe the Peopleの精鋭が参加し、第3弾と並びシリーズ屈指の完成度を誇る金字塔的作品。The TechniquesやThe Melodiansといった1960年代ロックステディの甘美なメロディから、後の「Uptown Top Ranking」へ繋がるヘヴィウェイトなワン・ドロップまで名リディムが目白押し。Errol Thompsonの鋭利なミキシングにより、スウィートな旋律がダーク&ミニマルな空間へと削ぎ落とされ、ドラスティックなダブ・エフェクトが突き刺さる音響世界へと変貌を遂げている。甘美な旋律と深い重低音が交錯する、ダブの醍醐味が詰まった傑作!

L.A.を拠点に活動する中国系アメリカ人3名によるユニットSY3のデビュー作が〈Music From Memory〉より登場。香港ニューウェーブ映画、広東ポップス、2000年代初頭のダウンテンポを背景に、柔らかい電子音と語り、淡いメロディが溶け合うノクターナル・ポップ。広東語のスポークンワード、霞のように漂うシンセ、淡いギター、ゆるやかなビートが、夜の都市を夢遊するようなムードをつくり出す。フェイ・ウォンや周迅の00年代中華ポップ、砂原良徳『Lovebeat』の影響を感じさせつつ、アンビエント・ポップの透明感も共存。湿度とネオンの光、深夜の静かな孤独と甘いノスタルジー満ちた一枚。

9月下旬再入荷。幾何学模様の中心人物として知られるTomo KatsuradaとJonny Nashが、長年の交流を経てついに完成させたデュオ作品『At The Emerald Pool』。ふたりが1年間にわたり教会・寺院・劇場など多様な空間で育ててきたギターデュオとしての言語を純度の高い形で記録したアルバムで、録音はわずか3日間のセッション、事前に用意したスケッチをもとに、即興性と親密さをそのまま残した構造になっている。フィンガーピッキングのレイヤーが重なり、水面に光が反射するような細やかなテクスチャーが広がる、ふたりのギターがひとつの生き物のように絡み合う感覚。アンビエントの透明感、アシッドフォークの素朴さ、室内楽の静けさが自然に溶け合い、ゆっくりと移り変わってゆく音の流れをつくり出している。淡く儚い歌も差し込まれ、さりげない物語性も感じられる、アンビエント、アシッドフォーク、ミニマル、室内楽、そのどれにも属しながら、どれにも完全には収まらない、ふたりだけの静かな世界。

10月中旬再入荷。デンマーク・コペンハーゲン拠点のソングライターGBによる、ロックバンド編成によるダイナミックなアルバム『Herzsprung』が〈AD93〉より登場。ロンドン滞在中に無料新聞を切り刻んで歌詞の素材を作り、スウェーデンの山中にあるスタジオを借り切って、信頼するミュージシャンと合宿的に制作されたという背景がそのまま音に反映されたような、即興性とバンドの反応がそのまま刻まれた仕上がり。70年代フュージョンに、ジャパニーズ・ノイズロックの荒々しさ、グランジの重さ、アウトサイダー・ポップの奇妙な明るさが同居し、GBのポップセンスがそれらをひとつの軸にまとめている。太いベースライン、跳ねるドラム、歪んだギターが絡み合い、アイデアがその場で形になっていくような瞬間の強度が強く感じられる。ロンドンの雑多な文化から得た刺激と、山中での集中したバンド録音が交差する、聴き手を置き去りにしない、開かれた実験性にあふれた一枚。
ポルトガルのエレクトロニック・トリオSensible Soccersの楽曲を、Tolouse Low Trax、Danilo Plessow、Peaking Lightsら3名のカルト的プロデューサー陣が再構築したリミックスEP。Tolouse Low Traxは「Efeito Zandinga」をアフロビートと削ぎ落とされたテクノの質感が交錯するヒプノティックなトラックへと変貌させ、Danilo Plessowは「Saravá」をクラブの推進力と原曲の温度感を両立させたドライヴ感のあるアシッド・ハウスへと再構築。Peaking Lightsは「Rosa Mota」を広がりのあるダブ、サイケデリック解釈へ導き、コズミックなフィナーレを形づくる。3つのリミックスはそれぞれ異なる角度から楽曲を照らしており、アフロ・フューチャリズム、アシッド、サイケデリック・ダブ、電子音楽が交差する、コンパクトながら多層的な12インチ。

10月中旬再入荷。ブラジル・マセイオ出身のシンガーソングライター、Bruno Berleがロンドン、サンパウロ、ミナスジェライス、ドイツ、マセイオを巡りながら制作した、柔らかい歌声と透明な音像で描いた現代ブラジル音楽の重要作『Sem Fronteiras』。アコースティック・ギター、控えめなシンセ、軽いパーカッションが水彩画のように薄いレイヤーで重なり、どの曲も朝の窓を開けた瞬間のようにすがすがしい。ギターのアルペジオが静かに煌めき、朝の光をそのまま音にしたような柔らかいトラックに、低いテンションのビートと淡いメロディが穏やかに揺れる。MPB、インディ・フォーク、ソフト・ポップが透明な質感で自然に溶け合い、Bruno Berleの詩的な世界観が静かに広がる、現行ブラジル音楽の中でも特に繊細で美しい作品。
9月下旬再入荷。南アフリカとスイスを結ぶジャズ・クインテットSkyjackが、1年にわたるツアーとセッションを経て完成させた最新作『Let The Sky Open Under Your Feet』。南アフリカの伝統的リズム、スイスの室内楽的アプローチ、そして現代ジャズの自由な即興が自然に交差する。ベースとドラムがつくるアフリカン・グルーヴのうねりに、ピアノとホーンが繊細なラインを重ね、力強さ張りつめた空気が同時に存在する音像が広がる。曲ごとに景色が大きく変わるのも本作の魅力で、跳ねるようなピアノが温かい旋律を描く「Another One For Bra Zim」から、砂漠の風景を思わせるミニマルな推進力を持つ「Bass Below」、シンフォニックな高揚感が立ち上がるタイトル曲「Let The Sky Open Under Your Feet」まで、どの曲も、メンバーの個性が鮮やかに浮かび上がりながら、バンドのひとつの呼吸としてまとまっている。聴くたびに異なる場所へ連れていかれる、旅のアルバムのような一枚。
ジャマイカの巨匠Joe Gibbsと、天才エンジニアErrol Thompsonの黄金コンビが手掛けた、伝説的ダブ・シリーズを締めくくる第4章『African Dub All-Mighty: Chapter 4』。Sly & RobbieやLloyd Parks、Dean Fraserらルーツ期ジャマイカの頂点に立つミュージシャン集団The Professionalsが集結し、1979年に放った傑作。The HeptonesやAlton Ellisら名門ロックステディ〜ルーツの名演が重層的にリメイクされた音源をベースに、Errol Thompsonによる極限まで洗練されたミキシングが冴え渡る。重厚なスライ&ロビーのボトムと華やかなホーンの旋律を断片化し、ダイナミックなディレイと残響で立体的なミステリアス空間へと昇華させている。70sジャマイカン・ダブの黄金期を象徴する重要盤!
フィリピンの鍵盤奏者Boy Katindigが1980年に残した隠れた名作『After Midnight』が、正規リイシューでついに復活。USソウル、ファンク、ラテン・ジャズ、バトゥカーダを大胆に取り入れたフィリピン産ジャズ・ファンクの最高峰で、タイトル曲オリジナル曲である「After Midnight」の艶やかなエレピとサックスが描く都会的ファンク、「Seeing Is Believing」のメロウ・フュージョンに加え、Isaac Hayesの「Deja Vu」やGreg Phillinganes「Love Till the End of Time」など、センス抜群のカヴァー群がアルバムに豊かな色彩を与えている。80年代初頭のフィリピン音楽シーンの熱気と、US西海岸フュージョンにも通じる洗練が同居した、アジアン・レアグルーヴの名盤。
エチオ・ジャズの父、Mulatu Astatkeが1974年に残した歴史的名盤『Ethio Jazz』。ペンタトニックによるエチオピアの伝統旋律と、アメリカで学んだジャズ、ソウル、ラテンの語法を奇跡的なバランスで融合した、エチオ・ジャズの決定的作品。代表曲「Yekermo Saw」「Gubelye」をはじめ、妖艶なヴィブラフォン、スモーキーなローズ、複雑に絡むポリリズムが生むグルーヴは唯一無二。哀愁と黒さが同居するメロディは、異国のブルーノートとも呼ばれる深い情緒を帯びている。アフリカ音楽とジャズの交差点に立つ、世界の音楽史に残るマスターピース!

アルメニア系エチオピア人の作曲家・編曲家で、1950〜60年代のエチオピア近代音楽の基礎を築いた重要人物Nerses Nalbandian。録音が少なく、長らく忘れられた存在だった彼の作品をアメリカのジャズ大編成バンドEither/Orchestraが録音、Ethiopiques シリーズの新作としてリリース!Either/Orchestraは1990年代からエチオピア音楽を探求し、ムラトゥ・アスタケやゲタチュー・メクリャらと共演。Ethiopiques 20『Live in Addis』で世界的評価を獲得している。ブラスが主役の祝祭的サウンドで、アムハラ音階や独特のリズムを、ジャズのアレンジで再解釈。エチオジャズのルーツを辿る内容となっている。

10月中旬再入荷。ブラジル出身の名ギタリストFabiano Do Nascimentoと、トロンボーン奏者Vittor Santos率いる16人編成オーケストラによるアルバム『Vila』。リオのスタジオで録音された本作は、Fabianoの指弾きによる繊細なフレーズと、オーケストラの豊かな響きが溶け合うシネマティックなブラジリアン・ジャズ。Fabianoのギターは常に語り手として中心にあり、オーケストラと対話するように旋律を紡いでいく。サンバ・ジャズ、ショーロ、ボサノヴァの伝統を軸にしながら、スケール感と情景を想像させるようなムードに満ちた、現代ブラジル音楽の洗練と、伝統の深みが見事に融合した上質な一枚。
Mos DefことYasiin Beyが、原点回帰と再生を掲げて放った2009年の代表作『The Ecstatic』。Madlib、Oh No、J Dilla、Georgia Anne Muldrowら錚々たるプロデューサー陣が参加し、多国籍なサンプルと鋭い視点が交差するオルタナティブ・ヒップホップの金字塔。MadlibやOh Noが〈Stones Throw〉で制作したビートを再利用しており、MF DOOMの影響も本人が言及。アフロビート、ラテン、ジャズ、中東音楽など、世界中の音楽が縦横無尽に飛び交うビートを核に、Mos Defのフロウは軽やかで、曲によっては声そのものがパーカッションのように機能し、ビートと一体化していく。短い曲が連続するスケッチ集のような構造で、軽いリバーブ処理や変則的な拍子が多用され、常に新しい景色へ移り変わる。Mos Def が世界を旅するように音を紡いだ、多彩で知的なヒップホップの到達点。

Jack DeJohnette、John Medeski、Karl Berger、Lenny White、Ben Perowskyなど、ジャズ界の重鎮が多数参加。ハードコア史に名を刻むBad Brainsの共同創設者で、ベーシスト、Darryl Jeniferによる最新インストゥルメンタル作品 『The Weather Channel』。2010年のソロ作『In Search of Black Judas』以来となる、十数年ぶりのソロ名義アルバム。ジャズの即興性と、Darryl Jeniferが持つパンク、ダブの精神性を軸にした深いグルーヴと多層的な音像がアルバム全体を貫いている。Bad Brainsのエネルギーをそのまま持ち込むのではなく、スピリットを抽出し、ジャズの言語で再翻訳したようなアプローチで、空間処理の効いたダブ、鍵盤が描くサイケデリックな感覚、デジョネットらが生み出すしなやかなリズム、それらが重なり合い、ジャズ、フュージョン、ダブ、サイケ、パンクが交差する探求的なサウンド。Bad Brainsの名曲『Sacred Love』『Re-Ignition』の再構築版を含む意欲作。

Funkadelicが1971年に残したサイケデリック・ファンクの金字塔『Maggot Brain』。A面を飾るタイトル曲「Maggot Brain」は、LSDに浸りきっていたジョージ・クリントンがギタリストのエディ・ヘイズルに、前半は「母親が死んだと聞かされた時のように弾け」、そして「その後、母親が生きていたと知った時のように弾け」と指示したという逸話で知られる10分超のソロ・パフォーマンス。圧倒的な存在感を放つ、ロック史に残る名演。アルバム後半では、フォーキーなコーラスが心地よい「Can You Get To That」、ハードロック的なギターが炸裂する「Super Stupid」、ノイズとジャムが渦巻く「Wars of Armageddon」など、サイケ、ファンク、ロックが混ざり合うP-Funkの原点が展開。一発録りで収録された絶望と悲壮感漂う表題曲をはじめ、ファンカデリック史上最高傑作と名高い1971年発表のアルバム。

KarateのフロントマンGeoff Farinaが、1998〜2000年に〈Southern Records〉から発表したソロ作品をまとめた編集盤が大名門〈Numero〉から2LPで登場。『Usonian Dream Sequence』『Reverse Eclipse』、そしてシングル『Steely Dan』の計27曲を収めた決定版。全編を通して、ギターと声だけの親密な構成が中心。ベッドルーム録音ならではの粗さがそのまま温度として残り、指板のノイズや息遣いが近く、深夜の静かな部屋で鳴っているような近さが印象的。フォークの素朴さを軸にしながら、コードの選び方やフレーズの運びにはKarateの静かな緊張感やポストロック的な間合いが自然に滲む。派手な展開はないが、ひとつのモチーフを丁寧に見つめるような曲が多く、小さな世界をそっと描くソングライティングが魅力的。

10月中旬再入荷。KarateのフロントマンGeoff Farinaが、1998〜2000年に〈Southern Records〉から発表したソロ作品をまとめた編集盤が大名門〈Numero〉から2LPで登場。『Usonian Dream Sequence』『Reverse Eclipse』、そしてシングル『Steely Dan』の計27曲を収めた決定版。全編を通して、ギターと声だけの親密な構成が中心。ベッドルーム録音ならではの粗さがそのまま温度として残り、指板のノイズや息遣いが近く、深夜の静かな部屋で鳴っているような近さが印象的。フォークの素朴さを軸にしながら、コードの選び方やフレーズの運びにはKarateの静かな緊張感やポストロック的な間合いが自然に滲む。派手な展開はないが、ひとつのモチーフを丁寧に見つめるような曲が多く、小さな世界をそっと描くソングライティングが魅力的。

Carl Stoneが2010年代に展開した、世界のポップ断片をデジタル的に破砕し、再構成するという美学を多彩に示した2枚組『Himalaya』。2013〜2019年に制作された楽曲をまとめた作品で、東南アジアのストリート録音、アジア圏のポップ、ロックのブレイク、ディスコ的ギター、ヒップホップ的ループ、そしてアフリカ圏のポップスやストリート音楽の断片まで、文化圏を横断する素材が高速で変形し続ける境界なき電子音響。Stoneのタイムスライス技法はここでさらに進化し、サンプルは原型をわずかに残しながらも細かく破砕され、常に揺らぎ続ける。反復はあるがミニマルではなく、常に変化し続ける反復として機能し、クラブ・ミュージック的な推進力と電子音響の精密さが同時に走る。素材の文化的出自は意図的に曖昧化されているが、アフロポップ的なギターの切り返しやコール&レスポンス的な声の断片など、アフリカ圏のストリート音楽の明るいグルーブが印象的で、世界のポップを素材にした実験音楽という方向性がより広いスケールで展開されている。

アンビエント、ミニマルの重要アーティストEluviumことMatthew Robert Cooperによる「Virga」シリーズの第3作が、〈Temporary Residence Ltd.〉から登場。日々押し寄せる残酷なレトリックや暴力、混乱の中で、身近な緑地や排水路、微細な生態系から得たインスピレーションがあると本人が語っており、前作から約5年ぶりとなる本作は、シリーズの核である 神経質な緊張感・コントロールの喪失・再文脈化といったテーマを保ちながら、前作とは対照的に、神聖な休息のような安らぎをもたらす作品となっている。霧がゆっくり形を変えるような微細な揺らぎと、柔らかなドローンが中心に、小さな粒子が光に反射するような電子音や、淡い旋律が浮かんでは消えるテクスチャが重なり、静謐で、内省的な音世界が広がっている。
