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25年も何してた!?と突っ込んではいけない。リンド保安官はずっと南半球のサウンドマン達とレゲエに打ち込んでおられたのだが、この20余年で公表された音はコンピCDで数曲のみ。その全貌はホールの中に封印され謎めいていたが、保安官はずっと目を光らせていた!
この驚きの新作である2ndアルバムは、シェリフ・リンドがこれまでサウンドでプレイしてきた数々のダブ(注1)からコンパイルした「スペシャル集」(注2)と云っていい。この完全現場仕様のマッシヴ・ベース音源をアルバム用にセレクトしたのは、西日本が誇るサウンドシステム「タッチ・ザ・スカイ」のクルー、High-Cと、レゲエ・ダブを追求する精鋭トラックメーカー/エンジニア、Ruv Bytesこと我らが倉谷拓人。更にマスタリングも倉谷氏の手になるエム初の真性ダンスホール仕様!頑固ルーツ好きオリジ世代からデジタル/nu roots世代にまでアピールするダブ・リズム一本勝負、ヘヴィーウェイトなスペシャル・アルバム!
彼はタイ東北部イサーン出身、タイのポップス制作者の旗印となる最先端(変態)キラーを度々送り出した発明家的なプロデューサーであり、タイ音楽を一人でグイグイ発展させてきた偉人。売ることより変わったことをしたい生粋のレコード・マンであり、確かな批評眼でタイ音楽の隆盛を見てきた生ける音楽ライブラリーでもある。
今回はスリン先生が手掛けた沢山のルークトゥン曲からまことの<スリンらしさ>を主張する無節操ごちゃ混ぜ12曲を選抜。その結果、プレーン・プロムデーンやワイポット・ペットスパンらラオス系大物歌手を起用したこれぞ王道ルークトゥン!というラオス系賛歌から、Juu『New Luk Thung』でもサンプリングされたカワオ・シアントーンのガンジャ・チューンとカヴァー曲のオリジ版、ボリウッド・チューンや、「ソーラン節」続編や坂本九の曲(??)など和物ファンにはたまらない日本の民謡・歌謡のカヴァー、怪しげでやたらにエキゾなインディアン・ルークトゥン、盟友サマイ・オーンウォンと組んだタイ・ファンクのプロトタイプ、超DOPEなレー(*2)やラムウォン(*3)というルークトゥン娯楽総合カタログとなった。
「ニュー」な「ルークトゥン」を高らかに謳うJuu & G. Jee『New Luk Thung』をルークトゥン<最新型>とするなら、このスリン・パークシリの仕事集はルークトゥン<クラシック>の音源集。これをチェックすればルークトゥンが何なのか姿を現しついでに『New Luk Thung』が別の輝きを放つことでしょう。
今回も全て訳詞付き。解説はもちろんSoi48。
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*注釈
1)ルークトゥン:“田舎の子”、“田舎者の歌”の意を持つ音楽ジャンル。1960年代半ばに確立し、現在はタイのナショナル・ミュージックとして継承される歌謡音楽。歌詞を特に重視する。特定の音楽形式がないため雑食性が高い。
2)レー:仏教教典が僧侶の説法を経て歌謡化したタイ独自のジャンル。制限された音節で即興的に歌っていく話芸で高い技量を必要とするためレーができる歌手はリスペクトされる。
3)ラムウォン:国威掲揚のためタイ政府が1940年代に制定した創作民謡の性格の強い音楽。日本の盆踊りのような輪踊りが特徴で労働者階級で流行した。タイ民謡のメロディーを西洋音楽風に改編したものと、踊れる音楽ならジャンルを問わず何でもラムウォンと呼んで踊ったもの、2つの意味・用法がある。
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選曲・解説:Soi48
マスタリング:倉谷拓人(Ruv Bytes)
装丁デザイン:高木紳介(Soi48)
CD版:通常ジュエルケース/28頁ブックレット封入
日本語・英語ライナー/完全訳詩掲載
TRACKS:
01. ブッパー・サーイチョン「恋を風に乗せて届ける」
02. スミット・サッチャテープ「愛への飢え」
03. カワオ・シアントーン「新居のシミュレーション」
04. バンチョップ・チャローンポーン「これ以上しゃべらないで」
05. リアム・ダーラーノーイ「ドキドキする」
06. カワオ・シアントーン「大麻竹」
07. ブッパー・サーイチョン「歩いて見せる」
08. ダンチャーイ・ソンタヤー「死にたい」
09. ダム・ダーンスパン「熟した恋」
10. プルーン・プロムデーン「メコン川の子に口説く」
11. スマリー・セーンソット「桜があなたを待っている」
12. ワイポット・ペットスパン「田んぼ沿いのラム」
バンドに舞台に活躍するパーカッショニスト、関根真理の世界デビュー作をエム・レコードよりお届けします!カリンバ、マリンバ、ウドゥ・ドラム、ダラブッカ、ジェンベ、トーキングドラム、カホン、ビリンバウ等々、優に15種以上の打楽器をひとり多重録音で操り、テープ逆回転やヴォイスと組み合わせ出現させた10分超の大作であるこの「Beginning」は、驚くことなかれ、なんと関根の初の「ソロ」レコーディング曲なのだ。そして関根のミュージシャンシップが昨日今日で培われたものでないことはこの曲を一聴すれば明らか。近年最大の隠れた才能の開花といえそうな、高田みどりのファンも驚きを持って迎えてくれるだろう大注目作だ。マルチ・パーカッション奏者の多重録音作は現代音楽にもあるが、ここまで圧倒的なパワー、しかもホームリスニングからフロアにまで対応する作品はかつてあっただろうか。制作中の1stアルバムにも期待大!
カップリングは大人気DJ、レーナ・ヴィリケンスによるREMIXで「Beginning」のトライバル成分を抽出した怒濤のファンキー・アッパー・カット!
※なお「Beginning」は彼女の1stシングル「midori」(Tongs International)として発表した曲を録音当初の原題に戻し、およそ3倍近くエクステンドしてレゲエのディスコ12インチ的な構成にリワークしたもの。
関根真理プロフィール:
大学で打楽器に触れ、卒業後活動を開始。JAZZ FUNKバンド等の活動を経て、2000年よりビックバンド「渋さ知らズ」に参加。現在は、西川郷子(ex.上々颱風)『星ノ飛ブ夜』、遠藤ミチロウ(ex.THE STALIN)『THE END』、打楽器集団『Orquesta Nudge! Nudge!』その他セッションなどで活動中。演劇作品での活動も多く、串田和美演出『コーカサスの白墨の輪』『天日坊』『三人吉三』『切られの与三』、ヤン・ジョンウン演出『ペール・ギュント』、演劇集団「風煉ダンス」の『まつろわぬ民』『泥リア』等に参加。
ヨシワダの初期から全盛期を概観した4 作品を送り出して完結と思ったら、出てきました秘蔵録音!題名からわかるように、2、3人で同じ音程を歌うという簡潔な作品で、知らずに聴けば、どっかのお寺のお経そのまんま!なんじゃ~こりゃ~!と思ったが、実はワダの作品履歴上で重要な位置にある。
作曲された1978 年が、ラモンテ・ヤングの共同体にいて直接的影響を受けた74 年の「アースホルン・・・」と、後に初リリースとなる81 年の単独作「ラメント・・・」の中間の時期であることを考えれば、この作品がミッシング・リンクであった可能性がある。おそらく彼は、パンディト・プラ ン・ナートの北インド伝統歌唱法をラモンテと一緒に学びながらも、やがて「一本の線によって厳格に統率される」ラモンテの思想から離れ、より即興性の高い ソロ歌唱の「ラメント・・・」に行き着いた。この「シンギング・・・」は、そういう独自の表現を模索していた過渡期に生まれた実験のひとつだったのだ。
それにしても、この果てしなく続く不安定に揺れ動く微分音のトーンは、洗練とは対極にあるキモチ悪さ!これを1 時間聴くのは、愛を持っていても自虐に違いない。しかし、長くつきあえば拷問が快楽に変わるのは世の条理。そこに秘儀が隠されている!短縮版CD で快感を覚え、どっぷり浸りたいと願うM な方には、完全版3LP をオススメする。なんと当時2 日連続で行われた同じプログラムすべてを収録した、最強拷問アイテムなのだ!(井部 治/ OMEGA POINT)
+ 1978 年、NY のザ・キッチン・センターでの録音
+ 96khz/24bit 高音質リマスター
+ ヨシ・ワダ自身による解説(装丁画もヨシワダ)
+ 日本語・英語両掲載
一年半をかけて仕上げたという本作、13曲で33分という異例の短さながら、あっという間に壮大な時の移ろいへと飲み込まれるばかり。ポスト・インターネット〜ニューエイジ・リバイバル以降を見据える卓越したアンビエント観と、現行エクスペリメンタル・シーンのスタンダードを一歩も二歩も先回るスタイリッシュなサウンドで魅せる孤高の音風景には感服!影響を受けた前者のほか、吉村弘から高田みどり、Nuno Canavarroや細野晴臣などといった先達の培養してきた、時代を越えた環境音楽観をさらに次のステージへと推し進めるべく投げ込まれた大きな一石とも言うべき作品でしょう。そしてそれを邦人作家が成し遂げたという点から見ても、これは矢張り見逃せないリリース。マスタリングはRuv Bytesこと倉谷拓人が担当。Takao自身が湘南で撮影したというアートワークにも深く引き込まれます。
日本インディー最高注目作!!
いよいよお待ちかね初期作品集の登場!!
1978年結成、先日29年ぶりの新作『抱握』[EM1125CD]を発表した横浜の即興トリオ、陰猟腐厭(いんりょうふえん)は、日本の地下音楽シーンですら極左・異端の存在であるが、その由縁が本コレクションで徹底的に開示される。こんなバンド、当時そして今も他にいるだろうか?
「シュールレアリスムの”自動記述”の音への転換」という発想が出発点である彼らは、東京/横浜アンダーグラウンド・シーンで活動し、1980年~82年にかけ精力的に録音を行い、3作品を発表した。この『初期作品集』はそれら諸作全てをマスターテープから起こし直し、編集カットされた未収録部分も拡大収録し、高音質でリマスターした決定版である。また、今回の発売にあたり、『妥協せず』以外の5作品に初めて“曲名”を付けた(理由は作品解説参照)。
=作品説明=
●冒頭を飾る『妥協せず』は陰猟腐厭を知らしめた怪作で、知る人ぞ知るインディーズ名門、クラゲール・レコードの第一段リリースでもあった。彼らによると「トニー・コンラッド&ファウストのカバー」ということなのだが、こともあろうにこの演奏録音中に学生活動家がステージへ乱入しアジ演説を開始。黙々と演奏を続けるバンド、煽る活動家、演説を阻止しようとするPA、果たしてその三つ巴の結末は!?! 本版はこの「伝説」の模様を全て収録した完全版である。
●狂躁的電子打楽器パルスが繰り出される「ハンマー・クロック」と「狙いネコ」(CD版のみ収録)は、ジャケットにある四角が三つ連なった記号から強引に『品品(しなじな)』と通称されている7インチEPの収録作品。
●バンドの真骨頂である自動記述的演奏23分の大作「グランド・ロック」、質量感をもった重いパーカッションが空間を震わせ切り裂く傑作「空より降りて来しもの」、もそもそと怪しい「森の記録」(CD版のみ)は、真っ白ジャケットでバンド名も曲名もカタ番も何も記されず、取り次ぎ会社から流通不可を宣告された1stアルバム収録作。
CD版:
+CD ボーナス2曲
+通常ジュエルケース/ライナー封入
+解説:原田淳(陰猟腐厭)
+日本語・英語両表記/貴重写真掲載
これは2020年日本の『No New York』か?『Pillows & Prayers』か?いや、そんなもんじゃないだろ。YPY / goatの日野浩志郎が運営する崇高(無謀)D.I.Y.チャレンジング・レーベル、《Birdfriend》初のレーベル・コンピレーション見参。これを聞けば貴方は無性に創造したくなる!
「実験的、挑戦的すぎてリリースするのが難しいがそれでも素晴らしいものはたくさんある」(日野浩志郎談)
名ではなく音で選ぶ徹底した作家基準で、エレクトロニクスや自作改造楽器クリエイター達のD.I.Y.音楽をリリースし続ける日野浩志郎(YPY/goat)のレーベル、Birdfriend(バードフレンド)。2013年の始動からボンノウノムクロ、UNBE、森山ふとし、湿った犬、NEW MANUKE、OPQ、井上調、JMT Synth、H. Takahashi、Sofhesoなどの特殊な個性を、熱意と根気と真心のD.I.Y.ハンドメイド・カセットに落とし込み、現在まで38のオリジナル作品を発表。いろんな問題を乗り越えて作った数は5000本!
このBirdfriendの仲間達を主催である日野の職権乱用で一ヶ所に収める<実験>を試みたのが、Birdfriend初のレーベル・コンピとなる本作『Bird Cage(鳥かご)』だ。そもそもおとなしく編集されるなどありえない連中を無理矢理コンパイルしたとき、そこに現れたのは思いもよらないフレッシュな物語だった!今こそ得体の知れないバードフレンド達の偉業(異形)を高らかに世に問う。これを聞けば貴方はなんだかよく分からない気持ち(感動?)に包まれ、そしてたぶん無性に創造したくなる!
・CD2枚組/ジュエルケース
・ブックレット封入
・日本語・英語表記
・アーティスト・プロフィールと写真掲載
Compiled and the cover art design by Kōshirō Hino
Cover drawings by Yūko Kureyama and Kōshirō Hino
All tracks originally mastered by Bunsho Nishikawa
2nd mastering by Takuto Kuratani
(c) 2013, 2014, 2015, 2016, 2017 Birdfriend
TRACKS:
=Disc 1=
1. Sofheso - M.N.L
2. 湿った犬 - Bird Peck at Dead Dog
3. NEW MANUKE - Fastest Motor
4. YPY - BFMIX B-3
5. JMT Synth Pinosaku - Tansun
6. 湿った犬 - Dog is Surrounded by Birds
7. UNBE - Vector Milk
8. YPY - The Damo UFO
9. マイクロふとし - Reforest 1
10. Inoue Shirabe - Sleep Talk
=Disc 2=
1. 森山ふとし - タイムリミット
2. OPQ - ENT
3. 森山ふとし - にこエレクトロ
4. H. Takahashi - 4
5. マイクロふとし - Reforest 2
6. UNBE - 5立米
7. Bonnounomukuro - Enter the Exit
8. 森山ふとし - Piano and Sampler
『Light Wave』に続くエムのJ-Indie popは、時代の空気と関係のないHYPEなポップスを追求する5人組、バンクのNEWアルバム。ミックス/マスタリングはあの神田朋樹!
バンクは、90年代初頭のアングラ・シーン:東京ネオアコ~初期クラブ・ミュージック~Crue-L(瀧見憲司主宰)周辺で活動してきた正に「渋谷系」の当事者、ブリッジ、ラブ・タンバリンズ、アーチという伝説的バンドを経たミュージシャン等によって2006年に結成。中核は中村大(gtr, voc)と鈴木望(drums)。奇をてらうことなく「良い音楽を良い演奏で」をモットーにしているが、彼らの消し去れない素地であるニューウェーブ~ポストパンク~ネオアコ、フェイク・ジャズ~ファンカラティーナと、中村のどうしようもない80s好きが自然に出てしまい、新旧区別の付かない音になってしまっている(何故か全員デュランデュラン好き)。
無機的な中村のソングライティングを支えるのは、AORをバックグラウンドに持つリズムの柱であるベースの平見文生(ex. ラブ・タンバリンズ)とノン・グルーヴのYMO的ドラミングが持ち味の鈴木であり、このミスマッチで生まれる奇妙に心地よい都市的グルーヴ感も魅力だ。ミックス/マスタリングは90年代からの盟友である神田朋樹(天才!)。今回はバンク初のヴァイナル版もリリースします!
YPYと国内ツアーし、The Durian BrothersやInstitut Für Feinmotorikのメンバーというよりも、今やソロ名義Don't DJとして異質な才能を爆発させるFlorian Meyer。彼曰く今作は「自分の中では割と聞きやすい部類になった」という。サン・ラーの名盤『Space Is the Place』(1973)にちなんだと思われる題名が示す、超空間世界をテーマにした両A面のミニ・アルバムで、あの『Authentic Exoticism』(2016)の進化版といえそうな作品。タイトルは伊達でなく、サン・ラの世界をデジタルで憑依表現したようなA面、うってかわってAA面はエチオピアかインドネシアのような音階が耳をとらえ、こちらも不可思議で妖しい異空間世界を表現したエスニック・エキゾ・テクノ音。相変わらず実験性の高い試みだが、ポップな仕上がりなっている点は彼の才能だ。A-2はデレック・ピョートルとの共作でマニアは要注目!
日本全土に無数にある「盆踊り」、俚謡山脈 x エム・レコードが考えるその最深部且つ理想形のひとつがコレだ。ジャーマン・ロックを思わせる跳ねない太鼓と鉦のハンマー・ビート、圧倒的な音量で一斉に吹き鳴らされる笛、それらが徹底して反復するミニマル・ダンス・ミュージックの極地!そのあまりにもストイックで鋭角的な音像は、電気を使わずに奏でられる「農村のインダストリアル・ミュージック」「畑の中のリッチー・ホウティン」とでも呼びたくなる。これが埼玉県北部に今も残る「境石投げ踊り」だ。当地ではこの古い形を残す唄と踊りを観光化することなく、盆の営みとして現在に至るまで続けている。
今回我々は昭和58年に埼玉県民俗文化センターが制作したレコード『埼玉の盆踊り』に収められた同曲をリマスターし、更に平成29年現在の保存会による最新ヴァージョンをSUGAI KENのレコーディング/ミキシングで収録した。石仏も思わず踊り出す、日本のダンス・クラシックを皆さまの耳でお確かめください。装丁は『弓神楽』に引き続き高木紳介(Soi48)。
な、な、な、なんじゃこりゃーーーー!今度は東京!これぞ、江戸っ子の粋!「木崎音頭」や「かじゃでぃ風節」の衝撃も覚めやらぬ中、またしてもEMが日本のオブスキュアな民謡の再評価へと一石を投じる強烈なリリースをドロップ!俚謡山脈監修の民謡シリーズ第四弾は芸能「おしゃらく」のレジェンド録音が堂々のリリースですよっ!
“まるでロック・バンドというものを全く知らない国の人間が、初めて手にしたエレキ・ギターとドラム・セットでその土地の民謡を完璧に演奏してしまっているようなサウンド。それが我々がここに紹介する「おしゃらく」である。”、”東京にも民謡ってあるの?と問われたら答えたい「東京こそ唄の宝庫だ!」と”
今回、日本一根性のあるレーベルであり、世界各地に熱狂的なファンを持つEM Recordsからは、東京の江戸川区および隣接する千葉の浦安に残されていた「おしゃらく」という芸能のレジェンド級の録音が登場!東京オリンピック以降、急速に失われた古き良き「東京」、はっぴいえんどが見立てた「風街」とは別の、農漁村や船頭たちが生きていた時代の東京を呼び起こす強烈な録音。おしゃらくとは、”念仏講で歌い踊られていた念仏踊りを起源とし、そこに遊芸人である瞽女や飴屋の唄、江戸のはやり唄などを取り込みつつ高度に発展を遂げた「民謡と民俗芸能のハイブリッド」とでも言うべきもの”。レーベルインフォによると、この芸能は、茨城から千葉、埼玉、神奈川まで分布しており、「万作踊り」や「小念仏」などの名称でも知られているそうです。おしゃらくはその中でも最も複雑かつ洗練された芸能。深い伝統の息衝いた、威容とも言うべき達者な三味線と、タイのモーラムにも引けを取らない節回しを聴かせる唄、踊り手を鼓舞するように快調なビートを刻む鉦と太鼓。芸達者中の芸達者による、言葉による形容では追いつかない猛烈極まりない土着民謡の数々へと酔いしれてください!弊店でもおなじみ、SUGAI KENによるデジタル変換。大・大・大推薦!!!
「レコード・オブ・ザ・イヤー:
Martin O'Cuthbert: 'B.E.M.S' (Esoteric Records)
マジで、このレコードをかけたとき、壁にあった物がいきなりビリビリ震え出した。証人もいる。マーティン・オカスバートって奴は超邪悪な人間か(レコード聴いてみろ)とんでもない大馬鹿だ(レコード聴いてみろ)。たぶん日本でビッグになるな。全部ヤマハのオルガンのせいと思うけど、どうやったらシンセでこんなヒドイ音だせるんだー?」
(ジョン・ライドン『ニュー・ミュージカル・エクスプレス』 1978年7月22日)
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『INDUSTRIAL MUSIC FOR INDUSTRIAL PEOPLE!!!【雑音だらけのディスクガイド 511選】』著者、持田保先生の選曲・解説でおごそかにお送りする病理的異星人シンセ音楽集!!
マートック(初期はマーティン・オカスバートの名で活動)はポストパンク期に地球にあらわれ現在も活動する英の作家/電子・電器音楽家。ジョン・フォックス、ファッド・ガジェット、クラフトワーク、イーノらに影響を受け(たらしい)、同国人のJ.G.バラードやイアン・バンクスをはじめとするSF・幻想文学に深く傾倒。その合成が自作に展開した‥‥‥のかは定かでないが、彼の暗黒フォースの強大な威力はジョン・ライドンを痺れさせたことで証明された(しかもデビュー作で)。
彼はメジャーの誘いを全て拒否し「使い捨て商品に沿ったものの見方をしない、永続的な音楽の創造」(!!!)という崇高な目的のため、全てを自主制作で発表。その数シングル11枚、アルバム13枚。録音では異星人に向け発信したと思われるビリビリなシンセ音とグルーヴ感の崩壊したドラム・マシーンを多用。全くもってイルな(=地球人には理解しがたい)偉大なる作品群を、持田先生が身を挺して受け止め選んだ全10曲ザ・ベスト・オブ・マートック!!!!(ボアダムズ山塚先生のフェイバリットでもちょと有名!?!)
「地球の反対側のシド・バレット」ともいわれた豪のアウトサイダー・ポエット、ピップ・プラウドの音楽作品を、彼のバイオグラファーであるデヴィッド・ニコルズ教授の監修で編纂したアンソロジー。全曲本邦初登場!
彼は舌がもつれ気味の静かな声をもち、声域はオクターヴの半分にも満たない。(中略)これらの曲で示される幼年期の感性の完全な理解こそ、彼の作品の最も非凡な特徴である」(解説より)……と記述されるプラウドは、豪において誰の前例もなく、当時の業界は扱いあぐね、フォロワーすら成立しなかった点で「先駆者」とも評せられず、前後に隔絶した存在のまさしく「アウトサイダー」。一度耳にすれば脳裏を離れなくなる強烈な個性は、シド・バレットやダニエル・ジョンストンに並ぶものだ。
本作は、60年代に制作された幻の私家版1stアルバム、メジャーで発表したアルバム2作、そして70年代初頭の秘蔵録音から選んだアンソロジーで、マスターテープから起こした音源ソースを元に最新リマスターを施した。また、ニコルズ教授の協力で、作家手書きの草稿をもとに「ピップ語」というべき英詩を世界で初めてテキスト化し掲載(→この英詩だけでも価値大!)。CD版はボーナス3曲追加。
アルゼンチン音楽ファンには説明不要のマルチ・インストゥルメンタリスト作家、エミリオ・アロがこの10年で発表したソロ作『Panorámico』(2007)と『Estrambótico』(2012)は、音響派以降の新世代がフォルクローレ・リバイバルの影響下に制作した完全なスタジオ作品だった。しかし、ここにきてシーンのキーマンがあえてバンドを結成したのは極めて重要。南米のワニの名をもじったこの怪しいバンド名<カイマン族>のデビュー・アルバムとなる本作は、架空の部族の奏でる音楽を空想した、あるはずの無い秘境に流れる音楽というコンセプト。カリンバを改造したカリンバフォン(名前も最高!)というアロの自作楽器を中核に据え、ゆったりした波動でメローかつ幻想的に、徹底してミニマルに演奏されるバンド・グルーヴにはかなりの催眠性と中毒性がある。アルゼンチン音楽ファンだけに独占されるのはもったいない、ハイラマズやVIDEOTAPEMUSICのファンも絶対にハマること間違いなしのユル~いエキゾ幻想音楽!
もうひとつの目玉は、松竹谷清/トマトス版で有名な70s ディスコヒット「ロック・ユア・ベイビー」のイメージを一掃する、mmm(ミーマイモー)をヴォーカルにフィーチャーしたキラーなほんわか夢心地ヴァージョン。そして嬉しいもう1曲はアンカナーン・クンチャイの1stアルバム収録曲をベース・ミュージックに解釈し再構成したDOPEなインスト・チューン、その名も「ラムプルーン サラッブ・コーンサワン Bassline」で、タイ音楽マニア、テクノ、ダブステップ、トラップ・ファンにもプッシュのPUREダンス・カット。こういうのを待っていた最強に楽しい4曲入り12インチ!(装丁:高木紳介/ Soi48)
映画『サウダーヂ』から空族映画に深く携わっている盟友・スタッフであり、日本のヒップホップに新風を吹き込み、幅広い層から熱い支持を受けるラップグループ、stillichimiya(スティルイチミヤ)は、イサーンの生んだ大スター、ダオ・バンドンの一世一代の名曲「水牛に乗る人」というルークトゥン・イサーンの<大ネタ>使い。ラップでのカヴァー・ヴァージョンともとれそうな、日本音楽が最もイサーンに近づいた記念すべき曲だ。真っ向からイサーン音楽と組み合ったこのチューンをCOMPUMA(松永耕一)がリミックスし、一体どこの何の音楽なのかよくわからない新音楽に仕立て直した。日本のクラブミュージック/電子音楽リスナーも目が離せない。
即興を用いた作曲法「comprovisation(コンプロヴィゼイション)」で一貫して作品を生み出しているローランドは、エレクトロニクスとアコースティックのミックス・センスが超一流で、ファラオ・サンダース、テクノ、電子音楽、クラシック音楽のセンスを併せ持った、スピリチュアルさとアンビエントさ、地に足がついた(<重要)演奏が魅力だ。常にメッセージを含ませているローランドの「今」の音は、バレアリック/テクノ/アンビエント・ジャズのリスナーにもど真ん中の必聴作!
電子音楽の歴史に名高いアーティストは誰かと聞けば人はシュトックハウゼンだ、クラフトワークだと、男の名前ばかりが挙がるだろう。しかしそれもまたこの先変わっていくのだと最近思う。デリア・ダービシャー、ローリー・シュピーゲルやポーリン・オリヴェロス、ドーリス・ノートンにスザンヌ・チアーニと、電子音楽に関わって来た女性の歴史は本当は広く深い。加えて近年は、我らが日本のシンセ・シスターズ、ステラー・OM・ソースやマリア・ミネルヴァなど、シンセサイザーと女性の関係の深化は実に甚だしい。彼女たちはその歴史を確実に塗り替えていく。このアルバムを聴きながら思ったのは、きっとその先に広がる世界は差別と不平等の鎖から解き放たれた、今日よりも真実味のある世界に違いないということ。---カジワラトシオ(ヒト族レコード・Antibodies Collective)
もの凄い立体感の電子の粒に包まれる。上層のコズミックな粒の壮大な広がりと美しい流れ、心地よい音階とうねり、低いところから沸き起こる太くて力強い響きにもグッとくる。何層にも幾十にも重なって広がっていく未来の世界は、多幸感、多福感でいっぱいになっていく。この切り開かれ感はちょっと凄いかも。ず〜っと聴いていたいです。---YAMA (TUMULUS/PRHYTHM)
フロム・スクラッチは、極左音楽家コーネリアス・カーデューに学んだフィル・ダドソンが、スクラッチ・オーケストラのニュージーランド支部として70年代に組織した演奏集団が発展したものだ。彼らは戦闘的な風貌のカスタム楽器で世界的に知られ、坂本龍一も一目おいた打楽器ユニットとなり、2度の来日も果たした。
彼らの真骨頂といえる作品がこの難曲『ガン・ホー1,2,3D』で、演奏者が個別に異なる拍子を叩くホケティングを特徴とし、正確な反復リズムでの究極のポリリズムは圧巻。文字面では機械的で無機質な響きだが、塩化ビニル製チューブから発生する倍音まみれの俗物的な音と人力演奏による僅かな誤差が有機成分となって不思議な恍惚感を生む。
今作では『ガン・ホー1,2,3D』で最も複雑な8,9,10拍子と9,10,11拍子で演奏された1981年のオリジナル録音を筆頭に、国内外の現行3アーティスト:YPY 日野浩志郎率いるゴート(M2)/独の奇才Don't DJ(M3)/鬼の右腕を経て現在D.A.N、トクマル・シューゴ等で活躍する小林うてな(M4)が解釈に挑んだカヴァーの計4作品を収録。全て楽譜を元に演奏しているが4者の解釈はまるで異なり、相当に高度な演奏にもかかわらず反復リズムゆえポップな様相を呈している。
米アトランタ生まれのTRAPビートは世界の共通言語となってレプリカを生み続け、アジアも例に漏れず多数のアクトが現れては消え、韓国、タイ、インドネシアといった国々のラッパーが注目されて久しい昨今。「YOUTUBE再生○○万回!」「インスタグラムフォロワー○○万人!」そんな惹句が飛び交い、ラッパーはソーシャルメディアを駆使し一発のバズからマネタイズを目論む仁義もへったくれもない中、ひたすら自分のローカルを力強く表明しオリジナルなHIP HOPを作り出し続けているのがJUU4Eだ。
若い才能が次々現れるタイにおいてOGとしてリスペクトを受け、独自の立ち位置を確立しているラッパー、JUU4E。前作『New Luk Thung』(2019)では、stillichimiya/OMKのYoung-Gプロデュースの元、タイの雑食ゲットー歌謡、ルークトゥンをHIP HOPと折衷し最新のHIPHOPであると同時に最新のルークトゥンでもあるという傑作を作り上げた。同作はタイ国内でも権威あるRIN (Rap is Now)の年間ベストにノミネートされるなど、内外に衝撃を与えたが、この『New Luk Thung』リリース時、実はすでに本作「馬鹿世界」の制作は始まっていた。
本作は全てJUU4Eのセルフ・プロデュース。タイ日英語を織り交ぜたリリックと、伸縮自在なフロー、前作より重心が低くダビーに煮詰められたトラックは、HIP HOP/TRAPを咀嚼し、完全に自分のものとした前作同様だが、特筆すべきは強く<アジア>をレペゼンしている意思が感じられる点だ。マレーシア音楽の影響を受けたタイ南部の舞踊芸能ロン・ゲン、日本民謡、そしてJUU4Eが幼い頃から慣れ親しんできたテレサ・テンの曲を引用しているが、JUU4Eの内部に取り込まれ出てきたそれらは、かつてワールドミュージックが持っていた見せかけのグローバルやエキゾチシズム、また現在のアジアのHIP HOPに悪気なく横行するセルフ・オリエンタリズムを軽々と一刀両断している。
もしあなたがアジアのHIP HOP熱いよね~とネットに氾濫する情報をかじって本作に触れたならば幸運。「馬鹿な世界」に真っ向から挑むリリックと、圧倒的な自由さでぶちかまされるサウンドに叩きのめされて是非とも馬鹿になって欲しい。
