イングランド中部ダービーシャーで活動していたフォーク・トリオが、華麗な美声を備えたヴォーカリスト、ジェイン・マースデンと出逢い、これを機に6人組のエレクトリック・フォークロック・バンド、ノー・ライト・ターンが誕生。彼らは英中部で人気を博し、1983年、フェアポート・コンヴェンションの核であったウッドウォーム・スタジオで、1stアルバムである本作『ノー・ライト・ターン』を自主制作。(フェアポートをリスペクトしたカヴァー曲「Lady of Pleasure」をアルバムに加えている)NRTのユニークな点は、ライブ演奏にはあまり関わらないものの、フィル・ハリソンとティム・ドーソンという二人のソングライターがメンバーとしてバックについていたことで、主なボーカル曲のレパートリーは彼らのペンになるオリジナルだった。リンダ・パーハクスを彷彿とさせるジェインの多重録音/ダブルトラック・ヴォーカルはバンドの華であり、英国の風ごとき爽やかさと憂いを帯びた声はハリソン/ドーソンのオリジナル曲に最高にマッチした。ネオアコ風アコースティックギターが疾走する「Roller Coaster」、郷愁を誘う名唱「Lawlands Away」、心地よいハーモニーの「What Do You Do?」など、時代を超えてアピールする歌曲が揃う一方で、「Drowsy Maggie/Ash Plant」や「Waves」といったトラッド曲を、ピンクフロイドのようにヘヴィーなプログレッシヴ・インストにリアレンジしてみせる。この絶妙なバランス感覚もバンドの魅力だ。一介のローカル・インディーの自主盤だが、これぞまさしく名盤というにふさわしい、愛すべき奇跡の作品!