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UKブラッドフォードのダブ・パイオニアThe Rootsmanによる、自身のカタログから重要曲を再構成したEP『Roots Return』。90年代から続く彼の越境ダブの精神を、現代的な音響でアップデートした濃密な12インチ。パキスタンの宗教音楽やケルト民謡の影響を含む、スピリチュアルでサイケデリックなダブで、パーカッションの多層的なうねりも混ざり合い、地理も文化も横断する辺境ダブの進化形が立ち上がる。Celtarabiaを迎えた「Dub Of The Spirits」は民族楽器の響きが深い残響へ沈み込み、The DisciplesのRussが参加した「Loka Samasta Dub」はよりルーツ寄りの重心の低いダブへと導く。Miles J Paralysisによるリミックスも収録し、オリジナルのスピリチュアリティを保ちながら、よりサイケデリックで身体的な解釈へと拡張。全体を通して、The Rootsmanの長いキャリアが持つ辺境性×霊性×ステッパーズの強度が鮮やかに感じられる一枚。
UK北西部のプロデューサーJohn HowesによるプロジェクトPaperclip Minimiserによる最新12インチ『Topology Transform』。クリック&カット、UKベース、モダンなブロークン・テクノの系譜を自然に接続し、科学実験の精密さと、ダブの湿度を併せ持つ「フラクタル化したマイクロ・ダブ・テクノ」と評される独自の音響空間。A1はカサついたパーカッションと点描的シンセが高速で交錯し、壊れた機械がダンスしているような奇妙な推進力。A2はハーフタイムの空間処理が際立ち、音の間がグルーヴを形づくる。一方B面はビートレスのアンビエントへ沈み込み、青白い光の中を漂うような静謐さが広がる。Howesが自作ツールで磨き上げた、粒子が自律的に動くような音の細密さと、クラブミュージックの身体性を両立する、クリック&カットの現代アップデートとも言うべき一枚。

30年以上にわたる活動の中で、ピアニスト・平野剛は日本のエクストリームなアンダーグラウンド・シーンにおいて、静かに人々を惹きつける音の世界を紡いできた異彩を放つ存在です。1990年代に頭角を現し、伝説的レコード店モダーンミュージックが運営していたPSF Recordsからの3枚のアルバムや自主リリース盤などを残しています。
その作品に共通するのは、技術的な完成度を追求するというよりも、その場に立ち上がる即興性と詩性を大切にしたものです。日常のささやかな瞬間に、儚い美しさを差し込むような音楽といえます。
『The Habit』は、2020年10月5日にPianola Recordsのアップライト・ピアノを使用して行われた公開録音を軸に、1980年代後半からカセットMTRに録りためられていた、シンセサイザーを用いた素描のような小品群を織り交ぜて構成されています。
ピアノ、ピアニカ、ウィンドチャイム、パーカッションといった最小限の楽器編成と控えめな音色によって、繊細な旋律が静かに、そしてゆっくりと紡がれていく。広がりのあるピアノの響きは、周囲の音と穏やかに交わりながら漂う。楽器の音だけを提示するのではなく、その場の空気や日常に潜む些細な気配までも丁寧に取り込み、「不完全さ」を生きた表現へと昇華している。
自然体から立ち上がる衝動をすくい上げる飾らない表現と、独自の感覚で環境を取り込む姿勢は、平野剛の変わらぬ美学です。『The Habit』には、長い年月と音に満ちた日々の重なりから育まれた、親密で旋律的な響きが静かに息づいている。

米メイン州出身、英国在住の作曲家/マルチ奏者Robert Stillmanによる、ウォルター・アイザックソン著『スティーブ・ジョブズ』を題材にした、テクノロジーと人間性の関係をめぐるコンセプト・アルバム『10,000 Rivers』。フェンダー・ローズを中心に、ジャズ、アンビエント、室内楽、実験音楽、そして80〜90年代のスムースなポップ感までを自在に行き来しながら、豊かな音世界を描き出している。録音は1/2インチ・8トラックテープで行われ、リアルタイムでミックスダウン。デジタル処理とは異なる演奏の瞬間性がそのまま刻まれ、楽曲は Jobs、Woz、Iveなどアップルに関わる人物名を冠し、伝記を説明するのではなく、彼らの思想や感情の影を音で抽象化している。モート・ガーソンやムーンドッグを思わせる奇妙な実験性、Billy OceanやGloria Estefan、10ccに通じるスムースなグルーヴ、そしてBrian Wilson的なポップ・センスが同じ地平で溶け合う、ジャンルを超越した全方位型ポップ作品。フェンダー・ローズの柔らかな響きが、テクノロジーの冷たさと人間の温度のあいだを揺れ動くように広がっていく。


パキスタン出身のシンガーで、スーフィー音楽の精神性と、スペインのフラメンコの歌唱法を融合。スーフィー・フラメンコとも呼ばれる唯一無二のスタイルを確立したAziz Balouch。録音は非常に少なく、現存するのは 1962年にスペインで録音された2枚のEPのみ、その全曲を収録した決定版アーカイブが〈Death Is Not The End〉より登場。Aziz Balouchの音楽は、スーフィーの祈りに根ざした深い声の揺らぎと、フラメンコ特有の強い抑揚を併せ持つ情熱的な歌唱が共存しており、祈りと嘆きが混ざったような独自の旋律感が息づいている。伴奏は最小限で、声の存在感が圧倒的に前に出るため、宗教的な精神性と情熱的な歌のエネルギーが同時に立ち上がり、異文化が自然に溶け合ったような不思議な魅力を放っている。

静寂と祈りの音。エチオピアの伝統的な宗教音楽である、アムハラ族の典礼歌唱と大型の堅琴ベゲナによる深い霊性を湛えた音楽を集めたコンピレーション『The World Is But a Place of Survival』。ベゲナは、ダビデの竪琴とも呼ばれる10本の弦を持つ大型の弦楽器で、神への祈りや信仰、死、救済といったテーマを静かに語るような音楽に用いられる。このアルバムでは、Alemu Aga、Sosena Gebre Eyesus、Tafese Tesfaye、Yetemwork Mulat、Abiy Seyoum、Akalu Yossefらによる演奏が収録されており、ウィスパーボイスと低音のベゲナが交錯する、静謐で瞑想的な音世界が展開される。本録音はベゲナ音楽を本格的に記録した数少ない音源のひとつであり、まるで教会の奥で密やかに歌われる祈りのような響きが、聴く者の心に深く染み入る一枚。2002〜2005年に民族音楽学者Stéphanie Weisserによってアディスアベバで録音、スイスのVDE-Galloのライセンスのもと、〈Death Is Not The End〉より再構成、再発。
ウズベキスタン・タシュケント拠点の音楽考古学者/ディガー/プロデューサー、Anvar Kalandarovによる新作ミックス『Digging Central Asia』が〈Death Is Not The End〉より登場!ウズベク・ディスコ、タジク・フォークトロニカ、ウイグル・ロック、タタール・ジャズなどを一挙に紹介した前作『Synthesizing the Silk Roads』。今回はさらにその路線を深掘りした続編的ミックスで、1970〜90年代のシルクロード沿いを横断するような土着感とトリップ感が同居するハイブリッドなサイケデリック音源が満載。自身のレーベル〈Maqom Soul Records〉から発掘したレア音源を中心に構成されているもののクレジットは非公開で、それもまたミックステープらしい謎めいた魅力を増している。ローカルでしか聴けなかった中央アジアの知られざる音の宝庫に触れられる内容で、ローカルと宇宙的な広がりが溶け合うユニークな聴き心地が魅力的。

フィンランドはカレリア地方のカンテレ奏者Iivana Mišukka(1861–1919)が、1916〜17年にワックスシリンダーへ残した貴重なフィールド録音をもとに、現代のカンテレ奏者Arja Kastinenが再構築した歴史的アーカイブ作品。古い蝋管録音のノイズや揺れをそのまま生かしつつ、Kastinenが丹念に採譜し、当時の奏法を忠実に再現した新録を重ねることで、100年前の音と現在の音が同じ空間で響き合う。収録されるのは、ポルカ、ワルツ、マアニトゥスなどの舞曲、さらには教会の鐘の音の模倣演奏など、伝統的なルノ歌から新しい舞曲へという当時のカレリアにおける音楽文化の変容を象徴する内容。1〜3分台の小品が並び、素朴でありながら神秘的なカンテレの響きが、森の奥に残る古い歌の記憶を呼び起こすように広がっていく。時間の層が折り重なるような幽玄のサウンドで失われかけたカレリアの音楽文化を現代に蘇らせる価値ある一作。

UKアンダーグラウンドのジャングル/ハードコアを支えるレーベル〈Heavy Sounds〉の10番記念リリースとして登場した、Dope On PlasticとQuaadによるスプリット12"。1980〜90年代の家庭用コンピュータAmiga の音楽制作ソフト使って作られた曲アミガ・チューンの魅力を前面に押し出しており、その独特の音質・制作方法が堪能できる。A面ではDope On Plasticが、太いキックと高速ブレイクを軸にしたレイヴ直系のジャングルを展開。粗削りながらも勢いに満ちたサウンドは、90年代のDIY精神をそのまま現代に蘇らせたような強度を持つ。一方B面のQuaadは、金属的なサンプルや変則的な展開を取り入れたダークで実験的なアプローチが特徴。両者のスタイルが鮮やかに対比され、スプリットの醍醐味が楽しめる一枚。

2003年に自身のレーベル〈Skintone〉からひっそりとリリースされ、過去に海外に向けライセンスリリースされることもなかったことから、長らく幻のアルバムとして語られてきた横田進の『Laputa』が、ついにSkintone Editionとして登場。『The Boy And The Tree』と『Symbol』の間に位置する本作は、キャリアの中でも最も実験性が強く、神秘的で、不穏さと美しさが同居する特異点のような作品。ドローン、断片的なサンプル、ストリングス、ノイズ、囁き声、ブルースギターなど、多様な素材がコラージュのように重なり合い、ガリバー旅行記の幻想的な浮島の名にふさわしい異世界的なサウンド。複数の映画が同時に流れているような多層的な音像は、横田のサンプラー/セレクターとしての才能を鮮烈に示しており、メロディアスな瞬間と抽象的な音響が交互に現れ揺れ動く独特の世界観は、今聴いても圧倒的な個性を放っている。

フランスのルーツ・レゲエ・バンドThe Tightersが放つ最新作『Lovely Love』。前作『Differently』に続き、A面にヴォーカル曲、B面にそのダブ・バージョンを収録するショウケース形式で構成、深くうねるベースと太いドラム、オルガンの揺らぎが生むクラシックなルーツ・レゲエの手触りに、クリアで洗練された録音が加わり、伝統と現代性が共存するサウンド。特に、ジャマイカのロックステディ名デュオKeith & Texを迎えた「Africa Will Rise」は、スピリチュアルな高揚感とハーモニーの美しさが際立つアルバムのハイライト。B面のダブ・ミックスは、スペインの名匠Roberto Sánchez(A-Lone Ark)が担当し、エコーや残響の扱いが絶妙で、ヴォーカル曲とは別の物語が立ち上がるよう。自然、祈り、愛をテーマにしたスピリチュアルな流れがアルバム全体を貫き、聴き終えたあとに静かな余韻が残る。

横田進の代表作のひとつである2002年作『The Boy And The Tree』が、〈Lo Recordings〉より新装リマスターで再登場。自然や生命の神秘をテーマにした本作は、アンビエント/エレクトロニカ期の魅力が美しく結晶しており、透明感のあるメロディと柔らかな音のレイヤーが幻想的な世界を描き出す。本人が語っている通り、本作は屋久島の原生林を歩いた経験や、宮崎駿の映画『もののけ姫』の生態学的メッセージにインスパイアされており、柔らかなシンセの揺らぎ、アコースティックな質感、そして森の奥で響くようなパーカッションが重なり、自然の世界がそのまま音になったような神秘性を帯びている。彼のアンビエント作品の中でも特にメロディが際立ち、夢の中を歩くような浮遊感と、静かな感情の動きが同時に流れ込んでくる、永遠の名盤。

豪華ミュージシャンが結集した国際プロジェクトThe Mighty Tiny & The Many Fewのアルバムが、ついに待望のLPリリース。米国のテナーサックス奏者Steven Jess Borth IIと、Major Lazerのメンバーとして知られる電子音楽家兼プロデューサーWalshy Fireによって結成されたコンセプトバンドで、本作ではジャマイカ出身のシンガー/プロデューサー Randy Valentineを迎えて制作された。さらに、デンマークのジャズ・シーンを牽引するMorten McCoy、Jonathan Bremer、Rumpistol、Mikkel Hessらをはじめ、3大陸から15名以上の実力派ミュージシャンが参加。ホーン、鍵盤、リズム隊がローテーションで加わる贅沢な布陣が、作品全体に豊かな厚みと躍動感を与えている。ソウルフルな歌声と多層的なハーモニーが心地よく広がるレゲエ調ソウル「Invite Love In Your Life」、ジャジーなピアノとビートにR&B的な歌唱が重なるタイトル曲「Be The Good People」などを収録し、アナログ的質感が楽曲の切なさと温かさを際立たせ、ヴィンテージとモダンが自然に溶け合う仕上がりとなっている。ポジティブなメッセージも作品全体を貫き、国境を超えて心を明るく照らす一枚。
英国のインストゥルメンタル・トリオHaiku Salutと、映画音楽でも活躍するピアニストMeg Morleyが手を組み、1930年のサイレント映画『People on Sunday』のために制作した再構築スコアが12インチで登場。Flatpack Festivalでのライブ上映+生演奏をきっかけに生まれた音楽を、5年の時間をかけて丁寧にスタジオ録音として仕上げた作品。柔らかなピアノの旋律を中心に、電子音がきらめき、アコーディオンやギターなどのアコースティック要素が重なり、ネオクラシカルとエレクトロニカ、室内楽が溶け合う。サイレント映画の情景を想起させながらも、現代的な透明感と温度を併せ持つ。1曲ごとに異なる短編映画のような展開が続き、アルバム全体がひとつのシネマティックな旅として流れていく静かで美しい一枚。
ASCがロックダウン期に深化させたアンビエント路線の集大成的作品『Colours Of Absence』。前作『Original Soundtrack』と同時期に制作された続編的位置づけの作品で、ピアノを中心とした楽器的アプローチと、ASCらしい深いドローン/アンビエントの質感が絶妙なバランスで共存している。静謐でありながら重力を感じるレイヤー、霧の中で輪郭だけが浮かぶようなピアノの残響、そして時間の流れがゆっくりと変質していくような構成。音数は少ないのに密度が高く、内省的なムードがアルバム全体を包み込む。影、赦し、距離、脆さ、受容といったテーマが音の質感に反映され、静かな感情の移ろいを追体験するようなASCの新しい表現を提示する重要作。

フレンチ・ダブの重鎮Pilahと、シンガー/MC、Birdy Nixonがタッグを組んだ最新作『O’Clock』。Kaly Live DubやDub Addict Sound Systemで知られるPilahが手がけるプロダクションは、80sラバダブの生々しくて粗削りな質感と、現行フレンチ・ダブのクリアな音像が共存する強靭なサウンド。深く沈むベース、鋭いスネア、空間を切り裂くエコーが、サウンドシステムの現場をそのままレコードに封じ込めたような迫力を生む。Birdy Nixonのヴォーカルは、ルーツ・レゲエの精神性とストーリーテリングを感じさせ、ヘビーなダブ処理と絡み合いながら、楽曲に温度と人間味を与えていく。ヴォーカル曲からダブ・ヴァージョンへと連続するショウケース形式の構成も心地よく、ルーツ、ラバダブ、ダンスホールを横断しながら、現代的な音圧とミックスでアップデートされた、今のフレンチ・ダブ。

デンマーク現行ジャズ/即興シーンの精鋭が集結した特別プロジェクトI Am An Instrumentによる、2019年コペンハーゲンでの完全即興ライヴ録音を収めた『Vol. 1』。Jonathan Bremer、Johannes Wamberg、Eliel Lazo、Morten McCoyら北欧シーンを牽引する実力派が参加し、演奏開始の合図以外は何も決めないという純度の高い即興演奏を展開。音は生まれては消え、また別の方向へと流れていく。ジャズ的な自由度とアンビエント的な空間感が同居し、低音のうねりや残響の深さにはダブの影響も滲む。編集を一切施さない録音だからこそ、メンバー同士が音を探り合いながら立ち上げていく瞬間の呼吸がそのまま刻まれている。4つのパートで構成される音の旅は、抽象的でありながらどこか物語性を帯び、聴くたびに異なる景色を見せてくれる。北欧インプロの現在地を象徴する一枚。
パリのアンダーグラウンド・サウンドシステム〈Green Arrow〉が送り出す、Von D & MoresoundsによるユニットGA Posseの強烈なステッパーズ12"『Talk Too Much / Vakarm』。自作サブウーファーを武器に活動するGreen Arrowらしく、クラブや野外の現場で物理的に押してくる低音を前提に作られた、完全現場仕様の一枚。A面「Talk Too Much」は、レイヴの熱気とステッパーズの推進力が交差する攻撃的なトラックで、硬質なキックと鋭いスネア、Von Dの重いベースラインに、Moresoundsのエフェクトが絡み、倉庫系パーティーの空気をそのまま閉じ込めたようなキラー・チューン。B面「Vakarm」は、より深く沈むローエンドが主役のダーク・ステッパーズで、ミニマルな構成ながら、空間の揺らぎや残響の飛び方が絶妙で、深夜のフロアに映えるヘヴィウェイト・ダブ。Green ArrowのDIY精神と音圧至上主義が最もよく表れた一曲。

オーストリアのダブ・デュオSmalltowndubzが、〈Basscomesaveme〉から放つ強力12インチ『Never Get Burned / Sitar Dub』。A面にはエチオピアン・ルーツのシンガーFikir Amlakを迎え、祈りのようにまっすぐな声と重量級ステッパーズが融合した、スピリチュアルなルーツ・アンセムを収録。深く沈むベースと硬質なキックが生む推進力は、サウンドシステムでの鳴りを強く意識したもの。一方B面はシタール奏者Lance Humeをフィーチャーし、東洋的な旋律がディレイとリバーブの海に溶け込むラーガ・ステッパーズともいうべきもの。ミスティックな響きとステッパーズの強度が交差し、瞑想的でトランス感のある独自の世界観を作り上げている。どちらの面もダブ・バージョンをセットで収録。ルーツの霊性とエスニックな深度を1枚に凝縮した、キラー・ステッパーズ。

フランスの〈BAT Records〉が送り出す、現行ルーツ/ダブ・シーンを牽引するタッグ、Junior Roy×Dub Shepherdsによる待望のフル・ショーケース・アルバム『Trodding On Showcase』。70〜80年代ジャマイカの録音手法を色濃く受け継ぎながら、現代的な強度とメッセージ性を備えた本気のルーツ。Dub Shepherdsのアナログ機材を駆使した生々しい演奏は、太いベース、乾いたスネア、ざらついた質感が前面に出たクラシック・スタイル。そこに若きシンガーJunior Royの力強い声が乗り、精神性と社会性を帯びたリリックが説得力を持って響く。ショーケース・スタイルも相まって、サウンドシステムの現場で曲が解体されていくようなライブ感がそのまま味わえるのも魅力的。
UKルーツ/ステッパーズの重鎮Jah Warriorと、ブリストル・ベースカルチャーの中心人物RSDが初めて真正面から共演した強力12インチ『Not Enough』。Martin Luther King Jr.のスピーチを大胆にサンプリングし、社会的メッセージとサウンドシステムの強度を直結させたコンセプチュアルな一枚。A面はJah Warriorらしい重量級ステッパーズで、鋭いホーンと推進力のあるリディムに歴史的な言葉が重なる。一方 B面ではRSDが深いサブベースと空間処理で再構築し、静寂と圧力が同居するブリストル流ダブへと変貌。特に「Oceanic Depths Dub」はタイトル通り、深海へ沈み込むような没入感が魅力。
Treasure Isleの名プロデューサーDuke Reidのもと、John Holt、Howard Barrett、Tyrone Evansの3声が織りなす極上のハーモニーが、柔らかく揺れるリズムに溶け込む、ロックステディ黄金期を象徴する名盤、『On The Beach』。スカからレゲエへ移り変わる過渡期の空気をそのまま閉じ込めたような、甘く切ないサウンドがアルバム全体を包み込む。代表曲「The Tide Is High」は後にBlondieのカバーで世界的ヒットとなり、オリジナルの美しさが再評価されるきっかけにもなった一曲。甘い情景が浮かぶ名曲がずらりと並ぶ、軽やかで都会的な音像は〈Treasure Isle〉作品ならではで、夕暮れの海風のような心地よさが続く。The Paragonsの魅力が美しく結晶した、時代を超えるクラシック。

ジャマイカのベテラン・シンガーEcho Minottと、フランスのダブ・ユニットDub Shepherdsが再びタッグを組んだショーケース・アルバム『Mango Tree Showcase』。ヴォーカル曲の直後に対応するダブ・ヴァージョンを配置するクラシックなショーケース形式で、ルーツ〜80sラバダブの魅力をそのまま現代に蘇らせている。さらに「Ram Dancehall」では I Fi が参加し、サウンドシステム映えするダンスホールの熱量も加わっている。Echo Minottの軽快でストリート感あふれるヴォーカルに対し、Dub Shepherdsは深いエコーと空間処理で応答。太いベースライン、沈み込むリディム、そして大胆に飛び交うディレイが、クラシックなジャマイカン・サウンドと現代的なクリアさを絶妙に融合させている。特にダブ・ヴァージョンでは、音が溶けていくような浮遊感と、手触りのあるアナログ感が同居し、サウンドシステム文化の今を感じさせる仕上がり。
