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ベルリン拠点のアーティストdj echotreeが、フィールド録音、スポークンワード、ジャズの断片、ノイズ実験を縫い合わせた霊的コラージュ作品『These Rays of Sun which illuminated the Darkness of my Body and my Mind left Room for subjective Interpretations on the Exile that is Life』。音楽作品というよりも、発掘と本能によって形作られた唯一無二の工芸品のような作品で、フィールド録音、スポークン・ワード、そして浮遊するジャズの断片を、MPCの確かな鼓動が繋ぎ合わせていく。そこにあるのは、洗練や加工を拒絶し、徹底して人の手の感触を残そうとするストイックな表現。わずか24時間の没入の中で記録されたという本作は、サン・ラ直系のスピリチュアル・ジャズの芳香を漂わせながらも、極めてローファイな質感と実在感に貫かれている。片面のみにプレスされ、裏面にはアーティスト本人の手書きメモだけが添えられた意図的な余白が広がるなど、フィジカル・オブジェとしての徹底したこだわりを感じさせる、最初から最後まで丸ごと体験されるべき静かなる捧げもの。
フィンランド、オランダを拠点に活動、Mohlao名義でのダブ・テクノや、VC-118A名義でのエレクトロなど、多岐にわたる実験音響プロジェクトを展開している才人Samuel van DijkによるプロジェクトMulticast Dynamicsが、名門〈Astral Industries〉に帰還して放つ最新作『Circles』。A面「Circle One」、B面「Circle Two」の長尺2曲による構成で、深層意識へ沈み込むような深いサウンドを描き出す。透明なドローンがゆっくりと揺らめく静謐な前半から、洞窟の奥へ進むような低音の脈動と暗い残響が広がる後半へ。音数は極端に少ないのに、風景が変化し続けるようなシネマティックな音響空間で、長尺でも緊張感が途切れない〈Astral Industries〉らしい音の旅の感覚。深い意識へと潜る、終わりなき音の円環!
まさにDeathprod meets Tod Dockstader!大人気ディープ・テクノ・ユニット、Primal Codeの1/2としても知られるイタリア人エレクトロニック・ミュージック・プロデューサー、Davide Perroneによるプロジェクト”Pianeti Sintetici”(「合成惑星」) が、現代のダブ・テクノ/アンビエントの頂点に佇む聖地〈Astral Industries〉から『Space Opera』と題したアルバムをアナログ・リリース。音を通して語られる未来の合成世界の創造をテーマとした2部構成の作品となった本作は、果てのない宇宙探査の旅の様子を物語る、銀河間の雰囲気を織り込んだ壮大な音のタペストリー的な内容のスペース/ダーク・アンビエント盤に仕上げられています。

UKダブの新鋭Remy Solarによる初の長編ソロ作品『Heavy Terrain』。彼が長年携わってきたサウンドシステム文化の延長線上にありながら、より実験的で内省的な方向へ踏み込んだ意欲作。Lee “Scratch” Perry、Augustus Pablo、The Disciples、Digital Mystikzらからの影響を土台に、ダブの深い残響と電子音の探求を融合させた前衛ダブで、世界各地のリズムや音を吸収した音のロードムービー。タイトル通り、砂漠、都市、夜の湿度、霧の高地など、曲ごとに異なる土地が音で描かれ、聴き手は重く、深く、変化し続けるサウンドを旅することになる。湿度を帯びた重低音、硬質でストイックなドラム、ドローンの持続音、きらめく電子音が有機的に絡み合う。静かな熱と緊張感があり、心地よさと不穏さが同時に押し寄せる、伝統的なダブの精神を継ぎつつ、現代的な音響実験へと踏み出した一枚。

1978年のアイントホーフェンでの始動以来、ノーウェーブ、パンク、アナログ・エレクトロニクスを横断してきた50年近いキャリアを持つオランダ地下音楽の伝説Truus de Grootが、長年続けてきた実験的電子音楽プロジェクトPlus Instrumentsによる『Unnoticed』。金属的なシンセの脈動、ざらついたアナログ質感、削ぎ落とされたビートが生む硬質なミニマリズムで、80年代NYノーウェーブの精神をそのまま電子音へ移植したような、衝動と構築が同居するサウンドで、ドライで切り裂くような声が、機械的な反復の上を走り、工業地帯の夜景のような冷たさと湿度を帯びた世界を描き出す。DIY精神を貫きながら、今もなお前線で音を更新し続けるアーティストの現在形が刻まれている。鋭くも官能的な電子音の迷宮。
カナダ・ホワイトホースを拠点に活動するLevi BruceのプロジェクトUnknown Mobileが、〈Pacific Rhythm〉へ約5年ぶりに帰還して届けた最新作『Field Work』。本作は2025年の冬から春にかけて世界各地で採取したフィールド録音を軸に構成されており、ポルトガル、スウェーデン、アラスカ、カリフォルニア、ベルリン、そして彼の地元ユーコン準州の自然音や街の気配が、まるで旅の断片のように楽曲へ溶け込んでいる。透明なピアノのフレーズ、繊細な電子音、微細なノイズが層を成し、静かに揺れる水面のようなサウンドスケープを描く。各曲には録音場所の 緯度・経度 が記され、アルバム全体が音の地図として機能するユニークな構造。派手な展開はないが、音の細部が常に変化し続け、聴き入るほどにゆっくりと風景の中へ沈んでいく。夜明け前の静けさ、雪解けの匂い、遠くの街のざわめき。そんな時間の流れまで感じさせる、静かで深い旅の音日記。

Gorillazのキーボーディストとしても知られるロンドンのマルチ奏者Jesse Hackettが、原点であるピアノへ回帰した最新作『Nocturnes』。SatieやRavel、Messiaen、Bill Evansなど、深夜に聴き返した音楽からの影響をベースに、ピアノを中心としたメランコリックな楽曲が展開。Finn Petersのサックス/フルート、Akira Umedaのエレクトロニクスが淡く溶け込み、雨に濡れた路地裏のジャズと、ゴシックな室内楽が交差する独特の世界観を形づくる。「Nosferatu」「Chainca Shadow」など、どこか不穏な空気もあり、全13曲がまるで夜の短編集のように流れていく。ロンドンのボヘミアンなバーで過ごした記憶や、人生の転換期に抱えた心の影がそのまま音に刻まれた、個人的な作品。
これぞ、音響 meets テクノの境地・・・フィラデルフィアの気鋭、MetaspliceがThe Trilogy Tapesより2018年に発表していた名作。テクノとノイズとドローンの狭間で揺れる、エクスペリメンタル・サウンド。ミニマリストの極みとも云うべき、ドープなサウンドにただただ埋没!

西海岸ロスアンジェルス東部にて活動を開始した最新鋭チルアウト/バレアリック・ミュージック・スーパーグループ”PULI”による要注目のデビュー・アルバムが、マイアミの〈Open Space〉レーベルから登場。〈Music From Memory〉からの22年のアルバムが大人気を博したAlex Ho作品にも参加するDJ/プロデューサーのPhil Cho、AV MovesやNerftoss名義で〈Leaving Records〉などのカセットレーベルから実験的な作品を送り出し、ヘヴィ・サイケ・バンドのDope BodyやMotion Ward主宰者Jesse Sappellとのカルト人気なアンビエントユニットJJ+JSにも参加するギタリストJohn Jones 、US地下ハウスの才人Magic TouchことDamon Eliza Palermoという豪華面々が結集!ハーフタイム/ダブルタイムのダブ風のリズム、ぼんやりと明るいシンセのモチーフ、ジョーンズによる雰囲気のあるギターが織りなすバレアリック/アンビエント・ハウスの結晶"Ramona"、チョーの優美なボーカルをフィーチャーした、一種の解体されたほろ苦いバレアリック・ポップ"Cloudy"、Benedekや〈Mood Hut〉クルーの作品を想起させるステッパーズ・ハウス"Bongo Springs"など、10年代バンクーバー周辺の地下ドリーム・ハウスにも通じる愛らしく良好なヴァイブスが詰め込まれた珠玉のアンビエント・ダンス・ミュージックが全8曲に渡って展開されていくメロウで甘美な逸品!

Jon Hopkinsとアイスランドの映画音楽作曲家Biggi Hilmarsによるオリジナル・サウンドトラックとしてリリースされる本作は、2024年に公開され話題を呼んだドキュメンタリー映画『Wilding』のために書き下ろされた作品である。
映画の舞台はイングランド南東部にある400年の歴史を持つクネップ・エステート。農場経営者イザベラ・トゥリーとチャーリー・バレル夫妻が、人の管理を手放し、土地を自然に委ねる"リワイルディング"に挑んだ実験の軌跡を描いている。
本作で2人の作曲家は、ストリングス、ピアノ、声、オーガニックなテクスチャーを用い、自然界のリズムをそのまま音楽へと昇華。生命が再生していく過程を、静かで息づくようなサウンドスケープとして表現している。ホプキンス自身の声を加工した「Wilding Theme”」をはじめ、音楽は風景や時間と溶け合い、土地に宿る記憶を呼び覚ますように響く。
環境再生というテーマと深く共鳴した本作は、アンビエントや現代音楽、映画音楽の枠を越えた、自然と共生するための音の記録である。

ロサンゼルスを拠点に活動する作曲家、ギタリストのGregory Uhlmannが〈International Anthem〉から発表する、静けさと温度を併せ持つ独自の音世界を描き出したソロ作品『Extra Stars』。これまでのUhlmannは、Small Dayの静謐なアンビエント、Meg DuffyとのDoubles、Dustin WongとのWater Map、Josh JohnsonやSam Wilkesとのチェンバー・ジャズ、SML名義でのトランス・ジャズなど、多彩なプロジェクトを横断してきたが、本作はその探求がひとつの形として結晶した作品と言える。全14曲から成るサウンドは、ギター、シンセ、室内楽的アンサンブル、柔らかな電子処理が重なり合い、星座のように点在するメロディが静かに輝く。打楽器はほとんど使われないのにリズムが前に出ており、また、電子的処理を多用しながらもハーモニーの深さがある。確かな構造性、複雑な音響処理とともに、アンビエントの広がり、ジャズの自由さ、フォークの素朴さ、室内楽の繊細さがひとつの流れとして結びつき、Uhlmannの音楽的アイデンティティを深く美しく映し出している。静かでありながら豊かな色彩を持つ、現代的なアンビエント・ジャズの重要作。

エイフェックス・ツインが愛した稀代の才能
『You’re Only Young Once But You Can Be Stupid Forever』(2024年)と、デジタルオンリー
作品『Slow Down Stupid』(2025年)を収録した
2枚組CDをリリース!
エイフェックス・ツインことリチャード・D・ジェームスとグラント・ウィルソン・クラリッジによって設立された伝説的レーベル〈Rephlex〉から1999年にデビューした奇才ボグダン・ラチンスキーが最新作を2CDで発売!
本作はタイトルが示す通り、延々とSNSをスクロールしてしまう時間にフィットするアイロニカルなサウンドトラックとして機能する作品で、2024年に高い評価を受けたアルバム『You’re Only Young Once But You Can Stupid Forever』と、2025年に制作され、これまでデジタル配信のみで公開されていた『Slow Down Stupid』を組み合わせた内容となっている。
『You’re Only Young Once But You Can Be Stupid Forever』は、温かくメロディアスなスケッチの数々で構成されており、ビートレスに漂うトラック、奇妙なシンセ・パッチ、ピコピコしたパーカッションなどがつなぎ合わされた全18曲。そのテーマは、後期資本主義の残虐性、過剰な消費者主義、インターネット社会の破滅、そしてアルゴリズムによる大災害だという。
ディスク2の『Slow Down Stupid』では、素材をさらに引き延ばし、より音響的な領域へと踏み込んでいる。そこには、「スロー&リヴァーブ」現象、そしてディストピア的なテック・プラットフォームから次々と発信される、終わりなきリラックス/ヨガ/瞑想系アプリやプレイリストの氾濫に対する、脱構築が施されている。
ブラジル・リオ生まれ、2002年生まれの新世代プロデューサーDJ Ramon Sucessoが、世界的ブレイクのきっかけとなった『Sexta dos Crias』の続編となる『Sexta dos Crias 2.0』をリリース。本作はバイレ・ファンキのエネルギーをさらに過激に推し進めた全2曲、34 分の長尺ミックス作品。A 面「Rompendo o Espaço-Tempo」、B 面「Distorcendo o Universo」は、どちらも16分超のシームレスな展開で、断片化したサンプル、歪んだボーカル、Tresillo系のビートが衝突し続ける、まさに未来志向・低レイテンシーのサウンド。TikTokでのバイラル感覚とクラブの身体性が一点で衝突する、バイレ・ファンキの最前線。マスタリングはDubplates & MasteringのKassian Troyerが担当。バイレ・ファンキ、ベース・ミュージックの可能性を拡張し続ける異才の重要作。
テクノとダブ・レゲエの奇跡的合一。独Mark Ernestus & Moritz von OswaldのBasic Channelにより、1993年にリリースされていた音響ダブ/ミニマル・テクノの傑出した普遍的名曲が、2025年リプレス。
テクノとダブ・レゲエの奇跡的合一。独Mark Ernestus & Moritz von OswaldのBasic Channelにより、1993年にリリースされていた音響ダブ/ミニマル・テクノの傑出した普遍的名曲が、2025年リプレス。
テクノとダブ・レゲエの奇跡的合一。独Mark Ernestus & Moritz von OswaldのBasic Channelにより、1994年にリリースされていた音響ダブ/ミニマル・テクノの傑出した普遍的名曲が、2025年リプレス。

Formant Soundsystemの共同創設者としてロンドン、パリの前衛クラブシーンを支えてきたGrady Steeleによる、夕暮れの窓越しの光が照らし出す、言葉にならない心の揺れをテーマにした、ビートレスのアンビエント作品『Nausea』。I〜VIIの7つの楽章で構成され、霞んだパッド、遠くで鳴るギター、微細なノイズ、そしてフィールド録音が静かに重なり合う。明確なビートは存在しないのに、音の呼吸や揺れがリズムに似た役割を果たし、身体ではなく心の速度で進むようなニュアンスがある。序盤の静謐なアンビエンスから、終盤に向かってノイズが増し、内省からざわめき、そして小さなカタルシスへと向かう構成は、短編映画のような物語性を帯びている。美学を感じる、親密で感傷的な一本

スローモーション・ダブの独自路線を確立するフランスのアンビエント、エレクトロ・ダブ・デュオFroid Dubによる、自身の美学をさらに深化させた最新作『Positive And Natural』。全8曲の平均BPMは約85前後と極端にスローモーションながら、808キック、303アシッド・ベース、そしてテープディレイの揺らぎが三位一体となり、静けさの中にドライブ感が宿るミニマル・ダブを構築。タイトル曲「Positive And Natural」のメロディカ的ニュアンスから、「Love」「No Sense」で聴けるうねるアシッド・ダブまで、クラシックなダブの精神と現代エレクトロの質感が自然に溶け合う。音数は極端に少ないのに、テープディレイの揺らぎや微細な残響が空間を満たし、静けさの中に情報量が宿る。トリップホップ/ニューエイジ/DIYダブの流れを感じさせる、温かく漂う質感と実験性が共存する、充実作。

マイアミのアンダーグラウンドから登場したデュオCrespi Drum Syndicateによる、Steve Reich『Six Marimbas』、Moebius & Plank、Ricardo Villalobosらを影響源として、ラテンのリズム文化とアヴァンギャルド電子音楽を融合した、ミュータント・ポリリズムの決定盤とも言えるフルアルバム『Colada Talk』。Buchlaモジュラー、金属パーカッション、日用品の音まで取り込んだ長時間の即興による儀式的スタジオワークによって製作され、スライドホイッスル、バスクラリネット、サックスが飛び交い、まるで 電子音楽の中に突然ジャングルの儀式が現れるような奇妙な生命感がある。クラーベを基盤にした跳ねるビートに、電子音が絡みつく電化打楽器アンサンブルは、常に揺れ、跳ね、ねじれ、身体性とアート作品としての不可解さが同時に存在する、マイアミの湿度とストリート感をそのまま電子音へ変換したようなUSアンダーグラウンドの現在形を示す一枚。
UK北西部のプロデューサーJohn HowesによるプロジェクトPaperclip Minimiserによる最新12インチ『Topology Transform』。クリック&カット、UKベース、モダンなブロークン・テクノの系譜を自然に接続し、科学実験の精密さと、ダブの湿度を併せ持つ「フラクタル化したマイクロ・ダブ・テクノ」と評される独自の音響空間。A1はカサついたパーカッションと点描的シンセが高速で交錯し、壊れた機械がダンスしているような奇妙な推進力。A2はハーフタイムの空間処理が際立ち、音の間がグルーヴを形づくる。一方B面はビートレスのアンビエントへ沈み込み、青白い光の中を漂うような静謐さが広がる。Howesが自作ツールで磨き上げた、粒子が自律的に動くような音の細密さと、クラブミュージックの身体性を両立する、クリック&カットの現代アップデートとも言うべき一枚。

2003年に自身のレーベル〈Skintone〉からひっそりとリリースされ、過去に海外に向けライセンスリリースされることもなかったことから、長らく幻のアルバムとして語られてきた横田進の『Laputa』が、ついにSkintone Editionとして登場。『The Boy And The Tree』と『Symbol』の間に位置する本作は、キャリアの中でも最も実験性が強く、神秘的で、不穏さと美しさが同居する特異点のような作品。ドローン、断片的なサンプル、ストリングス、ノイズ、囁き声、ブルースギターなど、多様な素材がコラージュのように重なり合い、ガリバー旅行記の幻想的な浮島の名にふさわしい異世界的なサウンド。複数の映画が同時に流れているような多層的な音像は、横田のサンプラー/セレクターとしての才能を鮮烈に示しており、メロディアスな瞬間と抽象的な音響が交互に現れ揺れ動く独特の世界観は、今聴いても圧倒的な個性を放っている。

テルミン誕生100周年を祝うために制作された、Gaudiの異色のダブ作品『100 Years Of Theremin (The Dub Chapter)』。Mad Professor、Adrian Sherwood、Scientist、Dennis Bovell、Prince Fattyといったダブ界のレジェンドが集結し、それぞれが提供したリディムの上でGaudiがテルミンを自在に操る、豪華かつ自由すぎるコラボレーション。テルミン特有の揺らぐ音程や幽玄なビブラートが、深いエコーと重低音のダブ空間に吸い込まれるように溶け込み、まるでSFとルーツ・レゲエが出会ったような唯一無二の世界観を形成。プロデューサーごとに音の質感が大きく変わり、鋭い残響、跳ねるダブ操作、実験的な空間処理など、曲ごとにダブの教科書のように個性的でありながら、テルミンという一本の軸がアルバム全体を美しくつないでいる。浮遊感と重力が同居するサウンドは、電子音楽リスナーにもアピールできる、テルミンという古典楽器の新たな可能性を切り開いた重要作。

横田進が2001年に自身のレーベル〈Skintone〉から発表したアルバム『Grinning Cat (Skintone Edition)』。日常の幸福感、特に自宅で過ごした猫との生活から着想を得て制作された作品で、ピアノや弦楽器などクラシック音楽からの断片をループし、切れ端をあえて見せることで不完全さを強調。不完全なループや微妙なズレという意図的な不協和が、独特の緊張感の中になぜか親しみやすい寛ぎを生み出している。『Sakura』や『Symbol』と並び、国際的に評価されたアンビエント作品群の一角で、彼の音楽世界を再発見する重要な再発。

ペルー電子音楽の始まりを初めて体系的にまとめた決定的アーカイヴ『Tránsitos Sónicos』。César Bolaños、Edgar Valcárcel、Enrique Pinillaら、南米前衛を牽引した作曲家たちの1964〜84年の重要作を収録し、これまで断片的に語られてきたペルー電子音楽史を一望できる内容。初期の作品は、アルゼンチンのInstituto Di TellaやColumbia-Princeton Electronic Music Centerなど、当時の最先端スタジオで制作された硬質で抽象的なテープ音楽。その後1970年代後半に進むにつれ、民族楽器や環境音を電子処理と融合させた、ペルー独自の音響世界へと発展していく。電子音の構造美と、ケーナ、打楽器、鳥の声、環境音などアンデスの音文化が交差する音響詩ともいうべき独特のサウンドは、南米実験音楽の豊かさを改めて感じさせてくれる。ペルーの音楽史に眠っていた革新的な作品群を、現代の耳で再発見できる貴重なコンピレーション。
