Electronic / Experimental
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ニューヨークのレーベル〈OST〉から登場した、ロシア出身のプロデューサーmu tateによるアルバム『life of mu』。個人的な記憶と物語を綴る私的なサウンド・ジャーナルのような作品で、友人たちによる語りが3つ挿入され、環境音、映画的サンプル、ローファイなビートが夢の断片のように浮かんでは消える。Ben Bondyを迎えた「memory of a memory」では、アンビエントの霧の中からギターと声が滲み出し、後半にはエモーショナルなノイズの高まりが訪れる。アンビエントの静けさに、IDM的なリズムやエレクトロニカの温度がそっと差し込まれる、DIYな美学と日記のような語りの親密さを併せ持った一枚。
フィールド録音とアンビエント、ミニマルの文脈で知られるSa Paが、新レーベル〈Dub Techno For Life〉を立ち上げ、その第1弾として発表した12インチEP『Girls On Tour EP』。これまでの内省的な音響作品とは異なり、クラブ向けの Sa Paを明確に打ち出した内容。10分に及ぶ「Mokira Ultra Dub」は、Mokira「Manipulation Musik」をSa Paが再構築したロング・ダブ。深海のような低域がゆっくり脈打ち、巨大な空間を往復するエコーが、Sa Paの音響処理をグルーヴィーに拡張している。「Waiting For You」は未発表曲で、柔らかいコードと軽やかなステップが心地よい、Sa Pa作品では珍しい開けた明るさを持つハウス・トラック。台北の雨夜に録音された「Modular System」は、モジュラー特有の揺れと湿度を含んだミニマル・ダブが魅力で、その場で生まれては消える音の粒子が生々しい。ダブ・テクノ、ミニマル、IDM、ハウスがSa Paの音響美学の中で再構築された、充実作。
A Made Up SoundことDave Huismansによる新名義In Transitでのセルフタイトル・デビュー・アルバム。2013年夏、Korg ESXサンプラーを使って2週間で制作された楽曲群を、長年にわたりリメイクし仕上げたもので、幾重にも重ねられたテクスチャーと緻密な編集によって、幻想的かつ内省的な音響を構築。テンポを抑えた穏やかなグルーヴと、ダブ・テクノから影響を受けたKorg ESXサンプラーによる反復と残響処理が光る。複雑な構造と知的な編集技術による深いリスニングにも耐える内容は、Civilistjävel!やDJ Trysteroなどを輩出した〈FELT〉からのリリースで、北欧的な静謐さと現代的な感覚が共存したDave Huismansの沈黙からの復帰を象徴する一作。クラブカルチャーの外側で育まれた静謐な電子音楽。


アムステルダム拠点のNicolini、Nushin Naini、La RatによるトリオDevon Rexiと、UKアンダーグラウンドの重要人物John T. Gastによるコラボレーション作『Breathstep』。クラウトロックの反復性、ノーウェイヴ的な生々しい質感、そしてGastの深く沈み込むダブ処理が混ざり合い、有機と人工が同時に脈打つような独特の音響世界を形成。音の断片が突然現れては消えるコラージュ的構造、湿り気を帯びた重低音、呪術的に加工されたヴォーカル。どれもがダンスミュージックの枠を外れながら、身体の奥を震わせる奇妙なグルーヴを生み出している。残響や空白の扱いが異様に巧みなGastのプロダクションもあり、音が沈んでいく深度そのものを聴かせるような感触のある前衛性と中毒性を兼ね備えた1枚。

ライプツィヒ拠点の電子音楽作家TIBSLCが、デジタルな霞の中の夢世界をテーマに描いたエクスペリメンタル・アンビエント『City of Something』。霧の層のように重なるシンセは輪郭がゆっくり溶け、ボーカルは光の粒のように曲の中へふっと現れては消える。淡いメロディが浮かんでは遠ざかる、視界がぼんやり滲むようなアンビエント・ポップや、ダウンテンポ寄りの微細なグルーヴが立ち上がる、アンビエント、エレクトロニカ、ダウンテンポ、ダブテクノ、トリップホップが柔らかく溶け合うハイファイ・アンビエントの断片集。電子音の粒子が漂い続ける、都市のどこでもない場所を描いた繊細な音響設計が静かに広がる一枚。

フィラデルフィア拠点のサウンドデザイナーYakaが、水辺の世界や両生類的モチーフを軸に構築したコンセプチュアルな電子音楽作品『Dream Big』。Aサイドは荘厳なコーラスと、水面を跳ねる粒子のようなブレイクビーツ、湿度を含んだ低域、遊び心のあるメロディが次々と姿を変える。ベースは水中で形を変える塊のように揺れ、シンセは薄い膜のように重なりながら、時折光が反射するような高域が差し込む。Bサイドではクラブ的なグルーヴがゆっくり脈打ち、薄明かりのアンビエンスで作品全体の物語が静かに閉じる。水辺の生態系を電子音で描いたような音世界と、ユーモアとスピリチュアルの中間にあるメロディ感が自然に結びついた、高精細な音響作品。

NYを拠点に活動する音楽家james Kの3rdアルバム『Friend』を再構築したリミックス・アルバム。Objekt、Roza Terenzi、JASSS、Drew McDowall、Huerco S.など、現行エクスペリメンタルからクラブ・ミュージックの重要アーティストが多数参加し、原曲の内省的なムードをそれぞれの手法で拡張している。曇り空のような質感と気だるいヴォーカルを軸にしつつ、ブレイクビート、アンビエント、インダストリアル、ドリームポップまで、多様な手法を用いており、特にHuerco S.による14分超の「Peel」は、深い霧の中を漂うようなアンビエント・テクスチャーで、アルバムの中でもひときわ没入度の高いトラック。『Friend』の親密さを保ちながら、別の物語へと書き換えるようなリミックス集に仕上がっている。

〈Isle Of Jura〉を主宰するKevin Griffithsのプロジェクト、Jura Soundsystemによる、オーガニックでスピリチュアルなバレアリック・ダブ『Morning Star』。深いエコー、柔らかい低音、ゆったりとしたパーカッションが重なり、まるで部屋の空気がゆっくりと変わっていくような、瞑想的で香り立つサウンドが広がる。ギターや鍵盤、フィールド録音などの生音が、アナログ的な質感とともに漂い、バレアリック特有の柔らかい熱を帯びた音像を形成している。レフトフィールド・ディスコの感覚も健在で、静かに身体を揺らすミッドテンポのグルーヴが心地よい。香りとエスケープイズムをキーワードにした、夕暮れの海辺や、深夜のリスニングにぴったりの空間を満たすチルアウト。
カリフォルニアを拠点に、ゴス、インダストリアル、ベッドルーム・ポップ、ポスト・パンクを独自のダークな感性で交差させるマルチ・アーティスト、Evanora Unlimitedが完全自主制作で発表したパーソナルでコンセプチュアルなアルバム『Portraits from Memory』。英語・スペイン語・クロアチア語が混ざる多言語の歌詞、退廃的で耽美なエレクトロニック・サウンド、Thoom、Alles Catalan、Ushkoなどの豪華かつカルトなゲスト参加が、アルバム全体に記憶の断片をつなぎ合わせた夢の劇場のような独特の物語性を与えている。ポップ・ミュージックのフォーマットを借りながら、自らの内傷的な記憶やアイデンティティの亡霊を召喚するような、耽美で歪んだエクスペリメンタル・ポップの怪作。

9月下旬再入荷。イタリア系ベトナム人アーティストRadio Hitoが、フランスの詩人Claude Royet-Journoudの詩集をもとに制作した、声とMIDI音源だけで構成された、現代の歌曲とも言える10曲の連作が収められたアルバム『L’usage et les attributs du cœur』。中心にあるのは、朗読と歌のあいだを揺れ動く親密な声と、Casio CTKワークステーションの 素朴で透明なMIDI音色。ピアノ、ストリングス、ベルといったプリセット音が無機質な光のように配置され、言葉の響きそのものを際立たせる。楽曲は短いフレーズの反復で構成され、音数は極端に少ない。そのため、わずかな変化が大きな揺らぎとして立ち上がり、意味が揺らぐ瞬間をそのまま音にしたような独特の緊張感が続く。19世紀のリートの伝統を、デジタル音源とミニマルな構造へと移し替えたような、古さと新しさが同時に存在する一枚。

8月中旬再入荷。コペンハーゲンを拠点に、カセットテープや日常のオブジェクト、環境音を用いて極めて親密でプライベートな音響世界を編み上げるデンマークのサウンドアーティストKristoffer KjærskovによるプロジェクトEconomy of Meaningによる、浮遊するアンビエンスと断片的ループのコラージュ『Mind Sink』。制作はコペンハーゲンのアンダーグラウンドな実験音楽、テープレコーディング・シーンに深く根ざして行われ、フィールド録音、ギター、オブジェクト、シンセなど多様な音素材がレイヤーされている。音は一定の重力から解放されたように漂い、短いフレーズや質感の断片がゆっくりと重なり合う。自然音・環境音・物音のレイヤーが電子音と混ざり、いつかどこかの記憶のような曖昧な風景が立ち上がる。また、意図的に残された微細なノイズやテープのヨレが、この曖昧な風景に独特の陰影と平熱の体温のような温かみを与えている点もなんとも言えない魅力で、北欧の静謐な空気の中で、時間の流れを優しく歪ませてしまうような、至福のエクスペリメンタル・チルアウトがじんわりと響いてくる。

アムステルダムの実験的フォーク集団From 2による、インディロックのフォーマットを借りながら、その内側で静かに構造をねじ曲げていく、フェイクのようで本物、本物のようでフェイクな独特の魅力を持つアルバム『Indie Stock』。柔らかなフォークの質感で始まったかと思えば、ノイジーなギターや奇妙にズレたリズムが突然入り込み、曲が進むほどに別の姿を見せる仕掛けが随所に潜む。ユーモラスで謎めいた楽曲が並び、フォーク、インディロック、実験音楽がゆるやかに混ざり合う。静けさと混沌、親しみやすさと奇妙さが同居するサウンドは、インディロックの枠を愛しつつ、その枠の中で遊び、裏切り、変形させていく。インディロックの新しいかたちを感じさせる注目作。
USアンダーグラウンドの異才Evanora Unlimitedの破壊的ポップの原点をもっとも荒々しい形で体験できる初期作品『Lustful Expanse』。全曲1〜2分台というスピード感の中で、金属的なビート、ざらついたノイズ、歪んだシンセが一気に押し寄せる。インダストリアルの攻撃性とパンクの衝動が直結した、破裂するようなエネルギーがアルバム全体を貫いている。Evanoraのヴォーカルは、囁き、語り、叫びが混ざり合い、感情がそのまま音になったような生々しさを持つ。ゲストとしてHiHelgaが参加する「Willow’s Perception」は、荒々しいノイズの中にメロディの影が差し込む異質な存在。破壊的な音像の中にふと現れる静けさが、アルバムの緊張感をさらに高めている。後半には全曲のインスト版を収録し、ビートの骨格やサウンドデザインの細部がより鮮明に聴こえ、プロダクションの鋭さと精密さが際立つ。二層構造によって、作品の奥行きがより深く感じられるアルバム。

Moodymann率いる〈Mahogani Music〉周辺のアーティストと交流があり、AUX88 との仕事でも知られるデトロイトのプロデューサーSheefy McFlyによる、初のUS外リリース作『Baddies Only』。参加しているボーカリストはすべてデトロイトの女性アーティストで、本人が「デトロイトの女性アーティストへのラブレター」と語る通り、コミュニティの熱量がそのまま刻まれている。フットワーク、エレクトロ、ゲットーテックの要素が交差するスピード感とストリート感の強いクラブトラックが中心で、高速ビートの鋭さに、女性ボーカルの存在感が重なり、曲ごとに強さ、色気、遊び心が立ち上がる。デトロイトの今をそのまま切り取った、コミュニティに深く根ざした音。

ノルウェーのデュオNaaljos Ljomがデビュー作で提示した、民俗音階と電子音の探求をさらに推し進めた続編『II』。アーカイブ録音の研究、Eivind Grovenの音程理論、そしてフィドルの導入を重ねながら、ノルウェー民俗音楽の微分音的構造を電子的ダンス・フォークとして再構築した一枚。シンセは鋭い倍音を含んだうねりを放ち、フィドルや民俗楽器の音程の揺れと重なることで、独特の音像が立ち上がる。クラフトワーク初期のようなミニマルな推進力とノルウェー民俗音楽の非均等音階 という奇妙で魅力的なハイブリッド。サウンドコラージュ的手法も随所に見られ、アーカイブ録音を学習素材として扱う過程が音楽に反映されている点もユニーク。民俗音階の異質さを前景化し、電子音で拡張した現行のフォークロア電子音楽の中でも特に個性的な一枚。
『Poems for flute』で注目を集めたフルート奏者Henriette Eilertsenが率いるトリオによる、フルート、チェロ、エレクトロニクス、ドラムという編成で、室内楽・ジャズ・抽象電子音の境界を丁寧に探る現代的アンサンブル作品。『Moder』。フルートは柔らかい息のニュアンスと鋭い輪郭が同時に立ち上がる独特のトーンで、アルバム全体の語り手として機能。チェロとエレクトロニクスは室内楽的なムードと抽象的な揺らぎを行き来しながら、フルートの旋律に影を落としたり光を差し込んだりする。ドラムは呼吸として空間を支え、音の密度を過剰にせず、三者の対話が自然に流れる余白を保っている。ゲストとしてJon Balkeが参加し、ピアノにより、抽象的な和声の層がふっと立ち上がる瞬間も印象的。ハイブリッドな室内楽として非常に完成度の高い一枚。

ノルウェー、スウェーデンのフォーク、ジャズ、電子音楽シーンを横断して活動するダブルベース/モジュラーシンセのEgil Kalmanとドラム/コンガ/口琴のHans Hulbækmoによるデュオ作。2024年のライブ録音をそのまま収録しており、ダブルベースの深い低音とモジュラーシンセの揺れる倍音が土台をつくり、その上をドラムやコンガが細かな粒を刻むことで、一定のテンポではなく地形が動くようなリズムが立ち上がる。長年の共演で培われた柔らかい対話も説得力があり、伝統音楽、フリージャズ、ドローン、電子音楽の要素が自然に混ざり、リズムで時間を再構築するというコンセプトを独自編成で実現した作品。


カリフォルニアを拠点に活動するデュオShape of the Moonによる、詩とエレクトロアコースティック音響が緊密に結びついた音の物語『When the Land Is Laid Bare』。メンバーは、詩人・パフォーマーのBenjamin Burkeと、サウンドアーティストのBear Glass。本作の録音は、モハーヴェ砂漠の夜空の下で行われたライブと、Bear Glassが所有するオフグリッドスタジオでのセッションを中心に構成されている。音楽は、Burkeの語りが中心にありながら、モジュラーシンセ、シタール、ベース、ローズ、ベル類、サックスなどがゆっくりと地形を変えるように重なり合う。語りは単なる朗読ではなく、音と同じ呼吸で進むもうひとつの楽器として機能し、言葉が風景を描き、音がその輪郭を広げていく。耳元の語りと、砂漠の広がりを思わせる空間性が同時に存在し、近さと遠さが同じフレームに収まるような独特の感覚。静けさの中に物語が流れていく言葉と音響というアプローチを深く掘り下げた一枚。
アウトサイダー・ディスコからアンビエント〜即興フォークまでレフトフィールドを縦横無尽に駆け回った巨人Arthur Russellによる未発表音源を編纂した名コンピが〈Rough Trade〉盤としては初となるアナログ盤リイシュー!!
1985年に完成するもお蔵入りとなっていたアルバム『Corn』と1986年から1990年の間に録音された未発表音源をソースに編まれた本作は「That's Us/Wild Combination」、「The Platform On The Ocean」、「Make 1, 2」、「Arm Around You」など、Arthur Russellのバブルガム・ディスコ〜エレクトロ・ポップ全盛期の楽曲を12曲収録。また、ムスタファ・アフメド、ウォルター・ギボンズ、スティーヴン・ホール、ジェニファー・ウォーンズ、ピーター・ズンモなど多彩なゲスト陣も参加。時代が追いつき、2004年のリリース以来アイコニックなジャケで新参リスナーを増やし続け、その評価を確固たるものとしてきたクラシック!
アーサー・ラッセルの遺族と独占的なライセンス契約を結び、その膨大なアーカイブの中から未発表音源や絶版作品をコンパイルし04年に出版した大傑作編集盤『Calling Out Of Context』。キャリア全盛期であった1985年から90年にかけてレコーディングされてきたオルタナティヴなバブルガム・ディスコ・ポップ全12曲を収録した超強力盤。決して古びることのないタイムレスなリスニング体験として激激レコメンド。ラッセル入門の方も是非ここからどうぞ!
アウトサイダー・ディスコからアンビエント〜即興フォークまでレフトフィールドを縦横無尽に駆け回った巨 人Arthur Russellの代名詞的作品で、後世にも絶大な影響を与え続ける80年代屈指の名盤『World Of Echo』が名門〈Rough Trade〉によって7年ぶりに再流通!! 1986年にオリジナル盤が発表された本作は、 自身にとって生涯初となるフルレングスの非コラボレート作品で、チェロと声とエコーだけで「最も鮮明なリズムのリアリティ」の実現を試みた作品。ディスコやガラージなどダンス・ミュージック方面で築いたキャリア がある一方で、本作ではそのテープ・エコーやクラップなどテクスチャーの響きや、ヴォーカルの骨格、そしてチェリストとしてのパーソナルな表現を追求し、現代音楽家としての評価を決定づけた傑作。2005年にリイシューされたリマスター音源+4曲のボーナス・トラックを追加した仕様で7年ぶりに再流通!

2011年以来となるSeekersinternationalとwzrdryAVの実に15年振りの再コラボ作『Orbit Flares』。『Magnetic Haze』の続編として制作された、反転、循環、ループをテーマにしたアブストラクト・ダブ電子音楽で、wzrdryAVが描く広がりのあるドローン・スケープを、Seekersinternationalが切断し、ねじ曲げ、再構築。ピッチがわずかに歪むダブ・コードが渦を巻き、低域が液体のように揺れる。遠くのサウンドシステムが霧越しに聴こえるような距離感で、リズムは一定ではなく、揺れたり崩れたり立ち上がったりしながら、音の重力が変わる瞬間が続く。ドローン、ダブ、ループという三層構造が常に動き続けることで、Seekersinternationalのコラージュ的センスと、wzrdryAVの音響的広がりが自然に結びついたユニークな作品。
