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フィンランド、オランダを拠点に活動、Mohlao名義でのダブ・テクノや、VC-118A名義でのエレクトロなど、多岐にわたる実験音響プロジェクトを展開している才人Samuel van DijkによるプロジェクトMulticast Dynamicsが、名門〈Astral Industries〉に帰還して放つ最新作『Circles』。A面「Circle One」、B面「Circle Two」の長尺2曲による構成で、深層意識へ沈み込むような深いサウンドを描き出す。透明なドローンがゆっくりと揺らめく静謐な前半から、洞窟の奥へ進むような低音の脈動と暗い残響が広がる後半へ。音数は極端に少ないのに、風景が変化し続けるようなシネマティックな音響空間で、長尺でも緊張感が途切れない〈Astral Industries〉らしい音の旅の感覚。深い意識へと潜る、終わりなき音の円環!
ブラジル・リオ生まれ、2002年生まれの新世代プロデューサーDJ Ramon Sucessoが、世界的ブレイクのきっかけとなった『Sexta dos Crias』の続編となる『Sexta dos Crias 2.0』をリリース。本作はバイレ・ファンキのエネルギーをさらに過激に推し進めた全2曲、34 分の長尺ミックス作品。A 面「Rompendo o Espaço-Tempo」、B 面「Distorcendo o Universo」は、どちらも16分超のシームレスな展開で、断片化したサンプル、歪んだボーカル、Tresillo系のビートが衝突し続ける、まさに未来志向・低レイテンシーのサウンド。TikTokでのバイラル感覚とクラブの身体性が一点で衝突する、バイレ・ファンキの最前線。マスタリングはDubplates & MasteringのKassian Troyerが担当。バイレ・ファンキ、ベース・ミュージックの可能性を拡張し続ける異才の重要作。

フィンランドはカレリア地方のカンテレ奏者Iivana Mišukka(1861–1919)が、1916〜17年にワックスシリンダーへ残した貴重なフィールド録音をもとに、現代のカンテレ奏者Arja Kastinenが再構築した歴史的アーカイブ作品。古い蝋管録音のノイズや揺れをそのまま生かしつつ、Kastinenが丹念に採譜し、当時の奏法を忠実に再現した新録を重ねることで、100年前の音と現在の音が同じ空間で響き合う。収録されるのは、ポルカ、ワルツ、マアニトゥスなどの舞曲、さらには教会の鐘の音の模倣演奏など、伝統的なルノ歌から新しい舞曲へという当時のカレリアにおける音楽文化の変容を象徴する内容。1〜3分台の小品が並び、素朴でありながら神秘的なカンテレの響きが、森の奥に残る古い歌の記憶を呼び起こすように広がっていく。時間の層が折り重なるような幽玄のサウンドで失われかけたカレリアの音楽文化を現代に蘇らせる価値ある一作。
1976年に日本のみでリリースされた、Marion Brownの70年代の探求を象徴する知られざる名盤。ブラウンは60年代フリージャズ以降、より構造的でリズムを軸にした音楽へと移行しており、アフロ・カリビアン的なポリリズム、ファンクの切れ味、レゲエの揺れが、曲ごとに異なる地層のように積み重なる。アルトは、旋律を吹くというより、リズムの上を滑りながら物語を紡ぐような語りのニュアンスが強く、ギターやベースはグルーヴを前に押し出すのではなく、リズムの層に陰影を与える役割を担う。全体として、黒人音楽のリズム的遺産を抽象化し、ブラウン独自の構造としてのリズムへと昇華。鋭いアルト、豊かなポリリズム、そして集団即興の熱量が交わり、ジャズの枠を越えたコミュニティの音楽として響く一枚。

後年、職業音楽家として名を成すある若者が1984年に自費出版した幻の異端シンセLP、ここに遂に公式復刻!! 80年代初期ニューヨークのアヴァンギャルド・ムーブメントの熱気にくらったいち日本人のアウトサイダーDIY精神爆発の刻印。シンセ一台とヴォイスのみで表現されたこのウルトラローファイな初期衝動的探求は、シニシズムが蔓延する時代、内なる「人間」DNAを揺り起こす。これは現代の神話である。
『Music in DNA』は、1980年代初頭のニューヨークに滞在し、故郷のしがらみから解放された日本人青年、Yasuhito Ohnoが自主制作したLPで、音楽、絵画、パフォーマンスといった当時の様々な前衛的ムーブメントと80年代ニューヨークの地産地消エネルギーにインスパイアされた、「外部」としてのDIY精神が溢れ出る情熱の結晶体。Ohnoはポリフォニック・シンセサイザーの傑作、Roland Juno-60と4トラックマルチレコーダーのたった2台の機材と自身のヴォイスを用いて、若々しい「エッジ」を開放的なローファイ音楽の探求へと注ぎ込みました。全体が奔放な魅力に満ちており、それは、新しい世界に飛び込んで戯れる生々しくフレッシュな人間の精神の開放。Ohnoは、DNA研究、パーソナルコンピューティング、初期のコンピュータグラフィックスといった当時の技術開発全般がもたらす人間的な可能性にも触発されており、収録曲の一部は初期CGのデモ映像のバックグラウンド音楽に使われ、また、本作のジャケットは初期のCGアートです。その後、彼は日本で職業音楽家となりますが、『Music in DNA』は、表現技術を磨く以前の、ひとりのアーティストの作家性の始原を記録したドキュメントであり、極限状態にある剥き出しの無垢が、啓蒙以前の先史神話のように我々に迫ります。シニシズムが蔓延する時代、『Music in DNA』は、寛大な無邪気さとありのままの自分を蘇らせる唯一無比の作品です。ライナーに掲載したYasuhito Ohnoの寄稿は、我々が失っているものを肩の力を抜いて鋭く問いかける名文!
