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実験的エレクトロニック・ミュージックの先駆者として知られる伝説的バンドのSeefeel。1990年代初頭にロンドンで結成され、シューゲイズとエレクトロニックを横断する最も革新的なグループのひとつとして頭角を現した彼らは、重層的なサウンドスケープ、ミニマルなリズム、そしてアンビエントな感性で、本作『Pure, Impure』の後には、エレクトロニックやテクノを軸に多彩な作品を輩出してきた名門〈WARP〉からもリリースを残している。
今回初めてアナログ盤としてリリースされる本作には、1993年に〈Too Pure〉より発表された「More Like Space」「Plainsong」「Time to Find Me」の3作のEPを収録。Aphex Twinによるリミックスや、未発表デモ音源「Moodswing」も含まれた全11曲入り。リマスタリングは名門Abbey Road StudiosにてGeoff Pescheが担当し、アートワークも新たに再構築されている。

ここ数年にわたるDean Bluntとの共演やソロ活動が印象的なグラスゴー拠点のJoanne Robertsonの新作『Blurrr』が〈AD93〉より登場。本作はつぶやくような歌声とミニマルなギターが織りなす、時間の隙間に咲く花のような親密さと、ため息のような美しさに満ちており、どの曲も肩の力を抜いたまま深く胸を打つ。半分壊れたマイクに録音されたかのようなRobertsonの声と、歪んだテープのような音響処理が溶け合い、時が止まるような余韻を残している。Laurel HaloやMalibu作品でも知られるOliver Coatesが3曲で共演しており、彼のストリングスはただの装飾ではなく、Robertsonの声と溶け合い、感情の余白をより際立たせている。GrouperやCat Power、Arthur Russell『World of Echo』の系譜に連なる、静かで壊れやすく、圧倒的に美しい音楽。
LA拠点の実力派ベーシスト/作曲家、Sam Wilkesが、自主レーベル〈Wilkes Records〉から届ける3作目は、2022年夏、初のニューヨーク公演を記録したライヴ・アルバム。タイトルはNYアンダーグラウンドのハブ「Public Records」のことで、この録音はその名にふさわしく、観客との間に交わされた空気感を濃密に閉じ込めたドキュメントでもある。Wilkes自身が「これまででいちばんグルーヴィーな作品」と語るように、本作では、彼の持ち味である温かく流動的なエレクトリック・ベースを軸に、柔らかくスウィングするアンサンブルが展開される。演奏はジャズ、アンビエント、R&B、ビート・ミュージックの境界を軽やかに横断しつつ、身体感覚に訴えかけるダイナミズムと包容力に満ちている。時系列的には、Sam Gendelとのコラボ作『The Doober』とLouis Coleとの共演作『Nothing』の間、そしてソロ作『iiyo iiyo iiyo』の直前という時期にあたり、Wilkesの音楽的成熟がグルーヴという形で結晶化している。オリジナル楽曲に加え、カントリー界の巨人Marty Robbinsによるバラード「Just Married」のカバーも収録。

ダブリンのポストパンク先駆者Stanoとマルチ奏者David KittによるコラボプロジェクトSDKの2025年作『Going Back To The Unknown』が〈All City Records〉から登場。ギター、テープディレイ、アナログシンセ、フィールドレコーディングなどを駆使した、深く没入的なサウンドスケープは、Stanoのポストパンク的な感性とKittの多彩な演奏技術が融合し、ジャンルを超えた音響実験といった趣き。Stanoの詩的かつ即興的な語りが音楽と対話するように配置されているように、制作は偶然性と直感を重視しており、録音の瞬間に生まれる空気感がそのまま作品に反映されている。アルバム全体を通して、言葉と音が互いに呼応しながら、明確な構造を持たずに流動的に展開していく様は、まるで夢の断片を辿るよう。音と詩が共鳴しながら自然発生的に生まれていく音響の旅のような一枚。
William Devaughnによる1974年のフィリー・ソウル名曲を収録した12"『Be Thankful For What You Got / Blood Is Thicker Than Water』がリイシュー! 「Be Thankful For What You Got」は、キャデラックを持たなくても誇りを持てというメッセージを込めたメロウ・グルーヴで、後にN.W.AやMassive Attackなどにサンプリングされた名曲。 B面の「Blood Is Thicker Than Water」も同様に温かみのあるソウル・トラックで、彼のキャリアを代表する両面とも高品質な名作シングル。
" dean blunt & Elias Rønnenfelt - lucre LP. Single-sided, 180g vinyl "
プロデューサー、DJ、マルチ・インストゥルメンタリストの Alek Lee による、ダブ、バレアリック・ディスコ、サイケデリックなグルーヴを融合させたインストゥルメンタル作品『Cold Feet』。本作は、揺らぐシンセ、重層的なパーカッション、バレアリック風のギター・フレーズ、ダビーなホーンを巧みに組み合わせたシネマティックなサウンドスケープで、スモーキーな質感と明瞭なリズム構造が同居し、聴き手に時間や空間の感覚を拡張させるような構成となっている。ループや反復の中に微細な変化や音響的な揺らぎを配置することで、単なるダンス・ミュージックに留まらない、繊細で奥行きのある音の層を形成している。約二十年にわたるDJやライブ活動、プロダクション経験による多様な音楽的影響と技術が結実した、フロア向けの躍動感とヘッドフォンでの没入感を兼ね備えた作品であり、さまざまな要素を横断しながら、Alek Lee のサウンドの深化を示す一枚。

The Beatlesの名曲The Long And Winding RoadやAcross The Universeのアレンジを手掛けたことでも知られる才人Richard Anthony Hewsonによるソロ・プロジェクトRAH Bandによるスペースエイジ・ポップの金字塔『Mystery』が、リリースから40周年を記念して待望のリイシュー。クラシック、ジャズ、ファンク、エレクトロ・ポップを独自の手法で融合させてきた彼のキャリアにおいても、本作は音楽性とチャート・ヒットの両立を見事に果たした重要作。先行シングル「Are You Satisfied?」で披露された進化系ジャズ・ファンク・サウンドもさることながら、特筆すべきは「Clouds Across The Moon」。宇宙を越えた恋愛劇というレトロ・フューチャー的な世界観を、ヴィヴィッドなエレクトロと共に描いたこの楽曲は、1985年のUKチャートで6位を記録し、一躍ポップ史にその名を刻むこととなる。クラシック由来の陶酔感のあるスウィートでスペイシーなストリングス・アレンジに、黒人音楽由来のベース、ソウルフルでメロウな女声ヴォーカルが奇跡的に混ざり合った傑作。チープになりかねないコンセプトと、抜群のメロディとアレンジが出逢った、重厚感はないけれど薄っぺらでもないという、けっこう不思議な魅力が尽きない一曲。その他にも、現在もクラブでプレイされるシンセ・ジャズの名曲「Float」や、Steven Julien aka Funkinevenの『DJ Kicks』にも収録されたサックスが冴える「Out On The Edge」など、全8曲が粒ぞろい。ジャンルの垣根を越えた音作り、そして時代を超えて愛されるポップ感覚は、RAH Bandの本質を最も端的に示す傑作!!

稲垣次郎と彼のバンドによる1975年録音のジャズ・ファンク/ディスコ・カバー集『Funky Best』。Stevie Wonder、Kool & The Gang、Ohio Playersなど、当時のソウル/ファンクの名曲を大胆かつ洗練されたアレンジで再構築した作品で、ホーンセクションの力強さとリズム隊のグルーヴが際立ち、原曲の魅力を活かしながらも、ジャズ的な即興性と日本人ならではの繊細な音作りが融合している。演奏陣には、日本のジャズ・ファンク・シーンを牽引した実力派ミュージシャンが揃い、スタジオ・セッションの熱量をそのままパッケージしたような臨場感溢れる一枚。ジャズとファンク、ディスコの境界を越えたジャンル横断的な魅力を持ち、時代を超えて響く稲垣次郎のセンスと演奏力が詰まった作品として、今なお新鮮な輝きを放っている。
オリジナルは1979年にリリースのBarrington Levyのキャリア初期を代表する名盤『Bounty Hunter』。ルーツ・レゲエから初期ダンスホールへとジャマイカ音楽が移行する過渡期を見事に捉えており、Channel Oneスタジオ録音、The Revolutionariesによる演奏とScientistのダブ・ミックスが、Levyの若々しくも憂いを帯びたヴォーカルを際立たせている。「Shaolin Temple」「Moonlight Lover」「Bounty Hunter」などの楽曲は、力強さとメロディアスさが共存する魅力に満ちており、このアルバムは、Barrington Levyのキャリアの礎となり、後のヒット作への布石となっただけでなく、ジャマイカ音楽の変革期を捉えた歴史的な記録としても高く評価されている。レゲエ・ファンはもちろん、ダンスホールのルーツを探る上でも欠かせない一枚となっている。
心理的緊張や不安をテーマにした、イタリアの作曲家Alessandro Alessandroniが1975年に手がけたライブラリー音楽アルバム『Angoscia』。タイトルの「Angoscia(苦悩)」が示す通り、陰鬱で内省的なムードが全編に漂っていて、 短く構成された楽曲群は、映像音楽のような雰囲気を持ち、場面ごとの感情を巧みに描写。イタリアの鉛の時代と呼ばれる政治的混乱期の空気を反映しているとも言われ、不協和音やミニマルなフレーズ、不穏なストリングスが、聴き手に不安感を与える。ギター、鍵盤、管楽器など多彩な音色を通じてAlessandroniの多面的な作曲技術が光り、商業音楽とは一線を画す芸術性の高いライブラリー作品として評価されており、映画やテレビのサスペンス・シーンにぴったりな音楽が詰まった、静かに不安を忍び寄らせるような緊張感に満ちた一枚となっている。
ブラジルのパーカッショニストDom Um Romaoが1976年に発表したラテン・ジャズ/フュージョンの傑作『Hotmosphere』。 豊穣なパーカッションとエレクトリック・ピアノやフルート、ギターなどの緻密なアレンジが織りなすスムースなグルーヴに、MPBやボサノヴァの要素が融合、収録曲もミルトン・ナシメントやアントニオ・カルロス・ジョビンの楽曲がカバーされており、ブラジル音楽への敬意が感じられる内容となっている。都会的なムードと自然の息吹が共存する中、Romaoのパーカッションは単なるリズムではなく、メロディや空間を彩る主役として機能しており、ジャズ・クラブでもビーチでも似合うような、柔らかくも刺激的な音楽性が魅力的。 ブラジル音楽の深みとジャズの自由さが融合した、心地よくも濃密なアルバム。
ジャズ・ピアニストBob Jamesが1974年に〈CTI〉レーベルから発表したソロ・デビュー作で、スムース・ジャズの原点とも言える重要作が〈Endless Happiness〉より高音質45回転盤仕様で嬉しい再発。洗練されたアレンジとエレクトリック・ピアノの美しい響きが印象的な冒頭の「Valley of the Shadows」から、パッヘルベルのカノンをベースにした「In The Garden」、後に数多くのヒップホップ楽曲でサンプリングされ、伝説的なトラックとなった「Nautilus」など多彩な名演と名曲が揃う。アレンジにはストリングスやホーンも用いられ、映画音楽のようなドラマティックな構成も魅力で、クラシック、ファンク、ジャズが融合したサウンドは、ジャンルを超えて多くのリスナーに影響を与えた。Bob Jamesの洗練された音楽性と、豪華なプロダクションが融合した傑作。

カルナータカ音楽において、通常使われることのないエレクトリック・マンドリンを取り入れた革新的な動画が約10年前から世界中で注目を集めてきたインドの姉妹デュオMandolin Sistersによる初のフルアルバム『Odysseys in Electric Carnatic』がヴァイナルで登場!「Vathapi」「Nagumomu」などの伝統的な南インド古典音楽の名曲をベースに現代的な感覚が融合した本作では、エレクトリック・マンドリンという楽器がカルナータカ音楽に新たな表情を与えており、まるで長いこと締め切っていた窓を開けた時のような瑞々しく鮮やかな気分が印象的。古典的なラーガの厳密な枠組みの中で、姉妹の息の合った掛け合いは、緻密でありながら自由度が高く、単なる演奏を超えて対話のような深みを感じさせ、インド古典のリズム構造であるターラも、現代的なグルーヴとして生き生きと響き渡るよう。カルナータカ音楽を次世代へ繋げるだけでなく、ジャンルや国境を越えて、音楽が持つ普遍的な力を体現する一枚として、多くのリスナーに届いてほしい作品。

チリ出身でニューヨークを拠点とするサウンド・アーティストRafael Anton Irisarriによる、壮大さと繊細さが同居する現代のアンビエント/エクスペリメンタル音楽における金字塔的作品がリリースから10周年を記念してリマスター再発!今回の再発では、自然に囲まれた孤独な環境で制作され、内省的で深い没入感を持つ音響世界が展開される本作品が、2015年のオリジナル盤が持っていた静謐な美しさはそのままに、リマスタリングによって音の奥行きと繊細さがさらに際立ち、まるで空気の振動まで感じられるような仕上がりになっている。深く沈み込む低音と、微細に揺れるテクスチャが織りなす、圧倒的な没入感。静寂の中に響くメランコリックなメロディが美しく、聴く者の内面に静かに語りかけるような深みを持つ。新装されたアートワークも作品の世界観と呼応し、視覚的にもその静謐な美学を補完する充実の再発。

日本とも深い関わりを持つターンテーブル奏者/サウンド・アーティストdj sniffこと水田拓郎による2024年後半の即興ライブ録音を収めた作品『Turntable Solos』。 自作ソフトウェア「Cut ’n’ Play」を用いて、ターンテーブルを即興楽器として再定義する実験的ターンテーブル演奏を展開、レコード盤の物としての特性とデジタル処理が交錯することで、触覚的かつ直感的な音のコラージュが生まれている。特に本作は、前作のコンセプチュアルな深遠さから一転し、より直接的かつアグレッシブなアプローチが特徴的で、レコードの溝、針、モーターから生まれるノイズ、グリッチ、そして予想外の音響操作が、聴き手を引き込む強烈なサウンドスケープを形成している。音源の断片をリアルタイムで再構成し、演奏者の存在がそのまま音に刻まれる、ターンテーブル演奏の可能性を伝える一枚。

ドイツ・ミュンヘンの実験的音楽シーンで活躍するミュージシャンたちによる、クンビア、ダブ、フォーク、ラテンジャズ、ブラスバンドなどが融合した祝祭的かつサイケデリックなサウンドで知られるThe Alien Dub Orchestraが、孤高のダブ・アーティスト、Elijah Minnelliの楽曲集「Breadminster Songbook」をカバーしたアルバム『Plays the Breadminster Songbook』。本作でもThe Alien Dub Orchestraらしい音響世界が展開されており、ギロ、アコーディオン、スーザフォン、フルートなど多様な楽器編成による豊かなアレンジが魅力的。録音はライブ感を重視し、スタジオの枠を超えた自由な音楽表現が感じらレ、原曲のスピリットを保ちつつ、より生演奏的で有機的なグルーヴへと昇華している。ダブの空間処理とクンビアのリズムが融合し、聴く者を異国の祝祭へと誘う。Elijah Minnelliの世界観を拡張しつつ、The Alien Dub Orchestraならではの解釈が光る、ジャンルを横断する発見と驚きに満ちた作品。

シューゲイザーとアンビエントの境界を探るlovesliescrushingの名作デビュー作『Bloweyelashwish』。1992年、12弦ギターと4トラックのカセットMTR、ループペダル、そして深いリヴァーブだけで組み立てられた音響は、きらめきと靄が入り混じる夢のような質感をもっており、スコット・コルテスのギターのディストーションはノイズでありながらも優しく、メリッサ・アルピン・ドゥイムストラの声は言葉を超えた気配として響く。バンドサウンドとしてのビートを放棄し、甘美な轟音とウィスパーヴォイスだけが響き続ける耽美的な世界。今回のリイシューではリマスターに加え、当時の未発表曲5曲を追加。歌詞やポストカードも付属し、作品の内奥により深く沈み込める仕様となっている。轟音のまぶしさではなく、むしろ、目を閉じることを促すようなこの音楽は、単なるシューゲイザーの名盤にとどまらず、私的な夢の記録でありながら、今なお多くのリスナーを包み込む無限の広がりを感じさせる。
シューゲイザーとアンビエントの境界を探るlovesliescrushingの名作デビュー作『Bloweyelashwish』。1992年、12弦ギターと4トラックのカセットMTR、ループペダル、そして深いリヴァーブだけで組み立てられた音響は、きらめきと靄が入り混じる夢のような質感をもっており、スコット・コルテスのギターのディストーションはノイズでありながらも優しく、メリッサ・アルピン・ドゥイムストラの声は言葉を超えた気配として響く。バンドサウンドとしてのビートを放棄し、甘美な轟音とウィスパーヴォイスだけが響き続ける耽美的な世界。今回のリイシューではリマスターに加え、当時の未発表曲5曲を追加。歌詞やポストカードも付属し、作品の内奥により深く沈み込める仕様となっている。轟音のまぶしさではなく、むしろ、目を閉じることを促すようなこの音楽は、単なるシューゲイザーの名盤にとどまらず、私的な夢の記録でありながら、今なお多くのリスナーを包み込む無限の広がりを感じさせる。

大名門〈PAN〉からは、VENERAの2作目『EXINFINITE』が登場。本作は、KornのギタリストJames "Munky" Shafferと作曲家、映像作家のChris Huntによるプロジェクトの深化形で、前作で構築したシネマティックかつ多次元的な音世界をさらに進化させ、より重く、暗く、打楽器的な音像を追求している。また、ノイズやリズムの強度だけでなく、内面へと向かう神秘的・情緒的な要素も色濃く反映されているのが特徴。ノイズまみれのビート、破壊的なシンセ、ギターに、FKA twigs、Dis Fig、Chelsea Wolfeらの幽玄で情感豊かなボーカルが交錯し、ポスト・インダストリアル、ゴシック、テクノ、ノイズ、サイファイ・サウンドデザインなどが溶け合い、感情と物質の境界が曖昧になったような没入的世界を描く。ジャンルを越境しながら、闇と美しさが渦巻く、未来的で感情むき出しのサウンド!

前作『All Is Sound』は弊店でも大ヒット!ポートランドの「偉大なブラックミュージック」の最高の実践者、The Cosmic Tones Research Trioによる2作目のアルバムが登場!前作で打ち出された静けさ、空間性、ロングトーンの美学を引き継ぎつつ、さらにリズム的な力強さと肉体性が加わっており、表面的には癒しやメディテーショナルな穏やかな音楽に聴こえるが、じっくり耳を澄ませると、ルーツ音楽やスピリチュアル・ジャズの語法が下地にしっかり息づいているのがわかる。編成は、チェロ、サックス、ピアノ、フルートというアコースティックな楽器群で、即興を中心に据えながらも、それぞれの音は丁寧に間を取り、余白や沈黙までも音楽として活かすようなアンサンブルになっている。祈りや対話の気配がありつつ、ときにはゴスペル的な魂のこもったメロディが立ち現れ、またある瞬間にはブルースの深みを思わせるしみじみとしたトーンも顔を出す。精神性と有機的なグルーヴやうねりを両立する、心の静寂を求める人にも、深い音楽的な探究を求める人にも響く傑作。

著名な作曲家、ボーカリスト、マルチ・インストゥルメンタリストであるJessika Kenneyのソロ・アルバム『Uranian Void』。Eyvind Kangとのコラボレーションや映画『ミッドサマー』での幽玄な歌声でも知られるが、本作ではより内面的で実験的な領域に踏み込んでいる。シアトルの音響魔術師 Randall Dunnプロデュースのもと、ガザル(ペルシャ詩歌)、水中マイクによる環境音、サイン波、そしてケニー自身のテキストや声が緻密に重ねられ、音楽というよりも声と空間の儀式のような仕上がりになっている。ここで聴ける声はメロディを運ぶだけでなく、倍音や響きを操ることで、音響そのものを変容させており、透明で揺らめくサイン波や水中の録音が、その声を包み込み、時間感覚や聴覚の焦点を少しずつずらしていく。宗教音楽や詩の朗唱に近い霊性を帯びた、深く心に響くサウンドを生み出している。Kenneyが長年探究してきた声と空間、外界と内面の響き合いが、純度高く凝縮された作品になっている。
シドニー拠点の韓国系ドラマー&即興奏者 Chloe Kim によるソロ・パーカッション作品。本作では Randall Dunn が録音・ミックスを担当しており、Kim のテンポを自在に操る技巧や、トーンの探求が前面に出ている。メロディを演奏するわけではないが、調律されたゴングや擦られたシンバル、バランスの取れたタムなどから、幽かなメロディの輪郭が浮かび上がる。アルバム名や曲名には韓国の民間伝承が反映されており、韓国の「ラットスネーク(豊穣の象徴)」に由来。Kim が生まれる前に母親が見た夢ともリンクし、パーカッションの呼吸や変拍子のリズムにも民俗音楽の影響が息づいている。ジャズやフリー・インプロヴィゼーションに根ざしつつも、個人的で独自性のあるリズム感覚が随所に見られるのも魅力的。演奏は高度に即興的でありながら、韓国民謡的なリズム感覚や豊かな音色の探求が随所に組み込まれた、個性あふれるソロ・ドラム作品!
