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前衛音楽集団Musica Elettronica Viva(MEV)の中心人物として知られ、50年以上にわたり電子音響と環境音の境界に身を置き続けてきたAlvin Curranによる、1970年代に録音された未発表テープ素材をもとに、現在の視点で再構築した新作にしてアーカイブ作品『ARCHEOLOGY // ARCHEOLOGIA』。収録されているのは、VCS3やSergeモジュラーによるアナログ電子音、環境音の断片、テープの揺らぎといった70年代当時の素材を、Curran自身が現在の耳で再編集した2曲。「Le Serra」では、アナログ特有の不安定な揺れが長い時間の層を描き、電子音の粒子がゆっくりと浮かび上がる。「Othello By Night」では、環境音のコラージュとドローンが交差し、遠景と近景が入れ替わるような空間が広がる。Curranの作品に通底する、音を配置するセンスの鋭さは健在で、音数は決して多くないが、ひとつひとつの音が長く尾を引き、空白の時間が音の意味を変えていく。1970年代の未発表素材を未来へ向けて再構築した重要な一枚。
40年以上にわたり、自作楽器Long String Instrumentの探求を続けてきた作曲家/パフォーマーEllen Fullmanの最新作『Elemental View』。本作は100本以上の長大な弦を空間に張り巡らせ、その空間全体を楽器として扱うインスタレーション作品を録音したもの。さらに、ギターやサントゥール、パーカッションを演奏するThe Living Earth Showが参加し、Fullman作品としては珍しいアンサンブル構造が導入されている。Long String Instrumentは、約24mを超える弦を指先で擦りながら歩くことで演奏される。弦の長さの違いによって生まれる倍音は、空間の中で複雑に干渉し合い、音が光の帯のように揺れ続ける独自の音響を生み出す。音がどのように生まれ、どのように空間を移動し、どのように変化していくのか、そのプロセスがそのまま音楽になるというLong String Instrumentの核心を、アンサンブルとの対話によってさらに拡張した意欲作。
オクラホマを拠点にアンビエント、フォークロア的電子音楽を探求してきたBrad E. Roseによる、落ち葉を踏む音という最小の物音から始まった、環境と人間の関係性をめぐる音響作品『The Sound Leaves』。アルバムの前半は、来場者が落ち葉の上を歩くと、その音がマイクで拾われ、リアルタイムで処理され、木立の中に設置されたスピーカーから響き返されるというインスタレーションの録音をもとに構成。乾いた葉が擦れる微細なノイズ、足音のリズム、風の気配。それらが電子処理によって柔らかく広がり、音は大きく変化しないようでいて、細かな揺らぎが積み重なり、時間の流れそのものが音として感じられるよう。後半の「In Collapse」は、同じ素材を1年後に再処理したもので、音像はより暗く、深く沈み込む。遠くで鳴る低周波の揺れ、葉の擦過音が影のように漂い、環境の変化が音の質感に刻まれていく。音を通して環境の変化を聴くという体験を形にした、サウンドアート的作品。

Inga Copeland名義から続くLolinaの最新作『Monopoly of Mistakes』。乾いたドラムマシン、303系のうねるベースライン、素っ気ないほどミニマルなシンセが骨格を作り、都市の空気をそのまま閉じ込めたような冷たい質感が全編を貫く。ヴォーカルは語りと歌の中間にある距離感のあるスタイルで、感情を抑えた声がビートの隙間に配置されることで、独特の緊張感が生まれている。ビート主導の曲と短い音響的ミニチュアが交互に現れ、断片的な構造で進むが、ミニマルな設計が一貫しているため、作品全体がひとつの世界としてまとまる。様々な音楽性を吸収しながらも、どれにも完全には属さないLolinaの音楽そのもの。
タージ・マハル旅行団やFluxus、さらにマース・カニンガム舞踏団での活動など、前衛音楽の歴史に深く刻まれた小杉武久の探究心が最もストレートな形で結晶化した、1989年ニューヨーク録音のソロ作品 『Violin Improvisations』。ヴァイオリンという単一の楽器から驚くほど多層的な音響世界を引き出しており、擦過音、倍音、微細なノイズ、澄んだ高音、弱音のささやき、それらがディレイによって重なり、まるでひとりでアンサンブルを構築しているかのような立体感が生まれる。旋律を奏でるというより、音が生まれては消える瞬間そのものを扱う即興で、音の質感・空気の振動・空間の響きがそのまま作品の主題になっている。微妙に揺れる音程や間の扱いに漂う東洋的な感覚と極めて抽象的が両立した、小杉武久という音楽家の核心に触れられる重要作。 ※入荷時よりケースにヒビがございます。予めご了承くださいませ。

アイルランドの伝統音楽の常識を覆すダーク・フォーク・バンド、Lankumのフロントマンであり、その卓越した音楽的探求心とアイルランドの呪われた歴史、伝承を受け継ぐIan Lynchによるソロ・プロジェクトOne Leg One Eyeによる、前作『…And Take The Black Worm With Me』で提示した、アイルランド神話の深層を掘り起こすドローン・フォークを、さらに強烈な形で押し広げた2ndアルバム『CRONE』。本作は、アイルランド神話に登場する主権の女神をテーマに制作され、怒り、狂気、美しさが同居する儀式的で呪術的な音世界が展開。重く濁ったドローンの層に、語り・祈り・呪文のような声が絡みつき、伝統的なフォークの枠を完全に逸脱した、神話の深層へ潜る音楽として成立している。ゲストにはアイルランド演劇界の重鎮Olwen Fouéréが参加。老いた女神の化身のような圧倒的な声が、作品全体に霊的な緊張感を与えている。
徹底したアヒンサーを提唱実践、「ノイズ」の枠を超越したオルタナティヴな表現を試み続けるジャパノイズ伝説、Merzbowに、Mats Gustafsson、Balázs Pándiというフリー・ジャズ界の巨星たちを加えた伝説的なトリオの最新作『CUTS CUT』。長年のコラボレーションが到達した、ノイズ×フリージャズの極限的インプロ作品。ノイズとフリージャズの境界が完全に溶解する45分の巨大な即興の塊。

アンビエント・映画音楽界の知られざる巨匠
マイケル・ブルックの2作品が2枚組で〈4AD〉より奇跡のリイシュー
アンビエントの先駆者ブライアン・イーノをはじめ
ロジャー・イーノ、ダニエル・ラノワら豪華メンツが参加
U2の楽曲などに使用された改造ギターとして有名なinfinite guitarの発明者としても知られるカナダ人ミュージシャンのマイケル・ブルック。1992年に〈4AD〉から発表した『Cobalt Blue』は、静かに、息をのむようなサウンドスケープで構成された、時代を超える名作として、年月を経て再評価されている。同作には、アンビエントの先駆者ブライアン・イーノ、作曲家/マルチ奏者としてロジャー・イーノ、そしてグラミー受賞プロデューサーのダニエル・ラノワが参加。同年後半に録音された『Live at the Aquarium』は、ロンドンで行われた貴重なソロ・パフォーマンスを収録したもので、マイケル・ブルック特有の催眠的なサスティン、広がりのあるテクスチャー、そして大気のような深い音の世界を捉えている。
85年のデビュー・アルバム『Hybrid』から92年のセカンド・アルバム『Cobalt Blue』リリースまでの7年間。マイケル・ブルックはブライアン・イーノのレーベルでありマネジメントでもある〈Opal〉と契約し、故郷のトロントからイギリスへ移住。イーノやラノワとのコラボレーション、ジョン・ハッセルとのツアー、ロジャー・イーノやハロルド・バッド、ララージらと共に伝説的なライブ・プロジェクト Opal Evenings に参加しながら、ステージでのループ処理、シーケンサーや音響処理における実験的な新境地を切り開いた。しかし、『Cobalt Blue』が完成した直後、〈Opal〉は配給契約を失い、リリースは中止。マイケル・ブルックは当時について「〈4AD〉のアイヴォ・ワッツ=ラッセルと友人だったので、彼がアルバムを出してくれると申し出てくれた。しかし、リリース後も長い間、十分な反応は得られなかった。音楽プレスがジャンル分けしにくいものを避けていたから...。だから当初は世間の評価がわからなかったんだ。まるで荒野で泣くギターのようだった。」と語っている。同期間、ピーテル・ノーテンと共作の〈4AD〉アンビエントの名作『Sleeps with Fishes』(87年) をはじめ、精力的な活動の中でヌスラト・ファテー・アリー・ハーンやユッスー・ンドゥールらワールド・ミュージックの巨人たちともコラボレーションを行った。それらの膨大な刺激と経験を吸収していた結果生まれたのが『Cobalt Blue』であり、リリース当時は十分に評価されなかったものの、年月を経てその名声と影響力は高まり続け、卓越したキャリアにおける重要な転換点であることが証明されている。
その後、1996年にはヌスラトとのアルバム『Night Song』でグラミー賞にノミネート。2008年には名作映画『Into the Wild』のサウンドトラックでゴールデン・グローブ賞にノミネートされた。『El Infierno』では2011年ハバナ映画祭の最優秀音楽賞を受賞。映画音楽作曲家としても卓越している彼は、50本以上の映画に携わっている。2024年にプロデュースしたヌスラトのアルバム『Chain of Light』は、Guardian紙のワールド・ミュージック・アルバム・オブ・ザ・イヤーに選出。もちろん、これらの輝かしい功績は、『Cobalt Blue』の制作を始めた頃には、まだ未来の話だった。『Cobalt Blue』で生まれたサウンドは「厳密にはアンビエントではない」とマイケル・ブルックは語る。よりリズミカルでメロディアス、彼はそのマテリアルを Wordless Songs (言葉を持たない曲) と表現している。この推進力と変化への志向は、優先順位の転換 ーある種の反逆心ー を表していた。
新生TRANSONIC RECORDS初の単独作となる、コンピレーションアルバム『TRANSONIC COMPACT DISC 01、02』の中でも異彩を放っていたTMZ。
そのテクノ史におけるオーパーツとも言える存在が、知られざる過去と現在のミッシングリングを繋げる、ファーストアルバム。
あの頃の「教授」を思わせる、煌めく80年代テイスト溢れるシティ/テクノポップを基調に、90年代初頭、TRANSONICの前身レーベルTRIGGERからリリースしたTAPE、コンピレーションに収録されていたテクノポップの隠れ名曲Yokohama Machine、永田一直のユニットORGANIZATIONで共作したスペーストランスSpace Ballのリメイクの他、アシッドハウス、ピアノアンビエントで構成された、テクノ史のオーパーツとも言える知られざる過去と現在のミッシングリングを繋げる、重要なエレクトロニック・アルバムである。
TMZ PROFILE (ティーエムジー)
80年代中頃より活動を始める。その時期、YMOなどのマニピュレーターで知られる藤井丈司氏等が設立した音楽制作会社TOPや、ヨロシタミュージックのローディーをしていた事で、様々なプロのレコーディング現場を経験する。
その後、当時では珍しかったシンセサイザー、打ち込み機材専門の中古楽器店ジャンクションミュージックのバイヤーを務める。
80年代末期、現在では謎大き幻のテクノユニットと称される、NINA-NOHOを結成。TRANSONIC RECORDSの前身に当たるTRIGGER LABELに加わり、ライブアクト、TAPEのリリース、コンピレーションCDへの参加などの活動を行った。
1993年、バンコクへ移住。一旦、音楽活動を休止する。
その間の1996年に、レーベルオーナーの永田一直によりコンパイルされたAMBIENT CLASSICS 1990-1992をTRANSONIC RECORDSよりリリース。
このアルバムは近年の再評価により中古価格が高騰し、90年代ジャパニーズテクノの名盤とされる。
2010年代、20年以上のブランクがあったが、持ち前のセンスとスキルで、PCのDAW、ソフトシンセを習得し活動を再開。
2017年、オランダのEDMレーベルSPINNIN'RECORDS主催のコンテストで8位に入賞。
2024~2025年、世界的再評価により復活したTRANSONIC RECORDSのコンピレーションアルバム2枚に参加。
2026年には初のソロアルバムFUTURE PROOFを発表。
テクノ史のオーパーツとも言える知られざる過去と現在のミッシングリングを繋げる存在として、更なる世界的活躍が期待される。

シカゴの実験音楽家Kevin Drummが長年にわたり制作してきた音源をまとめた6枚組アーカイヴ作品 『The Mild Temper』。ドローン、マイクロサウンド、エレクトロアコースティックの領域を徹底的に掘り下げてきたDrummの長期的な創作の記録とも言える内容で、マスタリングは盟友Jim O’Rourkeが担当、微細な音のニュアンスが鮮明に立ち上がる仕上がりになっている。静かなドローンがゆっくりと形を変えたり、粒子状のノイズが空気の中で揺れたり、音が動いているのか止まっているのかの境界を漂うような感触が続く。長時間聴くほど、ごく小さな変化が大きな出来事のように感じられるのがDrummらしい。30年以上かけて磨き上げられた核心を6枚に封じ込めた現代実験音楽の決定的アーカイヴ。

1947年、Alan Lomaxがニューヨークのデッカ・スタジオにBig Bill Broonzy、Memphis Slim、Sonny Boy Williamsonらを招き、ブルースの起源と黒人の現実を語り、歌わせた歴史的録音『Blues in the Mississippi Night』。当時、彼らが語った内容、ミシシッピ・デルタの生活、ジム・クロウ法下の暴力、労働キャンプや刑務所農場の実態はあまりに率直で危険だったため、3人は偽名でクレジットされたほど。音楽的には、Broonzyの乾いたギター、Memphis Slimの都会的でありながら土の匂いを残すピアノ、Williamsonの鋭くも祈りのようなハープが交互に現れ、語りと歌がひとつの流れとして続いていく。ブルースの曲というより、土地の温度、身体の記憶、沈黙の重さがそのまま音になったような質感で、語りの後に続く歌は言葉の余韻を抱えたまま響き、音楽が慰めではなく証言として機能しているのがわかる。ブルースの源流と黒人の現実を記録した、音楽史、社会史の両面で価値ある復刻。

フィラデルフィアを拠点に活動する音響作家Jason Calhounによる、中世神秘家Julian of Norwichの同名著作へのオマージュをタイトルに掲げ、日常の中に潜む神聖さをテーマにした全14曲のアンビエント作品『Revelations of Divine Love』。これまでの長尺ドローン中心の作風から一転し、本作は1〜2分台の短い断片が連なる構成。Calhounがペンシルベニア州の自宅周辺で録音した素材や、微細な電子音、柔らかなノイズを重ね合わせ、小さな情景がふっと立ち上がっては消えていくような質感が続く。音の余白の扱いが非常に巧みで、静けさの中に淡いメロディやパルスが浮かび上がる瞬間が印象的。短い曲の連なりが、まるで小さな祈りのように響く。

「言葉が意味から解放され、音として漂い始める」というコンセプトで、話し言葉の抑揚や呼吸をそのまま音響素材として扱う独自の手法を中心に据えた、ニューヨーク拠点の作曲家Ben Vidaによる『Oblivion Seekers』。Nina Dante、Christina Vantzou、John Also Bennett、Félicia Atkinsonらが声の出演で参加。複数の声が重なり合い、ジェンダーやアクセントが流動的に混ざり合うことで、誰の声でもあり、誰の声でもない集合的な語りが立ち上がる。電子音は控えめに配置され、低いドローンや微細なノイズが声の動きを支えることで、静謐でありながら幻覚的な空間が広がる。静けさの奥で声が多層に漂い、言葉と音の境界がほどけていくその繊細な瞬間をとらえた、声のための実験音響作品。
Thee Sinseersのリーダーとして知られるJoey Quiñonesによるソロ・アルバム『Inna Soul Steady Situation』は、イーストLAのストリート文化と、彼のルーツであるチカーノ・ソウル、そしてロックステディが溶け合った、温度と情緒に満ちた一枚。彼が育った街の空気、近所のレコード店、仲間の家のリビング、そんな日常の風景がそのまま音に染み込んでいるような、生活の匂いが漂う。ホーン、オルガン、ギターが柔らかく絡み合い、甘くメロウなソウルにジャマイカ音楽のゆったりとした空気が加わることで、懐かしさと新しさが同居する独特のムードが立ち上がる。どの曲も、彼の代名詞である多重コーラスによる完璧なハーモニーとアナログ録音の温かさが息づき、現代のヴィンテージ・ミュージックとして確かな説得力を持っている。甘いメロウネスを愛するすべての方に。

初期Celerの美学を純度高く刻んだ2007年の自主制作CDrドローン・アンビエント作品『Red Seals』。Will Longによるテープ編集、ループ、ピアノ処理と、Danielleによるフィールド録音やストリングスが溶け合い、静止しているのに、かすかに呼吸しているかのような音のレイヤーを形成。テープの揺れや微細なノイズがそのまま残されており、デジタル処理では得られない物質的な静けさが作品全体を包み込む。濁りと透明さが同居する音像は、水面のゆらぎや曇った記憶の断片を思わせる。Celerというプロジェクトの最も純粋で、最も無防備な初期衝動を、詩情とともに音像化した、カルト的な人気を誇る特別な一枚が待望の再発!

Will Longが継続してきたディープ・ハウス・シリーズ最新作『Long Trax 5』。ローズ、シンセ、リズムマシン、スペースエコー、スプリングリバーブなど、すべてハードウェアのみで制作された6曲を収録し、シリーズの核であるアナログの温度感と長い時間軸の反復がさらに深化した一枚。本作には3名の新しいナレーターが参加し、Long Traxシリーズの特徴である 社会性・思想性を帯びた語りが、ミニマルなビートの上に静かに重ねられていく。音は極限まで削ぎ落とされ、ローズの柔らかなコードと深いキックがゆっくりと揺れ続ける。Celer名義での作品で培われた余白の感覚が、ここではハウスのフォーマットの中で自然に息づき、アンビエント的な空気とモノトーンのディープ・ハウスが交差し、瞑想的で内省的なグルーヴが全編を貫く。
日本国内限定盤(100枚限定)。スローモーション・ダブの独自路線を確立するフランスのアンビエント、エレクトロ・ダブ・デュオFroid Dubによる、自身の美学をさらに深化させた最新作『Positive And Natural』。全8曲の平均BPMは約85前後と極端にスローモーションながら、808キック、303アシッド・ベース、そしてテープディレイの揺らぎが三位一体となり、静けさの中にドライブ感が宿るミニマル・ダブを構築。タイトル曲「Positive And Natural」のメロディカ的ニュアンスから、「Love」「No Sense」で聴けるうねるアシッド・ダブまで、クラシックなダブの精神と現代エレクトロの質感が自然に溶け合う。音数は極端に少ないのに、テープディレイの揺らぎや微細な残響が空間を満たし、静けさの中に情報量が宿る。トリップホップ/ニューエイジ/DIYダブの流れを感じさせる、温かく漂う質感と実験性が共存する、充実作。

英国の作家、音楽ジャーナリストであり、ポストパンクから電子音楽までの幅広いコンピ企画で知られるJon Savageが監修した、1966〜72年サンフランシスコ・サイケデリックの核心をまとめた『Jon Savage's SF Sike 1966-72』。The Beau Brummels、Quicksilver Messenger Service、Moby Grape、Skip Spence、Santana、Sly & The Family Stone、Grateful Deadなど、当時のシーンを象徴するアーティストを網羅し、フォーク寄りの柔らかいサイケからブルース・ロックの荒々しさ、ジャム・バンド的な長尺ものまで、サンフランシスコ特有の多様性を一枚で体験できる内容。音の質感は一貫して開けた空気を持ち、乾いたギター、ゆるやかなテンポ、広がる残響が特徴。演奏には余白が多く、ベースやドラムが自然に揺れながら、ギターやオルガンが隙間にふわりと入り込む。理想主義や自由の感覚がそのまま音に刻まれたような、当時のムードがよく伝わる。サイケ黎明期から、幻想が薄れ始めたアフター・サイケまでを含む選曲で、時代の変化を音で追えるのも魅力。Savageの資料性の高いライナーノーツと合わせて、サンフランシスコ・サイケの歴史を読むためにも機能しそうな一枚。

Sun Raの希少な未発表のアーカイブ音源を、Merzbowが電子ノイズの極限まで再構築した異形の作品『Strange City』。2016年にLP版とCD版で内容が分かれていた音源を、今回の再発で初めて統合。Sun Ra Estate公式ライセンスのもと、Sun Raとノイズが交差する特別タイトル。砂嵐のような高域、地鳴りのような低域、断続的なフィードバックが立体的に押し寄せるMerzbow特有の飽和した電子ノイズの奔流の中で、Sun Raのホーンの破片やパーカッションの影が一瞬だけ浮かび上がり、宇宙的ジャズの断片がノイズの海で点滅する。ジャズのリズムやモチーフは輪郭を保たず、幽霊のように現れては消え、Merzbowの電子処理によって別の次元へ引きずり込まれる。長尺のノイズ組曲として機能する構成で、Granular Jazzシリーズはジャズの粒子を電子ノイズで増幅、変形し続ける抽象的なジャズの再解釈としても聴こえる。Sun Raの宇宙的ムードとMerzbowの破壊的ノイズという絶妙な取り合わせに、企画した〈Cold Spring〉の采配が光る、唯一無二のコラボレーション作。
フリージャズ、スピリチュアルジャズの重要人物Byard Lancasterが1974年にパリで録音した名作『Exactement』が、〈Souffle Continu〉による2LP仕様で復刻。キャリアの中でも特に実験性の高い内容で、ピアノ、アルト/ソプラノサックス、フルート、バスクラリネット、さらにはOctavoiceまで自在に持ち替えるLancasterの創造性が凝縮された作品。霊性を帯びたピアノと熱量の高いサックスが長尺の中でうねり続け、スピリチュアルジャズの高揚とフリージャズの奔放さが同じ軌道で響く。曲によってはサックスに電子的変調が施され、アコースティックと電子処理が交差する異様な質感が際立つ。Keno Spellerのパーカッションも儀式的な反復から爆発的な瞬間まで幅広く、Lancasterの多楽器的アプローチを支える重要な存在となっている。〈Palm Records〉期の濃密さと大胆さを象徴する2CD。

アシッド・ハウスとインド古典ヒンドゥスタニ音楽〜ラーガの奇跡的合一。近年ではGlass Beamsがカヴァーする等で益々人気高騰中で、オリジナル盤はインド国内でも18万円は下らない価格で取引されている、あのインド産アシッドハウス名盤が遂に公式リマスター再発!
アメリカでハウスが誕生する以前に、実は既にインドにアシッドハウスが存在していた物的証拠となるにわかには信じがたい物件で、Chip E - Jack Trax"や"Phuture - Acid Tracks"(1985)よりも3年前の1982年に発表されていた作品。1981年に発売直後のTB-303等をシンガポールで入手した後にムンバイへ持ち帰り、独自に操作方法を模索し最終的にそれらの同期方法を発見し、TR-808やTR-303、Jupiter-8等を駆使したアシッド・サウンドを実現。
本人も欧米圏のハウス等は聴いた事が無かったとコメントしている通り、ハウスという音楽自体が認知されていなかった時代にもちろんそんな概念がインドに存在したはずはなく、シンセサイザーを用い新たなダンスミュージックを作り出そうというクリエイティブな精神が生み出した奇跡的フライングとも言える驚愕の内容となっています。未公開写真多数とライナーノーツを掲載した36Pブックレット付属。MUST!
国内盤CD(解説書封入)2025年に20周年を迎え、2026年9月にも開催が決定しているエイドリアン・シャーウッド主宰のDUB SESSIONS。今回はエレクトロニック・ミュージックの名門〈Warp Records〉の重鎮にして象徴的存在の一人、ナイトメアズ・オン・ワックスを迎えることが発表されており、ダブ〜エレクトロニック〜クラブミュージック・ファンを幅広く魅了すること間違いなし!そんな話題のイベント開催を記念し、エイドリアン・シャーウッドが、2023年にDUB SESSIONSに出演したアフリカン・ヘッド・チャージ、そしてサウス・ロンドンの新鋭ジャズ・コレクティヴ、スピーカーズ・コーナー・カルテットと組んで制作したEP『Barbican Heights』がリリース!もともとは今年2月にロンドンのバービカン・センターで開催されたDUB SESSIONSに合わせてデジタル配信されたもので、今回初めてCDでも発売される。
ウィッカー・スタジオにて、即興のセッションをベースに、たった1日でレコーディングされたという本作は、DUB SESSIONSの精神を反映されるかのように、ダブ、ジャズ、エレクトロニック、アフロビートなど、多様な音楽世界を横断。3組のアーティストに加え、昨年のDUB SESSIONSにエイドリアン・シャーウッドのバンドメンバーとして出演したプライマル・スクリームおよびファット・ホワイト・ファミリーのアレックス・ホワイトも参加。アフリカン・ヘッド・チャージの名曲「Wicked Kingdom Of This Earth」とスピーカーズ・コーナー・カルテットの「Topanga」を即興をベースにリワークしているほか、セッション中にゼロから生み出された2曲の新曲も収録されている。

作家本人の自主リリースCD版。独学でチェロを学び、関西を中心に活動しながら即興演奏から舞台音楽、現代美術家への音源提供などなど多岐に亘る活動を行い、近年は日野浩志郎(goat、YPY)とのDUOプロジェクト「KAKUHAN」や、オーストラリアのユニット「CS+Kreme」のアルバム『The Butterfly Drinks The Tears Of The Tortoise』にも参加するチェリスト、中川裕貴が発表する最新作『Stills and Remains』。すべての音をチェロ1台のみで構築した徹底した作品で、弓の摩擦、打楽器的ノイズ、深いドローン、微細な倍音という、チェロという楽器の枠を越え、電子音楽にも聴こえるほど多彩なテクスチャが立ち上がる。演奏者の身体の近さがそのまま音像に刻まれ、演奏という行為そのものを聴かせるような生々しさが印象的。楽器へのフェティッシュなまでの探求と電子音楽的な構成力のバランスが絶妙な極限のチェロ・ドキュメント。マスタリングはStephan Mathieu、録音は甲田徹が担当。微細な音の粒子までを逃さない本作のストイックな音響設計を補完する、完成度の高い一枚。

ニューヨークのレーベル〈OST〉から登場した、ロシア出身のプロデューサーmu tateによるアルバム『life of mu』。個人的な記憶と物語を綴る私的なサウンド・ジャーナルのような作品で、友人たちによる語りが3つ挿入され、環境音、映画的サンプル、ローファイなビートが夢の断片のように浮かんでは消える。Ben Bondyを迎えた「memory of a memory」では、アンビエントの霧の中からギターと声が滲み出し、後半にはエモーショナルなノイズの高まりが訪れる。アンビエントの静けさに、IDM的なリズムやエレクトロニカの温度がそっと差し込まれる、DIYな美学と日記のような語りの親密さを併せ持った一枚。
