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カナダ・トロントを拠点に活動するKevin & Patrick Cahillの兄弟デュオEast of the Valley Bluesによる、アコースティック・ギターという最小限の編成でアメリカン・プリミティヴの精神を現代的に再解釈した一枚『Blood Blood Song』が、お馴染み〈Death Is Not The End〉から登場。Kevinはナイロン弦と時にプリペアド、Patrickはスチール弦を担当し、左右に振り分けられた録音が二人のギターが向かい合い、中央で出会うような立体的な音像を作り出す。音楽は、John FaheyやRobbie Bashoの系譜に連なりながらも、より抽象的で、より映像的。歴史や物語を想起させるタイトルが多く、曲ごとに異なる情景が静かに流れ込んでくる。ナイロン弦のパーカッシヴなアタックと、スチール弦の澄んだ響きが絡み合い、会話するように進むアンサンブルが核。抑制された最小限の動きの中に、濃密な蠢きを内包するかのような音像は、アメリカン・プリミティヴの深みに潜り込んでいくかのよう。

お馴染み〈Death Is Not The End〉による、オスマン帝国崩壊後の激動期に録音されたガゼルと呼ばれる声楽即興の貴重な記録をまとめたコンピレーショ『The Pain of Separation: Turkish Gazels, 1926–1935』。1926〜35年に残された78 回転盤から丁寧に復元された音源で、Hafız Sadettin Kaynak、Hafız Kemal Bey、Hoca Izak Algaziなど当時の名歌手たちの歌唱を収録。ガゼルは、オスマン古典音楽の伝統に根ざした旋法マカームに基づく声楽即興で、伴奏がほとんどない声だけの芸術とも言える形式。音楽は、声が空中で揺れ、舞い、泣き、祈るように響く。メリスマを多用した歌唱は、まるで声そのものが楽器のように自由に動き、息遣い・震え・間合いが音楽の流れそのものを現前している。ギリシャのアマネスやレベティコと地続きの節回しも多く、国境を越えた地中海のブルースとして聴こえる瞬間も。声の芸術が持つ深い情念と静かな祈りが刻まれたスピリチュアルな歌の数々。
現行エクスペリメンタル/ドローンのアイコン的アーティスト、スウェーデンの作曲家/オルガニストAnna von Hausswolffが2020年に発表した、声もバンド編成も排し、巨大なパイプオルガン一台のみで構築された、彼女のキャリアの中でも特異な位置を占める作品『All Thoughts Fly』。録音はヨーテボリのGOArt Organ Centerに設置された北欧最大級のパイプオルガンを使用。歴史的オルガンの構造を研究し再現した特別な楽器で、その複雑な倍音と空間共鳴が作品全体の核となっている。イタリア・ボマルツォの奇怪な彫像と迷宮的な庭園のあるSacro Boscoをインスピレーション源として、低音の重厚なうねりと、高音の澄んだ響きがゆっくりと交差しながら進む。ミニマルな反復が少しずつ形を変え、石造建築の中を歩くようなスケール感が広がる。歌はないにもかかわらず、フレーズの運びや呼吸がどこか人間的で、声なき歌としてのオルガンが強く印象に残る。静けさの中に強いドラマを宿した、スピリチュアルな一本。
フィンランドのディガー、DJとして知られるDJ Mitmittaによる、1970〜80年代のエチオピア、エリトリアのロックンロール音源のミックステープ。収録されているのは、警察楽団、革命歌、個人アーティストによるローカル・ロックの数々で、Harer Police Orchestra、Tewolde Redda、Getachew Kassa、Tamrat Molla、さらにはLed Zeppelin「A Whole Lotta Love」のアムハラ語カバーまで飛び出す、驚くほど多彩な選曲が並ぶ。乾いたファズギターの荒々しい歪み、ワウのうねり、ブラスの鋭いアタック、土着的な旋律が絡み合い、西洋ロックともアフロビートとも異なる独自のグルーヴが立ち上がる。録音の粗さが逆に魅力となり、当時の現場の空気がそのまま耳に飛び込んでくるような生々しさがある。エチオロック黄金期の熱量をそのまま閉じ込めたミックスは、辺境ロックの奥深さを示しつつ、最高にかっこいいギター音楽としても楽しめる充実の一本。
〈Ultraääni Records〉より、DJ Vera Righteousによるルーツレゲエ、ダブのミックステープ。本作はタイトル通り、A面がLOVE、B面がWARという明確なテーマで構成、A面には、ラヴァーズロックやスウィートなルーツを中心に、柔らかいメロディとソウルフルな歌声が続き、Sugar MinottやJennifer Laraのような温かい質感の楽曲が滑らかにつながる。一方で B面では、Horace AndyやYami Boloなど、社会性やスピリチュアル性の強いルーツ、ダブが並び、重いベースラインと深いエコーが聴かれる。甘く肉感的な「LOVE」と、シリアスでスピリチュアルな「WAR」という、レゲエ、ダブカルチャーが持つ二面性を対照的に配置しながらも一本の物語として流れる構成力が光る。レーベルのカタログの中でも特に人気が高く、初出時は即完売した幻の一本として知られる、小さくも濃密なミックステープ。

フィンランドのアンダーグラウンド電子音楽シーンで注目を集めるJuuso Paasoによるソロ名義Tulevat Käsitteetのカセット作品。全楽器をJuuso Paasoが担当し、ローファイなテープの質感とアナログシンセの揺らぎが溶け合う、手触りのある電子音楽といった趣で、ざらついたノイズの中からメロディがふっと立ち上がったり、サックスが室内楽のような静けさをもたらしたりと、抽象性と親密さが交互に現れる独特のバランスが魅力。ムーミン語彙をもじった曲名など、フィンランドらしいユーモアが漂い、遊び心と実験精神が同居した奇妙なポップ感も感じられる。どこかエチオピアの音楽のような正体不明な感覚もあり、フィンランドの地下深く、サイケデリックでドリーミーなD.I.Y.音楽をひっそりと育むコミュニティに想いを馳せたくなるような一本。
エチオピアの80〜90年代カセット文化から、歌手が席を外した時にバックバンドが延々と演奏していたような、歌もののB面やインスト曲を集めたコンピレーション。収録されているのは、カシオ・キーボード、安価なドラムマシン、シンセブラスなどによるローファイなシンセ・ジャムで、素朴な機材が生む 埃っぽくも温かいエチオ・ミニマルが魅力的。結婚式場、街角のバー、深夜のスタジオ。そんな生活の匂いがそのまま閉じ込められたような音像で、単純な反復フレーズが続くうちに、ゆるやかなトランス感と独特の郷愁が立ち上がる。Yishak Banjaw、Zerihun Wdajo、Elfenesh Kano、Tewodros Mekonnenなど、本来は歌もの作品で知られるミュージシャンの裏の演奏が主役として再評価されるのも面白い。当時標準的だった60分テープの余白を埋めるためのジャムに過ぎなかったものが、こうしてまとめられることで、影に隠れていたミニマルで催眠的なエチオ・エレクトロニクスという並行世界が浮かび上がる。かつて存在した豊かな文化へと直接繋がる、カセットの醍醐味にあふれた一本。

東京を拠点に活動し、Delphine Dora、Aidan Baker、大友良英、Phewらとの共演でも知られる即興演奏家 Ayami Suzukiによる最新作『Remnants』が〈Students Of Decay〉限定100本で登場。本作は、2019年に父を亡くしたことを契機に制作が始まった、「存在と不在のあいだ」をテーマにした極めてパーソナルな作品。最小限の機材を用いて自身の内面と対峙する、本人が「儀式のようだった」と語る環境で録音された音は、静かで繊細でありながら、どこか温かく包み込むような余韻を残す。漂う残響、わずかな音の揺らぎ、記憶の影。彼女のヴォイスが層を成し、ディレイやリバーブの中で輪郭を溶かしていく様は、喪失が時間とともに変化していくプロセスそのものを描き出すかのよう。亡き父との対話、あるいは「不在の存在」との共演であることを示唆する、「これはソロアルバムではない」という本人の言葉は象徴的で、哀悼という一言では片付けられない、消え去ったものの残り香であり、今もなお響き続ける魂の祈り。

ブエノスアイレスの電子音楽家Entidad Animadaによる、環境音楽や初期電子音楽からの影響を出発点にしつつ、ループ素材を編集・凝縮して6曲にまとめ上げたカセット作品『Pequeño clima doméstico』。フィールドレコーディングや加工されたテクスチャーが随所に散りばめられ、電子音と生活の気配が自然に溶け合う。曲はどれも閉じた楽曲というより、空間や気分をそっと変えるための装置のようで、聴くほどに部屋の空気がゆっくりと変わっていく。柔らかい電子音のレイヤーが静かに揺れ、外の空気が窓から入り込むようにフィールド音が漂い、アンビエントともBGMとも違う、生活のリズムを整えるための音楽としての魅力が詰まっている。日常の中で気分や、部屋の雰囲気を変えたいときにそっと寄り添ってくれる一本。

自主レーベル〈People’s Coalition Of Tandy〉から発表され、アンダーグラウンドで静かに話題を呼んだDagmar Zunigaのデビュー作が、ついに再発カセット化。Austyn Wohlersのフルート、Zach Phillipsのピアノ、Hayes Hoeyのギターや声といった最小限の構成で、テープの揺れ、部屋鳴り、指先のノイズまでもが楽曲の一部として息づき、録音の物質感と歌の親密さが同じ温度で並ぶ。アコースティック楽器の断片、壊れかけの電子音、日記のように短いスケッチが連なり、夢の残滓を拾い集めたようなアウトサイダー・アンビエンスは、フォークでもノイズでもアンビエントでもない、稀有な作品。Cindy LeeやJoanne Robertson、さらにはLinda Perhacsの幻影までをも連想させる独自の音世界。

6月下旬再入荷。1982年に発表された、ワシントンD.C.の伝説的ハードコア・バンド Bad Brains の衝撃的デビュー・アルバム。シーン全体を揺さぶった金字塔。目も眩むほど速いテンポと鋭いリフで突っ走るハードコア・チューンと、突然テンションを落としてじっくり聴かせるルーツ・レゲエ・ナンバーが共存するのが最大の特徴で、この極端さこそBad Brainsのオリジナリティで、当時のどのパンク・バンドとも違う個性を打ち出している。演奏力の高さも群を抜いていて、HRのソウルフルでアジテーティブなヴォーカル、Dr. Knowの爆発的なギターリフ、Darryl Jeniferのタイトなベース、Earl Hudsonのジャズ畑出身らしい柔軟なドラムが合わさって、とにかく生々しい迫力に溢れている。ハードコア・パンクはもちろん、スラッシュ・メタル、オルタナティヴ、さらにはレゲエやクロスオーバーの領域にまで影響を与えている、まさにハードコアの教科書であり、ブラック・ロックの歴史を変えた一枚。
ベルリンの電子音楽シーンで異彩を放ち続けるErrorsmithが、2005年10月に制作し、自身のウェブサイトでひっそり公開していた伝説的ミックス『Le Trilliardaire Mix』が〈Never Sleep〉より公式再発。ジャンルの境界を飛び越える編集感覚で、Ron Hardyのディスコ・リエディットから、Soundstreamのミニマル・ハウス、South Rakkas CrewやSizzlaのダンスホール、Skeptaのグライム、DJ Deeonのゲットーテックまで、選曲は縦横無尽。しかもそれらが高速で切り替わりながらも、Errorsmithならではの音響的なこだわりによって、ひとつの流れとして成立している。2000年代ベルリンのクラブが持っていた混沌としていてエネルギッシュな空気がそのまま刻まれており、粗さと精密さが同居し、ラフな勢いの中に緻密な構造が潜む。電子音の硬質な反復と、カリブ音楽のリズムが奇妙に接続される瞬間など、Errorsmithのセンスが輝く。売上は国境なき医師団に寄付されるチャリティ作品。
ガバやハードコアの聖地として悪名高かったリッチョーネのクラブCocoricòにおいて、ハウス、バレアリックの桃源郷として伝説的な夜を紡ぎ続けた別館フロアTitilla。1994年4月25日のイタリア解放記念日にそこで録音された、若きDJ Ralfによる幻のライブセット。ガバの熱狂が隣のメインフロアで渦巻く中、Titillaで鳴り響いていたこの伝説の夜がチャリティ作品として復刻。バレアリック、Hi‑NRG、ディスコを縦横無尽に横断しながら、ロータリーミキサーを駆使した ロングブレンドとアカペラの大胆なフェードが織りなす、90年代イタリアン・クラブ文化の熱気をそのまま封じ込めた一作。深夜から早朝へとフロアを再点火するような高揚感、アナログ機材特有の温度感、そして人間味のあるミニマルが共存する、当時の空気をダイレクトに感じられる貴重なライブ録音。収益は女性支援団体Liberamente Donnaに寄付されるチャリティ・リリース。

インドネシア・スラバヤ発のトリオThee Marloesが、Meditationsでもお馴染みの前作『Perak』から2年ぶりの待望の2ndアルバムをリリース。アルバムは全14曲で構成され、英語曲とインドネシア語曲が自然に混ざり合う。バンド自身が「過去2年間の旅路を描いた作品」と語るように、よりパーソナルで成熟した表現が際立つ内容で、60〜70年代ソウルの温かい質感をベースにしながら、乾いたギター、タイトなドラム、柔らかな鍵盤が重なり、都会の夜と南国の風が同居するようなメロウなムードを生み出している。Natassyaの甘く柔らかな歌声はさらに深みを増し、ホーンやコーラスを加えたアレンジが楽曲に豊かな奥行きを与える。世界的に注目を集めるThee Marloesによる、より広がりのあるサウンドと深くインドネシア的な感性をまとった、甘く、メロウで、どこか異国の風が吹くソウル・アルバム。

2023年のセルフタイトル作が幅広い注目を集めたフィラデルフィアのSSW、Greg Mendezが、その勢いを受けてさらに深く内面へと潜るフルアルバム『Beauty Land』。本作は、窓のない自宅スタジオで一人きりでテープ録音されたもので、そのためか、音のすべてが手触りのあるローファイ質感で、まるで目の前でつぶやかれているような深みのある親密さが全編を貫いている。重いテーマを扱い、短い曲の中に、人生の痛みと救いの断片がそのまま封じ込めている。ローファイSSWの素朴さに、ドリームポップが淡くにじむ独特の質感で、トイピアノやキーボードのかすかな揺らぎ、かすかに震える歌声が、夢と現実の境界を歩くような静かな非現実感を生んでいる。短い楽曲が連なる、まるで短編集を読むような構成も魅力的。USインディの現在地を象徴する一枚として、ジャンルを越えて支持されそうな一枚。

カセット版!謎めいたメタルマスクの下に、アンダーグラウンドの伝説となる器量を隠し持つヒーロー。MF DOOMの正式なデビュー作にして、後にアンダーグラウンドラップの最も偉大な声となる謎の人物を再登場させた『Operation: Doomsday』がアナログ再発!DOOMの悲劇的な過去、個人的な興味、大胆な創造性を合一した歴史的傑作。巧みなライムや驚くべきスキームは、風景の中で際立ち、アニメのテーマソング、80年代のソウル、ラップのクラシックなど、彼が触れてきたあらゆるサウンドは、真新しくシュールなものに再解釈されています。どんな困難にも負けず、自分に賭す力を証明するカルト傑作。

ドイツのミュージシャン/作曲家のDaniel Rosenfeldが変名C418で残した、世界的人気ゲーム『Minecraft』の初期サウンドトラック『Volume Alpha』と『Volume Beta』を、2本組カセットとしてまとめたアーカイブ作品。エリック・サティやブライアン・イーノとも比較される繊細なピアノとまばらなアンビエントモチーフによる穏やかで幻想的なサウンドスケープが恍惚もののAlpha、よりダークで内省的な側面もクローズアップされた魅惑のアンビエント/エレクトロニック・ミュージックが収められたBeta。グリーンとレッドのカラーシェルを採用した装丁も相まって、2作を並べて聴くことで、Minecraftの光と影が立体的に浮かび上がるコレクター仕様。

異形の語り口で知られるFatboi Sharifと、掴みどころのない、漂うようなサウンドメイキングのChild Actorが初タッグを組んだ、ラップという形式を越えて心理の迷宮を描くようなアルバムが〈Backwoodz Studioz/Rhymesayers Entertainment〉から登場。Sharifのラップはリズムよりも声の質感や比喩の連鎖に重心があり、寓話・悪夢・断片的な記憶が混ざり合う独特の語り。Child Actorのプロダクションは硬質なビートではなく、アンビエント、インダストリアル、シネマティックな要素が溶け合う水面のように揺れ続ける音像で、Sharifの声を包み込みながら、曲ごとに異なる心理空間を描き出す。2026年アンダーグラウンド・ヒップホップの最前線。
1990年代初頭ニューヨークはスタテン・アイランドから飛び出した驚異のMC集団=ウータン・クラン。1993年発売の衝撃のデビュー・アルバム『燃えよウータン』(原題_Enter The Wu-Tang Clan (36 Chambers)のサンプリングを多用したプロダクション、カンフーの精神性やアイディア、忠誠心、そして真正性に根ざしたウータンの哲学はリリース後瞬く間に話題となり、1990年代ヒップホップの黄金時代を切り拓いた。1997年に『Wu-tang forever』を発売し全世界で600万枚以上のセールスをあげるラップ・アルバムとしては驚異的な記録を打ち立て、ウータン・クランとして不動の地位を築き、その後もソロ活動やコラボレーション作品を通じて、彼らは世代を超えてヒップホップはもちろん、ファッションやカルチャーへも多大な影響を与え続けている。
そんな彼らの最後の来日公演を記念して、衝撃のデビュー・アルバム『燃えよウータン』がカセットで復刻_「Wu-Tang Forever」の精神のもと、彼らのレガシーがカセットで
蘇る。

韓国・ソウルを拠点に活動するデュオSalamandaが、植物にまつわる大人気シリーズMusic To Watch Seeds Grow Byに登場。第8弾となる本作は窓辺のバジルの一日を描いた、ミニマルで親密なアンビエント。水滴の落ちる音、時計の針のような反復、植物のゆっくりとした脈動を思わせるビート。Salamanda特有の柔らかい電子音と、生活の延長にあるような小さな音の粒子が重なり、光合成や吸水のスピードに同期したような、独自のタイムレスな感覚が光る。Salamandaの二人が実際に自宅で育てているバジルから着想を得たという背景もあってか、バジルの周囲で起こる小さな出来事を音で描写しつつ、「バジルは自分が食べられる運命を知っているのか?」という哲学的な問いも作品の奥に潜み、穏やかで可愛らしいだけでなく、どこかファンタジーと深い思索が同居する奥深い魅力も併せ持っている。単なるBGMとしてのアンビエントではない、つい忘れてしまう、植物という隣人との静かな対話ともいうべき一本。今回も種、付いてます。

ベルリン拠点のフランス人DJ Marylouが、ブリストルの〈Accidental Meetings〉のミックスシリーズAMXに登場。本作は、ポリリズム、ポリスタイルのシリーズ屈指の越境型ミックスで、未来的クラブサウンドからヴィンテージ・ブレイクコア、フォーク、ダブ、スポークンワード、民族音楽的フィールド録音まで、本来交わらないはずの音が、Marylouの感性でひとつの流れとして再構築される。緊張と緩和、混沌と秩序が絶妙に配置され、音の迷宮を進むような感覚が続く。レーベルの自由で根源的なミックス企画という理念を鮮烈に体現した一本。

No Fun Fest創設者として知られる電子音楽家Carlos Giffoniと、Sonic YouthのギタリストThurston Mooreが再びタッグを組んだ、ギターとオシレーターが生き物のようにうねる即興ノイズ・ドキュメント『IGUANA』が〈iDEAL Recordings〉から100本限定で登場。Mooreはギターをドラムスティックやドライバーで叩き、擦って演奏し、Giffoniはオシレーターとエレクトロニクスで暴れる波形をぶつけていく、肉体性と電子的暴力が交差する強烈なセッションが展開される。20年以上にわたり共振してきた二人の関係性が、もっとも生々しい形で刻まれた一作。

メルボルンの作曲家であり即興演奏家のAbby Sundbornによる、チェロと声だけで構成された2025年にベルギーでのパフォーマンスを収録したライブ・カセット。クラシック教育を受けながら、DIYアンダーグラウンドで磨かれた直感的なアプローチが特徴の彼女。本作では、チェロの弓のノイズ、息づかい、空間の揺れといった微細な要素がそのまま音楽として立ち上がる。特にハイライトとなる「Shed」では、声とチェロが反復しながら少しずつ変化し、祈りのような、儀式のような没入に至る。感情は抑制されているのに、どこか切実で人間的。The NecksのTony BuckやHTRKのJonnineらとの共演歴を持つ彼女の、最もパーソナルな側面が刻まれた作品は、音が生まれる瞬間そのものを聴かせるような、現代実験音楽の小さな傑作。

テキサス出身の3人組バンドKhruangbinと、同じくテキサスのソウルシンガーLeon Bridgesが再びタッグを組んだコラボ作『Texas Moon』。前作『Texas Sun』が昼のロードトリップを描いた作品だったのに対し、本作はその対になる夜の物語をテーマにしたスロウで親密な作品。静かな祈りのようなムードにゆるやかなグルーヴ、甘くとろけるようなデュエットやゴスペル的深みまで、全5曲が夜の温度と静けさをまとっている。Khruangbin特有の多国籍サイケ・ファンクと、Leon Bridgesのスモーキーな歌声が溶け合い、月明かりの下で聴くためのソウルとも言える仕上がり。ゆっくりとした時間に寄り添う一本。
