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1970年代後半、Sun Ra and His Arkestraはアメリカ中西部を中心に精力的なツアーを行い、そのステージは、ジャズの歴史、宇宙的な意思、儀式性が渾然一体となった、他に類を見ないライブ体験として語り継がれている。本作『Somewhere Over The Rainbow』は、1977年インディアナ州ブルーミントンでの公演を収めたライブ盤で、その当時の達成と多層的な音楽性をそのまま封じ込めている。「Take The “A” Train」「Gone With The Wind」などのスタンダード曲が収録されているが、それらは原曲の枠を軽々と飛び越え、スウィング、フリージャズ、アフロフューチャリズム、コズミック・ブルースがひとつの流れの中で連続する変容の音楽へと姿を変える。とりわけタイトル曲「Over The Rainbow」は、穏やかなメロディを保ちながらも、電子オルガンやミニムーグの宇宙的響きも相まって、別の次元に接続されたスタンダードとでも言うべき独特の世界。Marshall Allen、Danny Ray Thompson、Michael Rayら主要メンバーが参加した編成は、多層的な渦を形成し、ステージ全体が儀式のような熱気に包まれていく。スタンダード曲の再解釈とコズミック・ジャズが同じステージで呼吸する、歴史と未来が同時に鳴っている瞬間を鮮明に感じられる一枚。
1961年、〈Impulse!〉移籍後の第一作として録音された、John Coltraneによる歴史的作品『Africa/Brass』が、Verve Acoustic Sounds Seriesとして、オリジナル・アナログ・テープからのリマスター、180g重量盤、チップオン・ジャケットという最高水準のアナログ仕様で復刻。本作の最大の特徴は、通常のカルテット編成を大きく拡張した大編成ブラス・アンサンブルで、チューバ、ユーフォニウム、フレンチホルンなどを含む重厚な低音ブラスがゆっくりとうねり、その上にColtraneが祈りのように長いフレーズを描く。編曲にはEric DolphyとMcCoy Tynerが深く関わり、ブラスが背景ではなくテクスチャーとして機能する独自のサウンドを作り上げている。モーダル期へ向かうコルトレーンの変革の瞬間を刻んだ名盤。

ツジコノリコが長い間人生を共に過ごし深い絆を結んだ愛猫PONへの追悼として制作された最新作『PON』。日本的な情緒を帯びたフィールドレコーディングや家庭的な音の断片が散りばめられ、色彩豊かなフォトアルバムのように彼女の内面世界が記録されている。収録曲「Knife of Yonder」はイーノ的なアンビエントから高揚感のある中盤、ブルースに寄り添うような終盤へと展開する10分超の大作。「Kikoeru Pon」では猫の声を含む生活音が溶け込み、個人的な記憶がそのまま音楽になったような親密さが漂う。個人的テーマを抱えながら、無邪気さと抽象性が交互に現れる独特の情緒を持ち、電子音は冷たさとは無縁で、柔らかい光を帯びている。ある種の子どもっぽさと深い喪失感の同居した、彼女の持ち味がさらに深化した成熟した一枚。

北イングランドを拠点に活動する15人編成のスピリチュアル・ジャズ大所帯Ancient Infinity Orchestraによる、愛とつながりが音にあふれたメロディックなスピリチュアル・ジャズ。リーダーのOzzy Moyseyによる美しい作曲を軸に、メンバーそれぞれが即興で寄り添い、心温まる広がりのあるメロディが花開いていく。編成は非常にユニークで、ダブルベース2本、ハープ、サックス、クラリネット、弦楽器群、オーボエ、フルート、マンドリン、コンガ、ピアノ、ドラム、そして様々な小物パーカッションまで揃い、ライブや録音では床に楽器を散らし、思いついた瞬間に手に取って音を重ねる自由な雰囲気。友人同士でもあるメンバー間の信頼感が、広大でありながら親密、土の匂いがするのに宇宙的でもある独特のサウンドを生み出している。愛をアルバム全体を包み込むテーマとして据え、フォーク、ジャズ、クラシックなど多様な伝統音楽の素養を持った奏者たちが、作曲という器の中でそれぞれの表現を解き放つ。焚き火を囲んだ即興的な賛美歌のよう。

英国ジャズ・ファンクの名手Brian Augerが率いるOblivion Expressの中期を代表する一枚『Reinforcements』。Auger自身がプロデュースを担当、オルガン、エレピ、Moog、Freeman String Machineを自在に操り、ジャズ・ロックからソウル、ファンクへと大きく舵を切った転換点として知られる作品。本作では、後にSantanaでも活躍するAlex Ligertwoodのソウルフルなヴォーカルが前面に出ており、従来のジャズ・ロック色に加えて、ブルー・アイド・ソウル的なキャッチーさとファンクの推進力が強化。タイトなリズム隊が70年代半ばのファンク、フュージョン的グルーヴを生み出し、その上にAugerのオルガンとシンセが縦横無尽に重なる、肉体的で肉厚なレア・グルーヴ。
オリジナルは1995年にベルギーの名門レーベル〈R&S Records〉からリリースされた日本テクノの金字塔的アルバムであり、Ken Ishiiの国際的な評価を決定づけた代表作『Jelly Tones』が30周年を記念して〈R&S Records〉から2LP仕様で再発!未来的なサウンドデザインと東洋的な旋律感覚が融合した本作は、デトロイト・テクノへの敬意とヨーロッパ的な洗練、彼特有のコズミックな疾走感とメロディセンスが光る、フューチャリスティック・テクノ。中でも「Extra」は、押井守によるアニメーションMVとともに世界的に注目を集め、Ken Ishiiの創造性と先見性を象徴する楽曲として知られる。クラブユースにもアート性にも対応する、電子音楽の歴史を辿る上でも重要な一枚であり、時代を超えて響く革新的なテクノ・アルバム!
Peter Brötzmann、Sonny Sharrock、Bill Laswell、Ronald Shannon Jacksonによる、欧米のフリージャズ、インダストリアル、ノイズ・ロックシーンが文字通り衝突して生まれた伝説のドリーム・カルテットLast Exitが1988年に残した唯一のスタジオ録音作『Iron Path』。ライブでの爆発的な即興をそのまま密閉空間に封じ込めたような歴史的アルバム。Sharrockのギターは火花を散らし、Brötzmannのサックスは金属の悲鳴のように荒れ狂う。Laswellの重低音が混沌に重力を与え、Shannon Jacksonのポリリズムが全体を推進する。NY・BC StudioでMartin Bisiが録音したサウンドは、4人の暴力的なエネルギーを制御されたカオスとして結晶化させ、ライブとは異なる構築性と密度を生み出している。

ベースと北アフリカの弦楽器ギンブリを自在に操る、イスラエル出身の音楽家 Shay Hazan がテルアビブのジャズシーンの精鋭たちとともに作り上げたアルバム『When It Rains It Pours』。ギンブリの低くうねる響きと、アラブから北アフリカ圏の旋法を思わせるメロディが、砂漠の風景を想起させるミニマルなグルーヴを生み出し、そこにジャズの自由なインタープレイが重なることで、都市的でありながら古代的なスピリチュアリティを帯びたサウンドが広がる。アフロビートの躍動感、スピリチュアル・ジャズの瞑想性、そして中東音楽の深いルーツが自然に溶け合い、ジャンルを超えて旅するように聴ける作品になっている。

ドイツのデュオPhantom Horseが6年ぶりに放つ最新作『Primal Forms』。ハンブルク、ナイメーヘン、スペイン南部オヘンの3都市で録音された本作は、ミニマル、クラウトロック、エレクトロニックの境界を漂う独自のもの。シーケンスは極限まで削ぎ落とされながらも、スロウバーニングと形容されるように、じわじわと変化し続けるポリリズムが聴き手を深いトランスへ導く。硬質な電子音の中に微かなダブ処理が差し込み、奇妙にダンサブルな質感が生まれている。静謐でストイックな音像でありながら、閉じた世界ではなく、現代的な電子音楽の潮流とも接続した開かれた音楽性が息づいている。冷徹なまでの知性と、そこから立ち上がる予期せぬ熱量による、静寂の中の極彩色の幾何学模様。
南アフリカ・ケープジャズの重要人物Tete Mbambisaが1979年に残した名作『Did You Tell Your Mother』。テナーサックスのBasil Coetzeeを迎えたカルテット編成で、アフリカ的なスピリチュアル性とアメリカのモーダル・ジャズが自然に溶け合う、深みのある演奏。11分超えの「Trane Ride」はタイトル通り Coltraneへの敬意が滲む長尺モーダルで、反復するピアノと熱量のあるサックスがじわじわと高揚していくスピリチュアルな名演。「Past Time」「Winter Time」では、南アフリカ特有の哀愁と柔らかいグルーヴが漂い、ラストの「Irene」では温かく語りかけるようなピアノが印象的。アパルトヘイト時代にも国内に留まり、アコースティック・ジャズを貫いた彼の姿勢がそのまま音に刻まれており、生々しいアンサンブルが当時の空気をそのまま閉じ込めている。

エレクトロアコースティック/音響作品の最前線を切り開くJim O’RourkeとJos Smoldersによる最新コラボレーション『Albumin』。前作『Additive Inverse』に続き、3年にわたる遠隔セッションで構築された本作は、O’RourkeがKymaシステムから抽出した音素材をSmoldersが粒状化処理し、互いに往復しながら音を彫刻していくという、極めて実験的なプロセスで制作された。柔らかいドローンがゆっくりと立ち上がり、やがて粒子状のノイズや倍音の揺らぎが浮かび上がる。音は定住せず、常に変化し続ける流体のようで、スペクトルの内部を覗き込むような精密な音響が全編を貫く。静謐な空間と緊張感のある音塊が交互に訪れる構造は、まるで音による抽象的な映像のような、密度の高い音響探求の結晶。

映画監督のBenjamin Coolsと俳優のFerre Marnefによるブリュッセル拠点の前衛的ポップ・バンドSergeantによる、自分たちの演奏や録音素材を切り刻んで再構築するセルフ・サンプリング的手法を軸にした、アヴァンポップ/シンセ・エクスペリメンタル作品『Symbols』。クラウトロック的な直進ビート、ダブ処理の空間感、プランダーフォニクス的な断片のコラージュがひとつの流れの中で混ざり合い、混沌とキャッチーさが同居する不思議な魅力を放っている。曲名からして示唆的で、ユーモアと哲学的な視点が入り混じる世界観。音が崩れ、再構築され、また崩れる、その繰り返しの中から、ふと耳に残るメロディやリズムが立ち上がる瞬間が心地よい。レーベルらしい実験とポップの境界を楽しめる1枚。
アルゼンチンのギタリストであり作曲家のAgustín Pereyra Lucena が1975年に残した代表作『Ese Día Va A Llegar』。ブラジル音楽に深く傾倒した彼が、Baden PowellやJoão Donatoらの影響を自らの感性と融合させ、アルゼンチンとブラジルの美しい交差点を形にした一枚。「Chica De Ipanema」「Amazonas」「Maritima」などブラジル名曲のカバーに加え、オリジナル曲も高い完成度を誇る。Lucenaのギターは柔らかく深いタッチで、ボッサの軽やかさとアルゼンチンらしい叙情性が同居。ローズピアノやフルートが絡む「Guayabas」は、世界中のDJに愛されるメローブラジリアンの名演。後にCandeiasを結成するGuillermo ReuterやCarlos Carliらも参加し、南米音楽の洗練と自由さが絶妙なバランスで表現されている。
エジプト人DJのDisco Arabesquoが手がける、エジプト産ディスコ/ブギーのコンピ最新作が、好評を博した『Sharayet El Disco』に続いて登場!
Disco Arabesquoによる最新アーカイヴ・リリース『Ayam El Disco』は、数年前に高い評価を得た『Sharayet El Disco』に続く新作です。Disco Arabesquoはカセットコレクターとして知られ、アムステルダムを拠点にDJとして活動しています。8年にわたる収集の成果を結集した音源はColorsound StudioにてDavid Hachourがアナログ用にリマスタリング。エジプト人グラフィックデザイナーのHeba Tarekによるアートワークを採用し、オリジナルのカセット・アートワークを掲載したインサート、Moataz Ragebによるライナーノーツが付属。

ラテン・グラミー賞を受賞し現代MPBの宝石と称されるTulipa Ruizのアルバムが待望のアナログリリース。
サンパウロ出身のシンガーTulipa Ruizのアルバム『Habilidades Extraordinarias』は、創造性が光る即興とグルーヴを自在に行き来する傑作です。Tulipa Ruizはこれまでに5枚のアルバムを発表し、Elza SoaresやMilton Nascimentoとのコラボレーションを実現、モントルーやロラパルーザなど世界的フェスティバルにも出演し、国際的な舞台でも活躍を続けています。João Donatoとのデュエット"O recado da flor"では世代を超えた共演を実現し、"Pluma Black"や"Novelos"ではアヴァンギャルド・ジャズやソウル・ジャズの魅力を探求。ブラジルの批評家からも高く評価され、現代MPBの重要人物としての地位を確立した作品です。

ポートランドの「偉大なブラックミュージック」の最高の実践者、The Cosmic Tones Research Trioの一員Roman Norfleetと、Andre Raiahによるデュオ、MerKaBa Brotherhoodによる、秘教的テキスト、神聖なイメージ、神秘思想を音へと翻訳したかのような、スピリチュアルかつ実験的なアルバムが〈Mississippi Records〉より登場。サックス、キーボード、パーカッションという最小限の編成で、ドローンの揺らぎ、反復するパターン、静かに呼吸するような間合いが重なり、まるで幾何学模様がゆっくりと立ち上がるような音響世界が広がる。ローファイで温かい質感のアンビエント、ニューエイジ、スピリチュアル・ジャズの境界を漂うような音像の奥に霊性を感じさせる手触りが残る。静かに意識を変容させるような、霊性音響探求。

Concepción Huertaによる、サブハーモニクス構造とテープ操作を駆使して制作された、彼女にとって最も鋭く、激しく、そして息を呑むような作品『El Sol de los Muertos』が〈Umor Rex〉より登場!全体がドローンやミュジーク・コンクレートを基盤に、聴覚から強烈な映像を喚起するような音のテクスチャが貫かれている。リズムやメロディの快楽とは無縁で、むしろ「痛み」や「記憶」「暴力」の物語を音に変える、ポスト・コロニアル的サウンド・ナラティブとも言うべき一枚で、音のかたちをした歴史的・政治的マニフェストとして聴くことができる。ラテンアメリカ左派思想の象徴的存在エドゥアルド・ガレアーノや、メキシコのサパティスタ、パラグアイやアルゼンチンのグアラニー族など、先住民の抵抗運動に共鳴する音による黙示録的作品。
70年代ジャズ・ファンクの象徴とも言える、Donald ByrdとMizell Brothersの黄金タッグが到達した、洗練とメロウネスの極致とも言える名盤『Places and Spaces』。フェンダーローズ による丸みのあるコード、Chuck Raineyの跳ねるベース、Harvey Mason の軽やかなドラミング、そしてByrdの柔らかいフリューゲルホルン。すべてが滑らかに噛み合い、都会的で風通しの良いグルーヴを生み出している。冒頭のディスコとジャズ・ファンクを両立させた名曲「Change (Makes You Want to Hustle)」、柔らかいメロディと浮遊感のあるアレンジが印象的で、70年代メロウ・ジャズの理想形として語り継がれている「Wind Parade」、Temptationsの名曲を原曲の甘さを残しつつ、より洗練されたアレンジでByrd流の都会的ソウルへと再構築した「Just My Imagination」など、聴きごたえある充実の一枚。
70年代にDonald ByrdがMizell Brothersと組み、ジャズ・ファンクへ大きく舵を切った時期を象徴する名盤『Stepping Into Tomorrow』。全編に漂うのは、ジャズの自由さとソウル、R&Bのメロディアスさが自然に交差する感覚で、Byrdのフリューゲルホルンは柔らかく、Mizell Brothersのアレンジは軽やかで、夜の都市を滑走するような洗練されたグルーヴが続いていく。オープニングの「Stepping Into Tomorrow」は、柔らかいフリューゲルホルンと、丸みのあるローズが溶け合う都会的なジャズ・ファンク。「Think Twice」は後年ヒップホップ、R&Bで数多くサンプリングされ、そのミニマルなベースラインとコーラスの反復は、時代を超えてクラブ・ミュージックの基盤になった名曲。Gary Bartz、Chuck Rainey、Harvey Mason、David T. Walkerら当時の最強セッション陣が参加していることもあり、演奏はしなやかで、どこを切っても高品質。ジャズ・ファンクでありながら、ソウル、ディスコ、AORの要素も自然に取り込んだ、70年代ならではのクロスオーバー感が魅力的な一枚。

Celerの初期代表作として長く愛されてきた2009年作『Engaged Touches』が、未発表素材を大幅に追加したExpanded & Remastered仕様で〈Two Acorns〉から再登場。今回のExpanded版では当時の録音素材を細分化・再編集し、全20曲、約2時間40分に及ぶ完全版として再構築。淡い光に包まれたドローンがゆっくりと重なり合い、時間が止まるようで、静かに流れ続ける、Celer特有の感覚を生み出す。フィールド録音のざらつきや、テープの質感がほのかに滲むことで、記憶の奥に沈む風景を覗き込むようなアンビエンスが広がる。名匠Stephan Mathieuによるリマスターが施された今回のエディションでは各パートの表情がより鮮明になり、静寂の中に潜む変化が立体的に浮かび上がる。Celerの初期美学を最も純度高く体験できる決定版。

2009年に〈Students Of Decay〉から発表され、長らく入手困難となっていたCelerの名作『Capri』が、未発表音源を追加した全34曲の完全版として〈Two Acorns〉から再登場。オリジナル・テープからStephan Mathieuが丁寧にリマスターし、当時の淡い質感を保ちながらも奥行きと透明度が増した決定版。2007〜2008年に録音された素材をもとに、「理想化された情景の断片」をテーマに構築されたコンセプト作品で、1〜3分ほどの短いヴィネットが連なり、光が差し込む瞬間や、海辺の風景、遠い夏の記憶がふっと立ち上がっては消えていくような、Celer特有の記憶を呼び起こすようなアンビエントが続いていく。Celer の中でも特に瞬間性と儚さが際立つ作品で、聴くほどに時間の層が静かに積み重なっていくような繊細な一枚。

石橋英子&ジム・オルーク参加、記憶と環境音を再構築する実験音響/フィールドレコーディング作品。
ピエール・シェフェールとともに音と映像の関係性を探求してきたブルンヒルド・フェラーリによる作品。本作は、日常の中で無意識に捉えられた音の断片や記憶を再構成したミックステープ的アプローチによって制作され、磁気テープに記録された“耳の記憶”を呼び起こすようなサウンドが展開される。そこに石橋英子とジム・オルークが演奏で参加し、繊細かつ即興的な響きが作品に新たな層を与えている。実験音楽、ラジオアート、フィールドレコーディングの要素が交錯する本作は、個人的な記憶と音響芸術が静かに交差するユニークな試み。長年ルック・フェラーリと活動を共にし、その遺産を継承してきた彼女ならではの視点が反映された、時間と記憶をめぐる音のコラージュ作品である。
カリフォルニアを拠点に、神秘主義・超心理学・チベット哲学に傾倒し、オカルト誌の広告を通じて自作の「Psychic Meditation Course」と共にレコードを通信販売していたMaster Wilburn Burchetteの1971年作『Occult Concert』。エフェクトを重ねたギターの持続音や倍音がゆっくりと揺らぎ、儀式めいた空気をまとったサウンドが展開。メロディよりも振動や意識の変容を重視した構造を持つ、アンビエント・ギターによる魔術ともいうべき精神世界と音楽が密接に結びついた世界観。ローファイで私的な質感で、個人的な儀式空間を覗き見るような魅力を持った、1970年代アメリカのオカルト文化とアンビエントの交差点に位置する作品。

クラシックR&Bのタイムカプセルと称されるテネシーのソウルシンガーOliver Jamesの2022年以来となる新曲『1-2-3 b/w Nothing Is Forever』が名門〈Colemine Records〉より7インチで登場。A面「1-2-3」は、メンフィス、スタックス系のアップテンポ・ソウルを現代的なプロダクションで磨き上げたキラーチューン。ヴィンテージ感あふれるインストに、Oliver Jamesの太く温かい歌声が重なる。ギターのカッティング、跳ねるドラム、ホーンのアクセント、どれも60〜70年代の黄金期を思わせながら、今のソウルとしての強度をしっかり持っている。B面「Nothing Is Forever」は、ナッシュビルのファンクバンド The Gripsweats を迎えたスロウで哀愁漂うソウルバラード。南部ソウルの土臭さと、上品なアレンジが絶妙に同居した名曲。
