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オリジナルは1979年にリリースのBarrington Levyのキャリア初期を代表する名盤『Bounty Hunter』。ルーツ・レゲエから初期ダンスホールへとジャマイカ音楽が移行する過渡期を見事に捉えており、Channel Oneスタジオ録音、The Revolutionariesによる演奏とScientistのダブ・ミックスが、Levyの若々しくも憂いを帯びたヴォーカルを際立たせている。「Shaolin Temple」「Moonlight Lover」「Bounty Hunter」などの楽曲は、力強さとメロディアスさが共存する魅力に満ちており、このアルバムは、Barrington Levyのキャリアの礎となり、後のヒット作への布石となっただけでなく、ジャマイカ音楽の変革期を捉えた歴史的な記録としても高く評価されている。レゲエ・ファンはもちろん、ダンスホールのルーツを探る上でも欠かせない一枚となっている。
心理的緊張や不安をテーマにした、イタリアの作曲家Alessandro Alessandroniが1975年に手がけたライブラリー音楽アルバム『Angoscia』。タイトルの「Angoscia(苦悩)」が示す通り、陰鬱で内省的なムードが全編に漂っていて、 短く構成された楽曲群は、映像音楽のような雰囲気を持ち、場面ごとの感情を巧みに描写。イタリアの鉛の時代と呼ばれる政治的混乱期の空気を反映しているとも言われ、不協和音やミニマルなフレーズ、不穏なストリングスが、聴き手に不安感を与える。ギター、鍵盤、管楽器など多彩な音色を通じてAlessandroniの多面的な作曲技術が光り、商業音楽とは一線を画す芸術性の高いライブラリー作品として評価されており、映画やテレビのサスペンス・シーンにぴったりな音楽が詰まった、静かに不安を忍び寄らせるような緊張感に満ちた一枚となっている。

シアトルの名門〈Light in the Attic〉によるニューエイジ・リバイバルに多大な影響を及ぼした国産アンビエント集成『Kankyo Ongaku 』でも紹介された日本のアンビエント・ミュージックの先駆者、菅谷昌弘による87年の超入手困難なカセット作品『熱の風景(The Pocket Of Fever)』が、新興レーベル〈Ambient Sans〉より初のアナログ再発!小池博史設立の舞台芸術カンパニー/パフォーミング・アーツ・グループ〈パパ・タラフマラ〉の音楽監督としての舞台音楽の制作やNHKテレビ番組『中学生日記』の劇伴制作、編曲家としてのゴンチチのスタジオ・アルバムへの積極的関与、 〈GRM〉から委託された長編音響インスタレーションの制作まで、実に多岐に渡る活動を繰り広げてきた同氏。劇団のパフォーマンスのサウンドトラックとして制作され、公演で配布されていた大変希少な作品。本作収録楽曲のうち3曲は、先述の〈Light in the Attic〉から発売された菅谷作品のコンピレーション作品『Horizon, Vol. 1.』にもピックアップされています。伝統的な日本の音楽の要素と現代音楽の作曲技法、ポスト・ミニマリズムやフォーク、ラテンのフィーリングなどを独自のブレンドで折衷した、深く刺激的で親密な音の風景が広がる国産ニューエイジ大傑作!リマスタリング仕様。全国産アンビエント~環境音楽ファンマストアイテムです!
ジャズ・ピアニストBob Jamesが1974年に〈CTI〉レーベルから発表したソロ・デビュー作で、スムース・ジャズの原点とも言える重要作が〈Endless Happiness〉より高音質45回転盤仕様で嬉しい再発。洗練されたアレンジとエレクトリック・ピアノの美しい響きが印象的な冒頭の「Valley of the Shadows」から、パッヘルベルのカノンをベースにした「In The Garden」、後に数多くのヒップホップ楽曲でサンプリングされ、伝説的なトラックとなった「Nautilus」など多彩な名演と名曲が揃う。アレンジにはストリングスやホーンも用いられ、映画音楽のようなドラマティックな構成も魅力で、クラシック、ファンク、ジャズが融合したサウンドは、ジャンルを超えて多くのリスナーに影響を与えた。Bob Jamesの洗練された音楽性と、豪華なプロダクションが融合した傑作。

カルナータカ音楽において、通常使われることのないエレクトリック・マンドリンを取り入れた革新的な動画が約10年前から世界中で注目を集めてきたインドの姉妹デュオMandolin Sistersによる初のフルアルバム『Odysseys in Electric Carnatic』がヴァイナルで登場!「Vathapi」「Nagumomu」などの伝統的な南インド古典音楽の名曲をベースに現代的な感覚が融合した本作では、エレクトリック・マンドリンという楽器がカルナータカ音楽に新たな表情を与えており、まるで長いこと締め切っていた窓を開けた時のような瑞々しく鮮やかな気分が印象的。古典的なラーガの厳密な枠組みの中で、姉妹の息の合った掛け合いは、緻密でありながら自由度が高く、単なる演奏を超えて対話のような深みを感じさせ、インド古典のリズム構造であるターラも、現代的なグルーヴとして生き生きと響き渡るよう。カルナータカ音楽を次世代へ繋げるだけでなく、ジャンルや国境を越えて、音楽が持つ普遍的な力を体現する一枚として、多くのリスナーに届いてほしい作品。

チリ出身でニューヨークを拠点とするサウンド・アーティストRafael Anton Irisarriによる、壮大さと繊細さが同居する現代のアンビエント/エクスペリメンタル音楽における金字塔的作品がリリースから10周年を記念してリマスター再発!今回の再発では、自然に囲まれた孤独な環境で制作され、内省的で深い没入感を持つ音響世界が展開される本作品が、2015年のオリジナル盤が持っていた静謐な美しさはそのままに、リマスタリングによって音の奥行きと繊細さがさらに際立ち、まるで空気の振動まで感じられるような仕上がりになっている。深く沈み込む低音と、微細に揺れるテクスチャが織りなす、圧倒的な没入感。静寂の中に響くメランコリックなメロディが美しく、聴く者の内面に静かに語りかけるような深みを持つ。新装されたアートワークも作品の世界観と呼応し、視覚的にもその静謐な美学を補完する充実の再発。

日本とも深い関わりを持つターンテーブル奏者/サウンド・アーティストdj sniffこと水田拓郎による2024年後半の即興ライブ録音を収めた作品『Turntable Solos』。 自作ソフトウェア「Cut ’n’ Play」を用いて、ターンテーブルを即興楽器として再定義する実験的ターンテーブル演奏を展開、レコード盤の物としての特性とデジタル処理が交錯することで、触覚的かつ直感的な音のコラージュが生まれている。特に本作は、前作のコンセプチュアルな深遠さから一転し、より直接的かつアグレッシブなアプローチが特徴的で、レコードの溝、針、モーターから生まれるノイズ、グリッチ、そして予想外の音響操作が、聴き手を引き込む強烈なサウンドスケープを形成している。音源の断片をリアルタイムで再構成し、演奏者の存在がそのまま音に刻まれる、ターンテーブル演奏の可能性を伝える一枚。

ドイツ・ミュンヘンの実験的音楽シーンで活躍するミュージシャンたちによる、クンビア、ダブ、フォーク、ラテンジャズ、ブラスバンドなどが融合した祝祭的かつサイケデリックなサウンドで知られるThe Alien Dub Orchestraが、孤高のダブ・アーティスト、Elijah Minnelliの楽曲集「Breadminster Songbook」をカバーしたアルバム『Plays the Breadminster Songbook』。本作でもThe Alien Dub Orchestraらしい音響世界が展開されており、ギロ、アコーディオン、スーザフォン、フルートなど多様な楽器編成による豊かなアレンジが魅力的。録音はライブ感を重視し、スタジオの枠を超えた自由な音楽表現が感じらレ、原曲のスピリットを保ちつつ、より生演奏的で有機的なグルーヴへと昇華している。ダブの空間処理とクンビアのリズムが融合し、聴く者を異国の祝祭へと誘う。Elijah Minnelliの世界観を拡張しつつ、The Alien Dub Orchestraならではの解釈が光る、ジャンルを横断する発見と驚きに満ちた作品。

シューゲイザーとアンビエントの境界を探るlovesliescrushingの名作デビュー作『Bloweyelashwish』。1992年、12弦ギターと4トラックのカセットMTR、ループペダル、そして深いリヴァーブだけで組み立てられた音響は、きらめきと靄が入り混じる夢のような質感をもっており、スコット・コルテスのギターのディストーションはノイズでありながらも優しく、メリッサ・アルピン・ドゥイムストラの声は言葉を超えた気配として響く。バンドサウンドとしてのビートを放棄し、甘美な轟音とウィスパーヴォイスだけが響き続ける耽美的な世界。今回のリイシューではリマスターに加え、当時の未発表曲5曲を追加。歌詞やポストカードも付属し、作品の内奥により深く沈み込める仕様となっている。轟音のまぶしさではなく、むしろ、目を閉じることを促すようなこの音楽は、単なるシューゲイザーの名盤にとどまらず、私的な夢の記録でありながら、今なお多くのリスナーを包み込む無限の広がりを感じさせる。
シューゲイザーとアンビエントの境界を探るlovesliescrushingの名作デビュー作『Bloweyelashwish』。1992年、12弦ギターと4トラックのカセットMTR、ループペダル、そして深いリヴァーブだけで組み立てられた音響は、きらめきと靄が入り混じる夢のような質感をもっており、スコット・コルテスのギターのディストーションはノイズでありながらも優しく、メリッサ・アルピン・ドゥイムストラの声は言葉を超えた気配として響く。バンドサウンドとしてのビートを放棄し、甘美な轟音とウィスパーヴォイスだけが響き続ける耽美的な世界。今回のリイシューではリマスターに加え、当時の未発表曲5曲を追加。歌詞やポストカードも付属し、作品の内奥により深く沈み込める仕様となっている。轟音のまぶしさではなく、むしろ、目を閉じることを促すようなこの音楽は、単なるシューゲイザーの名盤にとどまらず、私的な夢の記録でありながら、今なお多くのリスナーを包み込む無限の広がりを感じさせる。

大名門〈PAN〉からは、VENERAの2作目『EXINFINITE』が登場。本作は、KornのギタリストJames "Munky" Shafferと作曲家、映像作家のChris Huntによるプロジェクトの深化形で、前作で構築したシネマティックかつ多次元的な音世界をさらに進化させ、より重く、暗く、打楽器的な音像を追求している。また、ノイズやリズムの強度だけでなく、内面へと向かう神秘的・情緒的な要素も色濃く反映されているのが特徴。ノイズまみれのビート、破壊的なシンセ、ギターに、FKA twigs、Dis Fig、Chelsea Wolfeらの幽玄で情感豊かなボーカルが交錯し、ポスト・インダストリアル、ゴシック、テクノ、ノイズ、サイファイ・サウンドデザインなどが溶け合い、感情と物質の境界が曖昧になったような没入的世界を描く。ジャンルを越境しながら、闇と美しさが渦巻く、未来的で感情むき出しのサウンド!

前作『All Is Sound』は弊店でも大ヒット!ポートランドの「偉大なブラックミュージック」の最高の実践者、The Cosmic Tones Research Trioによる2作目のアルバムが登場!前作で打ち出された静けさ、空間性、ロングトーンの美学を引き継ぎつつ、さらにリズム的な力強さと肉体性が加わっており、表面的には癒しやメディテーショナルな穏やかな音楽に聴こえるが、じっくり耳を澄ませると、ルーツ音楽やスピリチュアル・ジャズの語法が下地にしっかり息づいているのがわかる。編成は、チェロ、サックス、ピアノ、フルートというアコースティックな楽器群で、即興を中心に据えながらも、それぞれの音は丁寧に間を取り、余白や沈黙までも音楽として活かすようなアンサンブルになっている。祈りや対話の気配がありつつ、ときにはゴスペル的な魂のこもったメロディが立ち現れ、またある瞬間にはブルースの深みを思わせるしみじみとしたトーンも顔を出す。精神性と有機的なグルーヴやうねりを両立する、心の静寂を求める人にも、深い音楽的な探究を求める人にも響く傑作。

著名な作曲家、ボーカリスト、マルチ・インストゥルメンタリストであるJessika Kenneyのソロ・アルバム『Uranian Void』。Eyvind Kangとのコラボレーションや映画『ミッドサマー』での幽玄な歌声でも知られるが、本作ではより内面的で実験的な領域に踏み込んでいる。シアトルの音響魔術師 Randall Dunnプロデュースのもと、ガザル(ペルシャ詩歌)、水中マイクによる環境音、サイン波、そしてケニー自身のテキストや声が緻密に重ねられ、音楽というよりも声と空間の儀式のような仕上がりになっている。ここで聴ける声はメロディを運ぶだけでなく、倍音や響きを操ることで、音響そのものを変容させており、透明で揺らめくサイン波や水中の録音が、その声を包み込み、時間感覚や聴覚の焦点を少しずつずらしていく。宗教音楽や詩の朗唱に近い霊性を帯びた、深く心に響くサウンドを生み出している。Kenneyが長年探究してきた声と空間、外界と内面の響き合いが、純度高く凝縮された作品になっている。
シドニー拠点の韓国系ドラマー&即興奏者 Chloe Kim によるソロ・パーカッション作品。本作では Randall Dunn が録音・ミックスを担当しており、Kim のテンポを自在に操る技巧や、トーンの探求が前面に出ている。メロディを演奏するわけではないが、調律されたゴングや擦られたシンバル、バランスの取れたタムなどから、幽かなメロディの輪郭が浮かび上がる。アルバム名や曲名には韓国の民間伝承が反映されており、韓国の「ラットスネーク(豊穣の象徴)」に由来。Kim が生まれる前に母親が見た夢ともリンクし、パーカッションの呼吸や変拍子のリズムにも民俗音楽の影響が息づいている。ジャズやフリー・インプロヴィゼーションに根ざしつつも、個人的で独自性のあるリズム感覚が随所に見られるのも魅力的。演奏は高度に即興的でありながら、韓国民謡的なリズム感覚や豊かな音色の探求が随所に組み込まれた、個性あふれるソロ・ドラム作品!

実験的ボーカリスト兼作曲家Charmaine Lee によるデビュー・フルレングス・アルバム『Tulpa』。声を中心にした実験音楽の世界を展開する本作では、Leeは特殊唱法で声の限界を押し広げ、フィードバックや電子音と組み合わせて、微細なテクスチャーと荒々しいノイズの間を行き来している。曲ごとに声の重ね録りやディレイ、変調が巧みに使われ、音が空間に拡散する感覚や、声自体が楽器化される瞬間が随所に現れる。リズムや旋律は従来のポップやクラシックの枠にとらわれず、持続音や断片的フレーズ、ノイズの衝撃的な入り方で聴き手の時間感覚や空間認識を揺さぶり、そこに道教やチベットの宇宙観、儀式的なパフォーマンス、幻想文学のイメージを取り入れることで、まるで現実と夢の中間にいるかのような没入体験を作り出す。プロデュースは Randall Dunn が担当しており、彼の手腕によって荒削りなサウンドが精密にまとめられ、音の密度と空間感が際立っている。声を楽器として扱った前衛的で挑戦的な作品。※入荷時よりスリーブ上部にダメージございます、予めご了承くださいませ。

Eyvind Kang初のソロ・インストゥルメンタル作品『Riparian』。Randall Dunnプロデュースのもと、ヴィオラ・ダモーレを中心にすえ、Kang独自のエコミュージカリティの概念に基づき、自然の風景や、そこに存在する生態系を音で表現しようとする試みがうかがえる、2つの長尺インプロヴィゼーションで構成されている。音楽的には、Kangが長年探求してきた微分音、ラーガ、スピリチュアルジャズの影響が感じられ、ヴィオラ・ダモーレの温かく共鳴する音色が、静かで瞑想的なテクスチャーを作り出す。音の重なりや間の取り方が非常に丁寧で、時間の流れや形態に対する深い意識を促す作りになっている。また、音楽の流れや呼吸、間と呼応するかたちで太極拳と気功のパフォーマンスを行うという構想もあるようで、静かで濃密、聴く者を深い集中状態へと誘う、瞑想的なインストアルバム。

Unknown Mortal Orchestraが1970~80年代のイタリアン・ホラーとブラック・サバスの影響を抽出した12インチEP『CURSE』。わずか10分ちょっとの全6曲、そのうち半分近くはイントロやアウトロのような断片にすぎないが、その短さゆえの凝縮された陰りと熱があり、どれもこの呪われた時代に向けたカタルシスを帯びている。「BOYS WITH THE CHARACTERISTICS OF WOLVES」ではサバス譲りの荒々しいリフで深い陰影を描き、「DEATH COMES FROM THE SKY」ではUMOらしい緻密で落ち着いたギターが幽玄な空気を纏う。じっくり浸るにはあまりに短く、むしろ断片的なスケッチの連なりに近いが、そこにこそ、このバンドが次にどこへ向かうのかという予感が滲んでいる。ゴシックで演劇的、血の気の多い悪ふざけのようでいて、どこか妙に楽しい。そんな一瞬の黒い幻影を焼きつけた作品。
なんとあのジムオルーク氏もラジオで紹介していたスウェーデンの電子音楽家Ragnar Grippeが、Terry RileyやSun Ra、Steve Reichの作品をも擁する音楽遺産級のミニマル宝庫Shandarからリリースしたミュージック・コンクレート~ポスト・モダン・クラシカルの大名盤、「Sand」がなんとこの度40年ぶりのヴァイナル再発です!
数々のアンビエント作家やミニマル音楽の意匠を受け継いだ20世紀最後のミニマリスト、Ragnar Grippeの世紀の作品がようやく21世紀にも日の目を見ました。元々はクラシック畑のチェロ奏者で、70年代初期にパリにて、Pierre SchaefferやPierre Henryにて創設された、当時の電子音楽の最先端を走ったGroupe de Recherches Musicales(GRM)にて学び、同じ頃交友を持ったLuc Ferrariから知識と機材を譲り受け、実験音楽スタジオl’Atelier de la Libération Musicale(ALM)を創設。本作は、インド出身の抽象画家、Viswanadhan Veluの作品に多大にインスパイアを受けて制作された一枚で、テープデッキ2台とギターにオルガン、カスタネットなどで構成される豊かな音色は没入感たっぷり。流れをわたる重厚なドローンの波に、おもちゃの楽隊が船を浮かべ、夢幻の空へと誘う極上インナートリップ体験。澄んだテクスチャーと童心に返る創造的な音世界に心ときめくこと間違いなしです。

スフィアン・スティーヴンスが2015年に発表した『Carrie & Lowell』が、10周年を記念して特別仕様でリイシュー!静謐で美しいサウンドと、母の死をテーマにした痛切な歌詞が融合し、彼のキャリアの中でも最もプライベートかつエモーショナルな作品として、多くのリスナーの心を掴んできた。アコースティックギターや繊細なエレクトロニクスを駆使しつつ、スフィアン・スティーヴンスの内省的で儚いボーカルが際立っており、シンプルなアレンジながら、感情の深みと緻密なサウンドスケープが融合している。Nick DrakeやElliott Smithのようなフォーキーな雰囲気に、スフィアンらしいクラシカルなアプローチが加わっているのも魅力のひとつ。今回の『Carrie & Lowell – 10th Anniversary Edition』には、未発表のデモ7曲を収録。楽曲の原型や制作過程を垣間見ることができ、アルバムがどのように生まれたのかをより深く感じられる内容となっている。また、カバーアートが新たにデザインされ、スフィアン自身がアルバムを振り返るエッセイを執筆。さらに、美しくデザインされた40ページのブックレットも付属し、作品の世界観をより豊かに味わうことができる。
フリクションのドラマー、チコ・ヒゲによる、オリジナルは1985年リリースのソロ名義セカンド作『Trap』。サウンドはまさにノーウェイヴ直系で、鋭角的なギター、捻じれたサックス、暴走するリズムが絡み合い、混沌の中に奇妙な統一感を生んでいる。ニューヨークのDNAやマーズあたりを思わせつつも、どこか湿った空気感や独特の転がらないビート感覚はやはり日本的。フリクションでのドラミングを土台にしつつ、より過激で自由度の高いアプローチが試みられており、全体を通して強烈な推進力とヒプノティックなグルーヴが支配していて、実験性と身体性が同時に走っている。ジャズ的な即興のニュアンスも垣間見える一方で、パンクの粗暴さとノイズの美学が前面に出ており、制御されたカオスとでも呼ぶべきサウンドを形成している。80年代日本のノーウェイヴを象徴する重要作にして、チコ・ヒゲの革新性を刻み込んだ孤高の一枚。
80年代初頭、日本アンダーグラウンドの唯一無二の残像のような一枚、Daisuck & Prostituteによる『Dance Till You Die』。「踊り尽くせ」という命令と警告が同時に響く、妥協のないポストパンクのエネルギーが詰まったサウンドは、ニューヨークのNo Waveを思わせる尖ったギター、ノイジーで異物感のあるテクスチャー、ざらついたヴォーカルに支えられつつ、どこか儀式めいたグルーヴを持っているのが特徴的で、無秩序なようでいて、身体を突き動かす強烈なリズムがあり、ダンスフロアでも異様に機能してしまう。その一方で、聴き心地は決して容易ではなく、鋭利な音の断片が次々と突き刺さってくる。当時は商業的な動きとはまったく無縁で、伝説の地下音源というべきその異様な存在感や妥協のなさは、時代を超えてなお鮮烈に響く。日本のポストパンクが世界的な爆発の只中でどう独自の形をとったのかを物語る重要なドキュメント。
オリジナルは1972年リリースのドン・チェリーによる、彼の音楽的ヴィジョンをもっとも広く伝える作品として、幅広いファンから支持されている名作『Organic Music Society』。この作品でチェリーは、フリー・ジャズの枠から大きく飛び出し、「音楽は世界共通の言語」という信念のもと、地球規模のサウンド・コラージュに挑戦している。録音は1970年代初頭のスウェーデンで行われ、スウェーデン、トルコ、ブラジル、アフリカ出身のミュージシャンたちが集まった多国籍アンサンブルが参加している。演奏も多彩で、チェリー自身はトランペットだけでなく、ハルモニウム、フルート、コンチ・シェル(ほら貝)、ピアノ、さらには歌まで披露。収録曲は彼自身のオリジナルに加え、テリー・ライリー、ファラオ・サンダース、ダラー・ブランドの楽曲も含まれている。音楽的には、宗教的な儀式を思わせるような瞑想的な曲から、エネルギッシュで奔放な即興演奏まで、振り幅のある構成。どの曲も実験精神に満ちていて、ジャンルを超えた自由さと、深い精神性が共存した一枚。
仏〈Ocora〉にも比肩しうる広範かつディープな世界各地の伝統音楽のカタログを持つスイスのローザンヌ近郊に拠点を置く、長い歴史を持つレーベル〈VDE/Gallo〉より、マリの牧畜民・プル族の伝統的なフルート演奏を収録したフィールド録音作品。1993年に現地で録音された音源には、牧童たちの踊りや儀礼に伴うフルートの即興演奏が収められている。風のような音色のフルートによる即興は、反復的で呪術的な旋律構造、複数のフルートによる幽玄な絡み合いを伴って聴く者をトランス状態へと誘う。サバンナの風景や遊牧民の暮らしと深く結びついていて、耳を傾けていると、自然との一体したかのような静かな喜びと深い余韻が残る。今は失われてしまった世界の貴重な記録。
仏〈Ocora〉にも比肩しうる広範かつディープな世界各地の伝統音楽のカタログを持つスイスのローザンヌ近郊に拠点を置く、長い歴史を持つレーベル〈VDE/Gallo〉より、コンゴ民主共和国(旧ザイール)に暮らすナンデ族の伝統音楽を収録した1986年のフィールド録音作品。婚礼や誕生などの儀礼に根ざした歌と演奏は、共同体の営みと精神性を生々しく伝え、口弓、フルート、フィドル、ハープ、ラメロフォンなど多彩な民族楽器が登場。旋律は反復的で呪術的な響きを持ち、歌声は語りに近く、生活と密接に結びついたリズムと抑揚が聴く者をアフリカ中央部の村の風景へと誘う。楽器の音色は素朴で力強く、自然との一体化しているかのようで、録音から感じ取れる演奏者の存在が消えてしまったかのような静寂さとリアリティは圧倒的。今は失われてしまった世界の貴重な記録。
