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7月上旬再入荷(納期変更となりました)。シカゴを拠点に活動するWhitney Johnson、Lia Kohl、Macie Stewartの三人が、長年の即興実践と深い聴取の感覚をもとに紡ぎ上げた『BODY SOUND』。音が生まれる瞬間の親密さと、空間が持つ固有の気配をそのまま封じ込めたような作品で、ヴィオラ、チェロ、ヴァイオリン、声は、ただ重なるのではなく、録音された場所の空気、光、温度と結びつきながら、ゆっくりと形を変えていく。スタジオ、教会、フェス会場のパブ。異なる空間で生まれた即興の断片は、アナログテープの物理的な操作によって再び編み直され、時間の層が折り重なるような独特の深みを帯びる。テープは単に質感を与えるためではなく、もうひとつの即興として機能し、音の流れを揺らし、歪め、再配置していく。そこに立ち上がるのは、フォークの素朴さ、ドローンの持続、実験音楽の自由さが自然に溶け合った、どこかの土地に伝わる古い音楽のような気配。深く、静かで、時にざらつき、時に広がり、言葉よりも先に、音と空間と身体がひとつの呼吸で動くような、内側にある静かな場所へとそっと触れる作品になっている。

イタリアの作曲家、ヴァイオリニスト Silvia Tarozzi が、詩・民謡・室内楽・即興・歌をひとつの流れに溶かし込んだ、繊細で温かいパーソナルなアルバム。メロディやリズムにイタリアの伝統音楽の影がさりげなく差し込み、ヴァイオリンの旋律は時に祈りのように、時に語りかけるように響く。Tarozzi の声は歌と語りのあいだを揺れ動き、言葉が音楽の中に自然に溶け込んでいく。そこには、現代音楽の厳密さと、フォークミュージックの温かさが同時に息づいている。アンサンブルは小さく、親密で、どこか家庭的。弦、ギター、パーカッション、声が寄り添いながら、小さなフレーズが反復し、ゆっくりと変化していくミニマルな構造で、電子音の加工は控えめで、生音の温度感がそのまま作品の核になっている。抽象的でありながらとても人間的で、身体の奥に触れるような温かさと込められた感動が印象的。Silvia Tarozzi が自身のルーツを丁寧に紡ぎ上げた、静かで光に満ちた音楽の旅。

イタリアの作曲家、ヴァイオリニスト Silvia Tarozzi が、詩・民謡・室内楽・即興・歌をひとつの流れに溶かし込んだ、繊細で温かいパーソナルなアルバム。メロディやリズムにイタリアの伝統音楽の影がさりげなく差し込み、ヴァイオリンの旋律は時に祈りのように、時に語りかけるように響く。Tarozzi の声は歌と語りのあいだを揺れ動き、言葉が音楽の中に自然に溶け込んでいく。そこには、現代音楽の厳密さと、フォークミュージックの温かさが同時に息づいている。アンサンブルは小さく、親密で、どこか家庭的。弦、ギター、パーカッション、声が寄り添いながら、小さなフレーズが反復し、ゆっくりと変化していくミニマルな構造で、電子音の加工は控えめで、生音の温度感がそのまま作品の核になっている。抽象的でありながらとても人間的で、身体の奥に触れるような温かさと込められた感動が印象的。Silvia Tarozzi が自身のルーツを丁寧に紡ぎ上げた、静かで光に満ちた音楽の旅。
NYブルックリンのコンポーザー、パペッティア Tristan Allen が、4年をかけて制作した神話三部作の第二章となるアルバム『Osni the Flare』。前作『Tin Iso and the Dawn』に続く物語で、火の発見を通じて人間が神へと変容していくというテーマが全4幕構成で展開される。言葉を持たないボーカル、オルガン、オカリナ、トイ楽器、フィールド録音など、非常に多様な音素材が使われ、ファンタジックでシンフォニックな音世界を構築している。トイ楽器や素朴なメロディが童話のような質感を生んでおり、神話的なテーマと結びつき、フォークの原初的な雰囲気も感じさせる。自宅で録音された手触りのある音像は、聴く者を静かに包み込み、まるで一冊の神話絵本を音だけで読んでいるかのよう。物語の持つ力と共鳴して、Tristan Allen の創造性がさらに豊かに開花した作品。
ポーランドのギタリスト、Raphael Rogińskiと、セルビアの伝統歌唱を軸に活動するRužičnjak Tajniが共作した、バルカンの深い伝承を思わせる響きと現代音響が交わるエクスペリメンタル・フォーク作品。強靭でストレートなバルカン歌唱が中心にあり、その倍音や揺れが音楽全体の芯をつくる。対照的にロギンスキのギターは、旋律を前に出すのではなく、ドローンや打弦、鋭い単音を組み合わせながら、独自の質感で周囲を支えている。民謡の旋律や宗教歌、オスマン帝国由来の古い歌など、バルカン半島の多層的な音文化を素材にしながら、和声や音の配置は現代音楽的で、伝統と実験が自然に呼応する独自の音響世界を形成。リズムは明確に刻まれず、呼吸や語りの間合いが時間の流れをつくり、聴き手を歌の奥にある風景へと引き込む。
長大なMorton Feldman のピアノ作品をほぼ網羅!Philip Thomas による25年以上の研究と演奏経験が結実した、決定版とも言える 5 枚組ボックスセット。John Tilbury の4CD旧全集では未収録だった作品も多数収録しており、うち3曲は世界初録音。極めて柔らかいタッチと精密なコントロールが印象的なPhilip Thomas の深い理解と静謐な演奏が、Feldman の音楽の本質である、音の消え際、時間の伸縮、静寂の美を鮮やかに浮かび上がらせている。52ページに及ぶPhilip Thomas による詳細な解説も付属。Feldman の作曲思想、演奏解釈、作品背景が丁寧に記されており、研究資料としても価値が高い一作。
Morton Feldman後期の三つの大作「Why Patterns?」「Crippled Symmetry」「For Philip Guston」を収めたCD6枚組ボックスセットが〈Another Timbre〉より登場。演奏はGeorge BartonとSiwan RhysによるGBSR Duoに、フルート奏者Taylor MacLennanを加えた編成で、Feldmanが晩年に好んだフルート、ピアノ(またはチェレスタ)、打楽器という独自のトリオ編成による作品を網羅している。収録の後期三大作は、1970年代後半〜80年代のFeldmanが確立した、静けさの中で微細に変化し続ける音を極限まで追求した作品群で、静けさの中で音がわずかに揺らぎ、時間が伸び縮みするような独特の世界。GBSR Duo+Taylor MacLennanによる演奏も、透明度が高く、緊張感と静けさが共存する精緻なもの。音が消えゆく瞬間に重心が置かれた、極限まで繊細な時間の芸術。
Eden Lonsdale による、夜明け前の薄明かりのように、静かな音が少しずつ形を変えながら広がっていく作品『Dawnings』。長く伸びる持続音が重なり、その内部でわずかな揺らぎや色の変化が生まれる。大きな動きはほとんどないにも関わらず、聴いていると空気の密度が少しずつ変わっていくような感覚がある。音が動くというより、
空間そのものがゆっくりと明るくなっていくような印象の Lonsdale の音楽は、微細な音の重なりだけで豊かな表情が生み出されている。静けさが主役となり、その中で生まれる小さな変化が、まるで光が差し込む瞬間のように繊細に響く。何も起きていないようでいて、実は絶えず変化しているという静かなドラマを描いた、内省的で美しい一枚。
Morton Feldman晩年の代表作「Violin and String Quartet」を、Apartment Houseが鋭敏な感性で捉え直した新録音。「Violin and String Quartet」は、Steve Reichが「Feldmanの作品で最も美しい」と語った、同じ1985年に書かれた「Piano and String Quartet」をさらに推し進めたような作品で、2時間20分にわたって、ほとんど動かないようでいて、微細な変化が絶えず揺れ続ける。Apartment Houseの解釈は、これまでの録音とは明確に異なっており、各楽器を近接で収録し、弓の圧力の変化や、わずかな音程の揺れ、響きの微動までを拡大して聴かせる。Feldmanがこだわった自然な残響や音の減衰が、余白の中で前景に浮かび上がり、音と音のあいだの沈黙までもが作品の一部として息づくかのよう。旋律らしい旋律はほとんどなく、雲のように漂う和音の層がゆっくりと形を変え、同じようでいて違う音の渦が何度も現れては消える。その反復は、聴き手に絶えず小さなデジャヴを与え、現実感覚を曖昧にする。注意深く耳を澄ませるほどに世界は広がり、時間から解き放たれ、ただ音の中に漂うMorton Feldmanの到達点。
〈Another Timbre〉より、モートン・フェルドマンのもっとも実験的で興味深い時期の一つである1950〜60年代の重要作を包括的に収めたアルバム『Two Pianos and Other Pieces, 1953–1969』。中心となる「Two Pianos」(1957)は、フェルドマン解釈の第一人者John TilburyとPhilip Thomasによる2台ピアノ作品で、同じ素材をわずかに異なるタイミングで反復することで生まれる微細なズレと揺らぎが、フェルドマンの美学を純度高く体現している。他の収録曲には、ピアノ作品の他、室内楽曲が多数含まれ、弦・打楽器・金管が加わることで、静謐な音の層が淡く重なり合うフェルドマン独自の音響世界が立ち上がる。音は沈黙と等価に扱われ、空間に漂い続ける。浮かび上がる物語性を排した純粋な時間の流れ。
ルネサンス後期の作曲家ニコラ・ゴンベールの濃密なポリフォニーを、現代の耳で静かに照らし直した作品集『G O M B E R T』。ここで聴こえるのは、歴史的な作品の再現というよりはゴンベールの音楽が現代の空気の中でどのように響き直すかを探る、繊細で内省的な対話。〈Another Timbre〉主宰サイモン・レイネルの、癌の診断をきっかけとした「初期音楽を別の文脈で聴きたい」という個人的な願いから始まったこのアルバムは、古楽の神聖さや霊性を脱ぎ捨て、音楽を現実へと引き戻す。通常は声楽で歌われるモテットを、Apartment House がチェロ、ヴィオラ、バスクラリネット、バスフルート、そして意外にもトランペットという暗く低い器楽編成で演奏する。ビブラートも教会の残響も排したストレートな音は、ゴンベールの音楽を天上の響きから解放し、静寂の中にリアリティを伴ってポリフォニーを浮かび上がらせる。電子サイン波、ピアノ、微分音による静謐なテクスチャーがゴンベールの濃密さと好対照をなす作曲家ジェイムズ・ウィークスによる5つの間奏曲も挟まれ、古楽の残響と現代の静謐が共存する、稀有な音響世界を生み出している。
フェルドマン初期の美学が最も純粋な形で現れたピアノ作品『Intermission 6』。音は流れず、語らず、ただ静かにそこに置かれる。ひとつひとつの音が空間に浮かび、消えていくまでが作品の中心となり、音と静寂の境界がゆっくりと溶けていく。テンポの感覚はほとんどなく、音は点描のように散らばり、そのあいだに広がる余白が、むしろ音以上の存在感を持つ。音がほとんど動かないのに、時間がどんどん深く沈んでいくような独特の感覚。抽象絵画のように、意味や物語を排した純粋な音の配置。後期の長大な作品へとつながる美学の原型が、この短いピアノ曲の中に凝縮されている。静寂の中に微細な色彩が立ち上がる、フェルドマンの核心を味わえる一枚。
アメリカ出身の現代音楽作曲家 Catherine Lamb が長年探求してきた音の関係性そのものを聴くという美学が、極めて純粋な形で展開される作品『Curva Triangulus』。長く持続する音、わずかにずれた音程、倍音が重なり合うことで生まれる微細な揺らぎ。そのどれもが、旋律やリズムといった音楽的な動きを超えて、音と音のあいだに生まれる現象そのものを聴かせる。音はほとんど変化しないように見えて、実際には空気の密度が少しずつ変わり、うなりや干渉が静かに脈動する。その変化はあまりに緩やかで、気づいたときにはまったく別の場所に立っているような感覚がある。静けさの中に複雑な色彩が潜み、音が空気と溶け合いながら形を変えていく、Lamb の音楽が持つ透明な濃密さが、極限まで研ぎ澄まされた一枚。
Morton Feldmanの晩年作「Piano and String Quartet」を、Apartment Houseが極限まで繊細な集中力で描き出した名演。2021年、ロンドンの Wigmore Hall で行われたFeldman 1日3公演の最終ステージで披露された演奏が大きな反響を呼び、その流れから正式録音が実現。80分近い長尺にもかかわらず、音楽はほとんど囁きのように静かで、ピアノの柔らかな反復と、弦楽器の薄いヴェールのような持続音が、触れそうで触れない距離感を保ちながら進んでいく。旋律や展開を追うというより、音の質感や配置がわずかに変化していくのに浸るもので、時間が伸びたり縮んだりするような感覚が生まれ、聴き手は音の中に静かに沈み込んでいく。Feldman晩年の静謐な美の核心を捉えた一枚。
フェルドマン晩年の美学が極限まで研ぎ澄まされた室内楽作品『Piano, Violin, Viola, Cello』。ピアノと弦楽三重奏というシンプルな編成にもかかわらず、音はほとんど動かず、語らず、ただ静かに置かれる。わずかな配置の変化が、時間の流れをゆっくりと歪め、聴くという行為そのものに意識が沈んでいく。音と音のあいだには大きな余白があり、その静寂こそが作品の中心で、反復するようで決して同じには戻らないパターンが、微細な揺らぎを伴って現れては消え、抽象絵画のような静かな迷宮を形づくる。長大でありながら、密度は限りなく薄い。しかしその薄さの中に、フェルドマンが追い求めた無時間性が息づいているよう。何も起きないようでいて、深く吸い込まれる、フェルドマン後期の核心。

アメリカ出身の作曲家 John McGuire が晩年に取り組んだ二つのストリング・トリオのための作品をまとめたアルバム『Double String Trios』。二組の弦楽三重奏が精密に重なり合い、ミニマル・ミュージックの反復性とヨーロッパ前衛の構築性が滑らかに融合していく。電子音楽の研究で培われた精密な時間感覚がアコースティック楽器に応用され、透明で結晶のような響きが持続しながら、絶えず微細な変化が生まれている。緻密でありながら温度を感じる独特の音世界は、時間・響き・構造が多層的に折り重なる、現代音楽の中でも特に静謐で美しい結晶のような音楽!

LAのハープ奏者Nailah Hunterと、テルミン奏者Aliaによる、Harold Buddの名作『The Pavilion of Dreams』の再解釈作品。2024年11月にロサンゼルスで行われた〈Leaving Records〉主催の野外コンサート「Listen to Music Outside in the Daylight Under a Tree」のために構想され、黄金色の自然光の中で生まれた音楽が、その空気まで一緒に封じ込められている。柔らかく波打つハープの余韻と、空中に線を描くようなテルミンの揺らぎが重なり、Harold Buddの透明なミニマリズムを受け継ぎつつ、より自然の呼吸に近い有機的な質感は、柔らかな光の中に溶けるアンビエント・ドリーム。
チリのギタリストCristián Alvearの依頼により作曲された、Catherine Lamb初のギター作品『Point/Wave』。環境音をマイクロトーナルな和音へ変換するSecondary Rainbow Synthesizerを用いた電子ドローンと、極めて静謐で均質なタッチのギターによる点描的フレーズが、長い時間軸の中でゆっくりと干渉し合う構造を持ち、音が前へ進むというより空間に滞留し続けるような独特の静けさと緊張感を保ち、倍音同士の微細な揺らぎが耳の奥で共鳴しながら、聴き手そのものを調律するかのように、知覚を変容させる。その音像は、幾何学的でありながらどこか有機的な、静かで強度のある現代音楽作品。

エストニア出身、ロンドンを拠点に活動するピアニスト、作曲家Hanakivの最新作『Interlude』が〈Gondwana Records〉から登場。前作の深く美しい瞑想的なピアノ・アルバム『Goodbyes』などの作風から一歩踏み込み、本作ではソングライティングと声の表現を取り入れている。自身のヴォーカルをフィーチャーした楽曲が収録され、ピアノの余白に溶け込むような囁き声が、作品全体に暖かみを与えている。静謐でありながらどこか生命力を帯びた、柔らかく光を放つピアノ、繊細なストリングス、控えめな電子処理が重なり、時間が止まったような瞬間を丁寧にすくい取る。エストニアの自然や聖歌の記憶と、ロンドンの先鋭的な音楽環境が交差した、懐かしくもあり、新しくもある一枚。
ヴァインデルヴァイザー楽派の名アンサンブルである”Ordinary Affects”にて16年から共に活動してきたJ.P.A. FalzoneとMorgan Evans-Weiler。それぞれが個別に作曲した長編を収録した2枚組CDが名所〈Another Timbre〉からリリース!19年1月にコネチカット州ミドルタウンのリベラル・アーツ系大学のウェズリアン大学の記念礼拝堂にて、ヴァンデルヴァイザー周りの作品のエンジニアリング、そして、Alan SondheimやJosé Jamesとの共作も知られるLuke Damroschによって録音された一作。虚空のなかで淡々とアイソレーションを加速させる弦楽ドローン・ミニマルなMorgan Evans-Weiler側、哀愁が匂うピアノとヴァイオリン、ヴィブラフォンによる点描的なサウンドが枯淡とした美しさを放ったJ.P.A. Falzone側と、ともに音数は抑えながら、日本的な侘び寂びの風趣さえも感じさせる、大変エニグマティックな室内楽作品。途轍もなく素晴らしいです!
Catherine LambとJohnny Changが長い時間をかけて作り上げた、架空の作曲家Viola Torrosをめぐる創造的音世界。失われた中世音楽の再発見を装い、架空の断片的資料を研究・編曲・解釈するという形でふたりが自らの音楽的系譜と方法論を探る。音楽は、アラビア、ビザンツ、インドの旋法的伝統を通過した失われた古楽のような気配を漂わせつつも、直接的な模倣ではなく、あくまで現代の耳で再構築されたもの。ヴィオラを中心にした長い持続音、微細な音程のずれ、共鳴によって生まれる倍音の揺らぎ。LambとChangの音楽に特徴的な、静かだが生きている音響が全編を貫いている。歴史の影と現代音楽の透明さが交差する、架空の古楽のような多層的な美しさを持つ作品集。
現代作曲家、音律研究者である Marc Sabat が、バッハの作品を純正律や歴史的調律法で再構築し、まったく新しい響きを引き出す、非常にユニークで知的な音響実験アルバム。純正律で響く和音は驚くほど澄み渡り、別の調では緊張を帯びて不安定に揺れる。その変化が、バッハの対位法や和声の構造を新しい角度から照らし出し、音楽そのものの骨格が立体的に浮かび上がる。古楽の復元でも現代音楽の再解釈でもなく、調律という音の根本を作曲素材として扱うような、知的で静謐な探求。バッハを別の角度から照らし、音と音の関係性にじっくりと耳を澄ませる。その響きは透明で、ミニマルで、どこか瞑想的。音が正しく響くとはどういうことなのかを問いかける一枚。
英国作曲家 Bryn Harrison による、二台ピアノと電子音響のための45分の大作『Towards a Slowing of the Past』。神秘的で細密なピアノの連続と、反転・変速・ピッチ変化を施した録音素材が重なり合い、時間と記憶が曖昧になるような知覚の迷宮を作り出す。音楽は全体を通して二オクターブ下降し、速度も半分まで減速。中盤の電子音による二分間の静止和音を経て、終盤では電子音響が支配的となり、生演奏との境界が曖昧に。Mark Knoop と Roderick Chadwick の精密な演奏が、一見静かに見えて、内側では絶えず変化が起きているこの複雑な構造を鮮やかに浮かび上がらせている。理解するよりも浸ることがふさわしい、現代ピアノ作品の到達点。
純正律と倍音構造の探求を続けるCatherine Lambが、声とアンサンブルの干渉から生まれる色彩を多層的に描き出した『parallaxis forma』。旋律やリズムの展開ではなく、音が重なり合うことで生まれる微細な揺らぎや干渉そのものが中心に置かれており、ビブラートを抑えた声が、弦・管・ハーモニウムなどのアコースティックな響きと溶け合い、境界が曖昧になる瞬間が何度も訪れる。倍音がゆっくりと変化し、音の明度や密度が少しずつ移ろう様子は、まるで光の屈折を聴いているかのよう。音の存在の仕方そのものを聴かせる、静かでありながら豊かな変化に満ちた美しい音響作品。
