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音楽家・大野慎矢によるソロ・プロジェクト KiMiMi が、東京・三田に位置する建築家・岡啓輔による20年のセルフビルド建築「蟻鱒鳶ル」に宿る時間の層と人々の気配を音として掬い上げ、音楽として再構築した作品『ИМА(イマ)』。
ブルガリアで学んだガイダ(バグパイプの祖先楽器)を軸に、多彩な楽器を自在に操るマルチ奏者のKiMiMiは、これまで旅先で録りためた生活の痕跡や民俗的な旋律を宅録というスケールに持ち帰り、カセットテープ作品や舞台音楽などを通して幻想的なフォークロア音響を紡いできました。
その音楽活動の傍ら、「蟻鱒鳶ル」の建築作業にも参加し、現場で響くハンマーや鉄骨の音、昼休みの雑談、誰かが奏でた楽器の旋律、通りを走る車の音などを記録してきました。 2022年末からは、この建築を題材にしたZINE『月刊 蟻鱒鳶ル売り鱒』が始動。KiMiMiは毎号寄せる音楽作品にこれらの録音を取り入れ、ガイダをはじめ、アコーディオン、ギター、笛、ウクレレ、ピアノ、足踏みオルガン、鍵盤ハーモニカ、シロフォンなどの生楽器、そしてシンセサイザーの音を重ね合わせながら、現場の湿度や呼吸が刻まれたサウンドスケープを形にしています。
KiMiMiの創作は、計画的な構築よりも、偶然や直感、そして時間の流れに委ねる姿勢に貫かれています。断片的な録音を重ね、時間を置き、再び掘り起こす。その繰り返しの中で、音楽が自然と形を成していきます。それはまさに、あらかじめ図面を用意せず即興的に層を重ねあわせ、つくりあげられていった蟻鱒鳶ルのプロセスと共鳴します。
『ИМА(イマ)』は、KiMiMiの音の旅の現在地であり、建築と音楽、記録と創作、個と共同体の境界を軽やかに越えていく試みです。都市の喧騒、手作業の静けさ、笑い声、蟻鱒鳶ルの現場に響くあらゆる音たちが、KiMiMiの音楽と溶け合い、人が生きる時間そのものを映し出しています。

太鼓芸能集団 鼓童 前田順康と飛騨音響派による共同作品。
4時間に及ぶ完全即興から抜粋されたライブ音源には、電子音、声、和太鼓、ゴングなどが介在し、音へと変換された飛騨高山の空気、場の記憶が刻まれる。
幾重にも重なる「音脈」「響脈」は、音響、律動、アンビエント、ノイズ、トライバル、スペーシー、陶酔、覚醒、すべてのあわいをたゆたう。
限定100部カラーヴァイナル仕様。Gigi Masinが特別プレゼンターとして紹介する、イタリアのアンビエント・ユニットUp To 23の2ndアルバム。Marco BuffettiとFrancesco Fincatoに加え、本作からEnrico Coniglioが正式加入し、3名体制へと拡張。80年代SF映画のサウンドトラックから強く影響を受けたという本作は、アンビエント/エレクトロニックを軸に、ドゥーム的な暗さとロマンティックな光が同居する独特の世界を構築。シンセの揺らぎと深いリバーブ、霧のように漂うギターが重なり、過去に想像された未来の風景を思わせる。Gigi Masinの美学を受け継ぎながら、Up To 23ならではのメランコリックな質感が際立つ1枚。
限定100部カラーヴァイナル仕様。イタリアのアンビエント作家Fabio Orsiの最新作は、静かで柔らかく、薄明かりのようなアンビエンスから始まり、曲が進むにつれて天上へ昇るように広がっていく構成が印象的。穏やかさと上昇感が同居するサウンドは、Orsi の近年の電子音楽的アプローチをさらに洗練させたもので、静謐な冷たい空気の中で、隠されたものが少しずつ声を持ち始めるような、詩的でエモーショナルなアンビエント作品。
DeepChord、Echospaceの中心人物たるRod Modellによる最新アンビエント作品『Frequencies In The Fog』。Pt.1 と Pt.2 の2曲構成で、パッドを中心としたミニマルな音の軌跡、控えめに配置された電子音の粒子、ゆっくりと深く包み込む低音が持続的に重なり合う。逆再生処理された判別しにくい声の残響や、停滞する静寂と円環的な動きが交互に現れ、厚い霧の層の奥から現実の風景が断片的に浮かび上がっては消えていくよう。Rod Modellらしい深海のような音響と環境音の抽象化が研ぎ澄まされた一枚。
DeepChord、Echospaceの中心人物たるRod Modellによる洞窟の奥深くを進むようなディープ・アンビエント作品『Grotto of the Sun』。Pt.1 と Pt.2 の2曲構成で、水が滴る音やせせらぎのような揺らぎ、低く深い脈動、ざわめき・きしみ・風のようなノイズに突然差し込む光のような明るい音の層が折り重なり、抽象的でありながら強い情緒とドラマ性を帯びたサウンドスケープが展開する。音は一見静かで瞑想的だが、実際には細部まで緻密に作り込まれており、Rod Modellらしい深海的アンビエントが、洞窟というモチーフを得てさらに濃密になったような一枚。

スイスの大名門〈WRWTFWW Records〉が手がける、アンビエント、ミニマル、実験音楽のコンピレーション・シリーズ第2弾『Art Form 2』。日本アンビエント、ニューエイジ、ミニマル、実験音楽、バレアリックなど、レーベルが大切にする静けさと質感を軸にした選曲で、80年代〜90年代の環境音楽の精神を現代的にアップデートしたような内容。シンセの柔らかなレイヤー、透明感のあるピアノ、風景の断片のようなフィールド録音、穏やかなドローンなど、参加アーティストそれぞれが独自のアプローチで音の空間を描き出している。曲ごとに異なる質感を持ちながら、アルバム全体としては深い静寂と統一感が漂っており、生活に寄り添いながらも静けさの中に豊かな色彩があり、耳を澄ませば深い音響世界が広がる。

スイスの大名門〈WRWTFWW Records〉が手がける、アンビエント、ミニマル、実験音楽のコンピレーション・シリーズ第1弾『Art Form I』。日本アンビエント、ニューエイジ、ミニマル、実験音楽、バレアリックなど、レーベルが大切にする静けさと質感を軸にした選曲で、ピアノ、シンセ、フィールドレコーディング、ドローン、アコースティック楽器など、それぞれのアーティストが独自の音響空間を構築。曲ごとに風景が変わるような、コンピレーションならではの楽しさと、全体として漂う深い静寂と統一感が魅力的。第2弾と比べて、オーガニックな透明感と余白の美しさが際立っており、静かで、深く、心を整える一枚。

フランスのプロデューサーSimo Cellと、エジプトの詩人/シンガーAbdullah Miniawyによるコラボ作。前作EPから続くタッグで、デジタル疲れの時代に生きる私たちをテーマに、現代を象徴する実験的ベース・ミュージック作品となっている。ベース・ミュージックやダブステップの重さを軸に、Miniawyのアラビックな歌声や語りが重なり、祈りのようでもあり、機械的でもある独特のムードを生む。曲ごとに雰囲気が大きく変わり、重低音がゆっくり迫ってくる曲もあれば、霧の中を歩くようなアンビエント、奇妙に跳ねるリズムの曲もある。2分動画に最適化された現代の消費スピードに逆行し、時間をかけて変化する構造を採用した、聴くほどに深く沈み込む一枚。

エストニア・アンダーグラウンドの象徴Ajukajaと、変幻自在のボーカリスト、パフォーマーMart Aviによる、13年にわたる制作期間を経て完成した異形のダブル・アルバム『Death of Music』。収録された楽曲は、ポップ、クラブ、アンビエント、ポストR&B、実験音楽が縫い合わされた万華鏡的構成で、Ajukajaのオーガニックで奇妙に歪んだ電子音と、Mart Aviの変幻する声が絡み合い、曲ごとに世界が激しく変容する。ノイズ、歪み、静寂、甘いメロディが交互に現れ、メロディは美しいのに、どこか歪んでいて、常に不安定な揺らぎがある。美しさと奇妙さが同居する、ポップの死骸を縫い合わせたような奇妙なポップネスは、音楽が壊れながら進化していく瞬間をそのまま封じ込めたよう。
『Acid Mt. Fuji』『Zen』など、90年代に独自の美学を確立した横田進。その黄金期に録音されながら未発表のまま眠っていたDAT音源を復元したアーカイブ作品が、〈Transmigration〉から2LPで登場。Ray Castleに贈られたテープが偶然の再会によって発掘され、没後10年という節目にようやく世に出た奇跡のリリース。収録された8曲は、湿度を帯びたアシッドライン、幽玄なアンビエンス、スピリチュアルな浮遊感が交差し、当時の彼が持っていた柔らかいサイケデリアが鮮やかに蘇る。A面のダウンテンポ寄りアシッドから、B面の浮遊感、C面の儀式的なグルーヴ、D面の宇宙的な余韻まで、名義を横断していた時期ならではの多層的な世界観が広がる。90年代の横田進の核心を捉えた、電子音楽史的にも重要な発掘盤。

〈Tax Free Records〉より、Question Markによるドゥーム・アンビエント『The Ghetti Man』が登場。DIYアンビエントやインダストリアルの影響を受けた全5曲を収録し、17分に及ぶ最終曲「The Look Out (Ancient Methods)」へ向けてじわじわと深度を増していく。低周波のうねり、ざらついた質感、金属的な残響が重なり合い、まるで地下深くで鳴っているような重く湿ったアンビエンスを形成。反復の中で微細なノイズが揺らぎ、儀式的な緊張感がゆっくりと積み上がっていく。インダストリアルの荒涼とした影が差し込みつつ、カセット作品ならではのローファイな密度が、閉ざされた空間の圧力をより強く感じさせる。深く没入する地下の聖域。

フランスのレフトフィールド名門〈Antinote〉から届いた、Klein Volk の7年ぶりとなるセカンド・アルバム。Marie Baeke、Timo Bonneure、Wesley Buysseの3名によるユニットで、前作『Gulden Onversneden』から続く素朴さと遊び心を軸にしながら、今作ではより深く日常の余白に耳を澄ませている。柔らかいシンセと軽やかなアンサンブルが織りなす牧歌的な電子音楽は、ミニマルでありながら感情豊かで、小さなフレーズが反復し、ふとした瞬間にメロディが光を差し込ませる。アンビエント、ニューエイジ、レフトフィールド、ジャズ、シンセ・ポップが自然に混ざり合い、春先の光や夕暮れのような移ろいを感じさせる。深刻さに覆われた時代の中で見落とされがちな、ささやかな瞬間の美しさをそっとすくい上げるような静かで温かいエレクトロニック作品。
NYブルックリンのコンポーザー、パペッティア Tristan Allen が、4年をかけて制作した神話三部作の第二章となるアルバム『Osni the Flare』。前作『Tin Iso and the Dawn』に続く物語で、火の発見を通じて人間が神へと変容していくというテーマが全4幕構成で展開される。言葉を持たないボーカル、オルガン、オカリナ、トイ楽器、フィールド録音など、非常に多様な音素材が使われ、ファンタジックでシンフォニックな音世界を構築している。トイ楽器や素朴なメロディが童話のような質感を生んでおり、神話的なテーマと結びつき、フォークの原初的な雰囲気も感じさせる。自宅で録音された手触りのある音像は、聴く者を静かに包み込み、まるで一冊の神話絵本を音だけで読んでいるかのよう。物語の持つ力と共鳴して、Tristan Allen の創造性がさらに豊かに開花した作品。

MFMの名作、Gigi Masinを一躍有名にしたリリースがリプレスです!! 立ち上る桃源郷...生命本来の瑞々しさが蘇る儚いひと時...ニューエイジ/バレアリック新時代に歴史的遺産を提示する名レーベル"Music From Memory"より、新たに出版されるのはイタリアの古くからのアンビエント作家、Gigi Masin。
イタリア産アンビエントの名盤Windや、あのCharles Haywardとの共作なんかも発表している人物。その"Wind"収録曲始め、今作はこれまでの作品から選出された編修盤という1枚で、どれも有機的な楽園の広がりがあり、穏やかに包んで心を離さず、すやすやと佇む電子の海辺が待っています。透明なアンビエンスとコーラスや、魅惑に響くストリングスもさながら、なにより音のプロダクション面が際立っていて、その場の空間への浸透度合いが感動もの。全音楽好きに推したい珠玉盤です!
Sunn O))) の共同創設者Stephen O’Malleyによる、パイプオルガン作品『Spheres Collapser』が〈XKatedral〉より登場。本作は2つの長尺パイプオルガン曲で構成されており、O’Malley が演奏し、Kali Malone、Puce Maryも参加。録音にはスイス・ローザンヌのÉglise Saint‑Françoisにある歴史的オルガンが使用されており、スイスの名工Johann Jakob Scherrerによる18世紀のバロックオルガンを核として、19世紀のイギリスのWalker & Sonsと、現代のスイスの名門Orgelbau Kuhnによる大規模な増築、改修を経た、3つの時代の音色が統合された巨大な複合オルガンの音響が楽しめる。2つの楽章はどちらも長尺ながら、微細な倍音の揺れ、空気の震え、残響の変化が絶えず移ろい続け、時間感覚をゆっくりと溶かしていく。音は決して劇的に動かないが、わずかな変化が巨大な空間全体に波紋のように広がり、聴く者を深い集中へと導く。
モジュラーシンセを駆使して、自然の風景や天候、時の移り変わりを音で表現するEmily A. Spragueによる、2024年秋に行われた初の日本ツアーを記録したライヴ・アルバム。全国各地の会場で収録された8時間以上におよぶ演奏から編まれており、余計なミックスを施さず、最低限の編集だけでまとめられている。このツアーは旅として構想されていて、彼女はその場ごとの環境や空気とやりとりするように演奏を展開し、リアルタイムで反応できるようにライヴ機材を組み直し、偶発性と直感に身をゆだねながら音を紡いでいる。収録曲は実際の演奏順ではなく、ひとつの物語の流れを描くように配列されており、たとえば「Nagoya」「Tokyo 1」、10分を超える「Matsumoto」などは、重ねられたシンセの層が静かに脈打ち、日本の環境音楽やディープ・リスニングの系譜とも響き合う内容になっている。彼女が日本での出会いから引き出した、個人的で、かつ癒しの感覚に満ちた一回性の強いアンビエント・ドキュメント。

カナダの作曲家Matthew Patton によるプロジェクト Those Who Walk Away による、亡き友人 Jóhann Jóhannsson への深い哀悼を込めたポスト・クラシカル作品『Afterlife Requiem』。ポストクラシカルの巨匠Jóhann Jóhannssonのハードドライブに残されていた未完成の録音断片を素材として使用、その残響を中心に、アイスランドの Ghost Orchestra とウィニペグの Possible Orchestra、2つの弦楽五重奏団も参加し、新たな構造を編み上げている。ドローン、エレクトロアコースティック、フィールド録音、沈黙に近い音が重層的に配置され、音が現れては消え、弦の残響が霧のように漂う。深い静寂と低域のうねりが共存する幽玄な音世界は、レクイエムでありながら、どこか祈りのような温度を持っている。180g重量盤。
日野浩志郎と中川裕貴によるユニットKAKUHANとのコラボでも知られるポーランドの即興打楽器奏者Adam Golebiewskiと、メルボルン実験音楽シーンの重鎮Dave Brownによるデュオ作。ドラムとギターというシンプルな編成ながら、ノイズ、アンビエント、フリー・インプロヴィゼーションが溶け合う抽象的なサウンド。Golebiewskiのパーカッションは打撃よりも質感を重視し、擦過音や金属的なノイズが空間をざらつかせる一方でBrownのバリトン、テナーギターは旋律を避け、低い唸りや倍音の揺らぎを生み出す。ふたりの音が絡み合うことで、存在しない映画のサウンドトラックのような暗い光の世界が立ち上がる。
長大なMorton Feldman のピアノ作品をほぼ網羅!Philip Thomas による25年以上の研究と演奏経験が結実した、決定版とも言える 5 枚組ボックスセット。John Tilbury の4CD旧全集では未収録だった作品も多数収録しており、うち3曲は世界初録音。極めて柔らかいタッチと精密なコントロールが印象的なPhilip Thomas の深い理解と静謐な演奏が、Feldman の音楽の本質である、音の消え際、時間の伸縮、静寂の美を鮮やかに浮かび上がらせている。52ページに及ぶPhilip Thomas による詳細な解説も付属。Feldman の作曲思想、演奏解釈、作品背景が丁寧に記されており、研究資料としても価値が高い一作。
Morton Feldman後期の三つの大作「Why Patterns?」「Crippled Symmetry」「For Philip Guston」を収めたCD6枚組ボックスセットが〈Another Timbre〉より登場。演奏はGeorge BartonとSiwan RhysによるGBSR Duoに、フルート奏者Taylor MacLennanを加えた編成で、Feldmanが晩年に好んだフルート、ピアノ(またはチェレスタ)、打楽器という独自のトリオ編成による作品を網羅している。収録の後期三大作は、1970年代後半〜80年代のFeldmanが確立した、静けさの中で微細に変化し続ける音を極限まで追求した作品群で、静けさの中で音がわずかに揺らぎ、時間が伸び縮みするような独特の世界。GBSR Duo+Taylor MacLennanによる演奏も、透明度が高く、緊張感と静けさが共存する精緻なもの。音が消えゆく瞬間に重心が置かれた、極限まで繊細な時間の芸術。
Eden Lonsdale による、夜明け前の薄明かりのように、静かな音が少しずつ形を変えながら広がっていく作品『Dawnings』。長く伸びる持続音が重なり、その内部でわずかな揺らぎや色の変化が生まれる。大きな動きはほとんどないにも関わらず、聴いていると空気の密度が少しずつ変わっていくような感覚がある。音が動くというより、
空間そのものがゆっくりと明るくなっていくような印象の Lonsdale の音楽は、微細な音の重なりだけで豊かな表情が生み出されている。静けさが主役となり、その中で生まれる小さな変化が、まるで光が差し込む瞬間のように繊細に響く。何も起きていないようでいて、実は絶えず変化しているという静かなドラマを描いた、内省的で美しい一枚。
Morton Feldman晩年の代表作「Violin and String Quartet」を、Apartment Houseが鋭敏な感性で捉え直した新録音。「Violin and String Quartet」は、Steve Reichが「Feldmanの作品で最も美しい」と語った、同じ1985年に書かれた「Piano and String Quartet」をさらに推し進めたような作品で、2時間20分にわたって、ほとんど動かないようでいて、微細な変化が絶えず揺れ続ける。Apartment Houseの解釈は、これまでの録音とは明確に異なっており、各楽器を近接で収録し、弓の圧力の変化や、わずかな音程の揺れ、響きの微動までを拡大して聴かせる。Feldmanがこだわった自然な残響や音の減衰が、余白の中で前景に浮かび上がり、音と音のあいだの沈黙までもが作品の一部として息づくかのよう。旋律らしい旋律はほとんどなく、雲のように漂う和音の層がゆっくりと形を変え、同じようでいて違う音の渦が何度も現れては消える。その反復は、聴き手に絶えず小さなデジャヴを与え、現実感覚を曖昧にする。注意深く耳を澄ませるほどに世界は広がり、時間から解き放たれ、ただ音の中に漂うMorton Feldmanの到達点。
ルネサンス後期の作曲家ニコラ・ゴンベールの濃密なポリフォニーを、現代の耳で静かに照らし直した作品集『G O M B E R T』。ここで聴こえるのは、歴史的な作品の再現というよりはゴンベールの音楽が現代の空気の中でどのように響き直すかを探る、繊細で内省的な対話。〈Another Timbre〉主宰サイモン・レイネルの、癌の診断をきっかけとした「初期音楽を別の文脈で聴きたい」という個人的な願いから始まったこのアルバムは、古楽の神聖さや霊性を脱ぎ捨て、音楽を現実へと引き戻す。通常は声楽で歌われるモテットを、Apartment House がチェロ、ヴィオラ、バスクラリネット、バスフルート、そして意外にもトランペットという暗く低い器楽編成で演奏する。ビブラートも教会の残響も排したストレートな音は、ゴンベールの音楽を天上の響きから解放し、静寂の中にリアリティを伴ってポリフォニーを浮かび上がらせる。電子サイン波、ピアノ、微分音による静謐なテクスチャーがゴンベールの濃密さと好対照をなす作曲家ジェイムズ・ウィークスによる5つの間奏曲も挟まれ、古楽の残響と現代の静謐が共存する、稀有な音響世界を生み出している。
