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イタリア系ベトナム人アーティストRadio Hitoが、フランスの詩人Claude Royet-Journoudの詩集をもとに制作した、声とMIDI音源だけで構成された、現代の歌曲とも言える10曲の連作が収められたアルバム『L’usage et les attributs du cœur』。中心にあるのは、朗読と歌のあいだを揺れ動く親密な声と、Casio CTKワークステーションの 素朴で透明なMIDI音色。ピアノ、ストリングス、ベルといったプリセット音が無機質な光のように配置され、言葉の響きそのものを際立たせる。楽曲は短いフレーズの反復で構成され、音数は極端に少ない。そのため、わずかな変化が大きな揺らぎとして立ち上がり、意味が揺らぐ瞬間をそのまま音にしたような独特の緊張感が続く。19世紀のリートの伝統を、デジタル音源とミニマルな構造へと移し替えたような、古さと新しさが同時に存在する一枚。

1986年から現代まで実に長きにわたって活動している日本の双子ユニットであり、Gigi Masin、Jonny Nashと共にGaussian Curveでも活躍してきたYoung Marcoによって再発見された大人気アクトSatoshi & Makoto。彼らが6年ぶりに届ける待望の新作『Cafe Mirage』。本作は、架空のカフェをテーマにした静かでシネマティックな電子音楽作品で、ハードウェア・シンセを手弾きする親密な音楽性はそのままに、より広がりのある音像へと進化。柔らかなシンセの質感、控えめなジャズのニュアンスと穏やかなグルーブ、淡い光のようなアンビエントのレイヤーが重なり、まるで店内を歩き回るように場面が移り変わる。トラック集というよりいつでも訪れることのできる心安らぐ場所のような作品。

8月下旬再入荷。和物シーン屈指のパーティー〈和ラダイスガラージ〉や〈スナックねこ〉〈BAR KITTY〉といったイベントのオーガナイズから、〈Zero Gravity〉や〈ExT Recordings〉といった先鋭的なレーベルの運営に至るまで、日本のアンダーグラウンド・シーンを代表する電子音楽家/DJ、永田一直が94年に設立、23年に正式復活を果たした名門レーベルであり、〈Syzygy Records〉や〈Sublime Records〉と並び、日本の黎明期のダンス・シーンを支えた〈Transonic Records〉。その作品群でもニューエイジ・リバイバル以降の視点から大いに再発見されたアンビエント・テクノ名作であり、元・電気グルーヴの高橋コウジがPalomaticとして95年にCDオンリーで発表した唯一作、世界中から人気高まる『Trill』がベルリンの『Feedback Waves』より奇跡のアナログ再発!
永田氏の〈ExT Recordings〉から21年に発売された、初期〈Transonic〉を国産ドリーム/アンビエント・テクノ全盛期の走馬灯の如く熱く振り返ったショーケース・アルバム『Transonic Records From 1994 To 1995』にも、本作より"Foaming Waves"と"Under The Ground"の2曲が収録。それに続く形で〈ExT〉からデラックス・エディションでCD再発もなされた名作がこの度初めてアナログ化!
Palomaticは、90 年代前半から中期にかけて日本のエレクトロニック・ミュージック・シーンで活躍した高橋コウジの別名であり、電気グルーヴのシンセ・プログラマーとしても活動していたほか、ニックヨシザワとのTakahashi Tektronix (と) や InterferonことKiyoshi HazemotoとのMutronでも活動。1993 年に福岡から日本のクラブ・シーンを牽引した〈Syzygy Records〉 よりデビュー曲「Halo」をリリースした後、Takahashiは、シーンを定義する〈Transonic〉のコンピ盤へ一連の作品を提供。ブリストルのトリップホップやシェフィールドのブリープ・テクノのムーディーなベースの重み、ベルリンのテクノとベルギーのトランスのケミカル・ラッシュまでが、明らかに日本的な感性でエレガントな音楽のタペストリーにまとめられたような、時代を超越した日本のエレクトロニック・ミュージックの金字塔。アルバムの目玉であり、今日のテンポの速いダンスフロアにピッタリとハマる"Foaming Waves"や、ジャパニーズ・ドリーム/アンビエント・テクノの極点といえる"Halo"など、名曲がずらりと並ぶ大傑作!

8月中旬再入荷。コペンハーゲンを拠点に、カセットテープや日常のオブジェクト、環境音を用いて極めて親密でプライベートな音響世界を編み上げるデンマークのサウンドアーティストKristoffer KjærskovによるプロジェクトEconomy of Meaningによる、浮遊するアンビエンスと断片的ループのコラージュ『Mind Sink』。制作はコペンハーゲンのアンダーグラウンドな実験音楽、テープレコーディング・シーンに深く根ざして行われ、フィールド録音、ギター、オブジェクト、シンセなど多様な音素材がレイヤーされている。音は一定の重力から解放されたように漂い、短いフレーズや質感の断片がゆっくりと重なり合う。自然音・環境音・物音のレイヤーが電子音と混ざり、いつかどこかの記憶のような曖昧な風景が立ち上がる。また、意図的に残された微細なノイズやテープのヨレが、この曖昧な風景に独特の陰影と平熱の体温のような温かみを与えている点もなんとも言えない魅力で、北欧の静謐な空気の中で、時間の流れを優しく歪ませてしまうような、至福のエクスペリメンタル・チルアウトがじんわりと響いてくる。
エチオ・ジャズの父、Mulatu Astatkeが1974年に残した歴史的名盤『Ethio Jazz』。ペンタトニックによるエチオピアの伝統旋律と、アメリカで学んだジャズ、ソウル、ラテンの語法を奇跡的なバランスで融合した、エチオ・ジャズの決定的作品。代表曲「Yekermo Saw」「Gubelye」をはじめ、妖艶なヴィブラフォン、スモーキーなローズ、複雑に絡むポリリズムが生むグルーヴは唯一無二。哀愁と黒さが同居するメロディは、異国のブルーノートとも呼ばれる深い情緒を帯びている。アフリカ音楽とジャズの交差点に立つ、世界の音楽史に残るマスターピース!

アムステルダムの実験的フォーク集団From 2による、インディロックのフォーマットを借りながら、その内側で静かに構造をねじ曲げていく、フェイクのようで本物、本物のようでフェイクな独特の魅力を持つアルバム『Indie Stock』。柔らかなフォークの質感で始まったかと思えば、ノイジーなギターや奇妙にズレたリズムが突然入り込み、曲が進むほどに別の姿を見せる仕掛けが随所に潜む。ユーモラスで謎めいた楽曲が並び、フォーク、インディロック、実験音楽がゆるやかに混ざり合う。静けさと混沌、親しみやすさと奇妙さが同居するサウンドは、インディロックの枠を愛しつつ、その枠の中で遊び、裏切り、変形させていく。インディロックの新しいかたちを感じさせる注目作。

〈Jahtari〉主宰者であるdisruptと、バルセロナを拠点とするアウトサイダー・トランペッターPablo Voltによるユニット、Alien Trackersのヘビー級ダブ・アルバム『Dubs from Vortex Beach』。本作は、架空のビーチを舞台にした12のダブ・トラックで構成され、レゲエ、ダブ、ダンスホールを核としつつ、リー・ペリーのスタジオ、ブラック・アークのようなソウルフルな温かさと、デジタルダンスホールの強力なインパクト、そして〈Jahtari〉特有のサイケデリックな未来派ダブが絶妙なバランスで融合されたユニークなテクスチャが魅力的。Voltのサイケデリックなトランペットが浮遊感を添え、ほっこりとしたビートと奇妙な音響が心地よく混ざり合う、異世界のビーチで聞いているような、幻想的で酩酊感のあるインストゥルメンタル・ダブ作品。
フィリピンの鍵盤奏者Boy Katindigが1980年に残した隠れた名作『After Midnight』が、正規リイシューでついに復活。USソウル、ファンク、ラテン・ジャズ、バトゥカーダを大胆に取り入れたフィリピン産ジャズ・ファンクの最高峰で、タイトル曲オリジナル曲である「After Midnight」の艶やかなエレピとサックスが描く都会的ファンク、「Seeing Is Believing」のメロウ・フュージョンに加え、Isaac Hayesの「Deja Vu」やGreg Phillinganes「Love Till the End of Time」など、センス抜群のカヴァー群がアルバムに豊かな色彩を与えている。80年代初頭のフィリピン音楽シーンの熱気と、US西海岸フュージョンにも通じる洗練が同居した、アジアン・レアグルーヴの名盤。
USアンダーグラウンドの異才Evanora Unlimitedの破壊的ポップの原点をもっとも荒々しい形で体験できる初期作品『Lustful Expanse』。全曲1〜2分台というスピード感の中で、金属的なビート、ざらついたノイズ、歪んだシンセが一気に押し寄せる。インダストリアルの攻撃性とパンクの衝動が直結した、破裂するようなエネルギーがアルバム全体を貫いている。Evanoraのヴォーカルは、囁き、語り、叫びが混ざり合い、感情がそのまま音になったような生々しさを持つ。ゲストとしてHiHelgaが参加する「Willow’s Perception」は、荒々しいノイズの中にメロディの影が差し込む異質な存在。破壊的な音像の中にふと現れる静けさが、アルバムの緊張感をさらに高めている。後半には全曲のインスト版を収録し、ビートの骨格やサウンドデザインの細部がより鮮明に聴こえ、プロダクションの鋭さと精密さが際立つ。二層構造によって、作品の奥行きがより深く感じられるアルバム。

ブラジルのAzymuthが1980年に発表した、サンバ、ジャズ、ファンク、電子音響を独自に融合したクレイジー・サンバ・スタイルがさらに洗練され、ブラジリアン・クロスオーバーの基準点となった『Outubro』。音の核を担うのはJosé Roberto Bertramiのキーボード。Rhodes、シンセ、オルガン、ヴォコーダーが織りなすメロウでコズミックな音色がアルバム全体を包み込む。サンバの跳ねるリズムとジャズファンクのムードが自然に溶け合い、都会的で軽やかなグルーヴが心地よく広がる。Azymuthの3人はそれぞれ強い個性を持ちながら、音がぶつからず、ひとつの流れとして自然にまとまる。全体に感じる湿度を含んだ音像は、ブラジルの風景がそのまま音に染み込んだかのよう。Chick Coreaの「500 Miles High」やMilton Nascimento「Outubro」のカバーも収録された、柔軟かつ完成度高い名盤。

Moodymann率いる〈Mahogani Music〉周辺のアーティストと交流があり、AUX88 との仕事でも知られるデトロイトのプロデューサーSheefy McFlyによる、初のUS外リリース作『Baddies Only』。参加しているボーカリストはすべてデトロイトの女性アーティストで、本人が「デトロイトの女性アーティストへのラブレター」と語る通り、コミュニティの熱量がそのまま刻まれている。フットワーク、エレクトロ、ゲットーテックの要素が交差するスピード感とストリート感の強いクラブトラックが中心で、高速ビートの鋭さに、女性ボーカルの存在感が重なり、曲ごとに強さ、色気、遊び心が立ち上がる。デトロイトの今をそのまま切り取った、コミュニティに深く根ざした音。
「The Voice」の異名で知られ、エチオピアの国民的シンガーとして絶大な人気を誇ったTlahoun Gessesseが、1970〜75年に残したレア音源をまとめたアーカイブ盤で、エチオピア音楽黄金期の息吹をそのまま伝える重要作『Ethiopian Urban Modern Music Vol. 4』。アレンジには Mulatu Astatkeをはじめ、当時の名アレンジャーが多数参加。厚みのあるホーン、ジャズ的コード、エチオピア特有の陰影ある旋律が交差し、ソウル、ジャズ、伝統音楽が自然に溶け合う独特のサウンドが魅力的。「Alègntayé」「Kulun Mankwalèsh」などの代表曲では、Tlahounの深く伸びるテナーが圧倒的な存在感を放ち、切実さと力強さが同時に響く。70年代録音ならではの生々しいグルーヴも特徴で、特にMulatu参加曲では、ミニマルなリフと独特のスウィングが際立ち、エチオピア音楽の核心に触れるような深みがある。伝統音楽味が強いのも印象的。エチオピア音楽の黄金期を象徴する声と演奏、アレンジが結晶した決定盤!

8月上旬再入荷。イタリアのディープハウス・デュオSouldynamicによる傑作「Equatoriale」が、リリース10周年記念特別エディット&リマスター仕様で、ヴァイナル・オンリー復刻!
“Equatoriale”は、Lil LouisがパリのConcreteでChuck Roberts「My House」のアカペラと重ねてプレイした伝説的な映像によって広く知られることなったトラックで、アフロ、ハウス、バレアリックの要素が溶け合いながら、ディープハウスのエナジーを爆発させた圧倒的なグルーヴの名曲。今回の12"には新たにリエディット&リマスターされたヴァージョンに加え、インストゥルメンタル・ミックスも収録。さらに新曲2曲を追加し、単なるアニバーサリー盤に留まらない充実の内容。

Meditationsベストセラー、2026年リプレスです!Don Cherryにも匹敵する、マルティニーク島の崇高な神秘的音楽。コロンブスが「世界で最も美しい場所」と称賛したことでも知られる、カリブ海に浮かぶマルティニーク島の霊的バンブーフルート奏者Max Cillaの1981年作レア盤がヴァイナル再発。インドの伝統的製法に則って自作したバンブーフルートの生命感溢れる霊的な演奏に、キューバ音楽やラテンのリズム、現地のローカルなパーカッション、極めてジャズに近い構成ながらもスピリチュアル・ジャズの霊性とも異なるもので、石笛等にも通じる自然界の神秘と自然崇拝に根ざした深い密林的霊気漂うアフロ・カリビアンミュージックの大傑作。

アゼルバイジャンやマルティニークなどの神秘的な音楽からスイスの地下音楽、フランスの電化ライまで、各地の辺境的な音楽を掘り起こすだけでなく、Altin GunやDon Melody Clubなど現代のアウトナショナルな傑出した才能も紹介してきたスイスの名門〈Les Disques Bongo Joe〉から要注目物件!発売当時グラミー賞にもノミネートされ、第4世界アンビエント・ジャズのパイオニアことJon HassellやCharlie Hadenも愛聴したという、中米・グアテマラの知られざるブラスバンドが1974年に残したカルト録音が24年度史上初のアナログ・リイシュー!グアテマラのサン・ルーカス・トリマンという高地マヤの山村で、宗教的、社会的な地元の行事で演奏を行っていたブラスバンドによる幻の音源を収録。葬送曲やポピュラーソングが独特の伸びやかなハーモニーとリズム、珍しい楽器の組み合わせで演奏されており、西洋の音階が許容するよりも自由なリズム構造と幅広い音程を好む、高地マヤの演奏スタイルに由来する極めて特異な音楽作品となっています!

フリージャズ、スピリチュアルジャズの重要人物Byard Lancasterが1974年にパリで録音した名作『Exactement』が、〈Souffle Continu〉による2LP仕様で復刻。キャリアの中でも特に実験性の高い内容で、ピアノ、アルト/ソプラノサックス、フルート、バスクラリネット、さらにはOctavoiceまで自在に持ち替えるLancasterの創造性が凝縮された作品。霊性を帯びたピアノと熱量の高いサックスが長尺の中でうねり続け、スピリチュアルジャズの高揚とフリージャズの奔放さが同じ軌道で響く。曲によってはサックスに電子的変調が施され、アコースティックと電子処理が交差する異様な質感が際立つ。Keno Spellerのパーカッションも儀式的な反復から爆発的な瞬間まで幅広く、Lancasterの多楽器的アプローチを支える重要な存在となっている。〈Palm Records〉期の濃密さと大胆さを象徴する2LP。

インド古典音楽の名門系譜に属するサロード奏者Sudeshna Bhattacharyaと、欧州を拠点に活動するタブラ奏者Mosin Khan Kawaによるデュオ作品『Mohini』。ノルウェーで録音、Bhimpalasi、Hamsadhvani、Mishra Bhairaviの3つのラーガを収めた、純度の高いインド古典。サロードは低音の重さと金属的な響きが同時に立ち上がり、タブラは柔らかいパルスで寄り添いながら、二人の呼吸がそのまま音の流れを形づくる。伝統形式の中で生まれる緊張感と静けさ、深みにあふれた古典音楽。〈Motvind Records〉らしい丁寧な制作で、古典の構造と即興の生命力が自然に共存する一枚。

ノルウェーのデュオNaaljos Ljomがデビュー作で提示した、民俗音階と電子音の探求をさらに推し進めた続編『II』。アーカイブ録音の研究、Eivind Grovenの音程理論、そしてフィドルの導入を重ねながら、ノルウェー民俗音楽の微分音的構造を電子的ダンス・フォークとして再構築した一枚。シンセは鋭い倍音を含んだうねりを放ち、フィドルや民俗楽器の音程の揺れと重なることで、独特の音像が立ち上がる。クラフトワーク初期のようなミニマルな推進力とノルウェー民俗音楽の非均等音階 という奇妙で魅力的なハイブリッド。サウンドコラージュ的手法も随所に見られ、アーカイブ録音を学習素材として扱う過程が音楽に反映されている点もユニーク。民俗音階の異質さを前景化し、電子音で拡張した現行のフォークロア電子音楽の中でも特に個性的な一枚。
『Poems for flute』で注目を集めたフルート奏者Henriette Eilertsenが率いるトリオによる、フルート、チェロ、エレクトロニクス、ドラムという編成で、室内楽・ジャズ・抽象電子音の境界を丁寧に探る現代的アンサンブル作品。『Moder』。フルートは柔らかい息のニュアンスと鋭い輪郭が同時に立ち上がる独特のトーンで、アルバム全体の語り手として機能。チェロとエレクトロニクスは室内楽的なムードと抽象的な揺らぎを行き来しながら、フルートの旋律に影を落としたり光を差し込んだりする。ドラムは呼吸として空間を支え、音の密度を過剰にせず、三者の対話が自然に流れる余白を保っている。ゲストとしてJon Balkeが参加し、ピアノにより、抽象的な和声の層がふっと立ち上がる瞬間も印象的。ハイブリッドな室内楽として非常に完成度の高い一枚。

ノルウェー、スウェーデンのフォーク、ジャズ、電子音楽シーンを横断して活動するダブルベース/モジュラーシンセのEgil Kalmanとドラム/コンガ/口琴のHans Hulbækmoによるデュオ作。2024年のライブ録音をそのまま収録しており、ダブルベースの深い低音とモジュラーシンセの揺れる倍音が土台をつくり、その上をドラムやコンガが細かな粒を刻むことで、一定のテンポではなく地形が動くようなリズムが立ち上がる。長年の共演で培われた柔らかい対話も説得力があり、伝統音楽、フリージャズ、ドローン、電子音楽の要素が自然に混ざり、リズムで時間を再構築するというコンセプトを独自編成で実現した作品。
大友良英率いるOtomo Yoshihide’s New Jazz Orchestraが2005年に発表した『Out To Lunch』。エリック・ドルフィーの1964年の同タイトル盤を全曲リメイクした大胆なオマージュ作品で、ONJOの初期メンバーが集結し、ジャズ・オーケストラ、フリーインプロヴィゼーション、電子音響を同じステージに並べるという、当時の大友のNew Jazzコンセプトを最も鮮やかに示した作品。原曲の複雑な構造や鋭いリズムを忠実に踏まえつつ、21世紀のアンサンブルとして再構築。特筆すべきは、Sachiko Mのサイン波や中村としまるのノーインプット・ミキサーといった電子音響勢の存在で、音の隙間に微細な揺らぎやノイズが入り込み、原曲の鋭さがONJOでは都市のざわめきのような質感へと変換されている。森山大道によるジャケット写真が象徴するように、Dolphyの音楽を2000年代東京の風景に重ね合わせた再翻訳とも言えるもので、Dolphyへの敬意と、大友良英の現在進行形のジャズ観が交差する名盤。
ドイツ、ヴュルツブルクのデュオBrannten Schnüreによる、聖マルティン祭のランタン行列というヨーロッパの伝統行事をモチーフに制作したコンセプト作『Geträumt Hab Ich Vom Martinszug』。Christian Schoppikが紡ぐフォークロア的な旋律と、Katie Richの囁き声・語りが重なり、薄闇に灯る小さな光のような雰囲気を醸し出す。アコーディオンや素朴な鍵盤のループが生む静かに揺らぐ気配。乾いた質感の中に、どこか湿度を含んだ空気が漂い、夕暮れの街をゆっくり歩くような感覚が続く。Katie Richの声は歌と朗読の中間で、子どもの頃の記憶や古い民話の断片を呼び起こすよう。フォークロア的な旋律に、ループ処理やドローンが重なることで、夢と現実の境界を彷徨うような音の風景が広がる。派手さはないが、細部の変化が情緒を生み、静かなのに強い印象を残す作品に仕上がっている。
ドイツ・ヴュルツブルクのデュオBrannten Schnüreによる、フォークロア・コラージュの代表作『Sommer Im Pfirsichhain』。古いレベティコ音源の断片や儀式的なモチーフを素材にしながら、ループや編集で再構築するフォーク・コラージュ的手法が特徴。Christian Schoppikが紡ぐアコースティック楽器や古い音源の断片、そしてKatie Richの囁き声のような語りが重なり、民話の影がゆっくり動き出すような独特の世界観を形づくる。アコーディオンやフルート、ギターの素朴な響きが薄闇の中でゆっくり揺れ、どこか遠い記憶を呼び起こすよう。静けさと寓意が同居する幽玄で詩的な音世界。
