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2026年リプレス!Horace Andy『Dance Hall Style』と並び、〈Wackie’s〉の最高峰と名高いWayne Jarrettの名作『Showcase Vol.1』。1982年、NYブロンクスのWackie’s Studioで録音され、プロデュースはもちろんLloyd “Bullwackie” Barnes。収録曲は「Brimstone & Fire」「Every Tongue Shall Tell」「Magic In The Air」「Bubble Up」など全6曲。すべてショーケース形式で構成され、Jarrettの軽やかで浮遊感のある声が、Bullwackieの重いベースラインと深いエコーに溶けていく。バックはThe Chosen Brothers、Jerry Harris、Clive Huntら〈Wackie’s〉周辺の名手たちで、NYのアンダーグラウンド感とジャマイカのルーツ精神が交差し、煙に包まれたようなスピリチュアルで幻想的なルーツ、ダブが展開される。Wayne Jarrettの声と〈Wackie’s〉の美学が鮮明に刻まれたショウケース名盤。
ベルギーのエクスペリメンタル・フォークの孤高の存在、Ignatzが、長いキャリアの中で初めてピアノを中心に据えて制作した最新作『The Water Is Getting High』。2024年に自宅で録音され、親密で静謐な空気感がそのまま封じ込められている。これまでのローファイ・ブルース、フォークの延長線上にありながら、ピアノという新しい媒介によって、より内省的でミニマルな世界が広がる。単音の余韻、ゆっくりとしたフレーズ、部屋鳴りや微かなノイズまでもが音楽の一部となり、深夜の記録のような生々しさと詩情が同居。彼は独学でピアノに向き合っており、その技術的な未完さが、かえって彼特有の壊れやすく繊細な旋律を際立たせている。静謐なミニマリズムと、彼本来の孤独なブルースが溶け合った、独自の詩情感じられる一枚。ローファイ・ブルースの求道者が、ピアノという静かで深い語り相手を得て辿り着いた、最も純粋な告白。

コンゴが生んだ不世出の巨星、Francoが率いたO.K. Jazzが、1957〜77年の20年間に残したボレロだけを集めたコンピレーション。コンゴ音楽に対する驚異的な熱量で運営される〈Planet Ilunga〉による徹底したアーカイブ作業のもと、オリジナルの45/78回転盤から丁寧に復刻・修復された音源を、年代順に2LPへとまとめ上げている。キューバ由来のボレロに、リンガラの源流とも言えるコンゴ独自のギター・フレーズを編み込み、アフリカン・ルンバのバラード形式へと深化させたO.K. Jazzのスタイルは、甘美でメランコリック、そして深い拍動を湛えている。Vickyをはじめとする名歌手たちの甘美な歌唱が寄り添い、Francoのギターが花開くように泣き、語り、ため息のようなフレーズを紡ぎ出す。特にボレロにおいて、彼のギターは空間を埋めるのではなく、感情の隙間を埋めるような、唯一無二の輝きを放っている。初期の素朴な録音から70年代の充実し、洗練されたアレンジまで、20年の変遷には、彼らがその長大なキャリアの中で、いかにボレロという形式を深く愛し、自らのアイデンティティへと昇華させてきたかを実感させられる。アフリカ音楽ファンはもちろん、ラテン、ギター音楽、スウィートなスロウ・グルーヴ好きにも強く響く、O.K. Jazzのもうひとつの名盤集。言葉にできない悲しみや、言葉にするまでもない喜びを、尋常ならざる輝きと共に、弦の響き一つで表現してしまう、魔法のようなギター。


フランコ、グラン・カレ、ドクター・ニコと、数多の伝説的な偉人たちに彩られたコンゴ音楽。彼の地の音楽への深い愛情と確かな審美眼で、超高内容の作品を復刻する〈Planet Ilunga〉より、伝説的なギタリスト、Docteur NicoことNico Kasandaと彼が率いたオーケストラAfrican Fiesta Sukisaの黄金期を包括的に集めた3枚組LP。Nico Kasandaが自身のバンド「African Fiesta Sukisa」を結成した1966年から、彼の音楽的絶頂期である1974年までの重要かつ希少な音源を年代順に収録。彼の死後40年を讃えて、長い期間をかけた準備のもと、ニコの長女であるリリアンヌ・カサンダとの緊密なパートナーシップのもと実現したという偉大なアンソロジー。アフロ・キューバン、ルンバ、チャチャ、アフロビートなどの要素が融合した、華やかで洗練されたルンバ・コンゴレーズは、キューバ音楽の影響を受けつつも、アフリカ独自の甘美なメロディと複雑なリズムが融合。心地よさの中に黒人音楽の奥深い本質を見ることができる、永遠のクラシック。楽曲解説、著名ミュージシャン、ジャーナリスト、ファン、そしてニコの取り巻きによるインタビュー、そして彼の私生活と音楽生活に関する未発表写真を掲載した大型ブックレットも付属。

カリフォルニアを拠点に活動するデュオShape of the Moonによる、詩とエレクトロアコースティック音響が緊密に結びついた音の物語『When the Land Is Laid Bare』。メンバーは、詩人・パフォーマーのBenjamin Burkeと、サウンドアーティストのBear Glass。本作の録音は、モハーヴェ砂漠の夜空の下で行われたライブと、Bear Glassが所有するオフグリッドスタジオでのセッションを中心に構成されている。音楽は、Burkeの語りが中心にありながら、モジュラーシンセ、シタール、ベース、ローズ、ベル類、サックスなどがゆっくりと地形を変えるように重なり合う。語りは単なる朗読ではなく、音と同じ呼吸で進むもうひとつの楽器として機能し、言葉が風景を描き、音がその輪郭を広げていく。耳元の語りと、砂漠の広がりを思わせる空間性が同時に存在し、近さと遠さが同じフレームに収まるような独特の感覚。静けさの中に物語が流れていく言葉と音響というアプローチを深く掘り下げた一枚。

2026年リプレス!Massive Attackのカヴァーも収録!アヴァンギャルドな作品も含む、知られざる南アフリカのアフロ・ジャズの傑作の数々を掘り起こしてきた名所〈Matsuli Music〉からは、近年、ロンドンやフランスに続いて盛んになっている同国産の現代ジャズ作品が到着!映画やテレビの劇伴制作などでも活動、数々の賞を手中に収めてきた南アフリカの次世代を代表するジャズ・ピアニスト/作曲家Kyle Shepherd。「アフリカン・ピアノの継承者」と呼ばれ、巨匠Abdullah IbrahimやKeith Jarrettからも影響を受けているという彼が率いるトリオの最新アルバム!その表題は、ヨハネスブルグ出身の現代美術家William Kentridgeに捧げられたもの(シェパードはケントリッジと共同で室内楽オペラ作品『Waiting for Sybil』という作品を制作し、世界ツアーを敢行しています。)自身のオリジナル曲10 曲に加え、Massive Attackの大名曲"Teardrop"や、ジャーニーのロックアンセム"Don’t Stop Believing"などの独自解釈された演奏も収録。〈The Carvery〉での高品質マスタリング&カッティング仕様。
ダブ・テクノのパイオニアにして、Basic Channel、Rhythm & SoundのMark Ernestusが、セネガルでの長年の現地リサーチとミュージシャンたちとの協働を経て構築してきたプロジェクトNdagga Rhythm Force。西アフリカ・ンバラの精緻なポリリズムとベルリン流ミニマリズム/ダブの深層が交差する、9年ぶりのアルバム『Khadim』が〈Ndagga〉より登場。もともとErnestusは、ジャマイカのリディム感やサウンドシステム・カルチャーの源流をたどる中でセネガルに辿り着き、作品ごとに深化を続けてきたが、今回の『Khadim』ではさらに構成を大胆に削ぎ落とし、ギターを完全に排除し、パーカッション× Prophet-5シンセ×ヴォーカルというミニマルな編成となっている。中心にあるのは、Ernestusが長年愛用してきたProphet-5によるドローン的シンセ、Mbene Diatta Seckによるソウルフルかつスピリチュアルな歌声、そして打楽器奏者Bada Seck&Serigne Mamoune Seckによるしなやかで予測不能なサバール・パーカッション。これらが有機的に絡み合い、リズムで語るストーリーテリングの極致とも言うべき音のタペストリーを織り上げていル。ポスト・レゲエ、アフロ・ミニマル、スーフィー的精神性が一点で交差する、現代アフリカ音楽の極北とも言える内容で、空間性と肉体性、即興と構築の間で、精神と身体を丸ごと包み込む。肉体的なリズムの奥に静かな霊性が宿っていて、聴きながら内と外が同時に揺れるような感覚が素晴らしい!Ernestusの徹底して削ぎ落とすセンスと、セネガルのリズム/声/信仰の力が美しく交差した、ダンス・ミュージックの文脈でも、アフリカ音楽としても、どちら側から見ても誠実で、深い傑作。

(数量限定/パープル・ヴァイナル/Indie Exclusive)ソウル、ダンス、ジャズ、R&Bをシームレスに融合させ、クラブ・カルチャーとアンダーグラウンドを行き来しながら、独自の近未来的世界観を築き上げてきたヴィジョナリー・アーティスト、ケレラが3枚目のアルバム『new avatar』を〈Warp Records〉よりリリース。
アルバム発表にあわせて、ピンクパンサレスやリリー・アレンの作品を手がける気鋭プロデューサー、オスカー・シェラー (Oscar Scheller) プロデュースによるシングル「linknb」は、ケレラの新章突入を告げる必然の一手だ。
スランプに陥っていた時期に生まれたというこの曲は、自分自身を制作へと引き戻すためのマントラとして書かれた。複雑に絡み合うギターリフと重厚なドラムサウンドを軸に、逆境を経て得た自信と、自分を小さく見せることへの拒絶を歌った一曲である。
ミュージックビデオはミシャ・ノットカット (Mischa Notcutt) が監督を務めた。親友であり、過去作品でもクリエイティブ・ディレクターを担ったミシャを招いたことは今回も自然な選択だった。リアリズムと抽象表現を融合させた映像は、孤独な旅路を自己発見と再生の瞑想へと昇華させる。都市の夢景の中心にケレラを据え、確かな意志と目的を持って動く姿を映し出している。
『new avatar』は、ケレラがこれまで積み上げてきたすべての結晶とも言える作品だ。
ワシントンD.C.のインディー・シーンで最初の曲を書き始め、やがてクラブ・ミュージックと電子音楽がキャリアの核心を担うようになった彼女は、本作でその原点と現在をひとつに結びつける。歪んだギターと絡み合うR&Bが、ダンス・ミュージックの新たな交差点と並存し、自身がこれまで音楽的に生きてきたあらゆる場所から引き出した音を結晶化させた。ピンクパンサレス、A・K・ポール、フーシェー (Foushee) とのコラボレーションも収録。
シンガーソングライター/アーティストとしての私の原点が、『new avatar』を制作する過程で経験したカタルシスの背景にある。私が最初に曲を書いたのはパンクハウスだった。当時いたインディー・シーンは、頭の中で聴こえていたジャンルの交差点を探求する実験の場を与えてくれた。そこにいた若者たちは完璧にやり遂げることなんて気にしていなかったから、曲に時間をかけすぎることもなかった。正直なところ、失敗することや、どうでもいいという態度を持つこと、そもそも完璧でなければという強迫観念を解体することが大切にされていた。そのおかげでプレッシャーから解放され、アーティストとしての最初のビジョンが開花した。今回の作品でも同じアプローチを取った。強い意図を持って進みながらも、アーティストとしての出発点に火をつけてくれた自由さと自然な衝動を捉えること。このアルバムであなたが受け取るのは、新たなレベルの確信をもって表現された、私の世界の別の一面。愛と献身というかたちをとることもあれば、怒りというかたちをとることもある
- ケレラ

ボグダン・ラチンスキーからデニス・ボーヴェル、Phewに至るまで、良質なカルト音源を世に送り出してきた〈Warp〉傘下の〈Disciples〉より、ケニアの知られざるローカル・ヒーロー、故ジョセフ・カマルのコンピレーション、『Heavy Combination』の続編としてミニ・アルバム『Further Combinations』がリリースされた。前作に続き、〈Disciples〉とKamaruの孫でありサウンド・アーティストのKMRUがアーカイヴの中から収録楽曲のセレクトを担当している。
本作には、ハイライフ、70年代ファンク、フォーク、ディスコ、ゴスペルといった多彩な要素が交差する楽曲が収録されており、躍動するリズムとコール&レスポンスが特徴となっている。リマスターはオリジナル・テープから丁寧に行われ、当時の生々しいグルーヴと録音の質感を現代に再提示している。
ジョセフ・カマルについて
ジョセフ・カマル(1939 - 2018)は、アフリカの外ではほとんど知られていないが、1967年以来、母国ケニアの音楽シーンに多大な影響を与えてきた人物である。初期のヒット曲「Celina」と「Thina wa Kamaru」は、妹とともに録音したリズミカルなダンス曲であり、これがカマルをケニアでもっとも有名なベンガとゴスペルの音楽家の一人へと押し上げる礎となった。彼は母語であるキクユ語で多くの歌を歌い、政治活動家であり国民的アイコンでもあった。推定50万枚のレコードを売り上げた彼の音楽は、人生の教訓、政治、社会問題を幅広く取り上げていた。
カマルは1939年、ムランガ地区のカンゲマに生まれた。1957年にナイロビへ移り、清掃の仕事に就く。最初の正式な職は家政夫兼ベビーシッターで、その稼ぎで最初のギターを購入した。1965年に音楽活動を始め、1967年に商業的なブレイクを果たす。彼の音楽キャリアの最盛期は1975年から1985年で、カセットを数多くリリースし、その内容はキクユの民謡を題材としたものだった。1980年代後半には、当時外国人アーティストしか出演しなかったカーニボア・レストランで演奏した初のケニア人アーティストとなった。
彼の多くの曲は政治的で、政府を称賛するものもあれば批判するものもあった。当初は大統領ジョモ・ケニヤッタと良好な関係にあったが、1975年にジョサイア・ムワンギ・カリウキの暗殺を非難する曲を書いたことで対立。その後、ケニヤッタの死後に大統領となったダニエル・アラップ・モイとは親しい関係を築き、1980年にはモイ大統領の随行として日本ツアーに同行した。しかし後に、カマルが多党制民主主義を支持したことでモイの不興を買った。
カマルはVoice of Kenyaのラジオ司会者Job Isaac Mwamtoから大きな支援を受け、彼の音楽は広く紹介された。そのため「ケニアのジム・リーヴス」と呼ばれることもあった。彼は道徳や人生の教訓を扱った約2,000曲を録音し、キクユ音楽の伝説としての地位を確立、東アフリカの音楽シーンに大きな影響を与えた。
1990年代に入り、カマルは「新生」したと宣言し、長年の世俗音楽の演奏をやめることを発表(ただし後年、世俗曲を歌うこともあった)。1993年にはゴスペル音楽に転向し、旧来のグループ「Kamaru Super Sounds」を解散した。この変化は売上に打撃を与えた。彼はかつてケニア・レコード産業協会(KAPI)の会長を務め、ナイロビで教会ミニストリーを主宰、さらにレコード店を2軒経営していた。また、自身の農場にキクユ文化を保存・保護する文化施設を建設することを望んでいたが、2018年10月に亡くなるまでに実現することはなかった。彼は2人の兄弟姉妹、1人の娘、3人の息子を残して世を去った。孫であり同名のジョセフ・カマル、すなわちKMRUは現在ベルリンを拠点に活動する音楽家・サウンドアーティストである。
アウトサイダー・ディスコからアンビエント〜即興フォークまでレフトフィールドを縦横無尽に駆け回った巨人Arthur Russellによる未発表音源を編纂した名コンピが〈Rough Trade〉盤としては初となるアナログ盤リイシュー!!
1985年に完成するもお蔵入りとなっていたアルバム『Corn』と1986年から1990年の間に録音された未発表音源をソースに編まれた本作は「That's Us/Wild Combination」、「The Platform On The Ocean」、「Make 1, 2」、「Arm Around You」など、Arthur Russellのバブルガム・ディスコ〜エレクトロ・ポップ全盛期の楽曲を12曲収録。また、ムスタファ・アフメド、ウォルター・ギボンズ、スティーヴン・ホール、ジェニファー・ウォーンズ、ピーター・ズンモなど多彩なゲスト陣も参加。時代が追いつき、2004年のリリース以来アイコニックなジャケで新参リスナーを増やし続け、その評価を確固たるものとしてきたクラシック!
アーサー・ラッセルの遺族と独占的なライセンス契約を結び、その膨大なアーカイブの中から未発表音源や絶版作品をコンパイルし04年に出版した大傑作編集盤『Calling Out Of Context』。キャリア全盛期であった1985年から90年にかけてレコーディングされてきたオルタナティヴなバブルガム・ディスコ・ポップ全12曲を収録した超強力盤。決して古びることのないタイムレスなリスニング体験として激激レコメンド。ラッセル入門の方も是非ここからどうぞ!
アウトサイダー・ディスコからアンビエント〜即興フォークまでレフトフィールドを縦横無尽に駆け回った巨 人Arthur Russellの代名詞的作品で、後世にも絶大な影響を与え続ける80年代屈指の名盤『World Of Echo』が名門〈Rough Trade〉によって7年ぶりに再流通!! 1986年にオリジナル盤が発表された本作は、 自身にとって生涯初となるフルレングスの非コラボレート作品で、チェロと声とエコーだけで「最も鮮明なリズムのリアリティ」の実現を試みた作品。ディスコやガラージなどダンス・ミュージック方面で築いたキャリア がある一方で、本作ではそのテープ・エコーやクラップなどテクスチャーの響きや、ヴォーカルの骨格、そしてチェリストとしてのパーソナルな表現を追求し、現代音楽家としての評価を決定づけた傑作。2005年にリイシューされたリマスター音源+4曲のボーナス・トラックを追加した仕様で7年ぶりに再流通!


デトロイトの〈Echospace〉を率いるcv313と、アナログ質感の精密なダブ処理で知られるFedersenが組んだ、デトロイト・ダブテクノの深層と、現代的なミニマル・ダブの精度が交差する12インチ『Altering Dimensions Part Two』。重いサブベースと泡立つパーカッションがゆっくり沈み込み、霧のようなエコーが層を作り、空間そのものが呼吸しているようなダブ処理が重なる。ビートレスな楽曲も収録し、4つの「次元」をそれぞれ異なる角度で描く構成も魅力的。cv313の多層的で深い空間処理と、Federsenのアナログ的な質感が自然に融合した、2026年ダブテクノの中でも特に完成度の高いコラボ作。

2023年のデビュー作『Magnolia』に続き、ピアニストでリーダーのSteve Okonskが、Durand JonesやAaron Frazerといった長年の音楽コラボレーターたちを引き連れた25年度発表のアルバム『Entrance Music』。自発的であり瞑想的なスピリットに根ざした本作は、トリオの即興性が最高潮に達した作品であり、パストラルで静謐なスピリチュアル・アンビエント・ジャズ"October"での幕開けの時点で既に天上。The Bad PlusやGerald Claytonといったレジェンドの名前も引き合いに出される珠玉のピアノ・ジャズ・アルバムに仕上がっています。

パプア・ニューギニアでのバンブー・フルートの名録音でも知られる録音技師のRagnar JohnsonとRalph Harrissonが1971年にエチオピア各地を巡りながら録音したフィールド音源を、丁寧なリマスターを施しまとめたアーカイブ2LP『Ethiopian Musics 1971 - Recorded by Ragnar Johnson and Ralph Harrisson』。Addis Ababaの猥雑なバーでの民謡演奏から、エチオピアン・ハープによる正教の宗教歌、Afar砂漠のチャント、Anuakのサンザ、Nuerのハープとダンス・ドラムまで、都市・砂漠・国境地帯の音が幅広く収録されている。深い祈りや民謡の生命力、旋律というより風と同化しているのかのようなフルートなど、どの録音にも、当時の空気、土地、人々の実態がそのまま刻まれている。50年以上前の録音ながら、リマスターによって細部の質感が鮮明に立ち上がり、エチオピアの多民族文化が音の地層として積み重なる重要な再発。

Bound By EndogamyとFelix Kubinが、偶然の出会いとセッションを経て完成させた、電子ポストパンク、ミニマル・シンセ、アヴァン・ポップが濃縮されたコラボ7インチ『Stück I / Stück II』。金属的なシンセの反復とぎこちなく揺れるリズムを中心に、冷たい電子音の中に、Bound By Endogamyの声が響く。Felix Kubinの奇妙な未来感と、BBEの湿った身体性が自然に交差する仕上がりの「Stück I」。農薬を讃える祈りという倒錯したコンセプトで、祈りのように反復するフレーズと、ざらついたアナログ電子音がゆっくり波打ち、祝祭と汚染が同じ場所に置かれているような音像が広がる「Stück II」を収録。ユーモラスで奇妙な未来性と、暗く湿ったエネルギーが刻まれた一枚。

モーリタニアの名門音楽一家Ahl Nanaの中心人物、Yassine Nanaが1984年から1989年に残したカセット音源を丁寧に復刻したコンピレーション『Modern Pop from Mauritania (1984–1989)』。砂漠の伝統音楽と80年代の電気化が交差する変革期のモダン・ポップを鮮やかに伝えるもので、乾いたギターのトーン、素朴で温かいシンセ、軽やかなドラムマシンのステップが重なり、サハラの旋律感とレゲエ、ソウル、ニューウェイブの影響が自然に混ざり合う。反復するメロディの中に 旅の途中で聴こえる歌のような郷愁が漂い、家族の声が重なるコーラスはローカルな温度をそのまま運んでくる。電気化の導入がまだ新しかった時代の手探りのモダニティが、どの曲にも刻まれている。地域内だけで流通していたカセット音源を現代的な音質で聴ける貴重な復刻盤。伝統と電気化、パン・マグレブ的交流が同じフレームに収まった、80年代モーリタニア・ポップの重要な記録。

Jack DeJohnette、John Medeski、Karl Berger、Lenny White、Ben Perowskyなど、ジャズ界の重鎮が多数参加。ハードコア史に名を刻むBad Brainsの共同創設者で、ベーシスト、Darryl Jeniferによる最新インストゥルメンタル作品 『The Weather Channel』。2010年のソロ作『In Search of Black Judas』以来となる、十数年ぶりのソロ名義アルバム。ジャズの即興性と、Darryl Jeniferが持つパンク、ダブの精神性を軸にした深いグルーヴと多層的な音像がアルバム全体を貫いている。Bad Brainsのエネルギーをそのまま持ち込むのではなく、スピリットを抽出し、ジャズの言語で再翻訳したようなアプローチで、空間処理の効いたダブ、鍵盤が描くサイケデリックな感覚、デジョネットらが生み出すしなやかなリズム、それらが重なり合い、ジャズ、フュージョン、ダブ、サイケ、パンクが交差する探求的なサウンド。Bad Brainsの名曲『Sacred Love』『Re-Ignition』の再構築版を含む意欲作。

8月中旬再入荷。USラテン音楽シーンを代表する、Helado NegroとReyna Tropicalがタッグを組んだコラボ・プロジェクトHelado Tropical。2024年の偶然の出会いで始まったセッションから2年にわたる制作期間を経て結実した、陽だまりのようなエクスペリメンタル・トロピカル・ポップ。ラテン音楽の固定観念から自由になることをテーマとして、2人が同じ感情の中に存在することを大切にした作品と語られており、Helado Negroの柔らかなエレクトロニクスとReyna Tropicalのトロピカルなギターとリズムが自然に溶け合う、夏の午後の空気をそのまま閉じ込めたような心地よさを堪えている。軽やかなグルーヴに浮遊感。どの曲も風が通り抜けるような開放感を持っている。ラテンのムードとチルウェイヴの柔らかさ、エクスペリメンタルな遊び心を丁寧な音作りで溶け合わせた至福のチルアウト・マスターピース。
フランス出身、ギリシャ在住の異端DJ、OKO DJによる、原始的なDIYテープモンタージュから現代のホームスタジオ技術まで、幅広い手法を用いて、ダウンテンポ、トリップホップ、実験シンセポップ、ダブという多様な要素が混ざり合ったアルバム『As Above, So Below』。スピリチュアルな語り、テープノイズ、フィールド録音的な要素が交錯し、夢幻的なサウンドスケープを構築。トラックには「Exolition」「La Colline au Ciel」「είμαι ή δεν είμαι(feat. onarrivenow)」など、多言語・多文化的なタイトルが並び、地理や時代、ジャンルを越えた感覚を誘う。レーベルによる紹介文では、「コミューン出身の女ゲリラたちがボウリングに行く」という奇妙な物語が語られ、幻想的で詩的なナラティブが音楽と並走しており、〈STROOM〉の共同的な美学とも共鳴して聴き手の想像力を刺激する、聴く体験そのものが拡張されるような詩的でコンセプチュアルなアルバム。

Chastity BeltのメンバーであるJulia ShapiroとエンジニアSamur Khoujaによる新ユニットGuest Bartender Deborah Toyotaによる、赤ちゃんが初めて音に出会うための音楽というコンセプトで制作された、乳児期の言葉や記憶が形成される前の空間を音で描くアンビエント作品『Music for Babies』。 Shapiroのメロディックな感性と、Khoujaの緻密な音響構築が交差し、子守唄とアンビエントに静かな実験精神がかすかに漂う独自の領域。柔らかいシンセ、丸みを帯びた電子音、布のように軽い音のレイヤーがゆっくりと重なり、どの曲も触れても痛まない質感で統一されている。ミニマルな構成の中で音が静かに明滅し、薄いカーテン越しの光のような柔らかさが漂う。赤ちゃんのための音楽というコンセプトを真っ直ぐに形にしつつも、大人が聴いても音の細部の美しさが楽しめる、丁寧な仕上がりの一枚。

NYのデュオNuke Watchが2024年に複数の現場で行ったライブ的セッションの断片からなる、集団即興とサイケデリック、フリーフォーム・フュージョンという彼らの現在地がもっとも生々しく記録された最新作『Fusion』。ビートは崩れたり立ち上がったりしながら、サンプルの断片、管楽器の鋭いフレーズ、電子音のざらつきが常に形を変えて絡み合う。不穏なパーカッションとサイケデリックな電子音がじわじわと変異するグルーヴを形成し、反復しながらも毎瞬違う表情を見せる。長尺の自由即興が続く部分は、精神の迷路のような音像で、ノイズ、管楽器、電子音が都市の深夜放送を切り替えるように連続する。King CrimsonやTony Williamsの精神性を参照しつつ、DIYアヴァンギャルドとフュージョンの複雑さが奇妙に混ざり合う、実験性の高い一枚。
オリジナルは1980年リリースの、オーストラリアはメルボルン産ジャズ、フュージョンの隠れた名作『Pyramid』が〈Outernational Sounds〉より新規マスタリングで再発。Weather ReportやReturn to Foreverの流れを汲みながら、ローカルな温度感を持つ独自のサウンドが魅力的で、A面は、エレピの柔らかな揺れとホーンのメロディが軽やかに広がる都会的なフュージョンの質感が中心。B面には本作の核となる、17分の長尺曲「Universal Suite」を収録。内省的な静けさからラテン・パーカッションの躍動、ファンク的な熱量までゆっくりと連続する構造を持ち、旅のような音の流れが楽しめる。洗練されたフュージョンとオーストラリア特有のオーガニックな質感が絶妙に混ざり合った、充実した内容の一枚。
