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デトロイトの若き才能KYLE HALLによるアルメニアの「セヴァン湖」で問題となっている富栄養化に着目し、自然環境と植物の生命活動を音で描いた2つのトラックを収めたコンセプチュアルな作品。

ウェスト・ロンドンを拠点に活動するプロデューサー、シンガーソングライターTutu TaによるEP『Violence or Violets』がUKアンダーグラウンドの気鋭レーベル〈Long Gone〉から登場。ダブ、エモ、ヒップホップ、ポストパンクなどを横断するサウンドは、本作でさらに幽玄かつ内省的に深化しており、ジャンルの境界を曖昧にしながら、都市の孤独や感情の揺らぎを繊細に描き出している。ダブ由来の空間処理とエフェクト、DIY的な制作姿勢、ジャンルに縛られず、個人の感情や都市の空気を音で表現するレフトフィールドな感性、ロンドンのストリートや地下文化の文脈を感じさせる土地との結びつきが感じられ、幽玄なヴォーカルが低音の効いたビートに溶け込む本作は、ロンドンのサウンドシステム文化の精神や美学を受け継ぎ、現代的に再解釈したような一枚となっている。DIY精神と都市的な感情の風景が交錯する現代のアンダーグラウンド・ポエトリー!
ポストパンク/ノイズバンド My Disco のメンバーとして知られるオーストラリア出身で現在コペンハーゲンを拠点に活動する音楽家 AICHER こと Liam Andrews によるより純粋なインダストリアル美学を追求したソロ・デビュー・アルバム『Defensive Acoustics』。廃墟の倉庫で録音されたような、冷徹で巨大な金属打楽器の響き、重低音の圧力、ドローン的持続音が交錯し、冷たいモノクロームの音響世界を形成している。HTRKやRoland S. Howardとも共演歴があるMy Discoの盟友 Rohan Rebeiro がパーカッションで参加。ミックスはSeth Manchester、マスタリングはRashad Beckerが担当で、インダストリアル的音響をより引き立てている。

イタリア実験音楽シーンの精鋭4名による、全4時間に及ぶアンビエント/エレクトロアコースティック大作『a sad song for A.』が、限定300部の4CD豪華ボックスセットとして〈Silentes〉よりリリース。本作は 写真家Stefano Gentileの抱いていた後悔や不安を、4人の作家がそれぞれが異なるアプローチで音に変換。Gigi Masinのメロディアスなアンビエント、Fabio Orsiの深いドローン、Vitoloのエレクトロアコースティック、Hisekaの静謐なミニマルアンビエントがひとつのテーマのもとで並び、静謐で深い内省の世界を多層的に描いている。17×17cmのStefano Gentileの写真入りブックレット、Giulia Dal Vecchioによるテキストも収録。

ヴィブラフォン、オルガン、ピアノ、編曲を自在に操るイタリアのマルチ奏者兼作曲家Alberto Baldan Bemboによる、長らく幻のサントラ/ライブラリー音源として語り継がれてきた作品1970年代の作品『Io E Mara』。本作は、週末の時間帯ごとの情景を描いたコンセプト・アルバムで、サイケデリックなスキャット、シタール、ジャズ・ピアノ、ラテン・グルーヴが交錯。波音や鳥のさえずりなどの効果音と、妖艶な女性ヴォーカルが絡み合い、官能的かつ幻想的な世界観を構築している。ラウンジ、モンド・イタリアン・サントラの代表作として、バレアリック、チルアウト・ファンにも人気の一枚。
水玉消防団の1985年作、セカンド・アルバム『A Skyfull of Red Petals』が〈SPITTLE MADE IN JAPAN〉から再発。本作も、前作に引き続き鋭く挑発的で、強烈で、唯一無二で、何ものにも媚びない。このバンドが「自然現象のような存在」であることを強く印象付ける一枚。実験音楽の巨匠フレッド・フリスが惚れ込み、ミックスを手がけている。ヴォーカルの神楽と天鼓、まったく異なる声とスタイルがせめぎ合いながらも調和していく様は、まるで即興演劇のような迫力で、演奏も歌も「うまさ」ではなく「勢い」と「意志」で押し切っている。そのぶん演奏の空気感や緊張感が濃く、混沌の中に一種のユーモアや祝祭性があって、それがミズタマ消防団の真骨頂でもある。ジャンルでいえば、ポストパンク/アヴァンギャルド/ノーウェイヴあたりを軸としつつ、単なるカテゴライズではすくいきれない、“表現としての音楽”がここにある。日本のアンダーグラウンドが世界のアヴァンシーンとリンクしていた稀有な瞬間の記録。

Petit SingeやZuli、S S S S、Kinlawといった面々による傑出したエクスペリメンタル/ポスト・インダストリアル傑作の数々を発表しているイタリア屈指の尖鋭レーベル〈Haunter Records〉を主宰。同国・ミラノを拠点に活動する実験的アーティスト/ミュージシャン、Daniele Guerriniによるソロ・プロジェクト=Heith。以前デジタル・リリースしていた2枚の作品を2LP化したアルバム『X, wheel + The Liars Tell...』が、ベルリンのクラブ・シーンを代表する名門〈PAN〉より登場。リチュアルで魅惑的な地下世界的サウンドスケープから、独特の音響要素を折衷させた共鳴的なサウンドスケープ&アンビエンスまで。極めて未来的な音響に満ちた、声のアヴァンギャルドで美しい加工とそれにフィットする電子音響で満ちた、アンビエント・エレクトロニカの先鋭を征く『The Liars Tell』サイドも、近い意匠を持ちつつもよりドゥーミーで闇黒な『X, wheel』サイドも素晴らしい、近年のPANの中でも秀逸な一枚。痛みと孤独を越えながら、高く響かせる天上的ポスト・クワイア”medicine boy”も素晴らしいです。

現行エクスペリメンタル最重要角による今年度新作!Felicia Atkinsonら率いるフランスの実験系一大名門レーベルこと〈Shelter Press〉からは、テキサス・サンアントニオの女性ミュージシャンであり、対象物とその潜在的な音を用いて、クィアネス、人間関係、自己認識を探求する昨今大人気のClaire Rousayのニュー・アルバムが登場。〈American Dreams〉からの21年傑作『A Softer Focus』が大ヒットを飛ばした鬼才による今年度初ソロ作がこちらです。Alex Cunningham (violin)、mari maurice (electronics and violin)、Marilu Donovan (harp)、Theodore Cale Schafer (piano)といった豪華面々をフィーチャリングした意欲的な一枚。幻想とあちら側との境目を漂いっぱなしな暖かさ。まるで、Mary Lattimoreから吉村弘、Machinefabriek、Julianna Barwickのミッシング・リンクの如し、ラジカルかつ静謐なアンビエント・ミュージック。明証Stephan Mathieuがマスタリングを担当。限定300部。傑作盤!
クラフトワークが1981年12月10日にオランダ・ユトレヒトの音楽センター〈Vredenburg〉で行ったライヴを収録した『Radio. Live Transmission: Live At Muziekcentrum Vredenburg. Utrecht. Netherlands. December 10. 1981』。『Computer World』発表直後のテクノポップの完成形とも言える時期の演奏で、スタジオ音源に近い正確さながら、ライヴならではの厚みとダイナミズムが記録されている。クラフトワークが未来のポップ・グループとして世界的に認知された瞬間を捉えた貴重な録音。
1960年代に数々のジャズ・バンドを率い、チェット・ベイカー、ボビー・ジャスパー、ルネ・トーマス、バディ・コレット、コンテ・カンドリ、ジャック・ペルツァーなど錚々たる顔ぶれと仕事をしたイタリア人ピアニスト兼作曲家、Amedeo TommasiがRCAの伝説的な 「Original Cast 」シリーズの一枚としてJarrell名義で制作した1974年作『Industria 2000』が、ミラノを拠点としてイタリアの過去の影に分け入り、2020年にリリースされた驚異的なエンニオ・モリコーネとブルーノ・ニコライのボックス・セットや、ピエロ・ウミリアーニの作品に特化した取り組みから、伝説的なクランプスのカタログの垂涎のアルバムの数々までを次々とリリースする〈Dialogo〉より初となるヴァイナル・リイシュー!無名でハイクオリティな音楽の宝庫であるイタリア・ライブラリー・ミュージックの中でも最も先鋭的で最高の実験的作品である本作は、野性的でアヴァンギャルドなエレクトロニクスとシンセサウンドの純粋で輝かしい抽象性が、ジョン・カーペンターのシンセを取り入れたサウンドトラックや、インダストリアル・ミュージックやノイズのイディオムを予感させると共に、全体に垣間見えるポップさが絶妙で、イタリアン・ライブラリー・ミュージックの素晴らしさを紹介する完璧な入門盤となると同時に、ファンにとっては最大級の聖杯と言える一枚!限定300枚。リマスター済。
説明不要 Kraftwerk の代表作『Autobahn』。電子音楽がまだ実験的な領域にあった1974年に、シンセサイザーとミニマルな反復構造を用いて未来のポップミュージックを提示した本作は、電子音楽の抽象性とポップの親しみやすさを融合させて、のちのシンセポップ、テクノ、アンビエントなど多くのジャンルの礎となった。Kraftwerk を“電子音楽の先駆者”として世界に知らしめた歴史的名盤。
ニューヨークのアンダーグラウンドMC Sensationalと、ブラジル出身のプロデューサーBruno Tonisiによる、奇妙で幻想的な音のやりとりを記録した作品『Sensational Conversations』が、サンパウロ拠点のオブスキュア系発掘レーベル〈Lugar Alto〉より登場。2人は実際に対面したことはなく、Brunoが憧れの存在だったSensationalにコンタクトを取ったことで、このプロジェクトが始まった。ただしこれは普通のコラボではなく、まるで壊れかけたラジオを通して交信しているような、ノイズまじりの「符号」のような音楽。アルバムはヒップホップを土台にしているが、その形を大胆に解体。GRMがNYのロフトで汚れ仕事を始めたようなサウンドデザインで、ぼやけた声、壊れたビート、不安定なリズムの中に、ふとした瞬間に感情がにじみ出る。その不安定さや歪みにこそリアルな手触りがある一枚!

ロンドン拠点のDJ ojoが〈Blank Mind〉からリリースするデビュー・アルバム『Total internal reflection』。クリアなシンセと空間音響デザインが際立ち、没入感の高いミニマルなサウンドを、4/4のダンスビートからブロークンビーツまで幅広く変化しつつ、全体を通してトライバルでアクロバティックなポリリズムを維持した深みのあるリズム構造が支える。グルーヴは一貫性を保ちながらも常に揺らぎを含んでおり、ハウスとダブ・テクノへの愛情を、軽やかで思慮深いタッチで表現した一枚。

自作シンセサイザーとタブラを中心に、電子音と身体性の交差点を探求してきたイタリアの音響作家Matteo Scaioliが、新レーベル〈Big Room Ambient〉の第1弾として発表する『Harmograph』。17分超の長尺ドローン「Germoglio」、タブラと電子音が呼応する「Aspettando il tempo」、アナログ機材の温度が滲む「Ponti」という全3曲・35分超の音響旅を収録。自作シンセの独特の音色、Prophet 5の厚み、タブラやゴングの倍音が重なり、部屋の壁が後退していくような広がりを生むサウンドデザインは圧巻。電子音の精密さと、打楽器の生々しい振動が溶け合い、有機と無機が同じ呼吸をしているかのような音像が立ち上がる。構築と即興が交差するダイナミックかつ有機的なアンビエント作品。

Giovanni Marco Citivengaによるプロジェクト、Detraex Corpによる、ダブ、ベース・ミュージック、トライバル・エレクトロニクスが交錯する幻覚的サウンドスケープ『Live at Pompeii』が〈Sagome〉より登場。本作は、ポンペイという歴史的・神秘的な場所を舞台にした音響による幻想で、土着的で呪術的なグルーヴを感じさせるベースライン、酩酊的で夢幻的に加工されたウードの音色、重く粘着質なビートが90年代Wordsoundの幻影を未来的に再構築したような印象を残す。クラブ的なグルーヴと古代的で幻覚的な儀式を思わせる音響が融合し、朽ちた祝祭のような雰囲気となっている。ダブと実験音楽の境界を押し広げながら、聴覚の深層へと誘う音響考古学とも言うべき一枚。

モントリールのデュオLibrary L’Amourが紡ぐ、デリケートで夢見心地のシンセポップ・ロマンス『Premier Caprice』。Yasmine IxeとRichard Ryan Wengerが、3年半にわたる恋愛関係の中で録りためた4曲を収録。柔らかく滲むパッド、揺らぐハーモニー、語りと吐息のあいだを漂うヴォーカルで、官能と夢幻がゆっくりと溶け合っていく。録音からミックスまでWengerが手がけたプライベートな制作体制で、アンビエントとシンセポップの狭間を漂う音像は、80年代ヨーロッパのベッドルーム・ポップを思わせつつ、ノスタルジックな湿度をまとっている。〈STROOM〉の美学にぴたりとはまりながら、モントリールのエレクトロニック・シーンの息遣いも感じさせる、親密で官能的なシンセポップの小さな傑作。

アダム・ルドルフ率いるムービング・ピクチャーズによる『Glare of the Tiger』。本作は、伝統と現在、そして未来をつなぐクリエイティブ・ミュージックの極みといえるアルバムで、ルドルフが30年以上かけて磨き上げてきた独自のコンセプトのもと、長年ともに演奏を重ねてきたメンバーが、抜群のコンビネーションと独自の音楽言語で応えている。参加メンバーは、オーネット・コールマン、ユセフ・ラティーフ、ロイ・ヘインズ、ドン・チェリー、サム・リヴァース、ジョン・ハッセルといった20世紀ジャズ/即興音楽の巨人たちと実際に共演・師事してきた面々ばかりで、そうした歴史との直接的なつながりを持ちながら、彼らはルドルフ共に今を表現する新たな音楽を生み出している。「伝統を敬うとは、過去を模倣することではなく、自分自身の声で新しい音楽を創り、いまを響かせること」とルドルフ自身が語るように、ジャズや即興音楽の歴史の延長線上にありつつも、明確に次の時代へ向かう意志を持ったアルバム。

Unknown Mortal Orchestraが1970~80年代のイタリアン・ホラーとブラック・サバスの影響を抽出した12インチEP『CURSE』。わずか10分ちょっとの全6曲、そのうち半分近くはイントロやアウトロのような断片にすぎないが、その短さゆえの凝縮された陰りと熱があり、どれもこの呪われた時代に向けたカタルシスを帯びている。「BOYS WITH THE CHARACTERISTICS OF WOLVES」ではサバス譲りの荒々しいリフで深い陰影を描き、「DEATH COMES FROM THE SKY」ではUMOらしい緻密で落ち着いたギターが幽玄な空気を纏う。じっくり浸るにはあまりに短く、むしろ断片的なスケッチの連なりに近いが、そこにこそ、このバンドが次にどこへ向かうのかという予感が滲んでいる。ゴシックで演劇的、血の気の多い悪ふざけのようでいて、どこか妙に楽しい。そんな一瞬の黒い幻影を焼きつけた作品。
テープループとエディット技法を駆使し、Instagramで10万人近いフォロワーを持つアーティストBlankFor.msことTyler Gilmoreの待望のフル・アルバムが〈Leaving Records〉から登場。本作は、ジャズの初期経験やハウス、ドラムンベースへの愛情を背景に、テープループの不完全な循環性を時間の瞑想のメタファーとして扱うコンセプトで構築。テープの揺らぎや劣化をそのまま活かしたローファイな質感で、ピアノの断片、環境音、ノイズ、微細なビートが重なり、霧の中で記憶を拾い集めるような曖昧な音世界を形成する。抽象的ミニマルハウスとフォギーなアンビエンスが断片的にも関わらず強い物語性を生んでいる、印象に残る一枚。

Tychoが2010年代に築き上げた到達点として高く評価され、グラミー賞にもノミネートされた名作『Epoch』が、10周年を記念してブルー&ブラック・マーブル仕様の限定盤として再登場。Scott Hansenを中心とするプロジェクトが、ソロ的な繊細さからバンドとしての厚みへと進化した時期の作品であり、『Dive』『Awake』と続く三部作の締めくくりに位置づけられる重要作。柔らかなシンセのレイヤー、ギターの煌めき、ミニマルで心地よいビートが有機的に絡み合い、アンビエントとエレクトロニカのあいだに広がる新しい音の地平を描き出す。夜明け前の空気のような静けさと、地平線が開けていくような高揚感が同居し、質感・色彩・空気感の変化によって物語が進んでいく。Tychoの視覚的な音楽という特徴がもっとも美しく結晶した一枚。



イギリスのシンセポップデュオSpeedboatの一員としても知られるJohnny Sais Quoi によるデビュー・アルバム『Love On Ice』が〈Music From Memory 〉から登場。イタロ・ポップや80年代ニューウェイヴの影響を軸にしながらも、現代的なポップ感覚とDIY的な親密さを兼ね備えた本作は、FMシンセやドラムマシンを主体としたタイトなリズムに、アルペジオやヴォコーダー処理を施したヴォーカルが重なり、イタロ的な高揚感と淡いメランコリーを同時に醸し出している。出会いや別れなど人生の転機をテーマにしており、軽やかなポップの享楽性と、メランコリックな陰影とを行き来するような二面性が印象的で、シンセ・ベースの推進力と透明感のあるメロディラインは、ダンスフロアに直結する強度を持ちながらも、楽曲構造そのものはどこか内省的で、リスニングにも耐えうる静かな余白も残している。80年代的な懐かしさと同時に現代的な新鮮さを感じさせる一枚。
