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静寂と祈りの音。エチオピアの伝統的な宗教音楽である、アムハラ族の典礼歌唱と大型の堅琴ベゲナによる深い霊性を湛えた音楽を集めたコンピレーション『The World Is But a Place of Survival』。ベゲナは、ダビデの竪琴とも呼ばれる10本の弦を持つ大型の弦楽器で、神への祈りや信仰、死、救済といったテーマを静かに語るような音楽に用いられる。このアルバムでは、Alemu Aga、Sosena Gebre Eyesus、Tafese Tesfaye、Yetemwork Mulat、Abiy Seyoum、Akalu Yossefらによる演奏が収録されており、ウィスパーボイスと低音のベゲナが交錯する、静謐で瞑想的な音世界が展開される。本録音はベゲナ音楽を本格的に記録した数少ない音源のひとつであり、まるで教会の奥で密やかに歌われる祈りのような響きが、聴く者の心に深く染み入る一枚。2002〜2005年に民族音楽学者Stéphanie Weisserによってアディスアベバで録音、スイスのVDE-Galloのライセンスのもと、〈Death Is Not The End〉より再構成、再発。

100年前の音が今よみがえる!フィンランドのカンテレ奏者・研究者であるArja Kastinenと、フォーク歌手Taito Hoffrénによって制作された、フィンランドの伝統音楽と口承文化を再構築する音響民俗誌とも言うべき作品『Teppana Jänis』が〈Death Is Not The End〉より登場。1916〜17年に民族音楽学者Armas Otto Väisänenが蝋管録音した、カレリア地方の歌い手Teppana Jänisの歌声をもとに、Arja KastinenとTaito Hoffrénが現代の演奏を重ね合わせることで、100年前の音の記憶を再構築している。ルーン歌唱や語り、カンテレの響きが交錯する音世界は、過去と今が重なり合い、日常の中に静かな霊性が立ち上がるかのよう。静かで深い、まるでフィンランドの森の奥から届いた声のような一本。
Iggy and The Stoogesが1974年にデトロイトのミシガン・パレスで行った、バンドの死に際とも言える混沌のライブを収録した伝説的なアルバム『Metallic K.O.』が、Spacemen 3のSterling Roswellによるリマスタリングを経て〈Death Is Not The End〉よりオフィシャル再発。観客との罵声の応酬、瓶や氷が飛び交う暴力的な空間、演奏は荒々しく、時に崩壊寸前。曲中でメンバーがタイミングを失い、Iggyが「ドラムだけくれ!」と叫ぶ場面も記録された、挑発的で破滅的なパフォーマンスがそのまま記録された、ロック史上最も危険で生々しいライブ盤。オリジナルは1976年にフランスの〈Skydog Records〉からリリースされており、セミ・ブートレグ的な扱いながらもアメリカで10万枚以上を売り上げ、The Stoogesの伝説を決定づけた、ロックの限界と狂気を記録した音のドキュメント。パンク以前のプロト・パンクの精神が凝縮された一枚として、今なお語り継がれる名盤。

シカゴの名門レコードショップ「Mr. Peabody Records」の創設者としても知られ、ディスコ/ハウスの遺産を掘り起こすレジェンド的存在であるMark Grusaneが1992年、高校時代に仲間たちと開催していた地下パーティのために制作したプロモーション用ミックスを復刻した『The Witch Is Back』が〈Death Is Not The End〉より登場。シカゴ・ハウスのグルーヴと当時流入し始めていたヨーロッパのミニマル・テクノが融合した内容で、DIY精神に満ちたローファイな空気感と、青春の記憶が刻まれたタイムカプセルのような魅力を放っている。地下室で鳴っていたリアルなダンスフロアの熱気が封じ込められた、シカゴ・アンダーグラウンド・カルチャーの初期衝動を記録した貴重な音源であり、シカゴ・ハウス/ディスコのルーツに触れる貴重な復刻。

ペルーのフィールドレコーディング作家・映像作家Hánkel Bellidoによる、アマゾンの深奥から届いた音響記録『Yavireri: Los que viven en lo profundo』が〈Death Is Not The End〉より登場。本作はペルー南東部ウルバンバ川下流域のマツィゲンカ族のコミュニティと、Hánkel Bellidoが2年間にわたり共存しながら録音したフィールドレコーディング作品。夜明けの歌、子守唄、鳥との対話、死者への別れの歌、神への祈りなど、日常の営みと霊的な感覚が音として記録されており、民俗音楽の再現ではなく、生活そのものの音の証言となっている。アマゾンの深奥で精霊と暮らす音であり、耳を澄ませば、森の奥で生きる人々の時間と空気が、静かに語りかけてくる一本。

アメリカの伝説的ビート詩人Allen Ginsbergが1971年から1981年にかけて録音した楽曲を収めた、詩と音楽の融合を試みた異色のアルバム『First Blues』が〈Death Is Not The End〉よりヴァイナル再発。本作は1971年から1981年にかけて録音された楽曲を収録しており、ラグタイム、ブルース、バラッド、即興詩などが混在するユニークな構成となっている。ギンズバーグの詩的な語りと歌唱が交錯する楽曲群には、Bob Dylan、Arthur Russell、David Amram、Happy Traumなど、ジャンルを超えた豪華なミュージシャンが参加しており、ハーモニウムや指シンバルを用いた素朴な演奏と、ユーモアや政治風刺、性的表現を含む率直な歌詞が特徴的。ギンズバーグの声そのものが持つ力と、詩人が歌うことで生まれる新たな表現のかたちによって、詩と音楽の境界を軽やかに飛び越えていく、文化的にも音楽的にも貴重な記録。

アメリカの伝説的ビート詩人Allen Ginsbergが1971年から1981年にかけて録音した楽曲を収めた、詩と音楽の融合を試みた異色のアルバム『First Blues』が〈Death Is Not The End〉よりカセットで再発。本作は1971年から1981年にかけて録音された楽曲を収録しており、ラグタイム、ブルース、バラッド、即興詩などが混在するユニークな構成となっている。ギンズバーグの詩的な語りと歌唱が交錯する楽曲群には、Bob Dylan、Arthur Russell、David Amram、Happy Traumなど、ジャンルを超えた豪華なミュージシャンが参加しており、ハーモニウムや指シンバルを用いた素朴な演奏と、ユーモアや政治風刺、性的表現を含む率直な歌詞が特徴的。ギンズバーグの声そのものが持つ力と、詩人が歌うことで生まれる新たな表現のかたちによって、詩と音楽の境界を軽やかに飛び越えていく、文化的にも音楽的にも貴重な記録。
ニューヨークのディガー/ブロガーBodega Popキュレーションによる、1960〜1974年のアラブ世界のレフトフィールド音楽、風変わりなポップ、そして抗議歌を集めたミックステープ『Love Raid: Arabic Leftfield, Novelty, and Protest 45s 1960–1974』が〈Death Is Not The End〉より登場。エジプト、レバノン、イラク、シリアなど多様な地域から発掘された7インチ・シングルを中心に構成され、政治的メッセージ、風刺、実験性、そして地域性の強いポップ感覚が混在するユニークな一本で、これらは、国家主導の音楽政策が見過ごしてきたシャアビやフォーク、ヴィンテージ・アラビック・ポップの豊かさを浮き彫りにしており、Oum KalthoumやAbdel Halim Hafezといった正統派だけでは語りきれないアラブ音楽の広がりを示している。トラックリストが非公開であることも、まるで秘密のラジオ放送を聴いているような感覚を生み出し、聴く者を時代と地域を超えた音の旅へと誘う。

イングランドはシュロップシャーとミッド・ウェールズ周辺で受信された謎めいた秘密の短波放送=ナンバー・ステーションの断片を収録した音響ドキュメント『Recordings of Covert Shortwave Radio Stations』が〈Death Is Not The End〉より到着。録音者Eric Loveland Heathが数年にわたり収集した19の放送断片を編集して収録しており、冷たい声による数字の羅列、モールス信号、電子ノイズ、断片的なメロディなどが、まるで幽霊のように空間を漂う。かつてラジオハムたちは短波を通じて世界中の仲間と交信し、時には暗号めいたナンバー・ステーションに遭遇することもあった。これらの放送の真の意味や発信者は不明のままだが、その非常に曖昧な実態や奇妙な音声構造や反復性のある音響は、今もなお現代の謎とロマンを秘めた存在として、ある人々を惹きつけ続けている。Heathはその痕跡を地元で拾い集め、音響的に再構築することで、謎の音そのものが不気味で魅惑的な空白を生み出し、聴く者を見えない世界へと誘う作品へと昇華させている。

ペルー南部アヤクーチョ出身のギタリスト、作曲家、教育者であるAlberto Juscamaita GastelúことRaktakoによる、1930〜1940年頃の未発表ホームレコーディングを収めた貴重な音源が〈Death Is Not The End〉より登場。Raktakoは、Huaynoと呼ばれるアンデス地方の先住民音楽とスペイン植民地時代の影響が融合して生まれた伝統音楽のギター表現を独自に発展させた人物で、彼の演奏は、アンデス・ハープの調弦や指使いをギターに取り入れ、さらにスペインのリュート、ヴァイオリン、アコーディオンなどの奏法を融合させたユニークなスタイルを特徴としている。本作は、彼の最後の弟子であるGustavo Yashimuraが2022年に発掘・提供した音源をもとに構成されており、簡素な機材で録音されたにもかかわらず、アヤクーチョ地方の音楽的・文化的記憶を鮮やかに伝える内容となっている。

コロンビア太平洋沿岸部のアフロ・コロンビアン・コミュニティに伝わる葬送儀礼の歌を記録した貴重なフィールド録音作品『Alabaos y Gualíes: Dirges and Funeral Rites in the Afro-Colombian Pacific』が〈Death Is Not The End〉より到着。死を「終わり」ではなく「魂の旅の始まり」と捉える彼らの文化において、Alabaos(哀歌)とGualíes(祈りの歌)は、亡き人への敬意と共同体の絆を音楽によって表現する重要な手段となっている。収録されているのは、子どもの魂を導く「gualí」、大人のための「alabao」、そして墓を起こす儀式「levantamiento de tumba」といった、死者の魂を来世へと送り出すための歌と祈り。コール&レスポンス形式の歌唱、魂を揺さぶるような力強いチャント、打楽器によるリズムなど、黒人霊歌やゴスペルの源流を感じさせる霊性が宿る。カセットテープというフォーマットも相まって、現地の空気感や儀礼の臨場感がそのまま封じ込められており、音楽の持つ偉大さを改めて実感させてくれる作品となっている。
UKアンダーグラウンド・エレクトロ/テクノ・シーンの中核レーベル〈Tone DropOut〉から、シリーズ第12弾となるコンピレーションEP『Tone DropOut Vol 12』が登場。レーベル共同主宰のDAWL、The HE-MEN(SWEEN)、そしてASCOTによる4トラックを収録し、90年代UKレイヴの精神を現代に蘇らせるような、荒々しくも洗練されたサウンドが展開される。〈Tone DropOut〉らしいDIY感とアナログ感が際立つプロダクションで、ブレイクビーツ、ブリープ、ディープでダークなグルーヴ、そしてアナログ感のあるベースラインが特徴で、オールドスクール・レイヴや初期エレクトロの影響を色濃く反映した内容。The HE-MENによる「Battle Cat」や「Chicken」は、ファンキーかつ攻撃的なブレイクスを展開し、DAWLの「Night Of The Living Bass Drum」は重厚なベースが唸るレイヴ・テクノ。ASCOTの「Meditazionne」は瞑想的なエレクトロで締めくくられ、Tone DropOutの美学を体現する一枚となっている。
グラスゴーを拠点に活動するプロデューサーConna Harawayによる3曲入りの12インチEP『Shifted』がMatthew Kent主宰の〈Short Span〉から登場。前作『Spatial Fix』で展開された濃密なテクスチャと空間的な音響を踏まえつつ、本作ではグルーヴ感のあるベースラインによる推進力と静けさや余白、抑制の効いた音の密度のコントロールとのバランスに焦点を当て、より洗練されたサウンドへと進化している。A面には、XENIA REAPERとの11分超のコラボレーション「Redirect」を収録。深夜のグラスゴーでのジャムセッションから生まれたこのトラックは、浮遊感のあるシンセと繊細なベースラインが絡み合い、アンビエント・ダブの美しさを極限まで引き出している。B面には、クラブ対応の4×4テクノ「Detach」と「Duration」を収録。ミニマルでディテールに富み、リスニングにも適した柔らかなグルーヴが特徴的で、Basic ChannelやDeepchord、Shinichi Atobeなどの系譜に連なる作品となっている。リスニングにも耐えうる、グラスゴーのアトモスフェリックな電子音楽の流れを体現する重要作。
The Trilogy Tapesを代表するユニット、メルボルンを拠点とするConrad Standish と Sam Karmel によるCS + Kremeの2作目『EP #2』がめでたくも2025年リプレス。本作は、2016年のデビュー作『EP #1』と対をなすように構成された作品で、ダウンビートの枠を越えて、アンビエント、アブストラクトなソウル、DIYフォークやニューエイジ的要素をも取り込み、独自の引き算の美学で練り上げられた楽曲群が並ぶ。シンプルに削ぎ落とされた音像が漂い、呼吸し、夢と現実の境界を漂うような世界観を築き上げており、ハイライトのひとつ「Roast Ghost (Swimming Thru The Pillars Mix)」は、808の脈動と深くうねるベース、そしてConradの声がろうそくの灯のように揺れながら9分間を染め上げる陶酔的なトラック。HTRKの Nigel Lee-Yang を迎えた「Whip」ではギターの旋律が陰影を加え、終盤の「Portal」では、しなやかなベースと鍵盤、コンガ、そしてJack Doepelのサックスが加わり、The Necks や Bohren & der Club of Gore を想起させる広大なパノラマを描き出す。全体を通して、冷ややかなシンセの揺らぎや、光沢を放つ音の粒、神秘的なリズムが組み合わさり、どこでもない場所で鳴っているような、超現実的で映像的なサウンドを形作っている。『EP #1』と並んでCS + Kremeの美学を決定づけた作品であり、メランコリックな美しさをたたえた現代クラシックとして、長くリスナーに愛されている一枚。
Zenker Brothersが主宰するモダン・ディープテクノ・レーベル〈Ilian Tape〉主要アーティストの一人であるイタリアのプロデューサー Andrea Cipolla による『Living Room』。アンビエント、ダブ・テクノ、ブロークンビートを軸に、空間性やテクスチャー、リズムを緻密に探求した作品となっており、ダブ由来の低音の重みときめ細やかなリズムの揺らぎを基盤にしながら、瞑想的なシンセ、内省的で余白を感じさせるサウンド・デザインを重ね合わせ、非4つ打ちのIDM的なリズムを展開。ビートは硬質でミニマルながらも、残響やエフェクトが深く施され、空間的な広がりが強調されており、穏やかでアンビエント寄りの曲から、ベースラインが前景化したトラック、さらに IDM 的なリズムの複雑さを前面に押し出す楽曲へと緩やかに移り変わっていく。静と動のバランスが巧みに組まれ、とりわけ、空間的なリバーブに包まれるシンセ・テクスチャーと、ダブ処理されたベース/ドラムの絡みは、成熟した味わい深い音響を生み出している。これまでのベース・ヘヴィなプロダクションから一歩距離を取り、より内面的で空間的な方向へと深化した本作は、ヘッドフォンでじっくりと聴きたくなる、リスナーを深く静かな世界へと誘う、聴き応えのある傑作。
ロシアのサンクトペテルブルクを拠点に活動するアンビエント・シンセシスト X.Y.R. と、S A Dのメンバー Vlad Dobrovolski によるコラボレーション・プロジェクトRadxのデビュー作『Reverse Acceleration of Dragons』が〈12th Isle〉から登場。両者が共有するのは、80〜90年代のヴィンテージ・シンセサイザーへの愛着、アンビエントや家具の音楽への親和性、そしてドラゴンをモチーフにした幻想的なイメージ。アルバムは、シンセ、ペダル、サンプラーを自在に組み合わせて構築され、荘厳な空気を湛える「Heavenly Shepherd of Silence」、揺らぐ空気に漂うような「Ovgo’s Etheric Mind」、熱帯雨林の湿度を思わせる「Liminal Space」など、多彩なサウンドスケープを展開。X.Y.R.のメディテーティヴなアンビエント感覚と、Vladの実験的かつ詩的な音作りが交差し、お互いの魅力を補完し合うような作品となっている。冷たい空気感、広大な空間を感じさせるリバーブや、ミニマルで内省的な構成などロシア的な雰囲気、アンビエント的で幻想的な世界観と、機材への深い愛着と音響探求の姿勢が混ざり合った奥深い魅力を感じられる一枚。
Delroy Edwards主催の人気レーベル、〈L.A. Club Resource〉からリリースされた再発盤も高騰していたメンフィスのアンダーグラウンド・ラッパー、Shawty PimpとBig Pimpin 'ProductionsのクルーによるG-Funk~ギャングスタ・ラップの隠れた名曲たちがリマスタリングされ登場!カリフォルニアとニューヨークだけがアンダーグラウンド・ヒップホップの聖地ではないと言う南部テネシー州メンフィスの器量とも言うべき熱き魂。1995年、ヒップホップの黄金期に人知れず活動し、現在入手困難な極小部数のカセットリリースのみをリリースしていた面々の貴重な音源が改めてカセットで再発。ギャングスタ直系の印象的なフロウに、この時代の味が凝縮されたロウなビート、ほのかに香るR&Bなテイスト抜群な心地のいいローファイ・アルバムに仕上がっています。細心の注意を払いアーティストとの交渉を経た正規盤。
Laura Lippie、Kim Khan、Dr Winzoらを中心とした可変的なコレクティヴ、Troubadoursの三年間のセッションを凝縮した作品『Everything Is Being Recorded All The Time』。リヨン、アベクール、ベルリン、デンパサールといった土地での自由奔放なジャムから生まれた断片を再構築したもので、トラディショナルな楽器と最新のテクノロジーを掛け合わせ、ねじれたファンク、崩れかけたヒップホップ、幻覚的なポストパンクを横断するサウンドは、恍惚と不安が同居した奇妙な高揚感を漂わせる。Cibo MattoやVoice Actorを思わせるウィスパーラップ、歪んだフルートやサズの即興演奏、ドローンやノイズを伴う儀式的な展開など、多彩な要素が雑然としながらも有機的に繋がり合い、まるで記憶の断片が音として浮かび上がるような、現実感覚を曖昧にするような音響を生み出している。フィールドレコーディングや断続的なサンプルの挿入も相まって、都市のざわめき、遠くの祭礼、誰かの独り言といった音の断片に導かれながら、音の迷宮を彷徨うような一枚。

スコットランドのプロデューサー Lord Of The Isles によるディープ・テクノとアンビエントの間を漂うような、幻想的で奥行きのある電子音楽作品『Signals Aligned』。アルバムの核心には歪みを通した発見というコンセプトがあり、真実は誤りや錯覚によって覆い隠されているように、音もまた歪みやノイズを介して本質がちらりと現れる構造になっている。霧のように広がるシンセや揺らめくノイズ、深くうねるベースとダブ的なリズム、ときどき現れる力強い4つ打ち、ノイズや歪みをアクセントにしたざらっとした質感が重なり合い、静けさと高揚感を行き来するサウンドスケープを描き出しており、アンビエント的に没入できるトラックから、しっかりとダンスフロアに向けたビートまで、クラブでも自宅でも楽しめる多層的な仕上がりになっている。神秘的でありながらも心地よい推進力をもった本作は、Lord Of The Isles が築いてきた個人的かつ探求的なサウンド世界をさらに深化させた一枚となっている。

〈DRAG CITY〉〈EMOTIONAL RESCUE〉〈PALTO FLATS〉などの再発名門がその自主音源復刻に取り組んできたMARK IVES & CLIVE IVESからなる英デュオWoo。フォーク~ポストパンク~室内楽~ジャズ~ニューエイジ、あらゆる音楽性を含みつつも、その形容をうっすらと消し去ってしまう彼らの人知れず奏でられたオブスキュア宅録音楽の新たな未発表作品集が<Music to Watch Seeds Grow By>よりデジタルに先駆けてフィイジカル・リリース!クラリネット、ギター、パーカッション、エレクトロニック・エレメントによる心地よい音色が組み合わされた本作は、音楽愛好家だけではなく、庭師にとっても完璧なサウンドトラックとしてデザインされているという通り、予測不可能な有機的な流れを達成し、なおかつ調和を感じさせる、まるで植物のような安らかな感触!音楽の手触りや有機的な体験を高めるために、兄弟が選んだスイートピーの種が挿入される。「驚いたことに、スイートピーは秋に植えれば春に花を咲かせるんだ」。

人気作『風物詩』や『In A Landscape』といった実験的テクノの大傑作でも知られるベルリン拠点のサウンド・アーティスト、Sa Paの最新12インチ作品が新鋭レーベル〈Short Span〉から登場!この人の特徴である幻想的で重厚な音響が4つの新たな方向へと展開。サブベースと濁ったアトモスフィアが絡み合う8分間のビートレス・トリップ"Captigon"、グリッドレスなドラムパターンと断片的なヴォーカルサンプルが交錯する抽象的なリズムトラック"So Simple"、13分に及ぶミニマル・テクノのグルーヴに熱処理されたベースラインが絡む"Boredom Memory (Extended Memory)"(サブウーファーでの再生が推奨!)など、全体を通して、ダブ・テクノ、アンビエント、実験音楽の要素が融合し、内省的で深遠な音世界を構築した秀逸タイトル!

