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本書は、フラメンコの最深部カンテ・ホンドの起源が、パキスタン・シンド地方の音楽にあるという、著者であるAziz Balouch独自の理論を提示した1955年の著作。 Balouchはシンド地方のイスラム神秘主義と奉納歌の文化の中で育ち、1930年代にジブラルタルへ渡り、スペイン南部でカンテ・ホンドに魅了された。その自身の人生の軌跡をもとに、両地域の音楽的・精神的共鳴を探る内容で、研究書というより、個人的体験と直感的な観察に基づく音楽的回想録としての性格が強い。フラメンコの深い歌に宿る嘆きや祈りと、シンド地方の奉納歌に流れるスーフィー的精神性が、国境を越えてつながるというBalouchの洞察は、現代のワールドミュージックを見る目にも通じる先駆的なもの。今回の復刻版には、音・感覚・イスラム研究を専門とする人類学者Stefan Williamson Faによる新序文を収録し、作品の歴史的背景と意義を現代的に読み解く手がかりが加えられている。
コロンビアの名門〈Llorona Records〉から、伝統音楽とダブの最前線を示すコンピレーション『Cerrero Dubs』が登場。レーベルの中心人物Cerreroが、カリブ海沿岸、アフロ・パシフィック地域の名グループの音源を大胆に分解し、未来派ダブとして再構築。参加しているのはLos Gaiteros de San Jacinto、Son Palenque、Sexteto Tabalá、Bejuco、Semblanzas del Río Guapiなど、コロンビア伝統音楽の中核を担うアーティストたち。ガイタ、マリンバ、太鼓のフレーズが深いエコーと重低音の中で揺らぎ、民族音楽の影がダブ空間に漂うような独特の音像が生まれている。クラシック・ダブの手触りを残しつつ、クンビアやジュガ、バンブーコといったコロンビア固有のリズムの魂をしっかりと芯に残すダブ処理。音数はミニマルなのに、レイヤーがじわじわと変化していくことでサイケデリックでトリップ感が強く、伝統音楽の未来図を描くようなアルバム。

ナミビア北西部に暮らすヒンバ族の声と儀礼歌を初めて公式に記録した、〈Sublime Frequencies〉ならではのリアリティあふれるフィールド録音作品『Himba Hymn: Ghosts Of Namibia’s Skeleton Coast』。本作は、観光写真やステレオタイプなイメージで語られがちなヒンバ族を、彼ら自身の声で伝えるという目的で制作。録音はすべて現地で行われ、オリックスの角を使った伝統管楽器Cattle Gunの低く唸るような音色、手で口を覆って生まれる自然なフランジャー効果、声が連鎖していく人力ポリフォニック・エコーなど、電気的な加工を使わずに生まれる独自の音響が収められている。砂漠の乾いた空気をそのまま閉じ込めたような質感で、祈り、嘆き、語り、叫びが混ざり合う共同体の記憶そのもののような生々しさ。リズムは一定ではなく、集団の呼吸や身体の動きがそのままテンポになるような自由さがあり、フィールド録音でありながら、どこかトランス的な没入感を生む。機材を介さずとも、彼らの身体そのものがエフェクターであり、シンセサイザーであるかのような驚異的な音響。数あるカタログの中でも、文化的資料性と音響的インパクトが極めて強い一枚。

戦後テキサスのロードハウスを巡りながら歌い続けた無名の女性シンガー、Pinky Texが残したわずかな録音を掘り起こし、〈Rocks In Your Head Records〉と〈Mississippi Records〉が共同でまとめ上げた貴重なアーカイブ作品『The Singing Angel From Devil Rock Canyon』。プロデュースはSonny Smith、ミックスはJames Finch Jr.、マスタリングはTim Stollenworkと、現行インディ/アメリカーナの信頼できる布陣が参加。素朴で温かい歌声、土の匂いを感じるホンキートンクの質感、ロードハウスの空気をそのまま閉じ込めたようなラフで生々しい演奏。現代的な再構築ではなく、当時の息遣いをそのまま伝える魅力が際立つ一枚。

人類の音の秘宝を巡る旅!オリジナルは1995年にCDでリリースされた秘蔵78回転SP音源コンピレーション『The Secret Museum Of Mankind』シリーズの記念すべき第3巻。〈Sublime Frequencies〉の奇才ヒシャム・マイエットと〈Yazoo Records〉による共同制作で、1925年から1948年の世界各地の伝統音楽の音源を収めている。収録された音源はどれも、各地域の伝統音楽が深く生きていた時代に録音された黄金時代の記録で、録音はもちろんモノラルかつ簡素だが、そこに記録された演奏の熱量、声の張り、音楽のうねりは、現代のリスナーにもはっきりと届く力を持っている。音の民俗誌とも言うべきコンピレーションだが、生きた文化そのものが鳴っているような、そのあまりにリアルな聴感は、単なる懐古趣味や歴史的記録とは全く異なり、過去という異国へのトリップのよう。収録されている音源のクオリティが驚異的!第3巻には、ポーランド、スペイン、中国、アンゴラ、トルコ、モンゴル、ロシア、コンゴなどの音源を収録。ゲートフォールド仕様の見開きジャケットには、当時の写真や詳細なライナーノーツが付属。

人類の音の秘宝を巡る旅!オリジナルは1995年にCDでリリースされた秘蔵78回転SP音源コンピレーション『The Secret Museum Of Mankind』シリーズの記念すべき第2巻。〈Sublime Frequencies〉の奇才ヒシャム・マイエットと〈Yazoo Records〉による共同制作で、1925年から1948年の世界各地の伝統音楽の音源を収めている。収録された音源はどれも、各地域の伝統音楽が深く生きていた時代に録音された黄金時代の記録で、録音はもちろんモノラルかつ簡素だが、そこに記録された演奏の熱量、声の張り、音楽のうねりは、現代のリスナーにもはっきりと届く力を持っている。音の民俗誌とも言うべきコンピレーションだが、そのあまりにリアルな聴感は、単なる懐古趣味や歴史的記録とは全く異なり、過去という異国へのトリップのよう。収録されている音源のクオリティが驚異的!第2巻は、より土着性の強い録音が多く、ブルガリア、プエルトリコ、インド、モザンビーク、ウクライナ、トリニダード、カザフスタン、セイロン、チベットなど、まさに地球の裏庭まで踏み込んで音源を収録。ゲートフォールド仕様の見開きジャケットには、当時の写真や詳細なライナーノーツが付属。

人類の音の秘宝を巡る旅!オリジナルは1995年にCDでリリースされた秘蔵78回転SP音源コンピレーション『The Secret Museum Of Mankind』シリーズの記念すべき第1巻。〈Sublime Frequencies〉の奇才ヒシャム・マイエットと〈Yazoo Records〉による共同制作で、1925年から1948年の世界各地の伝統音楽の音源を収めている。収録された音源はどれも、各地域の伝統音楽が深く生きていた時代に録音された黄金時代の記録で、録音はもちろんモノラルかつ簡素だが、そこに記録された演奏の熱量、声の張り、音楽のうねりは、現代のリスナーにもはっきりと届く力を持っている。音の民俗誌とも言うべきコンピレーションだが、そのあまりにリアルな聴感は、単なる懐古趣味や歴史的記録とは全く異なり、過去という異国へのトリップのよう。収録されている音源のクオリティが驚異的!第1巻には、ナイジェリア、サルデーニャ、セイロン(スリランカ)、マケドニア、ベトナム、キューバ、ルーマニア、エチオピア、日本、ジャマイカ、南アフリカ、インド、フィジーなどの音源を収録。ゲートフォールド仕様の見開きジャケットには、当時の写真や詳細なライナーノーツが付属。

ベニン音楽史の中でもひときわ謎に包まれた人物Antoine Dougbéが、ベナン最強バンドOrchestre Poly‑Rythmo de Cotonouと共に残した1977〜82年の音源をまとめた〈Analog Africa〉の発掘盤。Dougbéはベニン南部アボメイ出身の作曲家で、自身も ヴォドゥン信仰のイニシエート。悪魔の宰相と自称したことでも知られ、精霊信仰の儀礼音楽をポップへ落とし込む独自の作風を築いた。興味深いのは、彼が歌手でも演奏者でもなく、作曲家としてPoly‑Rythmoに楽曲を提供する形で作品を残した点で、歌唱はLohento EskillやAmsou Williamが担当し、バンドの圧倒的な演奏力がドゥーベの楽曲を鮮やかなアフロ・グルーヴへと昇華させている。収録曲では、コンゴ風ダンス・リズム、ルンバの軽快さ、重層的に絡むギター、熱気あふれるホーンが炸裂。アフロ・ラテン、ファンク、そしてヴォドゥン儀礼のリズムが交差するサウンドは、1970年代西アフリカ音楽の最も創造的な瞬間を捉えたものと言える。ヴォドゥンの精神文化とアフロ・ラテンの躍動が溶け合う、ベニン音楽の知られざる傑作。

静寂と祈りの音。エチオピアの伝統的な宗教音楽である、アムハラ族の典礼歌唱と大型の堅琴ベゲナによる深い霊性を湛えた音楽を集めたコンピレーション『The World Is But a Place of Survival』。ベゲナは、ダビデの竪琴とも呼ばれる10本の弦を持つ大型の弦楽器で、神への祈りや信仰、死、救済といったテーマを静かに語るような音楽に用いられる。このアルバムでは、Alemu Aga、Sosena Gebre Eyesus、Tafese Tesfaye、Yetemwork Mulat、Abiy Seyoum、Akalu Yossefらによる演奏が収録されており、ウィスパーボイスと低音のベゲナが交錯する、静謐で瞑想的な音世界が展開される。本録音はベゲナ音楽を本格的に記録した数少ない音源のひとつであり、まるで教会の奥で密やかに歌われる祈りのような響きが、聴く者の心に深く染み入る一枚。2002〜2005年に民族音楽学者Stéphanie Weisserによってアディスアベバで録音、スイスのVDE-Galloのライセンスのもと、〈Death Is Not The End〉より再構成、再発。

武満徹『秋庭歌一具』の演奏でも知られる、雅楽の合奏研究と演奏を目的に1985年に芝祐靖によって創設された、日本を代表する雅楽演奏団体、伶楽舎による雅楽の伝統と現代性を融合した『雅楽組曲』。古代から伝わる古典雅楽と、現代の作曲家が雅楽の楽器群のために書いた現代雅楽の両方を含む楽曲を組曲形式で再構成、2001年の録音ながら、空間的なマイク配置と残響処理により、アンビエント的な深さと広がりが生まれている。笙 (しょう)、篳篥 (ひちりき)、龍笛 (りゅうてき)といった伝統的な雅楽器が奏でる永遠の息吹と、その間(ま)と独特の倍音構造が、強い印象を残す。〈Black Sweat Records〉からのリリースということもあり、雅楽の持つ静謐でありながら強烈な内面的な力を持つ響きを再文脈化する重要な再発。日本の重要かつ稀有な音楽である雅楽を現代の耳と感性に届けるための翻訳と再創造ともいうべき一枚。
10月中旬再入荷。20世紀インド古典音楽の隠れた至宝、Shrimati Kalyani Royによる貴重なシタール演奏!このセッションは、60年代後半に形成された彼女のスタイルをとらえたもので、深い精神性と繊細な技巧が共存する見事な記録となっている。Kalyani Royは、長らく男性優位とされてきたシタール界において、類まれな才能と高い芸術性で評価された数少ない女性奏者のひとりで、Vilayat Khan流派の系譜に連なる流麗で歌うような奏法がこの録音でもその特徴が随所に現れている。伴奏には、同時代の名手Manick Das(タブラ)とNamita Chatterjee(タンプーラ)が参加し、全体として柔らかくもしっかりとした低音の土台が、Kalyani Royの旋律を優しく包み込んでいる。彼女の弾くメロディは、単なる技巧の誇示ではなく、情感のこもった語り口として響く。まるで一つの物語を編んでいくような、親密で奥行きのある演奏。
10月中旬再入荷。20世紀インド古典音楽の隠れた至宝、Shrimati Kalyani Royによる貴重なシタール演奏!このセッションは、60年代後半に形成された彼女のスタイルをとらえたもので、深い精神性と繊細な技巧が共存する見事な記録となっている。Kalyani Royは、長らく男性優位とされてきたシタール界において、類まれな才能と高い芸術性で評価された数少ない女性奏者のひとりで、Vilayat Khan流派の系譜に連なる流麗で歌うような奏法がこの録音でもその特徴が随所に現れている。伴奏には、同時代の名手Manick Das(タブラ)とNamita Chatterjee(タンプーラ)が参加し、全体として柔らかくもしっかりとした低音の土台が、Kalyani Royの旋律を優しく包み込んでいる。彼女の弾くメロディは、単なる技巧の誇示ではなく、情感のこもった語り口として響く。まるで一つの物語を編んでいくような、親密で奥行きのある演奏。
フランスはノルマンディー出身のトラディショナル・フォーク歌手Véronique Chalotによる1982年のセカンド・アルバムで、中世音楽とフレンチ・トラッドを融合させた幻想的な作品『A L'Entrée Du Temps Clair』。ギター、ダルシマー、ハーディ・ガーディ、エピネット・デ・ヴォージュなどの古楽器にバグパイプ、クルムホルン、ホイッスルなどの管楽器も加わり、幻想的で郷愁感あるアンサンブルを形作っている。くぐもったヴォーカルと浮遊感あるアレンジが、アシッド・フォーク的な魅力を放っており、オリジナル曲と伝承曲が違和感なく融合。中世と現代、伝承と創作が交差する、ひっそりと輝く宝石。
マリの伝統弦楽器コラの名手として世界的に知られるBallaké Sissokoが、ベルギーの礼拝堂Sainte-Apolline Chapelにて、わずか一日で録音した8曲を収録した、極めて親密で静謐なアルバム。前作で多彩なゲストと共演した直後に制作されており、その反動のように、ここでは完全な独奏へと回帰している。礼拝堂の自然な残響を活かした録音は、コラの一音一音が空間に溶けていくような透明感を生み、オーガニックで純度の高いアコースティック・サウンドが際立つ。伝統的なマンデ音楽の旋律を軸にしながら、ミニマルで瞑想的な反復が続き、静けさの中に豊かな情感が宿る。現代アンビエントにも通じる響きを持ちながら、あくまでコラという楽器の本質とSissoko 自身のルーツに深く根ざした音楽性は、アフリカ音楽ファンから、アコースティック、アンビエント、ミニマルを愛するリスナーにも幅広く響く一枚。
アフリカの黄金の声として知られるマリの伝説的シンガー、Salif Keitaが76歳にして初めて挑んだアコースティック作品。本作は、ギターと声のみという極限まで削ぎ落とした編成で録音され、彼の歌声の深みと存在感がこれまで以上にストレートに響く。制作のきっかけは2023年の来日で、京都の禅寺の精神性などに触れ、「私はギタリストではない、ギターは作曲のためのものだ」という自身の考えを覆し、ホテルの一室でアコースティック・ギターを手にしたKeitaが、そのまま録音へと向かったという特別なアルバム。タイトル『So Kono』はマンディンカ語で「部屋の中で」を意味し、まさにその空気感がそのまま封じ込められている。ミニマルなギターのアルペジオに乗る神秘性を帯びた Keita の声。装飾を排したことで、彼の歌の力、息遣い、人生の重みがより鮮明に浮かび上がる。西アフリカの伝統音楽の深い影響も感じられ、静けさの中に豊かな情感が広がるアフロ・アコースティックの到達点といえる仕上がり。長いキャリアの集大成でありながら、驚くほどフレッシュな親密さを湛えた作品。
マレウレウ1st Album『もっといて、ひっそりね。』が、新たなミックス、マスタリングにより蘇る。アイヌの伝統歌を今に伝える名盤が、ジャケットも一新して初レコード化。
2010年、初作「MAREWREW」の発表を皮切りに、本格始動したマレウレウ。近年はドイツのレーベル「Pingipung」からベスト盤とリミックス盤がリリースされるなど、世界からも熱い視線を注がれる中、2012年発表のファーストアルバム『もっといて、ひっそりね。』がレコード化。全20曲のCD盤から、新たなミックス8曲を含む17曲が収録されている。ジャケットの表紙に採用されているのは、かつてMayunkikiの祖母が手がけたというアイヌの刺繍。そこにRekpoが新たにタイトル、アーティスト名を刺繍したものを組み合わせ、先人との絆が体現された仕上がりだ。インナースリーブでは、OKIとRekpoの愛娘で、2025年にマレウレウに加入したUtowaがイラストを担当するなど、アートワークにも注目すべき1枚。
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4つの声がアイヌの昔と今、未来をつなぐ。時空を越えて響くマレウレウ(蝶)の歌声。
アイヌの伝統歌「ウポポ」を現代に歌い継ぐ女性ヴォーカル・グループ、マレウレウ。アイヌは、楽譜を残さず、主に口伝で受け継ぐため、彼女たちが歌う歌は、かつて年長者から伝え聞いた歌や、資料館で自ら掘り起こし、探し当てた古い保存音源が基盤となっている。そうした先人たちのウポポに憧憬を抱きながらも、ただ真似するのではなく、「今の自分たちにしか歌えない歌」=現在進行形のウポポを追求していく。そして、それを積み重ねることで、やがて先人たちの歌に自然と近づいていくことがマレウレウのテーマだ。プロデューサーのOKIも「アイヌ文化で重要なのは“個々のスタイル”。伝統を引用しつつ、マレウレウのスタイルを入れることで伝統が様変わりして活性化していくことが大切」と語る。「みんなで一緒に歌った方が楽しい」とライブでウコウク(輪唱)を観客と合唱してみたり、「私たちのルーツ・ミュージックはこんなに素敵なのよ!」と天真爛漫にシェアしてくれる彼女たちの姿勢もまた、伝統の門戸を開く大きな魅力となっている。
このたびレコード化される2012年発表のアルバム『もっといて、ひっそりね。』は、そんなマレウレウの初期衝動が詰まったフレッシュな作品だ。メンバーのRekpoは、14年前に録音した本作の自らの歌を「同じ曲でも今と節回しが全然違う」と振り返る。アイヌのウポポは自分流の節回しが大事。昔の歌、今の歌、将来の歌。その瞬間の歌を録音物で残し続け、変化を楽しむことに意義があると言う。本作は、2020年にRim Rimが脱退する以前の録音という意味でも、この時にしか生まれ得なかった4人の声のグルーヴを堪能できる貴重な作品だ。
何百年先まで歴史に残る作品にしたい。その思いから、本盤ではOKIが新たに8曲をミックス、リマスタリングを手がけている。CD盤と聞き比べてみると、重層感、臨場感が増し、とりわけ螺旋状に追い掛け合うウコウクのパートなどは、立体感のある声の渦が恐ろしいまでに迫ってくる。CD盤発表当時から何度も聞き込んだつもりでいたが、こうして改めて聞くと、独創的なリズム、パズルのような歌の旋律構成など、もともとのアイヌの伝統歌が持つ豊かな音楽性に驚かされる。エッジーなベースのフレーズと流麗なトンコリが効いた「KAPIW UPOPO」、打ち込みのビートとキャッチーなメロディーで高揚していくダンス・チューン「KANE REN REN」など、「よけいなことをやり散らかすのが自分の役割」と言うOKIの遊び心が冴え渡るアレンジにも感服。14年の時を経ても色褪せない、むしろ輝きが増したこの音楽を讃えたい。
先人の歌と共鳴し、自身のスタイルで未来を切り拓くマレウレウの伝統の形。アナログ独自の奥行きのある音が、その真髄を浮き彫りにし、さらなる深遠なウポポの世界を見せてくれるはずだ。
文/岡部徳枝
国籍も背景も異なるMola Sylla(声/伝統弦楽器)、Oscar Jan Hoogland(クラヴィコード)、Frank Rosaly(ドラム)という異色のトリオによる、伝統と実験の境界を越えて作り上げたジャンル不定形のインプロヴィゼーション作品『Mother Tongue』。セネガルのグリオ音楽、アムステルダムの実験的インプロ、シカゴ系フリージャズのドラミング、ノイズ的なアプローチが衝突しながらも有機的に融合。牧歌的な声と弦、クラヴィコードの奇妙な響き、フリージャズ的ドラムが絡み合い、世界のどこにもない新しい民族音楽のような響きは、緊張感がありながらもどこか祝祭的。
マリ共和国、バマコを南西に約100km、ニジェール川左岸に位置し、Diabaté家を中心とした大規模コミュニティで知られるケラ村に受け継がれてきたグリオの音楽を、1978年と2019年という40年以上の時をまたいで記録したアーカイブ作品『MALI. The art of griots of Kela, 1978–2019』。ジュネーヴ民族学博物館が手がけるMEG‑AIMPシリーズの一枚で、前半は、スイスの音楽家Vincent Zanetti による2019年録音。後半は、フランスの人類学者 Bernard Mondetによる1978年録音。どちらもケラ村のグリオのコミュニティで現地収録され、声、語り、コラ、バラフォンが織りなす口承文化の核心がそのまま刻み込まれている。コラの透明な弦の響き、バラフォンの軽やかな木の音色は、ニジェール川沿いの風景や村の空気をそのまま閉じ込めたようで、西アフリカの口承文化の豊かさと、その継承の力を静かに伝える貴重なドキュメント。
インド古典音楽の名匠たちのアーカイブ音源を手がけてきた〈Black Truffle〉から、パキスタンの伝説的声楽家サラマット・アリ・カーンの未発表ライブ音源が初リリース!Agitation Freeのミヒャエル・ホーニッヒが録音を手掛けた1974年のベルリンのMetaMusikフェスティバルでのコンサートが収録されている。サラマット・アリ・カーンは北インドのパンジャーブ出身で、インド・パキスタン分離独立後に家族と共にラホールへ移住、幼少期から注目された声楽の天才で、ヒンドゥスターニー音楽の即興性豊かな声楽スタイル「カヤール」の名手として知られる。この公演では、伝統的なインドの撥弦楽器スワルマンダルの代わりに、特別に調律したアルプス地方のツィターを自ら弾きながら歌い、伴奏にはシャウカット・フセイン・カーン(タブラ)とフセイン・バクス・カーン(ハルモニウム)が参加している。通常、インド古典音楽ではタンプーラの持続音が基盤になるが、今回はそれがなく、代わりにカーン自身がツィターを使って繊細に音の支えを作っている。そのことが音楽に浮遊感や空白を与えており、より精神的で、詩的な深みある内容となっている。また、演奏時の美しいモノクロ写真と、ドイツの音楽学者ペーター・パンケによるエッセイも収録されており、演奏後にサラマット・アリ・カーン本人がふるまった絶品の手料理についてのエピソードなども綴られているなど、音楽の精神性と人間味がにじむ内容となっていて興味深い。

ヴァージニア州、メヘリン川沿いに残る18世紀の酪農農場。2023年9月、この場所にノースカロライナ周辺の音楽仲間9人が集まり、家の居間と食堂を即席スタジオに仕立てて録音したアルバム『Diamond Grove』。Weirsは固定したメンバーを持たず、オールドタイム音楽とDIYノイズを自由に横断する共同体的な集団で、ここではSluiceやMagic Tuber Stringbandの面々を含む編成で、夜が更けるまで古い歌や旋律に取り組んでいる。彼らは、忘れ去られそうな古い楽曲を収集し、Guided by VoicesのようなインディーロックからJean Ritchieのようなフォークまで、幅広い影響を融合させており、その音楽は伝統を保存するのではなく、伝統をどう生かすかを問い直すもので、古い賛美歌をMIDI化してiPhoneスピーカー越しに鳴らし直したり、ゴスペルを納屋の残響ごと封じ込めたりと、音の場そのものを演奏と同等の要素として扱っている。その結果、古い旋律は再現されると言うよりも、今この瞬間にふっと立ち上がって、リスナーの前に姿を現すのように響く。本作は、農場の古い建物、土地の記憶、夜の虫の声までが音楽の一部になっており、トラッド/フォークの純粋性を疑いながら、それでも歌の命脈をつなぎ、今日の耳にどう届きうるかを模索している。その本質はフォーク・リヴァイヴァルよりもむしろミュジーク・コンクレートやローファイ実験音楽の感覚に近いもので、アウトサイダー・フォークの系譜にありつつ、地域性と現代感覚を交差させたユニークな一枚。

エチオピア正教の伝統に深く結びついた巨大な竪琴で、ダビデの竪琴とも呼ばれる神聖な楽器ベゲナ。その伝統を受け継ぐ複数の名手による演奏を収めたコンピレーション作品『Elders of the Begena: The Harp of David in Ethiopia』。同じく〈Death Is Not The End〉からリリースされている『The World Is But a Place of Survival』が幅広いベゲナの演奏者を収録しているのと比べ、本作は少人数の長老的奏者に焦点を当てた構成で、より伝統の深部に焦点を当てた静謐で重厚、瞑想的な演奏が中心となっている。扱うテーマも、キリストの受難、聖母マリア賛歌、祈りなど、より宗教儀礼に近い内容が多く、また、録音も1999年と2008年にアディスアベバで行われたもので、録音者も録音時期も異なり音質・空気感・演奏スタイルに違いが出ている。音楽というよりも祈りの場に立ち会うような、長年にわたり継承されてきた奥深い精神世界の核心をおさめた貴重な記録。

エチオピア正教の伝統に深く結びついた巨大な竪琴で、ダビデの竪琴とも呼ばれる神聖な楽器ベゲナ。その伝統を受け継ぐ複数の名手による演奏を収めたコンピレーション作品『Elders of the Begena: The Harp of David in Ethiopia』。同じく〈Death Is Not The End〉からリリースされている『The World Is But a Place of Survival』が幅広いベゲナの演奏者を収録しているのと比べ、本作は少人数の長老的奏者に焦点を当てた構成で、より伝統の深部に焦点を当てた静謐で重厚、瞑想的な演奏が中心となっている。扱うテーマも、キリストの受難、聖母マリア賛歌、祈りなど、より宗教儀礼に近い内容が多く、また、録音も1999年と2008年にアディスアベバで行われたもので、録音者も録音時期も異なり音質・空気感・演奏スタイルに違いが出ている。音楽というよりも祈りの場に立ち会うような、長年にわたり継承されてきた奥深い精神世界の核心をおさめた貴重な記録。

静寂と祈りの音。エチオピアの伝統的な宗教音楽である、アムハラ族の典礼歌唱と大型の堅琴ベゲナによる深い霊性を湛えた音楽を集めたコンピレーション『The World Is But a Place of Survival』。ベゲナは、ダビデの竪琴とも呼ばれる10本の弦を持つ大型の弦楽器で、神への祈りや信仰、死、救済といったテーマを静かに語るような音楽に用いられる。このアルバムでは、Alemu Aga、Sosena Gebre Eyesus、Tafese Tesfaye、Yetemwork Mulat、Abiy Seyoum、Akalu Yossefらによる演奏が収録されており、ウィスパーボイスと低音のベゲナが交錯する、静謐で瞑想的な音世界が展開される。本録音はベゲナ音楽を本格的に記録した数少ない音源のひとつであり、まるで教会の奥で密やかに歌われる祈りのような響きが、聴く者の心に深く染み入る一枚。2002〜2005年に民族音楽学者Stéphanie Weisserによってアディスアベバで録音、スイスのVDE-Galloのライセンスのもと、〈Death Is Not The End〉より再構成、再発。
1941〜42年頃、国際文化振興会が制作したSP盤シリーズの一部で、戦前の日本で録音された伝統音楽の記録。当時制作された78回転盤は60枚に及ぶ大規模なセットだったが、戦争やその後の散逸で現存するものはごくわずかとなっており、本シリーズは、その失われかけた記録を修復する試みであり、日本の伝統音楽の真髄を伝える重要な歴史資料でもある。本作に収められたのは民謡で、田植え歌や機織り歌、マグロやニシン漁の歌、そして子どもたちの唄まで、匿名の歌い手による24曲が並ぶ。宮廷の雅楽や声明、能、歌舞伎、琵琶法師の叙事詩といった正統の音楽に比べても、農民や漁民の声にこそ凄まじい力が宿っている。いまでは失われてしまった日本の土着の音楽の力を体感できる一枚。
