MUSIC
7582 products

トルコ出身で現在グラスゴーを拠点に活動するIsik Kural による、世界各地で採取したフィールドレコーディングと室内楽的アンサンブルに囁くような声をのせた音の旅行記のようなアルバム『Motorcycles and Cherry Wind』が、〈RVNG Intl.〉より登場。マラケシュの市場、イスタンブールの乗合バス、古代リュキアの海辺、スコットランドの森で録音した鳥の声など、長年の旅で蓄積した環境音のアーカイブを丁寧に再構成し、ピアノやナイロン弦ギター、木管、弦楽器の柔らかな響きと自然に溶け合わせている。アンビエント的な静けさに自然な歌心が混ざり合い、現実の風景と夢の風景がゆっくり重なっていくような曖昧な質感。様々な文化的出自を持つミュージシャンも参加し、国境を越えたひとつの静かな風景画のような普遍性が生まれている。旅先で感じた空気や午後の光、土の匂いといった感覚の記憶が音として立ち上がる。詩的で奥行きのある、まだ行ったことのない懐かしい場所をそっと呼び起こすような音楽。
まさに精霊との交信・・・・パプアニューギニアの竹笛による神聖なる演奏!Editions Mego傘下に、Sunn O)))でおなじみStephen O'Malleyが運営・キュレーションする屈指のエクスペリメンタル・レーベル、Ideologic Organからは、同レーベルからの二年前の再発でも鮮烈な印象を残したばかり、Bjorkの最新作にして最高傑作とも言うべき「Utopia」にもサンプリングされたことでよりいっそう話題になっているRagnar Johnsonによって1979年に録音されたニューギニアの未発表フィールド・レコーディング音源が堂々の登場!
これは音楽遺産レベルの録音!長い雌と雄の竹を用い、儀式のためにパプアニューギニア・マダン地域の成人男性が演奏した竹笛の貴重なフィールド・レコーディング。時折、鳥たちの声が入り混じる中、神妙な息遣いで織りなされる、あまりにも稀有な響きを持つ竹笛の独奏。自然や精霊と対話するようなミステリアスな演奏はもはや別の世界や次元から鳴っているものにさえ感じられます。この演奏者たちは、この演奏技術を伝授された最後の世代であるようで、非常に資料価値の高い録音であることは間違いありません。何処で何時鳴らしても、何の違和感もストレスも無い完全な演奏と音質で、Dave Hunt studioにてDave Huntによるデジタル化&マスタリング、Rashad BeckerによってDubplates and Masteringでカッティングとプロダクションも完璧です。Ragnar JohnsonとJessica Mayerによるノート。ジャケットはRagnar Johnsonによる撮影。

2024年11月末、冥丁は、別府市制100周年記念事業の一環として、温泉文化をテーマにした滞在制作に招かれ、別府を訪れた。
「失日本」シリーズで知られる冥丁は、忘れ去られた日本の時代や風景を音として再構築する表現で注目を集める音楽家。今回の制作では、海辺に佇む築100年の旅館「山田別荘」の蔵に約1週間半滞在し、雨水が火山岩に染み込み、癒しの湯となって地上に戻る循環に耳を澄ませた。その結果生まれた作品『泉涌』は、温泉文化の内なる精神をたどるものである。
冥丁は竹瓦温泉、坊主地獄、へびん湯、そして山田別荘の内湯や貸切湯など別府の象徴的な温泉地を訪れ、泉源の音、泥の泡立ち、噴気孔の響き、竹林を渡る風、湯を楽しむ人々の会話などの環境音を丁寧に録音した。これらのフィールドレコーディングとその深い聴取体験を楽曲の音の土台とし、立ちのぼる湯気や体感した湯加減の塩梅までも音として描き出そうと試みている。
この作品は、一連の楽曲として展開し、硫黄と火山岩の風景の中を湯気のように漂っていく。坊主地獄に潜む狂気、山田別荘の内湯に響く幽玄な残響、苔むした竹瓦温泉の風情の中で交わされる日常の語らい。そうした断片が静かに織り込まれている。そこには水の静けさや土地に宿る記憶、そして代々ここで湯に親しんできた人々への深い敬意が込められている。
『泉涌』は、失われた日本の記憶を主題とする冥丁の探求を継承しつつ、新たな領域に踏み込んでいる。別府の風土や記憶を音 で巡礼するかのように、リスナーを深い没入体験へと誘う。マスタリングはStephan Mathieuが担当。また、本作は「失日本」 プロジェクトの新章『失日本百景』の幕開けを飾る作品。このシリーズでは、現代の生活の中でひっそりと息づく「憧憬の残る場」を探求していく。

1840年、スコットランド北西部の孤島セント・キルダにて絶滅した巨大な鳥、オオウミガラスの最後の1羽を殺めてしまった男の末裔、Ewan Macdonaldらによって結成されたアンサンブルGarefowlによるアルバム『Things That Vanish』。絶滅の悲劇と一族の歴史に向き合うべく、セント・キルダの主島ヒータ島の夜間にレコーディングを敢行。風や波の残響、鳥たちの羽音や水中音響、さらには現地の岩石や骨をX線解析しサイン波へ置換した独自のドローン技術を駆使して構築された、極めて深遠な音響ドキュメンタリー。シンセサイザーを一切排除し、ヴィオラ・ダ・ガンバやチェロ、コンサーティーナ、スモールパイプといった伝統楽器と現地採取の環境音響のみで編み上げられ、島に伝わる海鳥の不気味な伝承や魔術的な伝承歌の気配を宿しながら、気高い北の海の自然美と絶滅への悲哀が、アコースティック弦の深い響きと太古の残響となって静かに立ち現れていく。歴史の傷痕と島の記憶をそのまま音として刻んだような、重厚な一枚。

11月中旬再入荷(変更となりました)。音響作家claire rousayが、2026年に自ら設立した新レーベル〈quality sounds ltd.〉の記念すべき第1弾として発表した作品『on holding』。ヨーロッパおよびUKツアー中に収集された30時間以上におよぶ録音素材から5曲を編み上げた、極めてプライベートで美しい音響ドキュメンタリーで、移動中の環境音や会場の喧騒、ホテルでのスケッチ、そしてサウンドチェックの合間に奏でられた静謐なピアノの旋律がシームレスに交錯。スローモーションのように立ち上るピアノコードと優美な電子音が、日常のふとした瞬間に宿る情緒を静かに描き出していく。繊細な美しさに満ちた一枚。

ブラジルの学際的アーティストJoão Machadoによる、針を持たない蜂のフィールド・レコーディング音源のみを電子処理・加工して制作されたデビュー作『Meliponica』。大英図書館やベルリンの動物音響アーカイブにも収蔵される学術的価値の高い蜂のコミュニケーション音源を極限まで解体・再構築し、先鋭的な電子音楽へと昇華。蜂の微細な羽音や振動といった原音のポテンシャルを余すところなく引き出しながらも、単なるアヴァンギャルドな実験音響にとどまらない躍動的なグルーヴを創出。複雑でパーカッシブなポリリズムから、宇宙の深淵を思わせるアンビエント、そして静けさの中に漂うエモーショナルな旋律までがシームレスに交錯し、有機的な生命の息吹と緻密な電子美学が同居した異次元の音響空間を構築している。ミクロな自然音のテクスチャーが有機的なダンス・グルーヴや幻想的なメロディへと姿を変える、生命の神秘と電子音楽の合一。

サハラ砂漠以南のオブスキュアな音楽からご当地の知られざる現行アクトまでを紹介してきた、現代でも屈指の発掘レーベル〈Sahel Sounds〉から2018年に発表されていた、西サハラ地域全域で収集したアンビエント解釈可能なフィールド・レコーディング楽曲を収めた画期的ミックステープ作品『Field Recordings from the Sahel』をストック。砂漠のオアシスで人知れず残された声から、深夜のラジオ放送、地方の村落での祈りの呼びかけ、ニジェール川を流れる川船の音まで、レコードに収録される機会の少ない、見過ごされた至福の音楽へのオマージュに満ちた逸品。

11月下旬再入荷。スウェーデンのサウンドアーティストKlara Lewisによる、フィールド録音、電子音響、アコースティック楽器音の再構築という自身の美学をさらに推し進めた『Opening』。ざらついたフィールド録音が突然リズムへ切り替わり、そのまま別の音響層へ滑り込むように移行する。ウクレレやピアノといったアコースティック楽器は、原型がかすかに残る程度まで解体され、残響のような形で再登場する。低域の塊がゆっくり脈打ち、圧力と抽象的な空間性が同時に立ち上がったかと思えば、微細な粒子が散らばるような音響が広がり、音は常に変形し続ける。〈Editions Mego〉からのリリースらしい、音を歪ませながらも曲として成立させるLewisの手法が新たな段階に達した作品。
〈Resident Adviser〉の「15 East African Artists You Need To Hear」にも選出!東アフリカは、ケニア・ナイロビ出身の要注意なサウンド・アーティスト/プロデューサー、Joseph KamaruことKMRUが、現代実験電子音楽の大名所〈Editions Mego〉から2020年に発表していた名作がリプレス。まさにフィールド・レコーディング・テクニックと電子アンビエンスの奇跡的なミックス!ついうっとりとさせられる耽美に抑制されたサウンドスケープ、限りなく素晴らしいです。今年の3月にカナダ・ケベック州モントリオールへと旅し、コロナ禍で国境が閉鎖されたことでナイロビへと帰国していた最中に制作された一枚。環境音楽的なミニマリズムや静けさを愛でる風趣さえも抽象的なドローン/サウンド・アートのストラクチャーへと落とし込んだ傑作アルバム!Stephan Mathieuの手により〈Schwebung Mastering〉にてマスタリング。

11月上旬再入荷。黒人思想の系譜を音響へと翻訳するサウンドアーティストLamin Fofanaによる2LP『Corps Perdu』。エメ・セザールが1950年に発表した同名詩集やW・E・B・デュボイスらの文献にインスピレーションを得て、パリやニューヨーク等で行われた読書、リスニングセッションを経て構想された本作は、文学的思考と音響表現を極めてパーソナルかつ前衛的な次元で結晶させた力作。緻密なプロセッシングを施された手触り感のあるメロディや、風・砂・ノイズなどのフィールド・レコーディングがレイヤーをなす音像は、液体のように変容する思考のよう。鍵盤の深い残響と不連続なリズム、逆再生される旋律が多層的な時間を交錯させ、詩情と批評性を同時にたたえた重厚なドローン、エレクトロニクスへと昇華。言葉と音覚の地層を深く掘り下げる、探求的な前衛音響作品必聴盤。

11月上旬再入荷。辺境の名門〈Sublime Frequencies〉より、1930年代から50年代にかけてのカンボジアのクメール音楽を集めた78回転盤コンピレーション『Mekong Shellac』。戦争や文化的変容によって大半の原盤が消失し、世界で数枚しか現存が確認されていない極めて希少な78回転盤から奇跡的に修復されたものも含まれており、クメール伝統の弾き語りチャペイや踊り歌ロムヴォン、演劇芸能ラコン・バサック、さらに宮廷音楽ピンピートやマホリ、婚礼歌プレン・カーまで、20世紀前半の多彩な音楽様式を網羅。SP盤特有の歪みやノイズの隙間から立ち上る弦楽器の滋味深い響きと叙情的な歌声が、失われた東南アジアの古き良き音楽空間を鮮烈に描き出す。Adam Fargasonプロデュースのもと、詳細なライナーノーツや貴重なヴィンテージ写真を掲載した豪華16ページブックレットを付属。

フィールドレコーディングのパイオニアLaurent Jeanneauが、カンボジア北東部ラタナキリ州の現地で捉えた儀礼用ゴングのアンサンブル音源『Brao Gongs of Ratanakiri (Cambodia)』が〈Sublime Frequencies〉より登場!フランス植民地時代からクメール・ルージュ政権期、ベトナム軍占領期という過酷な歴史的荒波を乗り越え、現地の先住民族が脈々と継承してきたアニミズム信仰と伝統文化の深淵を刻んだ貴重な録音。大小異なる突起付きゴングとフラットなゴングが複雑にピッチを交錯させ、そこに素朴な竹筒や太鼓の打撃、力強い男女の歌声が重なり合う重層的なサウンド。アニミズムの神聖な儀礼や、祝宴の場で鳴らされた生の演奏は、音と言霊が持つ根源的なエネルギーを放ち、異次元のトランス空間へと引きずり込む。Laurent Jeanneauによる詳細なライナーノーツと貴重な現地の写真を掲載したインサートを付属。限定500部
2010年夏、東京・高円寺阿波おどりを久保田麻琴による録音で発売した『ぞめき 壱』。根強い阿波おどりファンだけでなく、ワールド・ミュージック・ファンからクラブ系音楽ファンまで多くの反響を受け大ヒット。「ぞめき」シリーズはこれまで8作のCDをリリースした。
本作は、この「ぞめき」シリーズの番外編。12インチ・シングルとして初のアナログ化。
A面は、1968年に爆誕して以来、半世紀以上に渡って一拍子系の雄として阿波踊り新世代に影響を与え続けた苔作。
鉦の谷幸治連長時代の高円寺での演奏。華やかだがそのストイックな演奏は追随を許さない王者の貫禄だ。街の反響と熱狂する客たちの反応も爆音とともにしっかり録音された。
続いてB面は、去年他界した柳町春雨率いる新町橋よいよい囃子と独特のグルーブで知られる眉月連とが合同セッションしたレアなライブ音源。半世紀の間、桟敷席ではなく広場で、まるでジャマイカのダンスホールのような状態で客たちを踊りの渦に巻き込んできたよいよい囃子。一方最もディープなノリを誇る眉月連のグルーブは、ロックドラムの創始者、Earl Palmerのような躍動感と驚異の正確さだ。
ROLAND R4という録音機、それとハンドマイク、SONY ECM 999 で久保田麻琴により2010年代に録音された。行進する連と動く録音なので、時間と共にバランスが変わっていく面白さが堪能できる。
レトロなカバー写真は、今年3月、新宿オリンパスギャラリーで写真展「ぞめき」を開く気鋭のカメラマン、平良博義の2024年の作品。
■収録楽曲:
Side A
1.苔作(桃園 高円寺)
Side B
1.新町橋よいよい囃子 with 眉月連(新町橋 徳島)

マルチ奏者、作曲家、プロデューサーのJesse PetersonとLAの大人気パーカッショニストCarlos Niñoを中心とした音楽プロジェクト、Turn On The Sunlightによる、ロサンゼルス、東京、ロンドン、メキシコのサン・ミゲル・デ・アジェンデ、そしてハワイ・マウイ島など、世界各地で録音された素材を編み込んだレイアーが重なり合うアンビエント作品『Iseo』。Laraaji、Mia Doi Todd、Ko Ishikawa、Luis Pérez Ixoneztliなど、国境を越えた多数の音楽家が参加。シンセ、ギター、ツィター、フルート、尺八、声、環境音が柔らかく重なり、オーガニックで呼吸する音楽が生まれている。音は配置されるのではなく、時間の中で自然に沈殿し、混ざり合い、形を変えていく。中心曲「Medianoche En La Calle Aurora」は15分にわたり、光と影のあいだを漂うような静かな変化を描く長編。コミュニティの演奏が生む開放性が強く、個人の作品というより場としての音楽が広がる。静かで温かく、どこか神秘的な一枚。

植物の成長をテーマにした人気シリーズMusic To Watch Seeds Grow Byの第10作目。KiF Productionsによる本作『Music To Watch Seeds Grow By 010: Passiflora』は、トケイソウの種子の休眠から発芽、光への伸長、開花、受粉、結実、そして土へ還るまでのライフサイクルを音のレイヤーで丁寧に描いたアンビエント、サウンドコラージュ作品。フィールド録音、柔らかなシンセ、木管、チャイム、民族的な声、短波ノイズなど多様な素材が静かに重なり、自然物の時間軸で進むような音響環境をつくり出している。音は急がず、ゆっくりと形を変えながら進み、微細な変化が積み重なることで成長が音として立ち上がるようで、鳥の声や風の気配が電子音と有機的に溶け合い、コラージュの多層性が作品に奥行きを与える。劇的な展開ではなく、静かな変化を見守るような聴き心地が特徴で、シリーズの中でも特に完成度の高い一本。

音響作家の内田輝と世界的写真家である山本昌男が、フランスの美術・音楽レーベル〈IIKKI〉を舞台に手掛けてきたコラボレーション三部作の完結編『Nusa』。光を描いた第1作『Sasanami』、闇を探求した第2作『Kurayami』を経て辿り着いた本作は、対立する二つの要素が互いを引き立て合い補完し合う光と闇の双極性をテーマとしており、2026年初頭に両者が共に赴いた北海道にて、流氷や極寒の自然現象から捉えられた透明なフィールド・レコーディングを組み込み構築。凛とした気品を漂わせる繊細な演奏と、厳しい冬の空気や氷の響きが交錯し、山本のモノクロームな写真世界と呼応するように静謐で詩的なグラデーションを描き出している。光と闇の狭間で静かに息づく、人間の気配と自然の静けさを捉えた音響作品。

音響作家の内田輝と世界的写真家である山本昌男が、フランスの美術・音楽レーベル〈IIKKI〉を舞台に手掛けてきたコラボレーション三部作の完結編『Nusa』。光を描いた第1作『Sasanami』、闇を探求した第2作『Kurayami』を経て辿り着いた本作は、対立する二つの要素が互いを引き立て合い補完し合う光と闇の双極性をテーマとしており、2026年初頭に両者が共に赴いた北海道にて、流氷や極寒の自然現象から捉えられた透明なフィールド・レコーディングを組み込み構築。凛とした気品を漂わせる繊細な演奏と、厳しい冬の空気や氷の響きが交錯し、山本のモノクロームな写真世界と呼応するように静謐で詩的なグラデーションを描き出している。光と闇の狭間で静かに息づく、人間の気配と自然の静けさを捉えた音響作品。

ベルギー・リエージュを拠点に活動するfrançois vankaによる、東ベルギーの自然保護区や森との境界線、川の谷間を巡る散策の中で採集された音の断片を凝縮し、自然物から作り上げた自作楽器やフィールドレコーディングを用いて紡ぎ出された静謐な音響日記のようなデビュー作『quelques endroits』。セイヨウニワトコから削り出したチャイムやカタツムリの殻、フランス海岸の貝殻などを用いたハンドメイド楽器の素朴な不規則音と、霜のように繊細な音色、静かに漂うピアノとループが美しく交錯。風や水のせせらぎ、鳥たちの羽ばたきといった森のささやきに澄んだ響きが優しく溶け合い、作り手と聴き手の境目をやわらかく曖昧にしていくオーガニック・アンビエント空間を創出している。あらかじめ決められた構造を持たず、時間の流れから切り取られた自然の美しさと内省的な響きが調和した繊細な音像が静かに寄り添う好内容作!
フィンランドの作曲家Marja Ahtiと、クラリネットのマルチフォニックスを追求するアイスランド在住の音響作家John McCowenによる初デュオ作『Errands』。レイキャヴィクの街角や日常のエンジン音といったささやかな環境音と、クラリネットの豊かな倍音ドローン、静かに漂うサイン波が複雑に織りなす極上の音響作品。一切の電子加工を施さないクラリネットが生み出す不規則な拍動や単音楽器とは思えないようなスプリット・トーンと、クラシカルな電子音響の手法が高度に融合。アコースティックの生音と電子音響の境界線が緩やかに消失していく音像の中で、メシアンのモテットをリコーダー群で再構築した可憐な断片が挿入されるなど、聖と俗、日常と非日常が同居する幽玄な静寂美を創出している。静けさのなかに絶え間ないテクスチャーの変容を宿した、深淵なエレクトロ・アコースティック作品。

スペイン・バルセロナを拠点に、チェンバー・ジャズ楽団Los Cronopiosの率領や現代クラシック、即興演奏など多彩な領域で異彩を放つ総合芸術家Jordi Santanachによる2025年ソロ作『Strata』。長い年月をかけて土や岩石が積み重なる地層に着想を得て、時間の隔たりを設けて行われた計4回の朝のセッション音源を積み重ね、まさに音響の層として完成させたコンセプチュアルな作品。バリトン・サックスやクラリネットの特殊奏法、そして静かなフィールド・レコーディングが折り重なり、極めて抑制の効いた音響空間を形成。悠久の時をかけて地層が形成されるように音粒子がゆっくりと明滅し、その静寂の余白からほのかな抒情性を帯びた旋律が優しく浮かび上がる。日本のわびさびにも通じる寂寥感と無常観、そして悠久の自然が宿す静穏な佇まいが音響美として深く横溢している。時間の堆積と微細な音の変化をじっくりと堪能できる、静謐極まるアコースティック・ミニマリズムの逸品。限定300部。

2024年11月末、冥丁は、別府市制100周年記念事業の一環として、温泉文化をテーマにした滞在制作に招かれ、別府を訪れた。
「失日本」シリーズで知られる冥丁は、忘れ去られた日本の時代や風景を音として再構築する表現で注目を集める音楽家。今回の制作では、海辺に佇む築100年の旅館「山田別荘」の蔵に約1週間半滞在し、雨水が火山岩に染み込み、癒しの湯となって地上に戻る循環に耳を澄ませた。その結果生まれた作品『泉涌』は、温泉文化の内なる精神をたどるものである。
冥丁は竹瓦温泉、坊主地獄、へびん湯、そして山田別荘の内湯や貸切湯など別府の象徴的な温泉地を訪れ、泉源の音、泥の泡立ち、噴気孔の響き、竹林を渡る風、湯を楽しむ人々の会話などの環境音を丁寧に録音した。これらのフィールドレコーディングとその深い聴取体験を楽曲の音の土台とし、立ちのぼる湯気や体感した湯加減の塩梅までも音として描き出そうと試みている。
この作品は、一連の楽曲として展開し、硫黄と火山岩の風景の中を湯気のように漂っていく。坊主地獄に潜む狂気、山田別荘の内湯に響く幽玄な残響、苔むした竹瓦温泉の風情の中で交わされる日常の語らい。そうした断片が静かに織り込まれている。そこには水の静けさや土地に宿る記憶、そして代々ここで湯に親しんできた人々への深い敬意が込められている。
『泉涌』は、失われた日本の記憶を主題とする冥丁の探求を継承しつつ、新たな領域に踏み込んでいる。別府の風土や記憶を音 で巡礼するかのように、リスナーを深い没入体験へと誘う。マスタリングはStephan Mathieuが担当。また、本作は「失日本」 プロジェクトの新章『失日本百景』の幕開けを飾る作品。このシリーズでは、現代の生活の中でひっそりと息づく「憧憬の残る場」を探求していく。

Alexander Holmによる、反復、移動、視点のわずかな変化を軸にしたミニマルなサウンドワーク『Dial / Head Stroll』。ゆっくりと焦点が合ったり外れたりするようなループの中で、音の断片が半ば記憶のように現れては消え、構成とコラージュの境界を曖昧に行き来する。都市を歩き観察するときの身体のリズム、視線の移ろい、環境音の出入りを、そのまま音の構造として作品化し、環境音、電子処理、静かな持続音を重ねながら、日常の中に潜む微細な出来事を浮かび上がらせる。ミニマルでありながら、反復の中で細部が変化し、聴き返すたびに別の意味を帯びる。フィールド録音の生々しさと、Holmの繊細な編集感覚が重なり、都市の風景が抽象的な音の層として立ち上がるアーティスティックな一枚。

各所で話題をさらった劇薬!ナイロビのアンダーグラウンド・メタル・シーンで長年活動してきた名アクトにして、Martin Khanja (Lord Spikeheart)とSam Karuguから構成されるケニアのグラインドコア・バンド、Dumaが、東アフリカ・ウガンダ拠点の先鋭的音楽フェスティバル/レーベル〈Nyege Nyege Tapes〉より、世界デビュー作として2020年に発表した名作。
ダンス x エクスペリメンタルを軸に尖鋭的な音楽をキュレーションしてきた名フェスティバル〈CTM〉にも出演。現地の言語では「闇」を意味するというその名を忠実に反映した、ダークサイドに根ざすエクストリーム・サウンドとアウトサイダー的なエネルギーを大放出、これは滅茶苦茶面白いです!〈Dubplates&Mastering〉でのマスタリング&カッティング。発売当時は即完売だったので、この機会を絶対にお見逃しなく!

イタリアはローマを拠点とするLuca Quartaroneのデビュー作『mathematical model 0010』が〈Objects & Sounds〉より登場。本作は、日本を旅した際に録音した環境音をもとに作られた、静謐なアンビエント作品。日常の音の断片を素材にしつつ、そこから抽象的で広がりのある音響世界を描き出している。アルバムタイトルは、神奈川・小田原の江之浦測候所で見た杉本博司のランドアート作品に由来しており、この作品にある「無限に収束し続けるけれど決して交わらない超曲率の金属面」のイメージと同様に、音楽もまた、日常のささやかな瞬間から無限の広がりを感じさせる。アンビエント、エレクトロアコースティックとサウンドアート的なフィールドレコーディングが交わり、静けさや余白を重視しつつ、内面の感情や記憶の風景にそっと触れるような音響構築になっている。
