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Laurel Haloが手がけた、映像作家ジュリアン・シャリエールのフィルム「Midnight Zone」のサウンドトラックで、深海へとゆっくり沈んでいくような感覚を音で描いた、静かで緊張感のあるエレクトロ・アコースティック作品。シンセサイザーの冷たい質感と、トランス・アコースティック・ピアノや弦楽器の有機的な響きが重なり合い、重力から解き放たれるような浮遊感と、深海の圧力に包まれるような緊張感が同時に存在する、不思議な音像。曲順は「Sunlight Zone」「Twilight Zone」「Abyss」「Hadal」と、海の深度をそのまま辿るように配置され、アルバム全体がひとつの下降の旅となっている。音は決して大きく主張しないが、その静けさの奥には確かなドラマが潜み、静寂の中に潜む動きをじっくり味わう、密度の高い一枚。

ブエノスアイレスの電子音楽家Entidad Animadaによる、環境音楽や初期電子音楽からの影響を出発点にしつつ、ループ素材を編集・凝縮して6曲にまとめ上げたカセット作品『Pequeño clima doméstico』。フィールドレコーディングや加工されたテクスチャーが随所に散りばめられ、電子音と生活の気配が自然に溶け合う。曲はどれも閉じた楽曲というより、空間や気分をそっと変えるための装置のようで、聴くほどに部屋の空気がゆっくりと変わっていく。柔らかい電子音のレイヤーが静かに揺れ、外の空気が窓から入り込むようにフィールド音が漂い、アンビエントともBGMとも違う、生活のリズムを整えるための音楽としての魅力が詰まっている。日常の中で気分や、部屋の雰囲気を変えたいときにそっと寄り添ってくれる一本。

エレクトロアコースティック/音響作品の最前線を切り開くJim O’RourkeとJos Smoldersによる最新コラボレーション『Albumin』。前作『Additive Inverse』に続き、3年にわたる遠隔セッションで構築された本作は、O’RourkeがKymaシステムから抽出した音素材をSmoldersが粒状化処理し、互いに往復しながら音を彫刻していくという、極めて実験的なプロセスで制作された。柔らかいドローンがゆっくりと立ち上がり、やがて粒子状のノイズや倍音の揺らぎが浮かび上がる。音は定住せず、常に変化し続ける流体のようで、スペクトルの内部を覗き込むような精密な音響が全編を貫く。静謐な空間と緊張感のある音塊が交互に訪れる構造は、まるで音による抽象的な映像のような、密度の高い音響探求の結晶。

6月下旬入荷予定。Juju & JordashのJordan Czamanskiと、Frank Zappa作品でも知られるサックス奏者Jeff Hollieによる新デュオMei Honeycombのデビュー作『Clairvoyant Dimensions』。電子音と生楽器が溶け合う内省的な作品で、ミニマルなシンセの揺らぎに、Hollieのサックスが影のように差し込む「Squeaky Eye Syndrome」、くぐもったビートが淡く浮かぶ「Duct Tape Blues」、そしてダブルベース奏者Ilya Ziblat Shayを迎えたライブ録音「Painted Desert Pastel」など、音数は少なく、余白が多いのに、どこか深い場所へ引き込まれるような感覚がある。眠れない夜にぼんやりとあたりを眺めるかのように、音は語りすぎず、ただ静かに漂いながら、聴き手の内側をそっと照らす。Rashad Beckerのマスタリング、Johan Kauthによるスクリーンプリント仕様のアートワークも含め、アート性と音響美が凝縮された一枚。

ピアノ、チェロ、エレキギターというシンプルな編成から、驚くほど豊かな質感を引き出す、〈Posh Isolation〉作品も知られるデンマークのアーティスト、Cæcilie Trier (CTM)、Jakob Littauer、Mads Kristian Frøslevという面々による"TLF Trio"による2ndフルアルバム『Desire』。音数は決して多くないのに、ひとつひとつの音が空間に深く響き、静寂そのものが音楽の一部として機能しているようで、まるで室内楽を現代の視点で再構築したような、新しい視点で組み立て直したような、クラシックともジャズとも異なる独自の音像。サンプリングや反復のモチーフも織り込まれ、ミニマル・ミュージックの構造とレフトフィールドな電子音楽の感覚が自然に溶け合う。即興から生まれた柔らかさと、緻密に設計された構築性が同時に存在し、音楽が呼吸するようにゆっくりと展開していく。様々な音楽の影響がさりげなく交差しながらも、どれにも回収されない独自のバランスを保っている点が魅力的で、静けさの中に潜む微細な動きや、音の余白が生むドラマをじっくり味わえる一枚。

6月19日発売。声とモジュラー・エレクトロニクスを用いた映画的な作風で知られるRobert Aiki Aubrey Loweによる最新作『Manifestations In The Shadow Of An Uncertain Land』。本作は、Chris Marker『Sans Soleil』、Peter Watkins『Punishment Park』、カフカ『流刑地にて』といった映像・文学作品からの影響を明確に示し、映画音楽・政治映画・エレクトロアコースティック作品へのオマージュとして構想。政治的混乱、身体と精神に刻まれる重圧といったテーマが音の揺らぎ・沈黙・不協和として立ち上がる。低域のうねり、声の残響、ノイズの粒子が重なり、恐怖・厳粛さ・推進力が同時に存在する音響地形が形成される。Bernard ParmegianiやLigeti を思わせる質感が浮かび上がる。映像と文学の記憶を媒介に、現代の不確かさを音で測量するかのような一作。

Chris RosenauとNick Sanbornが長年の友情と即興の瞬間をそのまま結晶させたエレクトロ・アコースティック作品『Two』。Sylvan Essoの森の中のスタジオBetty’sで録音された本作には、森の空気や環境音までもが自然に入り込みながらギターの倍音と電子音の揺らぎが柔らかく溶け合う独特の開放感が漂う。ふたりが同じ空間で呼吸を合わせながら音を紡いでいくことで、構築よりも生まれる瞬間の楽しさ、美しさが前面に出ており、フォークの温度とエレクトロニカの透明感が静かに交差する。前作『Bluebird』の延長線にありながら、より深く、より自由で、ふたりだけの対話がそのまま音になったような、穏やかで親密な一枚。

カナダの作曲家Matthew PattonによるプロジェクトThose Who Walk Away による、亡き友人 Jóhann Jóhannsson への深い哀悼を込めたポスト・クラシカル作品『Afterlife Requiem』。ポストクラシカルの巨匠Jóhann Jóhannssonのハードドライブに残されていた未完成の録音断片を素材として使用、その残響を中心に、アイスランドの Ghost Orchestra とウィニペグの Possible Orchestra、2つの弦楽五重奏団も参加し、新たな構造を編み上げている。ドローン、エレクトロアコースティック、フィールド録音、沈黙に近い音が重層的に配置され、音が現れては消え、弦の残響が霧のように漂う。深い静寂と低域のうねりが共存する幽玄な音世界は、レクイエムでありながら、どこか祈りのような温度を持っている。
ミュジーク・コンクレートの歴史を60年以上にわたり更新し続けてきた作曲家Beatriz Ferreyra。GRMでピエール・シェフェールと共に活動した60年代から、アナログ・テープと電子処理を自在に横断する独自の音響世界を築いてきた彼女の重要作『A Distracted God』。本作に収録されているのは、異なる時期に制作された3つの電子音響作品。冒頭の「Souffle d'un Petit Dieu Distrait」は、声や物音の断片がテープ操作によって変質し、折り重なるように展開する代表的な一作。続く「Tierra Quebrada」は 2020年制作のチェロと電子音響のための作品で、チェロの深い共鳴がデジタル処理によって揺らぎ、アコースティックと電子的な質感がせめぎ合う。終曲Sourires d’Automneでは、微細なノイズや呼吸のような揺らぎが空間を満たし、音が自律的に動き続けるような立体的な音像が広がる。日常音、声、楽器が電子音響の深淵へと融解していく、非常に完成度の高い作品。
オーストラリアの現代音楽シーンを牽引してきたピアニスト、作曲家Gabriella Smartによる最新作『Parasymbiosis』が〈Room40〉から登場。25年以上にわたり即興、作曲、キュレーションを横断して活動してきた彼女が、本作ではエレクトロ・アコースティック作品を深く探究している。中心となる楽器は、ガラス棒とアルミの共鳴構造を持つマイクロトーナルな特殊楽器Electric Cristal。ガラスが震えるような倍音、金属的なきらめき、微細な揺らぎが重なり、音が光の粒子のように空間を漂う。電子処理によってその響きはさらに拡張され、アコースティックとエレクトロニクスの境界が曖昧になっていく。深い低音のうねりと繊細な高域のきらめきが同時に存在し、宇宙的な広がりと地表の微細な振動が共存するかのような音像が自律的に呼吸するように変化していく、深度のあるエレクトロ・アコースティック作品。

イタリアの電子音楽家Caterina Barbieriと、ノルウェーのサックス奏者Bendik Giskeによる初の共同名義作『At Source』。Barbieriのモジュラー・シンセと、Giskeの身体そのものを楽器化するかのような拡張サックス奏法が純粋な対話として記録されたミニマルなアンビエント作品。ふたりの関係は2019年の共演から始まり、ICA Milanoでのレジデンシーやライブを経て深化。Barbieriの幾何学的なアルペジオと、Giskeの息づかい、キー音、摩擦音まで含む生々しいサックスが音が生まれる瞬間を探るように交差する。宇宙的スケールと親密な身体性が同居するサウンドスケープは、Barbieriの近年の作品群とも、Giskeのソロ作とも異なる第三の領域を切り開く充実作。

Pierre Schaefferのもとで働き、INA-GRMの最高責任者を長期間務めた、マダガスカル生まれの電子音楽家François Bayleの主要作品『Jeîta ou murmure des eaux』がアナログ再発。レバノンの巨大鍾乳洞で録音された、水音・反響・ざわめきといった具体音を電子的に変容させたミュージックコンクレート巨編。洞窟は実在の場所であると同時に変容が起こる精神空間として扱われ、聴き入っていくと、あたかも音の洞窟の住人としてそこに存在しているかのような感覚を覚える。水の粒子が霧のように漂い、反響が多層化し、自然音と抽象音が溶け合う独自の音世界を形成している。

Jana Irmert と 7038634357 によるスプリット作 『Portals / Rope』。Irmert の「Portals」は、ブラジルとコロンビアのアマゾン熱帯雨林で録音された音だけを素材に構成された作品で、人間の耳には届かない超音波や水中の響き、無数の昆虫やカエル、コウモリやイルカの活動音を使用し、森の奥に潜む見えない世界を音楽として提示している。耳を澄ませば、森の奥底に広がる異界的な音の網が浮かび上がる。Irmert の手つきは博物学的でもドキュメンタリー的でもなく、あくまで個人的かつ詩的に自然界の音を再構成してゆく。7038634357 の「Rope」は、タイトル通りロープをイメージの軸にしている。ロープが撚り合った繊維で張力を保つように、音も複数の層やテクスチャが組み合わさり、緊張感と支え合う構造を作り出している。結び目や摩擦がロープを支えるように、旋律や音のアクセントが聴き手の感覚に引っ掛かりを与え、全体の張り詰めたけれど崩れない空気を生んでいる。


抜群の瞑想的ドローン/アンビエント作品!フランス・パリのファゴット奏者Dafne Vicente-Sandovalとノルウェーの作曲家Lars Petter Hagenによるコラボレーション作品『Minos Circuit / Transfiguration 4』が、現在〈Shelter Press〉との提携下で活動を続ける〈Portraits GRM〉からアナログ・リリース。崇高でミニマルな電子音響の緊張感とリヒャルト・シュトラウスの壮大かつシンフォニックな瞑想観が溶け合い、鋭いコントラストを描き出した作品。限定500部。

John Also Bennettによる、2019年の『Erg Herbe』以来となるソロ作『Ston Elaióna』が〈Shelter Press〉から登場!本作は、彼が現在拠点とするギリシャ・アテネで制作され、バスフルートと純正律によるYamaha DX7iiシンセを中心にしたエレクトロアコースティック作品で、早朝の静けさのなかで録音された音は、古代と現代が交錯するアテネの空気をそのまま封じ込めたような、詩的で内省的な響きを持っている。タイトル「Ston Elaióna(オリーブの木立にて)」が示す通り、土地の風景や歴史、都市の雑音、教会の鐘、嵐、家の中の出来事といった日常の体験と環境音が深く反映された、都市のアンビエンスやフィールド録音を織り交ぜた静謐な全9曲。ミニマルで感情豊かな音世界が展開される。現存する世界最古の楽曲「Seikilos Epitaph」のカバーをはじめ、宗教的な感情やギリシャ神話、土地の記憶が静かに反響するような雰囲気で、古代と現在、外界と内面を音で結ぶ。長年の漂泊と深いリスニングの実践が、ミニマルでスピリチュアルな音世界に結晶したような一枚。

Kassel Jaeger、Stephan Mathieu、Akira Rabelais ら現代音響からサウンドアートにおける重要人物3名によるコラボレーションで、トーマス・マン『魔の山』から着想を得た聴覚による山岳巡礼『Zauberberg』。スイスの山中に残る記憶と気配を音で辿るというコンセプトで、小説の舞台であるスイス・ダヴォスの Schatzalpでフィールド録音を行い、その素材をパリのGRMスタジオで再構築している。風の流れ、建物の残響、木々のざわめき、空気の密度を閉じ込めた録音素材と遠くで誰かが弾いているような楽器の音、電子音の微細な揺らぎを重ね合わせ、現実の風景と記憶の影が溶け合うような音の地層を形作る。Jaeger の音響彫刻的な構築、Mathieu の柔らかいテクスチャ、Rabelais の幽玄で夢のような処理が自然に融合した、聴き進めるほどに、霧の中の道をゆっくり登っていくような、静かで深い没入感が広がる音響芸術。



没後も各方面に多大な影響を与え評価され続けるミュージック・コンクレートの巨匠、Luc Ferrariの傑作「Music Promenade」と「Unheimlich Schön」が、Editions Mego傘下のRecollection GRMより、初ヴァイナル化!20世紀の音楽史へとその名を残す名作曲家であり、GRMの創設にも関わっている、エレクトロ・アコースティックの先駆者であり、若い世代の音楽家との交流も惜しまなかったLuc Ferrari。4台のテープレコーダーを用い、具体音を衝突させた1970年の初演"Music Promenade" (1964-1969)と、小さい音量で聴く為とされる"Unheimlich Schön" (1971)の1971年のスタジオ録音を収録。コンクレートが再注目される現代にもやはりこの素晴らしい世界観は永遠です!Stephen O'Malleyによるレイアウト。Jonathan FitoussiとDiego Losaによるデジタル変換。Rashad BeckerによってDubplates & Masteringでカッティング。

スペイン電子音楽のパイオニア、Eduardo Polonioの初期キャリアを総括する決定的アーカイヴ作品『Obra electroacústica 1969–1981』。Alea Electronic Music Laboratory、Phonos、Electroacoustic Music Cabinet など、スペイン各地の電子音楽スタジオで制作された1969〜81年の重要作を、マスターテープからのリストアして収録した本格的アンソロジー。荒々しい電子ノイズがむき出しの初期作品から、環境音や声をコラージュした音響作品まで、Polonioの創作の幅と実験精神がそのまま刻まれている。エレクトリック・ギターとベースを素材に、アンビエントの萌芽とフリージャズ的な揺らぎ、サイケデリアが交差する独特の質感を持った異色のエレクトロアコースティック「Continuo」など、珍しい音楽性も光る。電子音楽がまだ手作業の実験だった時代の空気と、技術の進化に伴う音響美学の深化を一望できる構成は、アーカイヴ作品としても非常に秀逸。スペイン電子音楽史の核心に触れられる一枚。
日本のアヴァンギャルド音楽の巨匠・灰野敬二を中心とするプロジェクトNijiumu(滲有無)による、深遠で幽玄な音響世界を記録したアルバム『When I sing, I slip into the microphone...』が、〈Black Truffle〉より再発。今回の再発では、1990年代初頭にP.S.F.からリリースされたオリジナル音源に加え、灰野が1973年に自作電子機材で録音した未発表ノイズ作品や未発表音源も収録し、彼の音楽的探求の軌跡をより広く捉える内容となっている。鉄や弦楽器のアンプリファイ処理による金属的な響き、リバーブに包まれた幽玄な音像、そして灰野の声が祈りのように空間を漂う構成は、チベット音楽やミニマリズム、フリー・インプロヴィゼーション、サイケデリックの要素が混在する独自の世界観を形成。ジャンルの枠を超え、音そのものが感情や霊性と結びつくかのような瞬間を捉えた本作は、灰野敬二の「音を祈りとして扱う」哲学が色濃く反映された、Nijiumuの本質を捉える貴重な記録。

デトロイト出身の作曲家でありドラマーのEric Hoegemeyerによるソロ名義Stardust Multiplierの最新作『Convergence』。ガラスマリンバ、フルート、アナログシンセを中心に構成された本作は、儀式的な静けさと、身体の奥に染み込むような深い共鳴を持つアンビエント。制作背景には、Hoegemeyerが経験した重い病気と長期入院があり、病室で聴こえる機械音や環境音、聴覚が再調整されていく感覚がそのまま音楽の構造に反映され、極めてミニマルで、微細な変化が大きな意味を持つサウンドへと結晶している。ガラスマリンバの硬質な響き、フルートの息遣い、アナログシンセの柔らかな音が重なり、自然音と電子音の境界が曖昧になるような音像が広がる。旋律は霧の中からゆっくりと立ち上がり、朝の儀式”のような静謐さと、回復のプロセスを思わせる解放が同居している。深い呼吸を取り戻すような、静かで力強い一枚。

crys cole & Oren AmbarchiとGiuseppe Ielasiのスプリットで指し示すエレクトロアコースティックの現在地。cole & Ambarchiの「Sparkling or Silent」は、ギターや小物音、接触ノイズ、空気の揺れのような微細な音が静けさの中にきらめくような変化を描き出す。音がほとんど動かないようでいて、耳を寄せるほど細部が立ち上がり、記憶の残像や、ふとした感覚が浮かんでは消えるようなミニマルなエレクトロアコースティック。一方、Ielasiの「unfamiliar music (paris)」は、長年ライブで蓄積してきた音の断片を再構築したもので、都市の残響や気配が折り重なるような、乾いていながら温度を感じる音響空間が広がる。どちらも派手な展開はないが、音の縁や影にフォーカスすることで、静かな深みへと引き込む力を持つ一枚。GRMの文脈にも自然に接続する、精密で静謐な電子音響作品。
