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フェルドマン晩年の美学が極限まで研ぎ澄まされた室内楽作品『Piano, Violin, Viola, Cello』。ピアノと弦楽三重奏というシンプルな編成にもかかわらず、音はほとんど動かず、語らず、ただ静かに置かれる。わずかな配置の変化が、時間の流れをゆっくりと歪め、聴くという行為そのものに意識が沈んでいく。音と音のあいだには大きな余白があり、その静寂こそが作品の中心で、反復するようで決して同じには戻らないパターンが、微細な揺らぎを伴って現れては消え、抽象絵画のような静かな迷宮を形づくる。長大でありながら、密度は限りなく薄い。しかしその薄さの中に、フェルドマンが追い求めた無時間性が息づいているよう。何も起きないようでいて、深く吸い込まれる、フェルドマン後期の核心。
2026年リプレス!名カセット・レーベル〈birdFrind〉主宰、人力エクスペリメンタル・テクノ・バンドgoatやYPY、Kakuhanなどでの活動も知られる日野浩志郎が創設、コンテンポラリー、電子音楽にフォーカスした好リリースを展開する新レーベル〈NAKID〉より最新物件!グリッチ・ミニマル~ガレージ・レイヴ・テクノにプリミティヴな実験像まで、エクスペリメンタルの地平を拡大してきた稀代の音楽家Mark Fellと、Oren Ambarchiや非常階段のJunkoとも共作している仏在住のパーカッショニストWill Guthrieのコラボ・アルバム2枚がセットになってCD化!インドネシアのガムランや南インドのカルナータカ音楽、ポリリズムなどからのインスピレーションを存分に湛えた異生物的エクスペリメンタル・サウンドを収録した『Infoldings』。前作で追求したガムランや南インド音楽からの影響をさらに深化させ、鋭く複雑なリズムと非常に奇妙なテクスチャーで織りなすミュータントなパーカッション・サウンドを展開した『Diffractions』サイド共に秀逸です。Mark Fellによるフォトグラフィーをフィーチャー。Vladislav DelayことSasu Ripattiがミックス、Rashad Beckerによるマスタリングという夢の布陣!

Popol Vuhでの活動後、チベット文化やスピリチュアルな音響に深く傾倒したKlaus Wiese。彼の代表的なスピリチュアル・アンビエント作品のひとつで、1980年代末のカセット文化から生まれた希少な音源『Uranus』が〈Black Sweat Records〉から再発。チベタン・シンギングボウルを中心に構成され、深遠なドローンと倍音が幾重にも重なり合う霊的音響世界。倍音の蓄積がプリズムのように広がり、精神的光の流れに包みこまれる、厳格で純度の高い作品。
Antonio Infantino e i Tarantolati di Tricarico による、南イタリア・バジリカータ地方に根づく伝統儀礼や民間信仰を、現代へと蘇らせたアルバム『Follie Del Divino Spirito Santo』。Infantino は詩人・音楽家・文化研究者として知られ、本作では古い農村文化に残るトランス的な儀礼音楽を掘り起こし、ロックや実験音楽の感覚と結びつけて独自の民俗アヴァンギャルドを築いた。タランテラの反復するビート、素朴で力強いパーカッション、呪術的な集団の掛け声、祈りにも似た詠唱が渦を巻き、祝祭と陶酔のあいだを行き来するような音世界が広がる。電気的な加工や派手なアレンジはほとんどなく、むしろ土の匂いがするような生々しい音の質感が前面に出ているのが印象的。伝統音楽の再現ではなく、土地の精神性そのものを汲み取り、再構成するようなアプローチで、宗教的な熱気、共同体のエネルギー、そして「神聖な狂気」というタイトルが示すテーマが一貫して流れている。民俗音楽・実験音楽・スピリチュアルなリズム文化の交点に立つ作品。

アメリカ出身の作曲家 John McGuire が晩年に取り組んだ二つのストリング・トリオのための作品をまとめたアルバム『Double String Trios』。二組の弦楽三重奏が精密に重なり合い、ミニマル・ミュージックの反復性とヨーロッパ前衛の構築性が滑らかに融合していく。電子音楽の研究で培われた精密な時間感覚がアコースティック楽器に応用され、透明で結晶のような響きが持続しながら、絶えず微細な変化が生まれている。緻密でありながら温度を感じる独特の音世界は、時間・響き・構造が多層的に折り重なる、現代音楽の中でも特に静謐で美しい結晶のような音楽!
DeepChord、Echospaceの中心人物たるRod Modellによる洞窟の奥深くを進むようなディープ・アンビエント作品『Grotto of the Sun』。Pt.1 と Pt.2 の2曲構成で、水が滴る音やせせらぎのような揺らぎ、低く深い脈動、ざわめき・きしみ・風のようなノイズに突然差し込む光のような明るい音の層が折り重なり、抽象的でありながら強い情緒とドラマ性を帯びたサウンドスケープが展開する。音は一見静かで瞑想的だが、実際には細部まで緻密に作り込まれており、Rod Modellらしい深海的アンビエントが、洞窟というモチーフを得てさらに濃密になったような一枚。
DeepChord、Echospaceの中心人物たるRod Modellによる最新アンビエント作品『Frequencies In The Fog』。Pt.1 と Pt.2 の2曲構成で、パッドを中心としたミニマルな音の軌跡、控えめに配置された電子音の粒子、ゆっくりと深く包み込む低音が持続的に重なり合う。逆再生処理された判別しにくい声の残響や、停滞する静寂と円環的な動きが交互に現れ、厚い霧の層の奥から現実の風景が断片的に浮かび上がっては消えていくよう。Rod Modellらしい深海のような音響と環境音の抽象化が研ぎ澄まされた一枚。

Florian Heckerによる、音響合成と知覚を探求する実験的電子音楽作品『Natural Selection』。旋律・リズム・ハーモニーといった伝統的要素は排除され、代わりにHecker特有の電子音響合成による、音の質感・空間性・変化に焦点を当てた内容で、9曲構成の各曲は独立した音響実験でありながら、音色や構造の共通性によって緩やかに連関。星座が個々の星が意味を持たずとも並びや関係性によって象徴的な形を成すように、物語やテーマではなく、音そのものの性質がつながりを生んでいく。聴く者が意味を見出すのではなく、音そのものが意味を生成する、音楽を聴くという行為そのものを問い直すような音響芸術の最前線!

「GREEN」「SURROUND」の続編として制作されながら、20年近く正式にリリースされなかった知られざる作品をTemporal Drift が世界初再発!! オリジナル盤はCDのみとなり、アナログ・レコード化は本邦初となる。
環境音楽の代表的な作品として知られ、近年再発された名盤である「GREEN」「SURROUND」。この2作に続く形で制作、1987年に完成したが当時発表されることはなかった。2003年に吉村が逝去、3年後の2006年にCDフォーマットで未発表音源としてリリースされた「FLORA 1987」。
植物を連想される楽曲タイトル、「GREEN」「SURROUND」と比較する限り色彩感覚が刺激される旋律が、受け手の想像力を柔和に包み込む。
『Flora』というアルバムが聴きつづけられている、聴きつがれている、
そこには、吉村弘という音・音楽を愛でるひとのかわいらしさが、
それとなく漂ってくるからかもしれません。
ちいさな花のかおりのように。
小沼純一
初の公式再発、吉村弘遺産管理団体の全面協力、小沼純一によるライナーノーツ付属、John Baldwinのリマスタリング
CD:デジパック

モーリタニア独立後の国家公式バンドとして結成、若きリーダーHadrami Ould Meidahを中心に、ギニアのBembeya Jazzの指導を受けて育成されたL'Orchestre National de Mauritanie1960〜65年の7インチ音源をまとめた編集盤。複雑なモード体系を持つ伝統的なモーリタニア古典音楽に、エレキギター、ブラス、現代的アレンジを大胆に導入した革新的な音楽で、砂漠の広がりと都市の熱気が同時に立ち上がるような独特のグルーヴを生み出している。反復するリフがじわじわと高揚を生み、ブラスのアクセントやギターのカッティングが音像に鮮烈な色彩を加える。ヴィンテージ録音ならではの質感も魅力で、ノスタルジックでありながら、古典音楽の反復構造がそのままファンクのグルーヴと結びつく様はむしろ現代的で、他のどのバンドとも似ていない不思議な魅力がある。
〈Matador〉から世界デビューを果たしたMdou Moctarの女性バンド版?? サハラ以南の知られざる音楽文化を掘り起こす大聖地〈Sahel Sounds〉お抱えの名アクト、ニジェールのトゥアレグ族女性バンド、Les Filles de Illighadadの最新作が堂々リリース!!サヘルの端に位置している荒れ野の砂漠Illighadad村から現れ、今や世界へとその名を轟かせているこの人達。電気も水道もインフラが殆どない地域で育まれてきた「デンデ」と呼ばれる音楽(モルタルと乳棒に張られた山羊の皮から作られたドラムに由来する)の求道者であり、「砂漠のブルース」とはまた違う道を歩む、トゥアレグのフォーク・ミュージックの新たな方向性を確認できるかもしれない重要作品!
チリのギタリストCristián Alvearの依頼により作曲された、Catherine Lamb初のギター作品『Point/Wave』。環境音をマイクロトーナルな和音へ変換するSecondary Rainbow Synthesizerを用いた電子ドローンと、極めて静謐で均質なタッチのギターによる点描的フレーズが、長い時間軸の中でゆっくりと干渉し合う構造を持ち、音が前へ進むというより空間に滞留し続けるような独特の静けさと緊張感を保ち、倍音同士の微細な揺らぎが耳の奥で共鳴しながら、聴き手そのものを調律するかのように、知覚を変容させる。その音像は、幾何学的でありながらどこか有機的な、静かで強度のある現代音楽作品。

エストニア出身、ロンドンを拠点に活動するピアニスト、作曲家Hanakivの最新作『Interlude』が〈Gondwana Records〉から登場。前作の深く美しい瞑想的なピアノ・アルバム『Goodbyes』などの作風から一歩踏み込み、本作ではソングライティングと声の表現を取り入れている。自身のヴォーカルをフィーチャーした楽曲が収録され、ピアノの余白に溶け込むような囁き声が、作品全体に暖かみを与えている。静謐でありながらどこか生命力を帯びた、柔らかく光を放つピアノ、繊細なストリングス、控えめな電子処理が重なり、時間が止まったような瞬間を丁寧にすくい取る。エストニアの自然や聖歌の記憶と、ロンドンの先鋭的な音楽環境が交差した、懐かしくもあり、新しくもある一枚。
ヴァインデルヴァイザー楽派の名アンサンブルである”Ordinary Affects”にて16年から共に活動してきたJ.P.A. FalzoneとMorgan Evans-Weiler。それぞれが個別に作曲した長編を収録した2枚組CDが名所〈Another Timbre〉からリリース!19年1月にコネチカット州ミドルタウンのリベラル・アーツ系大学のウェズリアン大学の記念礼拝堂にて、ヴァンデルヴァイザー周りの作品のエンジニアリング、そして、Alan SondheimやJosé Jamesとの共作も知られるLuke Damroschによって録音された一作。虚空のなかで淡々とアイソレーションを加速させる弦楽ドローン・ミニマルなMorgan Evans-Weiler側、哀愁が匂うピアノとヴァイオリン、ヴィブラフォンによる点描的なサウンドが枯淡とした美しさを放ったJ.P.A. Falzone側と、ともに音数は抑えながら、日本的な侘び寂びの風趣さえも感じさせる、大変エニグマティックな室内楽作品。途轍もなく素晴らしいです!
Catherine LambとJohnny Changが長い時間をかけて作り上げた、架空の作曲家Viola Torrosをめぐる創造的音世界。失われた中世音楽の再発見を装い、架空の断片的資料を研究・編曲・解釈するという形でふたりが自らの音楽的系譜と方法論を探る。音楽は、アラビア、ビザンツ、インドの旋法的伝統を通過した失われた古楽のような気配を漂わせつつも、直接的な模倣ではなく、あくまで現代の耳で再構築されたもの。ヴィオラを中心にした長い持続音、微細な音程のずれ、共鳴によって生まれる倍音の揺らぎ。LambとChangの音楽に特徴的な、静かだが生きている音響が全編を貫いている。歴史の影と現代音楽の透明さが交差する、架空の古楽のような多層的な美しさを持つ作品集。
現代作曲家、音律研究者である Marc Sabat が、バッハの作品を純正律や歴史的調律法で再構築し、まったく新しい響きを引き出す、非常にユニークで知的な音響実験アルバム。純正律で響く和音は驚くほど澄み渡り、別の調では緊張を帯びて不安定に揺れる。その変化が、バッハの対位法や和声の構造を新しい角度から照らし出し、音楽そのものの骨格が立体的に浮かび上がる。古楽の復元でも現代音楽の再解釈でもなく、調律という音の根本を作曲素材として扱うような、知的で静謐な探求。バッハを別の角度から照らし、音と音の関係性にじっくりと耳を澄ませる。その響きは透明で、ミニマルで、どこか瞑想的。音が正しく響くとはどういうことなのかを問いかける一枚。
英国作曲家 Bryn Harrison による、二台ピアノと電子音響のための45分の大作『Towards a Slowing of the Past』。神秘的で細密なピアノの連続と、反転・変速・ピッチ変化を施した録音素材が重なり合い、時間と記憶が曖昧になるような知覚の迷宮を作り出す。音楽は全体を通して二オクターブ下降し、速度も半分まで減速。中盤の電子音による二分間の静止和音を経て、終盤では電子音響が支配的となり、生演奏との境界が曖昧に。Mark Knoop と Roderick Chadwick の精密な演奏が、一見静かに見えて、内側では絶えず変化が起きているこの複雑な構造を鮮やかに浮かび上がらせている。理解するよりも浸ることがふさわしい、現代ピアノ作品の到達点。
純正律と倍音構造の探求を続けるCatherine Lambが、声とアンサンブルの干渉から生まれる色彩を多層的に描き出した『parallaxis forma』。旋律やリズムの展開ではなく、音が重なり合うことで生まれる微細な揺らぎや干渉そのものが中心に置かれており、ビブラートを抑えた声が、弦・管・ハーモニウムなどのアコースティックな響きと溶け合い、境界が曖昧になる瞬間が何度も訪れる。倍音がゆっくりと変化し、音の明度や密度が少しずつ移ろう様子は、まるで光の屈折を聴いているかのよう。音の存在の仕方そのものを聴かせる、静かでありながら豊かな変化に満ちた美しい音響作品。
ヴァンデルヴァイザー楽派の中心となる作曲家Antoine Beugerが、ルネサンスの巨匠Johannes Ockeghemへの静かなオマージュとして書いた大作を、8人のアンサンブルで丁寧に実現した『Ockeghem Octets』。メロディや展開をほとんど持たないこの音楽は、長い持続音が呼吸のように出入りし、8つの楽器が淡く重なり合うことで、微細な揺らぎと柔らかな倍音が生まれる。メロディカ、ハーモニウム、フルート、チェロ、アコーディオンなど、空気の振動がよく伝わるアコースティック楽器が集まり、音が生まれては消えていく瞬間そのものが音楽の中心に置かれている。直接的な引用はないものの、複数の声部がゆっくりと交差する構造は、Ockeghemのポリフォニーを抽象化した残響のように感じられ、静寂の中に古い音楽の影が淡く立ち上がる。
純正律の探究者Marc Sabatが、弦楽四重奏という最もシンプルかつ深遠な編成を通して調和の本質に迫った作品集『Harmony』。収録された三つの作品は、ピタゴラス、ポトレミー、ラモーといった歴史的音律理論を参照しながら、現代的な音響として再構築されたもの。長い持続音がゆっくりと重なり合い、倍音が濁りなく共鳴することで、平均律では得られない静謐な空間が広がる。数学的な構造に基づきながらも、響きは冷たさとは無縁で、自然界の倍音現象に近い有機的な温度を帯びている。純正律の響きが持つ揺らぎのない透明さを、現代の耳に新鮮な形で提示、厳密さと柔らかさが同居する、静かで豊かな音響世界。

栗原ペダル、荒木優光、DISTESTによる、2009年結成のトリオ音楽グループ「NEW MANUKE」初のアルバム。
サウンドは主にサンプリングとコラージュ、シーケンスされたビートとループされたミキサーフィードバック、それらの上で極少量のポップスと共に破壊と脱構築を繰り返す。
ライブはまったく踊れないビートによる逆トランスの誘発。それらはライブハウスやクラブ、アンダーグラウンドと場所を変えては日夜、爆音で鳴らされる。
2009年にアニメーション作家の故・相原信洋氏とのコラボレーション。相原氏より大量のアニメーションデータを預かりNEW MANUKEのライブ時にVJとして使用。この時には未発表のプリミティブな新作アニメーションもプロジェクションされた。コラボレーション時の相原氏の名義は『サイケ相原』。
2011年、自主カセットテープ「nannomondaimonainiwa」をリリース。収録曲の『Junkroad Bandass』がライブペイント集団Whole9の360°Gopro動画に使用される。
2017年、goat率いるKoshiro Hino主催レーベルbirdFriendより東京のKuknackeとのスプリットカセット『Kuknacke/NEWMANUKE』をリリース。
2018年、カセットテープ『 iPad,lick finger and swipe,grandson gets angry 』をリリース。original mix、M/D/G remix、KAZUMICHI KOMATSU remixが収録。
2025年、初のアルバム『SOUR VALLEY』をリリース。
Pedal Kurihara(sampler、guitar、drum effect)
Masamitsu Araki(sampler、voice、mixer feedback)
Distest(sampler)
待望の再プレス!ドローンマスター、チベットと電子音楽を合一させたグルEliane Radigue(1932-)の1987年名作(オリジナルはカセット)が2CDで目出たく再発!ディープ過ぎる雲のようなドローンにチベタンベルが薄らと響く、彼女の他のどの作品よりも存在感のある音の雲が展開するチベット密教下最高のドローン。この直後にリリースされた「Mila’s Journey Inspired By A Dream」と同様にチベット仏教の聖者ミラレパの人生にインスパイアされた作品で、倍音を多く含んだアープ・シンセサイザーの密教持続音が全面に出された瞑想的ドローンの極地。二枚目は薄らと僧侶達の読経がドローンと交じる、深淵なる東洋精神世界へ誘う霊的持続音の嵐。チベット仏教や瞑想に興味がある方にも、是非体験していただきたい歴史的傑作です。

Eliane Radigueの最高傑作と称される三時間におよぶ電子音響の大作『Trilogie de la Mort(死の三部作)』。本作は、ドローン、ミニマル・ミュージックの金字塔ともいえる作品であり、チベットの死生観に基づき、生と死、そして死後の再生までを主題にした深い瞑想のような音の旅。三部構成で、第一部「Kyema」は『チベット死者の書』の六つの中間状態を音で描写。第二部「Kailasha」はヒマラヤの聖山カイラス山を巡る想像上の巡礼を描き、第三部「Koumé」では死の最も深い地点へと潜り込み、そこで再び生の火花が灯る──死は誕生へと転じる、という循環的な世界観を静かに提示している。ラディーグはこの作品を8年かけてアナログ機器のみで丁寧に制作。最初はただのハム音にしか聴こえなくても、深く耳を傾けると、そこには豊かな倍音、音の揺らぎ、感情の移ろいがあり、まるでオーケストラやバグパイプが幽かな哀歌を奏でているようにも感じられる。ゆっくりとしか変化しない音の流れは、日常のスピードを緩め、聴く者の時間感覚そのものを変容させる。耳で聴くのではなく、時間とともに存在する音楽であり、精神的・哲学的な深みと芸術的な緻密さを兼ね備えた唯一無二の音響体験となっている。
