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グリーンランド、ヨーロッパ、中東を旅する匿名の音響錬金術師Jaanによる、地理的・文化的断片を音響に編み込んだエクスペリメンタル・アンビエント作品『Baghali』。環境音や道端の録音、古いシンセ、壊れたテープ、フルート、ギター、パーカッションが交錯。中東の打楽器が突然ローファイなテープの歪みに溶け込み、次の瞬間には雪原のような静寂に変わる。環境音、民族楽器、ノイズが同時に鳴っており、音の密度は高いが、構造の密度は低く、全体としては静かで余白の多く、どこか錯覚めいた印象を残す。Brian Enoが砂嵐の中で壊れたテープレコーダーと夢を持って歩いているような音とも評される、記憶、神話、風景が音の中で溶け合う音響的漂流。場所と時間を超えた音の断片が、聴く者の内面に静かに語りかける。

Şatellitesの中心人物であるテルアビブを拠点に活動するマルチ奏者イタマール・クルーガーがEje Eje名義でリリースする2作目のアルバム。前作『Five Seasons』に続き、彼自身が大半の楽器を演奏・録音し、地中海〜中東の伝統音楽を軸にサイケ、ファンク、ダブ、ビート・プロダクションを自在に織り交ぜた作品になっている。タイトル「Primordial Soup(原始のスープ)」は生命の起源をめぐる科学理論に由来し、多様な要素が混ざり合い新しい形を生む比喩として、クルーガーはこの考えをサウンドに投影し、トルコの打楽器やサイケデリックなギター、ダブの質感、シンセやドラムマシン、中東の旋法をひとつの鍋で煮込むように融合させている。録音は細部まで作り込まれつつも、演奏には生々しい熱があり、DJ Shadowや初期Four Tetを思わせるプロダクション感覚と、伝統楽器の直接的な響きが共存している。中東伝統と現代的なビート感覚を横断する現在進行形のサウンドを提示する一枚。
2025年リプレス!オリジナルは2012年リリースの、OMの5作目となるアルバム『Advaitic Songs』。ミニマルかつ儀式的なドゥーム/ドローンを基盤にしながら、今作はチェロやヴァイオリンなどのストリングス、女性ヴォーカル、中東・南アジア的要素を含む旋律など、より多層的で荘厳な音響が全編にわたって注ぎ込まれている。スティーヴ・アルビニをはじめとするエンジニア陣の手によって生々しく記録された音像は、深いリヴァーブと空間的広がりを持ち、まるで聖堂の中で演奏されているかのような響きを持つ。スピリチュアル・ジャズや中東音楽、グレゴリオ聖歌やヨーロッパー中世音楽、神秘主義的ドローンなどに通じる要素を取り入れながら、ドゥームの骨格を保ち続けている点も驚異的で、宗教的・哲学的なミニマル音楽と東洋的エッセンスをも融合させた、スピリチュアル・ドゥーム/メディテーショナル・ドローンとでも言うべき、極めてユニークな充実作!

イラン系アイルランド人Saint Abdullah & Eomacによる、ペルシャのポップスを大胆に解体、再構築し、荒削りなヒップホップとクラブ寄りのエレクトロニカフレームワークに再編成した『Of No Fixed Abode』が〈The Trilogy Tapes〉より登場。本作は、50年分のペルシャ・ポップスを題材に、文化的記憶や移民の経験をビートで読み替える実験的な電子音楽アルバム。Andy、Hayedeh、Fereydoun Farrokhzadといった往年のアーティストの楽曲を丁寧にサンプリングし、MadlibやRezzettを思わせるざらついたビートや疾走感あるドラムワークで再構築。郷愁と混沌、個人的な記憶と集団の歴史が入り混じる音像は、「文化」や「出自」が固定されえない現代の漂流感を鋭く映し出している。サウンド面でも、ローランドSP404やデジタルDAWを駆使したサンプリング、ニューヨーク在住のドラマーJason NazaryやAria Rostamiら国際的ゲストとの共作も交え、ジャンルの枠を軽やかに飛び越えていく意欲作。
2017年にデビューを果たしたドイツ発のアナトリアン・サイケ・ポップ歌謡集団、Derya Yıldırım & Grup Şimşekの最新アルバムが〈Big Crown〉からアナウンス!トルコの民謡をベースにした音楽「ハルク」(Halk)の弦楽器バーラマの女性奏者Derya Yıldırımと、それぞれドイツ、フランス、イタリア、イギリス出身の男女4人のクインテットGrup Şimşekによる新機軸となる一作!日本語では「明日がなければ」と訳される本作は、「喪失や憧憬、変化への希望」という主題を軸に、深く個人的な苦悩と集団的な抵抗を掘り下げた作品。持ち前の中東サイケな味わいとここのレーベルカラーのモダン・ソウル/ファンク・サウンドが絶妙にマッチした、"アウターインターナショナル"な魅力を放つサイケデリック・ソウル・ミュージック傑作です!

ニュージャージー州出身で現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動し、Moor Motherとのノイズ・ヒップホップ・ユニット700 Blissでも知られるプロデューサーのDJ Haram。Rinse FMやThe Lot Radioからフックアップを受け、Sonar、Dekmantel、Boiler Roomといったイベントへの出演も果たすなど活躍の場を広げる彼女がデビュー・アルバム『Beside Myself』をリリース!
本作は、日々の闘争の中で精神がいかにして生き延びるかを描いた作品であり、Armand Hammer、Bbymutha、SHA RAY、Moor Mother、Dakn、August Fanon、El Kontessa、Kay Drizz、Aquiles Navarro、Abdul Hakim Bilalといった数多くのコラボレーターたちと共に、痛みと怒りを乗り越える旅を描きつつ、時折訪れる束の間の喜びの中で苦悩を嘲笑してみせる。
Haramは自らを「マルチ分野にまたがるプロパガンディスト、現代の反権威的アラブ、ジェンダー化された労働階級、神を畏れる無神論者」と称し、「アンチ・フォーマット、オーディオ・プロパガンダ、アンチ・ライフスタイルの没入型音響」を制作しているという。生み出される音楽はまさに彼女の言葉を証明するものとなっている。
そのサウンドは明らかに彼女自身の作品とわかる一方で、明確に分類することは困難である。ジャージークラブ、パンク、ノイズ、中央アジアおよび中東のパーカッション、シンセサイザー、808、うねるような重低音、ざらついたライブ・プロダクションなど、さまざまな要素が絡み合うことによってその独創的なサウンドが生み出されている。
その中心には、作家、詩人、フェミニストのAudre Lordeを思わせる詩的な悲しみと、Kim Gordon(ex Sonic Youth)を想起させる物質的な現実と抽象的な概念が同等に探究されている。
彼女の描く荒んだ未来像には安易な救済は存在しない。しかし、その中に込められたドラマとカタルシスは、毅然とした形で提示されている。
中東サイケの旗手Ouzo Bazookaの最新作『Kapaim』が〈Batov Records〉より登場!中東の伝統音楽にソウル、ファンク、ロックのざらついた質感を掛け合わせ、トリップ感のあるギターやうねるグルーヴで陶酔の渦に巻き込む、彼らの集大成とも言える作品。今作ではBalkan Beat BoxやBoom Pamなど多彩なプロジェクトでも知られ、Selda BağcanやKutimanとの共演歴もあるベテランであり、バンドの中心人物となるUri Brauner Kinrotがソロ的なアプローチで制作を主導しており、バンドとしての強靭さを保ちつつ、より自由で開放感のあるサウンドに仕上がっている。大半がインスト曲で構成され、ベースのうねりやシンセの奇妙なフレーズ、ギターの浮遊感が心地よく絡み合う。多文化を横断するセンスが凝縮されており、多幸感と自由さに満ちた一枚!
中東のサイケ、ファンク、ディスコのグルーヴを融合させる革新的なアプローチで知られるロンドンの要注目ジャズ・ファンク・バンド、Sababa 5と、日本の歌手でベリーダンサーの花島ユリカによるコラボレーション・デビュー・アルバム『こころ』が〈Batov Records〉から登場。Sababa 5の特徴的なワールドビート・サウンドと日本のフォーク&ポップが文化の境界を超えて融合した画期的作品!地中海沿岸と砂漠のロマンスが弾ける、アルバムの音楽的探求の真髄を体現したサイケデリック・ソウルなタイトルトラック”Kokoro”、アラビアンで遊び心溢れるサイケ&サーフ・ナンバー”Halilim Halilim”、ダンスフロアを圧倒するアップテンポのサイケデリック・ファンク・リッパー”東京ミッドナイト”、そして、地中海と日本のソウルが出会う不朽の名曲"愛の交差点"など、Sababa 5の伝染性のあるグルーヴに乗せて、ユリカの魅惑的なボーカルが炸裂した珠玉のナンバーが満載の今年度重要作品!

戦前のブルースから移民の音楽、南米のフォルクローレを始め、各地の骨董音楽を掘り起こす一大名所〈Death Is Not The End〉から新物件!1920年代初頭の共和国建国から1950年代半ばまでの数十年間に録音された、メランコリックでありつつも、この世ならざる美しさで心を魅了する、珠玉のトルコ産タンゴをよりすぐったコンピレーション・カセット作品。
オブスキュア系カルト音源発掘レーベルである<EMOTIONAL RESCUE>より、1982 UK産オブスキュア・ディスコ・パンクJah Wobble's Invaders Of The Heart のメンバーでもあった Justin Adams によるThe Impossible Dreamersが登場!!<Emotional Rescue>が2019年に始めた往年の名曲をリマスターし、現代のプロデューサーによる新たなリミックスでプレスするシリーズを締めくくるに相応しい、彼らの中でもカルト的人気を誇る名曲『Spin』のトライバルパーカッションオリジナルと、レーベルの常連アーティストであり、Idjut BoysやNoidで有名なダン・タイラーによるNAD名義でのダブを多用したリミックスを収録。アンダーグラウンドで生々しく荒々しいリズムが満載!
カイロ在住の作曲家、編曲家、マルチインストゥルメンタリストのナンシー・ムニールのデビュー作『Nozhet El Nofous』が<HOLIDAYS RECORDS>からリリース!アラビア語で「魂のプロムナード」を意味するタイトルを持つこのアルバムは20世紀初頭のエジプトの女性歌手たちのアーカイブ録音に、彼女自身が演奏したピアノやストリングスなどの伴奏をオーバーダビングした内容で、1930年代初頭にアラビア語のマッカム(モーダル・システム)やその他の音楽的基盤が標準化される以前の微分音、非計量リズムなどアラブ音楽のより自由奔放な時代の技法と視点を探求されている。情熱と欲望に取り憑かれた歌声に独自のアンビエント・アレンジを加えることで、温かく親しみやすい、しかしまったく新しいサウンドが素晴らしい!

1940年タブリーズ(イラン北西部)に生まれ、シャンソンタイプの歌曲の作曲から始まりその後映画界に進出し、数々の人気テーマの作曲家として名声を博したアルメニア人作曲家ハムレット・ミナシアンの1979年作『Armenian Pop Music』が〈Numero Group〉よりリリース!アルメニア民謡のオリジナル声楽曲やオーケストラ編曲も手がけ、ロマンスやバレエの作曲も数多く手がけているハムレット・ミナシアンのソロ作は、ユーロのアティテュードとアルメニアの伝統的な歌をハイブリッドさせ、異次元を思わせる長く催眠的なプロト・ハウスで、中東の忘れ去られたダンス・ミュージック文化の証と言える傑作!

日夜音楽を通してアラビック/ダブに襲撃を繰り返し続け、あまりにも膨大な音源の数々を残してきただけでなく、未だにその未発表音源までもが掘り起こされる今は亡き英国の名手ことMuslimgauze。90年代オーストラリアの地下シーンを代表する実験系名門レーベル〈Extreme〉に残した92年作『Zul'm』が〈Kontakt Audio〉から初アナログ化!Muslimgauzeならではのトライバル、祝祭的な側面が強く顕れた、ビートが強靭でクラブ・ユースな一枚。鉄板のダークアンビエント的な感覚とドープなビートの交錯も、中東的な質感を提示する呪術的なトラックも併せて楽しめる秀逸な内容です!

アゼルバイジャンやマルティニークの知られざる音楽世界からスイスの地下シーン、フランスで変異した電化ライまで、古今東西の音楽秘境を紹介する名門レーベル〈Bongo Joe〉からは、2017年にデビューを果たしたドイツ発のアナトリアン・サイケ・ポップ歌謡集団、Derya Yıldırım & Grup Şimşekが、2021年と22年にそれぞれ発表した2部作の傑作アルバムがセットになって待望の再登場!〈Catapulte Records〉との共同リリース。トルコの民謡をベースにした音楽「ハルク」(Halk)の弦楽器バーラマの女性奏者Derya Yıldırımと、それぞれドイツ、フランス、イタリア、イギリス出身の男女4人のクインテットGrup Şimşekによる人気作が再結集!「Dost」はトルコ語で「友」を意味し、同志、兄弟、姉妹、そしてそれ以上の存在を指します。このまさにアルバムは友情を信じる人々、つまり「Dost」を信じる人々への呼びかけといえるもの。歌詞や写真が掲載されたインサート付きのゴールド箔押しの特別仕様!特に『Dost 1』は長い間完売していたので、この機会をお見逃しなく!

まるで、Mulatu AstatkeミーツFleet Foxes!中東の新世代のグルーヴを中心にグローバル・ファンクやワールド・ビート作品をリリースしてきたロンドンの名門〈Batov Records〉からは、エチオピア系ユダヤ人としてのルーツを持つイスラエル・テルアビブのギタリストで作曲家のSandman ProjectによるデビューEPから6年ぶりとなった待望のデビュー・アルバム『Where Did You Go?』がアナログ・リリース。「エチオピアのジョン・コルトレーン」とも呼ばれるサックス奏者であり自身の師匠、Abate Barihunからの影響が詰め込まれた作品!ブラス・ヘヴィー・サウンドの境界のない融合と言える本作では、エチオ・ジャズとアフロビート、アメリカのソウル・ミュージック、サイケデリックな地中海ファンクまでもがオープンマインドな彼らの精神性の中で邂逅。ジャズのスピリットを継承した、刺激的かつ越境的なグローバルなサーフ&ターフ・スタイルが堪能できる一枚!限定500部。

1976年に公開禁止となったイランのクィア・ゴシック系ホラーの傑作『Chess of the Wind』の失われたサウンドトラックが、監督によって復元され、〈Mississippi Records〉より初公開!イランで上演禁止となり、2014年にアンティークショップで完全なプリントが発見されるまで長らく失われていたワールドシネマの傑作、Mohammad Reza Aslani監督の『Chess of the Wind』。マーティン・スコセッシの映画財団によって修復され、2020年に公開された同映画は、革命前のイラン映画における最も先見的で大胆な映画のひとつとして、公開から約40年越しに漸く正当な地位を獲得。この映画の画期的な劇伴は、イランで最も尊敬される女性作曲家の1人であるSheida Gharachedaghiによるもので、ペルシャ古典楽器と西洋音楽院で学んだ無調の不協和音を組み合わせた大胆なアプローチを施した内容。今回の発売のために監督と作曲家は映画研究者のGita Aslani Shahrestaniと協力してこの音源を再構築し、未発表作品”Therefore Hangs A Tal”と組み合わせて復元し、アスラーニ監督の長年の夢であった2つのサイドレングスのサウンドコラージュが完成。まさに、Ornette Colemanがイランの聖地へと降臨した瞬間に鳴り響く音楽を思わせる神々しく不可思議な傑作アルバム!
女性ドラマー兼シンガーのZangoleahによるキラー・ガレージ/ロッキン・トラック、TakkhalhaによるThe Rolling Stones "Play With Fire"の素晴らしいカヴァー、ペルシャの伝統曲”Mastom, Mastom”の素晴らしいテイク、Saeed and Tigersによるエキゾチックなペルシアン・ビートまで、希少なペルシャ時代の45回転盤の数々から当時のオブスキュアな楽曲の数々を選りすぐったコンピレーション・アルバム『Persian Underground』がアナログ・リリース。ガレージロックやクールなペルシャン・ビート、エキゾチックなロックンロール、驚くべきプログレ・サイケデリック・ナンバーまで、様々なスタイルを堪能できる一枚。

オリエンタル・ジャズの巨匠であり、先駆的な民族音楽学者であるLloyd Millerが60年代初頭から00年代初頭にかけて残した幻のアーカイブを選りすぐったコンピレーション作品『Orientations』が、ユタ州のレーベル〈FOUNTAINavm〉より登場。ジャズ、中東の伝統的民族音楽、音楽学の世界において極めてユニークな人物であり、自主リリースされたその多くのオリジナル作品が入手困難となっていた中での画期的なコンピ編纂!東洋と西欧の文化的衝突を根底に、15種類以上の非西洋の楽器と共に調べ上げた珠玉の音源の数々の中で、古い東洋の香ばしく湿った空気とヨーロッパのジャズ・スタンダードが見事に融合を果たしています。70年代初頭のテヘランで録音されたピアノ曲"Shahin"の軽快なロマンスから、60年代の南インドに触発されたカルナティック・クラリネットの催眠的な録音まで、ジャズ、フォーク、スピリチュアル、ドキュメンタリーといった音楽の側面が重なり合う興味深い歴史的交差点に存在するLloyd Millerの音楽世界が堪能できる一枚。




