Ambient / Minimal / Drone
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札幌の音楽家Kuniyuki Takahashiによる、モダン・クラシカルとエスニック・ジャズが融合した静謐な音響作品『Open Window』。本作は、札幌のスタジオに差し込む光と風からインスピレーションを得て制作された作品で、Kuniyukiが長年追求してきたジャンルを越えた音楽的表現の集大成とも言える内容。A面「Open Window」は、ECM的な静けさと透明感を湛えたモダン・クラシカル。ピアノやストリングスが繊細に重なり、空間と時間が溶け合うような音響。B面「Tobira」は、エスニックな打楽器とニューエイジ的なジャズの要素が融合し、異世界への扉を開くような幻想的なサウンドスケープ。Kuniyukiらしい有機的かつ瞑想的なアプローチが全編にわたり貫かれており、クラブ・ミュージックと深いリスニング体験の境界を自在に行き来する充実作。

オリジナルは$300以上の値を付ける激レア盤!AMMやGruppo di Improvvisazione Nuova Consonanzaと並び、世界初の実験音楽家コレクティヴのひとつであるMEVことMusica Elettronica Vivaをフレドリック・ジェフスキー達とともに66年結成、半世紀以上にも及ぶキャリアを誇る、現代の実験音楽界において最も重要な作曲家であるAlvin Curranが、Roberto LaneriやGiacinto Scelsiらとともに運営していた短命なレーベル〈Ananda〉から78年にリリースしていた名作が初となるアナログ・リイシュー!『Songs and Views from the Magnetic Garden』(1975年)、『The Works』(1980年)、『Canti Illuminati』(1982年)といったタイトルに続く、1970年代から1980年代初頭にかけてアルヴィン・カランが発表した4つのソロ・レコーディング・シリーズの第2弾に当たる作品で、ミラノの交差点をイメージし、75年の4月に〈RCA Italiana Studios〉に録音されたアルバム。フィールド・レコーディングと、シンセサイザー、様々なアコースティック楽器、声による演奏を組み合わせ、ゆったりとしたテンポで夢の様なシークエンスへとアレンジした傑作。リマスター・オーディオ仕様。Alvin CurranとFrancis Plagneによる新規ライナーノーツが付属。
ルーマニアのミニマル・テクノ、アンビエントの重要人物で、ダンスミュージックと現代音楽の境界を行くPetre Inspirescuによる、2017年リリースのジャズやクラシックの要素を取り入れたミニマル・アンビエント作品『Vîntul Prin Salcii』。柳を吹き抜ける風という詩的なタイトルが示すように、自然との調和や静けさ、時間の流れを感じさせる静謐な音世界。

イタリアのエレクトロアコースティック作家Giuseppe Ielasiと、マンチェスター拠点の作曲家Jack Sheenによる初めての共作『The Vestige』が〈Black Truffle〉より登場。本作は、二人に共通する「輪郭の曖昧な音」「どこにも属さない響き」への関心を出発点として、Sheenのアコースティック音源とIelasiのギターの断片を素材に、13曲の無題トラックを構築。素材は徹底的に加工され、音の質感そのものが主役となっている。音の解像度を下げ、どこまでも曖昧にすることで、聴き手は音の意味ではなく、存在感に耳を澄ませる。電子ともアコースティックとも言い切れない、感覚の中間地帯を漂う作風は、音が音であることの深みを追求すると同時に、曖昧さの美を描くような一枚。

灰野敬二やジム・オルークのコラボレーターとしてもお馴染みの実験音楽家、Oren Ambarchiが主催する豪州の前衛音楽の一大聖地こと〈Black Truffle〉からはヒンドゥスターニー音楽の最新物件が登場。ルドラ・ヴィーナの巨匠Ustad Zia Mohiuddin Dagarによる未だかつて無く美しいパフォーマンスを収めたアルバム『Vrindavan 1982』がアナウンス。ダガールは、ヒンドゥスターニー宮廷音楽の伝統に対する深く瞑想的なアプローチで有名な音楽家ダガー家の19代目の子孫に当たる人物。1982年に北インドの都市ブリンダーヴァンで開催されたフェスティバル〈Druhpad Samaroh festival〉にて録音された貴重な音源を収録しています。
Meditations大ベストセラー! 全世界から注目集まる日本の才能。神奈川県立現代美術館委嘱作品。主に環境音楽デザインや現代美術の分野で多大な功績を遺した作曲家、吉村弘。2003年、彼のラスト・アルバムとなった本作は、葉山と鎌倉にある神奈川県立現代美術館のために作られた音楽集です。葉山、鎌倉それぞれの「開館」「「閉館」のための4曲に、波や人の声などを織り交ぜた「スペシャル・ヴァージョン」2曲を収録。その音色はさり気なくアート・スペースに溶け込んでいきます。海を見渡す丘を吹く風。ゆっくりと夕陽に染まってゆく時。やさしく穏やかなアンビエント・サウンドが、美術館から見える様々な情景を描いています。デジパック仕様
全世界から注目集まる日本の才能、日本が誇るアンビエント職人・吉村弘が、北品川にある現代美術館の主催していたレーベルSound Processに残した記念すべき1982年傑作ファースト・アルバム!!
日本のアンビエント音楽の歴史の中で重要人物として間違いのない地位にいたにも関わらず、日本盤のみのリリースのため、海外にほとんど知られることのなかった吉村ですが、昨今のニューエイジ再評価の流れでようやく日の目を見るところまでやってきました。9枚のポストカードに籠められたコンセプト「波の記譜法」を喚起する、創造的で耽美な日本産アンビエント・ミュージック最高峰の響き。エリック・サティやブライアン・イーノ、ローデリウスなどが紡いできた環境音楽/アンビエントの歴史を日本的情緒と霊的なコスモの次元で繋ぎ留めた神秘の音世界。フェンダー・ローズとキーボードによる最小限のセットで試みられたホームメイド・アンビエントの奇跡的録音です。
全世界から注目集まる日本の才能、日本が誇るアンビエント職人・吉村弘。主に環境音楽デザインや現代美術の分野で多大な功績を遺した同氏が1973年にトイピアノの音色で構築していたごく初期の音源である「Soft Wave for Automatic Music Box = ソフト・ウエイヴ-オルゴールの音楽」ストックしました!
厚紙にパンチ道具で穴を開け、ロール状にしたものをトイピアノに設置し、スイッチ作動で音楽を奏でるという仕組みの作品。イーノのアンビエント作品集やエリック・サティの家具の音楽の文脈を真っ向から継承した神秘的なサウンド・ワークス。ひとたび目を閉じて聴き入れば、幼少期のノスタルジアへと返っていくような、そんな思いです。
1月下旬入荷予定。Bing & Ruthの中心人物として知られるピアニスト、作曲家デヴィッド・ムーアがピアノのみを素材に制作したソロ・アルバム『Graze the Bell』。1987年製ハンブルク・スタインウェイ Model Dピアノの息をのむような音色を基盤とし、繊細なタッチと沈黙に触れるほどの微妙なダイナミクス。内省的かつ静謐な音楽世界は、日常のささやかな瞬間が永遠へと触れるかのよう。デヴィッド・ムーアがこれまでの活動の流れから一歩退き、「最も純粋な自分自身」としてピアノに立ち返った作品。グラミー賞受賞エンジニア、ベン・ケーンによるその呼吸や揺らぎを極限まで捉えたプロダクションも見事。
庭園の黄昏 - Every Dog Has His Day」「睡眠の計画 - Plan For Sleep」に続く、初期ダムタイプ音楽作品復刻プロジェクト第3弾。 本作は、1987年に兵庫県尼崎市・つかしんホールで開催された、ダムタイプ初の大規模展覧会『Suspense and Romance』の会期中に、展示会場で行われたライヴ・パフォーマンスの音源を収録したカセットテープ作品です。
山中透がダムタイプとして初めて全楽曲の作曲・制作を手がけた本作は、サックス奏者・ハリー切手氏とのコラボレーションから生まれた音楽プロジェクトを記録しています。 “サスペンスとロマンス”というテーマのもと、ジャズやシネマティックな叙情性と、ポスト・ミニマル以降の冷たく抽象的な音響が交錯する、山中らしいコンポジションに、切手氏による印象的なサックスのフレーズ、シーケンサーやサンプラー、PCM録音を用いた音作りが重なり、その後の「S/N」まで続くダムタイプ・サウンドを象徴する音響イメージが、この時期にすでに形成されていることに気づくでしょう。
さらに、当時の貴重な写真やドローイング、メンバーによる座談会を収録した、50ページ超のブックレットが付属。カセットブック仕様でのリリースとなります。 本ブックレットは、初期ダムタイプ・メンバーらによる「Early Dumb Type Archive Project」の主導のもと制作されたもので、初期ダムタイプの活動を多角的に捉える貴重な資料となっています。
カセットブック(箱入り)
カセットテープ:全10曲・48分収録 DLコード付
ブックレット:50ページ超(写真・ドローイング・小山田徹×高谷史郎×穂積幸弘 座談会ほか収録)
2025年リプレス!1984年に結成され、現在も京都を拠点に第一線で活動するマルチメディア・パフォーマンス・アート・グループ、ダムタイプ (DUMB TYPE)。最初期ダムタイプシアター時代の公演のために、音楽家・山中透とグループの中心人物であった故・古橋悌二が製作したカセットブック作品「庭園の黄昏 - Every Dog Has His Day(1985年録音)」と「睡眠の計画 - Plan For Sleep (1986年録音)」の2タイトルが、初めてレコードとして同時リリースされます。
ダムタイプ創立当初、山中は主に音楽制作を担当し、古橋はその楽曲を舞台演出に落とし込む役割を果たしていました。2人の共同制作は、ダムタイプ以前に組んでいたORGやR-STILLに始まり、その時期に志向していたNEW WAVEやプログレッシヴ・ロックに加えて、ミニマル・ミュージックや前衛パフォーマンスを融合させたローリー・アンダーソン、メレディス・モンク、ロバート・ウィルソンらからの影響を受けています。さらに、当時の先鋭的なサンプリング・ミュージックやハウス・ミュージックを大胆に取り入れた独創的なアプローチは、ダムタイプのサウンドの礎となり、日本のミニマル〜アンビエント・ミュージックとパフォーマンス・アートの重要な接点として歴史に刻まれるべきものです。
「庭園の黄昏(1985年)」と同時に制作されていた本作「睡眠の計画(1986年)」の公演では、山中がサウンド・オペレーションを担当することになりました。電子オルガンの音色と印象的なピアノやサックスのフレーズがシンコペーションしながら疾走するミニマル・ナンバーで始まり、次に、機械の駆動音のようなけたたましいインダストリアル・ビートの上を様々なサウンドソースの断片が漂います。また、タイプライターのタイピング音をリズムに変えたナンバーもあり、当時はまだ新しかったサンプリング・ミュージックからインスピレーションを受けた様々な試みを展開し、パフォーマンスの身体性と見事に結びついています。
加えて映画音楽からも多大な影響を受けている山中らしい、メランコリックな旋律から世俗的なジャズなどの様々な情景を喚起させる色彩豊かなメロディが加わり、ポストモダン時代の世界中のパフォーマンス・アートのなかでも他に類を見ない、完全に独創的で洗練された世界観を構築しています。
2025年リプレス!1984年に結成され、現在も京都を拠点に第一線で活動するマルチメディア・パフォーマンス・アート・グループ、ダムタイプ (DUMB TYPE)。最初期ダムタイプシアター時代の公演のために、音楽家・山中透とグループの中心人物であった故・古橋悌二が製作したカセットブック作品「庭園の黄昏 - Every Dog Has His Day(1985年録音)」と「睡眠の計画 - Plan For Sleep (1986年録音)」の2タイトルが、初めてレコードとして同時リリースされます。
ダムタイプ創立当初、山中は主に音楽制作を担当し、古橋はその楽曲を舞台演出に落とし込む役割を果たしていました。2人の共同制作は、ダムタイプ以前に組んでいたORGやR-STILLに始まり、その時期に志向していたNEW WAVEやプログレッシヴ・ロックに加えて、ミニマル・ミュージックや前衛パフォーマンスを融合させたローリー・アンダーソン、メレディス・モンク、ロバート・ウィルソンらからの影響を受けています。さらに、当時の先鋭的なサンプリング・ミュージックやハウス・ミュージックを大胆に取り入れた独創的なアプローチは、ダムタイプのサウンドの礎となり、日本のミニマル〜アンビエント・ミュージックとパフォーマンス・アートの重要な接点として歴史に刻まれるべきものです。
本作「庭園の黄昏(1985年)」は、山中と古橋の共同制作によるダムタイプのサウンド・アイデンティティを決定づけた音楽作品となります。ピアノやシンセサイザーの反復される印象的なフレーズが重なり合うミニマルな楽曲や、さまざまな具体音のサンプリングをビートに変換した急進的なアプローチ、緻密に施されたエフェクトによって全体を霧のように覆う心地よいアンビエンス、さらにワルツやシャッフルのリズムなど、過去の音楽への敬愛とテクノロジーが融合した初期ダムタイプの象徴的なサウンドが、ここで見事に確立されています。多彩な表情を持つ楽曲たちは、駆動するノイズ、電子音、電話の話中音などの四方に飛び交うシグナルをトリガーに、浮かんでは消え、また立ち昇り、移り変わる景色を描き出しています。
オリジナルは15年に〈CCQSK Records〉よりプライベート・エディションのLPとしてリリースしていた傑作が〈Superior Viaduct〉傘下の〈W.25TH〉よりアナログ復刻!ゼロ年代後半に圧倒的人気を誇ったものの、ギタリストのChristopher Reimerの突然の死によって解散することとなってしまった現代カルガリーの伝説的ノイズ・ロック・バンド、”Women”(当時私も大好きでした...!!)のリード・シンガー、Patrick
Flegelが展開してきたソロ・プロジェクト、Cindy Leeの初期作『Act Of Tenderness』!まさにカタルシス。今は去りし全盛期のローファイ・インディ/ドリーム・ポップへの憧憬、陰鬱と寂寞と不可解・・・在りし日のWomenを思い出すローファイ/ドリーム・ポップ"What I Need"を始め、This Mortal Coil~Cocteau Twinsといった〈4AD〉直系のイーサリアルな世界観とインダストリアル・グラインドが溶け合っていく異形の音像"New Romance"、フィードバックする金切り声、エクストリームなノイズの衝動へとどこまでも駆られる"Bonsai Dream"など、マスターピース満載の傑作ファーストLP!ぜひご体感ください。

アメリカのアヴァンロック・カルテットHorse Lordsと、ミニマル音楽の重鎮Arnold Dreyblattによる、〈RVNG Intl.〉の世代を超えた音楽家によるコラボレーションをテーマとしたFRKWYSシリーズ第18弾『FRKWYS Vol. 18: Extended Field』。Dreyblattが長年探求してきた純正律とHorse Lordsのポリリズミックで実験的な演奏スタイルが融合し、緻密でありながら身体的なグルーヴを持った作品となっており、金属製ダブルベースの弓奏、変則チューニングのギター、複雑なドラムパターンが交錯する。Dreyblattの緻密な音響とHorse Lordsのライブ感、ミニマリズムが持つ理論的な厳密さとアヴァンロックの肉体的強度、Horse Lordsの複雑なリズム構造とミニマリズムの反復美学という、ミニマリズムとアヴァンロックの新たな接点を提示しており、考えながら踊るような、知的でありながら感覚的にも深く響く一枚となっている。

メキシコ・シティを拠点とするバンド Diles Que No Me Maten による、北メキシコを旅した記憶と自然からインスピレーションを得て制作された『Obrigaggi』。ジャングルのそば、川沿いで録音されたセッションを基盤に、サックスやフルート、トランペット、ヴァイオリン、クラリネットといった多彩な楽器が重なり合い、アンビエント的な揺らぎと、ドリームポップやポストロックのように浮遊するテクスチャーを生み出している。伝統的な楽器やメロディーを用いるのではなく、メキシコの音響そのものを素材として用いる姿勢、曲ごとに明確な構造を持たず、静寂と爆発、作曲と即興が交互に現れる構成も相まって、聴く者を物語の世界に引き込むような、没入感の高いサウンドになっている。現代メキシコ・インディを象徴するような一枚。
アムステルダム出身、現在はハーグを拠点に活動するKim David Botsによる『Instrumental Romance』。日常の断片や記憶を詩的に描写するスポークンワーズ的な語りと、アナログ感のあるシンセ、ギター、フィールド録音などが混ざり合うローファイで親密なサウンドが温かくも不思議な音世界を構築。オランダ・マース川沿いの古びた農家で暮らしながら制作し、毎朝6時に犬のMiemelと川辺を散歩。霧の中でコーヒーを飲むという日課が作品の詩的世界に反映されている。皮肉やユーモアがありつつも、どこか切ない雰囲気が漂うバランスが絶妙で、静かな時間にじっくり聴くことで、日常の中に潜む物語や感情が浮かび上がってくるような魅力のあるアルバム。

東京出身でベルリン在住のプロデューサー、DJ Courtney Baileyによる、アンビエントとドリームポップが交差する幻想的な作品『In Dream』が〈Music From Memory〉傘下の〈Second Circle〉から登場。Fairlight風のスタブ音、広がりのあるデジタルシンセパッド、アシッドベースラインが織りなす瑞々しいサウンドに、囁くようなスポークン・ヴォーカルと優しいメロディラインが全編を通して親密な雰囲気を醸しだす。耳を澄ませるほどに深く染み込む、繊細で詩的なデビュー作。
『New Music』は、MerzbowやPrurientとの共演歴もあるNYノイズシーンの中心人物として知られるCarlos Giffoniとスウェーデンのエクスペリメンタル音楽家で、〈iDEAL Recordings〉主宰者Joachim Nordwallによる、テクノ、ノイズ、電子音響の要素を融合させた強烈なサウンド・アート作品『New Music』。Giffoniの深いシンセ・ドローンとNordwallの儀式的な構造が衝突し、機械的でありながら有機的な音響世界を形成。脈動する電子リズム、没入的なドローン、抽象的なテクスチャーが交錯する、フィジカルなリスニング感覚は、テクノの外縁部とノイズ、電子音響の境界を越え、宇宙的な領域に踏み込んだ一枚となっている。
2009年に逝去したオランダのカルト的シンセシストEnno Velthuysと、米デスメタル・バンドBlood Incantationの中心人物Paul Riedl両者によるアンビエント作品『Split』。Enno Velthuysはメランコリックで瞑想的なシンセ・アンビエントを中心とした80年代に残された未発表のカセット音源を収録。Paul Riedlは現行で制作された新録アンビエント作品を収録。深い空間性と内省的テクスチャーに満たされた、Blood Incantationでのコズミックな感覚をアンビエントに転化した内容となっている。世代も背景も異なる二人の音が、アンビエントを架け橋として、ひとつのアルバムで響き合う一枚。

ベルギーの音楽家Hieleによるレフトフィールド・エレクトロニクス、IDM、ニューエイジな要素が混ざり合ったアルバム『Emo Inhaler』。レトロなシンセサイザーの音色、遊び心のあるメロディ、深みのあるテクスチャと不規則で複雑なリズムが印象的な本作は、複数のスタジオや列車のコンパートメントで録音。断片をつなぎ合わせたような、奇妙な楽しさと、どこか懐かしいメランコリーが交錯する無邪気で不可思議な音響空間。視覚芸術家や映像作家とのコラボレーション経験を活かした空間や映像と結びつくような映画音楽的な感性と、どこかズレたポップ性を併せ持っている。「感情の吸入器」というタイトル通り、感情の断片を音で吸い込むような夢幻的な作品。
絵画、彫刻、音響、映像などを横断する作品で知られる世界的な現代芸術家、Anne Imhofによる、エクスペリメンタルな音響作品『WYWG』が大名門〈PAN〉より登場。本作は、彼女が2001〜03年に録音・撮影した個人的な映像や音声素材をもとに、それらを現在の視点から再編集し、アート作品として再提示したもので、従来の楽曲構造にとらわれない、アンビエント、エレクトロニック、インダストリアル、ポストクラブ的要素を融合し、緊張感と静寂が交錯するサウンドが特徴的。イムホフ自身に加え、イライザ・ダグラスやビリー・ブルシールなども制作に参加し、彼女のパフォーマンス作品で構築される、緊張感と無気力感が入り混じったような世界観を音で再現している。即興性と身体性を重視した録音で、Imhof自身の声やギターも用いられ、パフォーマンスや共同体的な空気と密接に結びついた音響表現となっている。48ページのアート・ブックレットが付属するなど、単なる音楽作品ではなく、彼女のアートを体現する総合的なインスタレーションというべき一作。
Barn Owl の片翼としても知られるJon Porras による『Achlys』。本作は、アンビエントとドローン、実験的ギター・ミュージックの中間にあるような、崩壊や変容をテーマにした非常に音響的な作品で、核となるのはギター。指弾きで書かれたフレーズを録音したあと、モジュラー・シンセやエフェクト・チェーンに通して構造を崩し、曖昧にし、音を重ねていく。旋律は姿を残しつつも、霧や残像のように漂い、はっきりした曲というよりも堆積物や気象のようにたまっていく音のレイヤーになる。サブベースや加工されたノイズが地盤をつくり、その上を断片的なギターや持続音が浮遊する。旋律やリズムに縛られず、音が変化し崩れていく瞬間そのものを聴かせる音作りと、高い山の森で嵐に包まれたときの体験をヒントにしたという、自然体験を抽象化したような音響のパレットにより構成されるこのアルバムは、静かにして強い余韻を残す、一種の気象現象を目にするかのような印象を残す一枚。
