仏〈Ocora〉にも比肩しうる広範かつディープな世界各地の伝統音楽のカタログを持つ、スイスはローザンヌ近郊を拠点とする長い歴史を持つレーベル〈VDE/Gallo〉より、Ustad Ghulam Mohammad Saznawazによるインド・カシミール地方のスーフィー音楽スーフィヤーナ・カラームの伝統を記録した貴重なフィールド録音作品『Cachemire: Le Sūfyāna Kalām de Srinagar』。スーフィヤーナ・カラームとは、イスラム神秘主義に根ざした音楽形式で、瞑想的な夜の集いメフフィルで演奏される声楽・器楽の組曲で、maqāmと呼ばれる旋法構造に基づき、sāz-e-kashmīrīなどの伝統楽器を用いて演奏される。本作は、カシミールの音楽文化の保存と継承を目的とした民族音楽学的プロジェクトの一環として制作されたもので、儀式的・霊的・詩的な要素が融合した音楽であり、現代では希少となったこの伝統の生きた証言としても非常に貴重な一枚。