仏〈Ocora〉にも比肩しうる広範かつディープな世界各地の伝統音楽のカタログを持つスイスのローザンヌ近郊に拠点を置く、長い歴史を持つレーベル〈VDE/Gallo〉より、20世紀中国を代表する古琴奏者・蔡徳允(Tsar Teh-yun)の演奏を収録した2枚組アルバム。蔡徳允の演奏は、技巧よりも精神性と余韻を重視しており、「陽春」「瀟湘水雲」「平沙落雁」など、中国古典音楽の名曲が、絹弦の柔らかな音色と静謐な間合いで奏でられる。中国古琴音楽は儒教・道教・禅の思想と結びつき、瞑想的で哲学的な響きを持っているが、本録音は1956年から1989年にかけて録音された貴重な音源で、特に古琴の芸術性と精神性を深く感じられる内容となっている。静けさの中に豊かな情感を秘めた珠玉の音楽。