大乗仏教の思想的核となった『中論』。龍樹は言葉が否定されるべき「迷いの世界にあるもの」であることを知っていた。『中論』は、言葉(プラパンチャ)が自らを否定し、そしてその否定(空性)によって蘇った言葉(仮説)となるプロセスを描いている。『中論』研究の泰斗が偈一つひとつを解説して龍樹の論法を明らかにする。
第一六章 束縛と解脱の考察
第一七章 行為と結果の考察
第一八章 我と無我の考察
第一九章 時の考察―過去・現在・未来―
第二〇章 結合の考察―因と縁―
第二一章 生成と消滅の考察
第二二章 如来と構成要素の考察
第二三章 錯誤と真実の考察
第二四章 最高真理と世間的真理の考察
第二五章 涅槃の考察―存するものと無―
第二六章 十二因縁の考察―仮説としてのアビダルマ教説―
第二七章 誤った見解の考察
略語および文献
判型・ページ数 4-6・310ページ
立川 武蔵
1942年、名古屋市生まれ。名古屋大学文学部卒。文学博士(名古屋大学)。Ph.D.(ハーバード大)。名古屋大学文学部教授、国立民族学博物館教授、愛知学院大学教授を経て、現在、国立民族学博物館名誉教授。専門はインド学・仏教学。著書に『中論の思想』(法藏館)、『空の思想史』『日本仏教の思想』『ブディスト・セオロジー』(5巻)(講談社)、『マンダラ観想と密教思想』『三人のブッダ』(春秋社)、『最澄と空海』『死と生の仏教哲学―親鸞と空海を読む―』(KADOKAWA)など。