スコットランドのバンド、Tacoma Radarが2002年に残した唯一のアルバム『No One Waved Goodbye』が未発表音源を加え、大名門〈Numero〉より再発。Tacoma Radarは、静かで内省的なポストロックとメランコリックなスロウコアの中間を漂うようなサウンドが特徴的で、繊細なギターのアルペジオ、ゆったりとしたテンポ、囁くようなヴォーカルが織りなす音の景色は、激情や派手さとは無縁。その代わりに、感情の余白や沈黙の美しさを大切にした音作りがなされていて、どこまでも控えめで、だからこそ深く沁みてくるようなものがある。音数少なく、空気の振動や残響まで音楽にしてしまうようなセンスがあり、スコットランドの灰色の空と雨の気配がそのまま音になったような印象。今回の初リイシューでは、オリジナル・アルバムに加え、2枚の7インチ・シングルと未発表ライヴ音源『Live From the 13th Note』を収録した豪華2LP仕様。繊細で哀愁を帯びたメロディと曇り空のような静かさが同居する、ひそやかな名盤。