植民地支配下のアンゴーラで育まれた新たな都市音楽!
ギターと打楽器が刻む、センバ形成期の鮮烈な鼓動!
アンゴーラは、アフリカ南西部の大西洋岸に位置する国。15世紀末にポルトガル人が進出して以来、長くその植民地支配下に置かれ、奴隷貿易の重要な拠
点ともなりました。20世紀に入ってからも植民地体制は続き、アフリカの言語や文化、伝統音楽は公的な場から遠ざけられていきます。一方、首都ルアンダ
をはじめとする都市部では、アフリカの伝統とポルトガル文化が交わる中から、新たな都市文化が育まれていきました。
世界各地の伝統音楽や歴史的録音を紹介してきたフランスの〈Buda Musique〉が1999年に発表した本作は、ポルトガル植民地支配下のアンゴーラで近代
的な都市音楽が形作られていった1956年から70年までの録音を、全21曲収めたアンソロジーです。
1940年代のアンゴーラでは、アフリカの伝統音楽が植民地社会の周縁へ追いやられる一方、カーニヴァルや黒人/混血層の舞踏会では、アフリカとヨー
ロッパ双方の要素を取り入れた音楽が演奏されていました。第二次世界大戦後には都市化や人口流入が進み、新聞、ラジオ、レコード産業も発展。伝統的な
歌や踊りをギター、ベース、打楽器などによって再構成する新たな音楽が、ルアンダを中心に生まれていきます。
その中心的存在となったのが、1947年頃に結成されたンゴーラ・リトモス(Ngola Ritmos)でした。キンブンドゥ語による歌をギターと小型打楽器で演
奏し、独唱にコーラスが応える伝統的な歌唱法を取り入れながら、後のアンゴーラ音楽を方向づける様式を築き上げました。リード・ギターが旋律を提示し、
リズム・ギターとベース、太鼓、レコ・レコに似た擦奏打楽器ディカンザが複雑なリズムを支えるそのサウンドは、後続の世代へ大きな影響を与えます。メン
バーの多くは民族解放運動にも関わり、中心人物のリセウ・ヴィエイラ・ディアスらは1959年に逮捕され、カーボ・ヴェルデのタラファル収容所へ送られま
した。
本作には、そのンゴーラ・リトモスをはじめ、北部のバコンゴ系音楽とルンバ・コンゴレーズの影響を伝えるサン・サルヴァドール(San Salvador)、ア
ンゴーラ南部の伝統とポルトガル語圏の音楽を結び付け、後に国際的な人気を得たデュオ・オウロ・ネグロ(Duo Ouro Negro)、キンブンドゥの歌唱伝統
を都市音楽へと発展させたエリアス・ディア・キムエズ(Elias Dia Kimuezu)らを収録。さらにRuy Mingas、Lilly Tchiumba、Teta Lando、Luis
Visconde、Os Kiezosなど、60年代末から70年代へ向かうアンゴーラ音楽の広がりを示す歌手、楽団が続きます。
音楽的には、センバを軸に、カーニヴァル音楽や社交舞踊、北部バコンゴ系の音楽、ルンバ・コンゴレーズ、ブラジル、カリブ、ポルトガル音楽の影響が交
錯しています。ギターと打楽器を中心とする素朴で力強い演奏には、形成期ならではの生々しい躍動感があり、同時にこの時代の音楽は、アンゴーラ人として
の文化的な自覚や植民地支配への抵抗とも深く結び付いていました。政治的な主張を直接表に出しにくい状況の中、キンブンドゥ語の歌や諺、日常生活を描
く物語、社会風刺を通して、人々は自らの文化と感情を表現したのです。
独立前のアンゴーラ社会と、そこで育まれた都市音楽の姿を伝える全21曲。アンゴーラ音楽の源流とセンバ成立の背景を知るうえで貴重な一枚です。