Throbbing Gristleが結成された街としても知られるイングランド東海岸に位置する都市 Kingston upon Hull、通称"Hull"の労働者階級の家庭に生まれたRichie Culverは、とりわけ芸術に触れることなく育ち、何の資格も持たず学校を出、キャラバンを作る工場で働いていたという。音楽作品のみならず、絵画、彫刻、写真からデジタル・パフォーマンスまでに及ぶCulverの作品は、多くが個人的体験・記憶から成り立っている。階級制度、テクノロジーとの拮抗関係、ソーシャルメディアの無常さ、それはUKプロレタリア生活の真髄に迫り、詩的かつ痛烈に洞察している。” I Was Born By The Sea ” にあるのは北の沿岸地域の荒涼とした空気、灰色の空の下で過ごした郷愁だけではない。彼のハンバーサイド訛りの口語に電子音楽の背景が混ざり合い、カタルシスと規律ある抑制の間の微妙な均衡がある。苦々しい記憶と楽観的な前進の間の緊張で振動している、擦過音とハミング。禁欲的でありながらうっとりするようなロマンティックな作品にも思える。