純正律の探究者Marc Sabatが、弦楽四重奏という最もシンプルかつ深遠な編成を通して調和の本質に迫った作品集『Harmony』。収録された三つの作品は、ピタゴラス、ポトレミー、ラモーといった歴史的音律理論を参照しながら、現代的な音響として再構築されたもの。長い持続音がゆっくりと重なり合い、倍音が濁りなく共鳴することで、平均律では得られない静謐な空間が広がる。数学的な構造に基づきながらも、響きは冷たさとは無縁で、自然界の倍音現象に近い有機的な温度を帯びている。純正律の響きが持つ揺らぎのない透明さを、現代の耳に新鮮な形で提示、厳密さと柔らかさが同居する、静かで豊かな音響世界。