テリー・ライリーとのコラボで知られる、2024年に惜しくも亡くなったイタリア出身の名歌手アメリア・クーニの声を中心に据えた作品。インドの伝統的な声楽ドゥルパドの探求と現代実験音楽が見事に融合しており、A面の「Melopea」では、ベルリンでの録音をもとに、ヴァイオリニストのシルビア・タロッツィとチェリストのデボラ・ウォーカーが、クーニの歌声と重ね合わせながら、伝統のドローン音から解き放たれた不安定で複雑な響きを紡ぎ出す。まるで音の細かな倍音を追い求めるように、ゆったりとしたグリッサンドと繊細な音程操作が織り成す歌唱は瞑想的で、聴く者を静かな深みへと誘う。「Bhoop-Murchana」では、ソプラノサックス奏者のヴェルナー・デュランドとチェリストのアンセア・キャディが、クーニが歌うラーガの構成音を丁寧に選び、新たな旋法を探求しており、彼らの純度の高い音色と浮遊感のある長い響きは、クーニの声やタンプーラの繊細な音と溶け合い、まるで温泉につかるかのよう。パンデミックの時期に非同期で行われたコラボレーションから生まれたこの作品は、クーニの芸術への敬意を表すとともに、初めて彼女の世界に触れる人にとっても理想的な入門盤となっている。