カラフルでパワフルでエレガント。 時代を担った名手・杉本喜代志の<それまで>と<それから>を内包した分水嶺的傑作。 1960 年にプロ入りして以降、多くのセッションやレコーディングで活躍してきた杉本喜代志。1960 年代後半からは白木秀雄、石川晶、日野皓正らのグループに参加し注目を集め、『カントリー・ドリーム』や『バビロニア・ウインド』といったリーダー作でその地位を不動のものとした。本作は約1年間のアメリカ遊学直後に石川晶、鈴木宏昌、植松孝夫らと録音したもの。グルーヴィでいて艶やかな「アワー・タイム」や「マーマレード・スカイ」をはじめ、怪しいキーボードが飛び交う「ジョーンズ・ストリート」や、メランコリックで美しい「クワイエット・パルス」など、ジャズ・ロックとフュージョンの狭間とも言える魅力的な曲が並ぶ。杉本の1970 年代半ばを代表する作品である。 text by 尾川雄介(UNIVERSOUND/DEEP JAZZ REALITY)