現代のピアノによってのみ到達し得るバッハ演奏の美―それを体現する近藤伸子が晩年の最高傑作《フーガの技法》を録音。声部の動きを明晰に多層化する研ぎ澄まされた知性と身体が、対位法の極北に位置する音楽的実存に迫る。冒頭の一音から、突如として訪れる最後の静寂まで、透徹した意思と静けさに満ちた緊張が持続する珠玉の演奏。
「フーガの技法」はバッハ最晩年の傑作である.楽器の指定がなく,器楽合奏曲として捉える説もあるが,鍵盤作品と見る説が優勢である.対位法の様々な技法を体系的に示そうと意図して作曲された野心的な試みで,その構成および曲の配列には歴史的諸説ある.鍵盤楽器のソロでは,18曲演奏する形が一般的である.1740年代前半から書かれ,いずれも共通する主題に基づくフーガ形式で,これはその第1曲でもっとも単純な4声のフーガである.この曲集に含まれるフーガの多くは,J. S. Bachの鍵盤作品中,「音楽の捧げもの」の6声のリチェルカーレと並び,極めて演奏難度の高いものである.この演奏困難さと配列の不確定性などから,「ゴルトベルク変奏曲」「平均律クラヴィーア集」などと比べると耳にする機会が少ない.また,これを「学問的」な作品と見なす向きもあるが,実際の音として聴かれ,演奏されてこそ,この作品は生きてくると私は考える.(Youtube説明欄より) J.S.バッハ: フーガの技法 BWV 1080 [1] コントラプンクトゥスI [2] コントラプンクトゥスII [3] コントラプンクトゥスIII [4] コントラプンクトゥスIV [5] コントラプンクトゥスV [6] コントラプンクトゥスVI フランス様式による4声 [7] コントラプンクトゥスVII 拡大と縮小による4声 [8] コントラプンクトゥスVIII 3声 [9] コントラプンクトゥスIX 12度の転回対位法による4声 [10] コントラプンクトゥスX 10度の転回対位法による4声 [11] コントラプンクトゥスXI 4声 [1] コントラプンクトゥスXII 4声 基本形 [2] コントラプンクトゥスXII 4声 転回形 [3] コントラプンクトゥス XIII 3声 基本形 [4] コントラプンクトゥス XIII 3声 転回形 [5] 8度のカノン [6] 3度の転回対位法による10度のカノン [7] 5度の転回対位法による12度のカノン [8] 反行形による拡大カノン [9] 3つの主題によるフーガ(未完)
録音:彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール 2019年5月30-31日 近藤伸子 東京藝術大学器楽科大学院博士課程修了。シュトックハウゼンのピアノ曲に関する論文と演奏で博士号取得。文化放送音楽賞受賞。1986〜88年ドイツ学術交流会(DAAD)奨学生としてベルリン芸術大学へ留学、最優秀の成績で卒業。A. シュナーベルコンクールで1位なしの第2位、受賞コンサートでの演奏は「ターゲス・シュピーゲル」紙で絶賛される。ブゾーニ国際コンクール入賞。1990年ウィリアム・カペル国際ピアノコンクールでナンシー・ミラー記念賞を受賞。ベルリン交響楽団、シンフォニーオーケストラ・ベルリン、ハイドン・オーケストラ(イタリア)、東京交響楽団、東京藝大オーケストラ他多数のオーケストラと共演。 現代曲や新作初演にも意欲的に取り組み、「サントリー芸術財団サマーフェスティバル」「東京の夏音楽祭」他に出演。1993年にはリサイタルシリーズ「20世紀のピアノ曲」を開始。また、 近年はJ. S. バッハの作品も集中的に取りあげ、 特に2000年および2005年の「平均律クラヴィーア曲集第I・II巻」全曲によるリサイタルは高い評価を得た。またCD「J.S.バッハ トッカータ 全曲」「新ウィーン楽派 ピアノ作品集」「近藤伸子 プレイズ J.S.バッハ」(『レコード芸術』特選盤)をリリース、好評を博している。2014年、第69回文化庁芸術祭優秀賞受賞。2017年4月より1年間、国立音楽大学長期国外研修員としてベルリンに滞在、ベートーヴェンのピアノ作品を中心に研究を行なう。現在、国立音楽大学教授。VIDEO VIDEO