演奏の至難さから、ピアノによる演奏機会は極めて少ない晩年の傑作<音楽の捧げもの>6声のリチェルカーレ(二つの演奏を収録)。
レコード芸術 特選盤
音楽現代 推薦盤
感情と理性。過去と現在―
相反する要素を高度に統合し研ぎ澄まされた音楽世界を創りだすピアニスト、近藤伸子の弾く味わいゆたかなバッハ。アルトゥール・シュナーベルコンクールで1位なし第2位、ブゾーニ国際コンクールなどへの入賞を経て国際的な活躍の場を広げ、新作初演やシュトックハウゼン作品をはじめとする現代音楽演奏にも積極的に取り組んできた一方で、近藤の活動にはいつもバッハが存在した。
このCDに収められたのは、2014年のリサイタルでも取り上げられ、各方面から絶賛を集めた6作品。それぞれにまったく異なる様式を内包する6作品を、近藤は作品の理念そのままに、感情と理性の高度な統合によって昇華する。ピアノならではの、そして現代ならではの切り口から響く、唯一無二、孤高のバッハ。
[1]-[2] 半音階的幻想曲とフーガ ニ短調 BWV903
Fantasia
Fuga
[3]-[4] 幻想曲とフーガ イ短調 BWV904
Fantasia
Fuga
[5]-[6] 3声・6声のリチェルカーレ 〜音楽の捧げもの BWV1079
Ricercar a 3
Ricercar a 6
[7]-[12] 最愛の兄の旅立ちに寄せるカプリッチョ 変ロ長調 BWV992
1. Arioso. Adagio
2.
3. Adagiosissimo
4.
5. Aria di Postiglione. Allegro poco
6. Fuga all’imitatione di Posta
[13]-[16] 4つのデュエット BWV802-805
Duetto I e-moll BWV802
Duetto II F-dur BWV803
Duetto III G-dur BWV804
Duetto IV a-moll BWV805
[17]-[19] イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV971
1.
2. Andante
3. Presto
[20] 6声のリチェルカーレ 〜音楽の捧げもの BWV1079(ボーナストラック)
〈録音〉彩の国さいたま芸術劇場 2014年8月20-21日
〈解説〉久保田慶一、近藤伸子
近藤伸子
東京藝術大学器楽科大学院博士課程修了。シュトックハウゼンのピアノ曲に関する論文と演奏で博士号取得。文化放送音楽賞受賞。1986〜88年ドイツ学術交流会(DAAD)奨学生としてベルリン芸術大学へ留学、最優秀の成績で卒業。A. シュナーベルコンクールで1位なしの第2位、受賞コンサートでの演奏は「ターゲス・シュピーゲル」紙で絶賛される。ブゾーニ国際コンクール入賞。1990年ウィリアム・カペル国際ピアノコンクールでナンシー・ミラー記念賞を受賞。ベルリン交響楽団、シンフォニーオーケストラ・ベルリン、ハイドン・オーケストラ(イタリア)、東京交響楽団、東京藝大オーケストラ他多数のオーケストラと共演。 現代曲や新作初演にも意欲的に取り組み、「サントリー芸術財団サマーフェスティバル」「東京の夏音楽祭」他に出演。1993年にはリサイタルシリーズ「20世紀のピアノ曲」を開始。また、 近年はJ. S. バッハの作品も集中的に取りあげ、 特に2000年および2005年の「平均律クラヴィーア曲集第I・II巻」全曲によるリサイタルは高い評価を得た。またCD「J.S.バッハ トッカータ 全曲」「新ウィーン楽派 ピアノ作品集」「近藤伸子 プレイズ J.S.バッハ」(『レコード芸術』特選盤)をリリース、好評を博している。2014年、第69回文化庁芸術祭優秀賞受賞。2017年4月より1年間、国立音楽大学長期国外研修員としてベルリンに滞在、ベートーヴェンのピアノ作品を中心に研究を行なう。現在、国立音楽大学教授。